【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第71回 全世界アニメファン約2千万人を集めるMyAnimeList-電子書籍取次最大手のメディアドゥ海外展開の先兵

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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国内のアニメ視聴者は3500万人と言われ、人口の4分の1はアニメを観る人々、というほどのアニメ大国となった日本。ただすでに2.5兆円と言われるアニメ市場の半分は「海外」から。この「海外のアニメファン」というのはどこにいて、どんな人たちで、どんなアニメを観ているのか。日本企業でこの答えに近づけている企業は少なく、実際に海外にそれなりのアニメユーザー規模をもつサービスをもっている企業は2社しかいない。1つは登録者1億、有料サブスク1千万人を越える世界最大のアニメ専業動画配信Crunchyrollを買収したソニー。そしてもう1つは世界で約2千万人のアニメファンサイトMyAnimeList筆頭株主のメディアドゥである。今回、株式会社MyAnimeList社長の溝口氏に話を聞いた。

 

【目次】
毎月約2千万人、海外99%。競合のいない世界アニメファンが集まる交差点

エンタメを中心としたi-modeの窓口担当者、1万件を越える企画提案に叩かれた20代
業界の外野だったメディアドゥが2010年代後半に電子書籍取次の最大手に
海外アニメファンが参加するDAO型組織、ファンパワーを促進させるための「祭り」のつくり方

 

■毎月約2千万人、海外99%。競合のいない世界アニメファンが集まる交差点

――:自己紹介からお願いいたします。

メディアドゥ取締役 CRO、MyAnimeList(マイアニメリスト:以後MAL)代表取締役の溝口敦(みぞぐちあつし)です。

――:今回は海外アニメファン向けの専用サービスとしてはNo.1となるMALの取材で伺わせていただきました。

2019年にDeNAから事業買収しまして、今5年目になりますね。コロナ期にかなりユーザー数を伸ばしまして、月間2.7億View、月1800万MAUまで到達しました。

――:すごい数字ですよね。それってもう日本では東洋経済オンラインとかトップ級のView数です。2021年にそういった数字も背景に、中山古巣のブシロードや各社さんが大きな出資を集めました。

シリーズAとして2021年7月にDESも含め合計13億6000万円を集めました。講談社、集英社、小学館、アニメタイムズ、アカツキ、DMM.com、KADOKAWA、電通グループ、ブシロード、他の企業様から増資いただいて、新サービス設計はもちろん、これまで20年近く動いてきたシステム改修やデータベース設計など、いろいろ再構築してきました。

――:最初から買収ありきで検討されていたんですか?

いやいや、電子書籍取次で国内最大手となった弊社もそろそろマンガの海外展開を中長期での成長の柱にしていこうと、当時検討を進めていたんです。そこで世界的にアニメファンをもっているMALに目をつけて、DeNAさんに何か一緒に協業的なスキームができないかと持ちかけたところ、M&Aの話しにつながっていったという経緯です。

――:これは初めての海外事業買収になりますか?

そうですね、まあDeNAさんからの買収だったのであまり「海外企業を買収した」という色合いは薄いんですが、メディアドゥとしては初めての海外展開事業のM&Aになります。

――:しかし2019というタイミングは非常に良かったのではないかと推察します。ソニーもアニメ特化の動画配信Crunchyrollを2020年末に買収発表、その後に有料サブスク者数は500万人に到達。半年かけて約1300億円で買収しましたが、その後の1年くらいの間にサブスク登録は1000万人越えで2倍以上になってますからね。

こちらもまさに、ユーザー数が急激に伸びました。現在はそれを維持したり、アプリを展開してエンゲージメントの高いユーザーを囲い込んだりしています。一人一人興味あるユーザーがアニメやマンガを登録するのですが、100作品以上を登録しているコアユーザーは100万人以上にも及びます。(2021/12時点)

――:なんか、Crunchyrollもそうですけど、こういうのニュースになりませんよね・・・

やっぱり「英語サイト」で「海外利用者比率99%」だからですよね。我々ももっと発信していかないとと思っています。ちなみに国別でみると米国(28%)、インドネシア(8%)、フィリピン(7%)、英国(4%)、カナダ(5%)で、トップ5カ国で半分くらい。男性7割、女性3割です。

 

▲24歳以下で8割という完全な若者向けメディアで、欧米8割というのも日系企業のサービスとしてはかなり珍しい

 

▲半分近くが「毎日アニメをみる」、9割が最低週1回は見るというかなりエンゲージの強いユーザーがそろっている

 

▲年齢が若いほどNetflix比率が上がっている。Crunchyroll、Funimation、Hidiveというアニメ専用OTTは年齢高め。

 

▲どの年齢でも10代までの体験が圧倒的。2010年代に入ってから人々が急激にアニメを見るようになったという仮説が検証される数字である

 

――:売上はどのくらいになったのでしょうか?正直マネタイズが厳しいサイトだったと認識してますが。

基本は無料で楽しめるWebサイトですしね。ただアニメファンがこれだけ固定してますし、協賛企業さんの広告などを入れていくことで、買収当初から比べれば売上は10倍近くなってますね。ただそれでも、黒字化するためにはなかなか苦戦はしている状態ですが。

――:なんと!そこはホント営業力次第ですね。コスト面でもある運営チームはどのくらいのチームでやっているんですか?

業務委託なども含めると30名くらいでしょうか。このサイトが凄いのは、基本的にページの更新はユーザー自身が行います。そこにModsと呼ばれるイベント企画やサービスの運営・維持をしてくれているボランティアが60名ほどいて、彼らが真贋をチェックして最終的にページがオープンになるんです。Wikiの運営体制に近いかもしれません。彼らが更新しやすいように仕組みをつくったり、機能や関連する企画などを実装したりする業務をMALの専業スタッフと協力しながらやっているんです。

――:社員30名・ボランティア60名の100名組織で動かす・・・その周辺に何万人とページを更新する人たちがいて、2000万人のユーザーがいるわけですね。これはメディアドゥさんが買収される以前からその仕組みで動いていたわけですよね?

はい、Modsの増減はありますが、基本的には最初からその体制で動いていました。ただその60人も原則経済インセンティブで動いてないですからね。

――:世界にはMALの競合サイトってあるんでしょうか?

ないんですよ。Anime News Networkもありますが、こちらはアニメ関連ニュースを配信するもので、コミュニティ色が強いわけでも、データベースでもないですしね。データベースでいうと例えばiMDbやFandomといったサイトがありますが、これらはポップカルチャーが全部入っており、日本のアニメは一部です。だからもう20年近く運営してて何千万人の世界のアニメファンが見る専用サイト、となるとほぼMAL一強なんです。

――:なるほど、唯一無二なんですね。海外のアニメファンはMALで人気度を確認して、Crunchyで動画を見るというのが一般化しているかと思います。

そうですね。だからか、MALのトレンドって、ほぼGoogle検索と同じなんですよ。普通に検索窓に「Manga」や「Anime」など入力して日本コンテンツを検索しようとする人たちがMALやCrunchyrollにくるんじゃないかと。

 

 

――:ほかのアニメ関連指標もそうなんですが、これ2020年に入ってコロナのロックダウンで急激に増えたのってどういう層なんですかね?

やっぱりNetflixでアニメをみる一般層ですよね。いままで気になってたけど、日本アニメをみてこなかった人たちが加入していたNetflixを皮切りに、だんだんハマってくる。するとNetflixで物足りなくて日本アニメがいっぱい入っているCrunchyrollに第二のOTTとして入る。その情報の精査や深堀りのためにMALにくるようになる。そんな構造だったんじゃないかと思っています。

――:こうやってみるとなぜ今まで日本のアニメ関連商品の海外展開のためにMALがなぜ活用されてこなかったのか不思議なくらいですね。正直DeNAさんが持っていた時期はMALもあまり動きがなかった認識しています。

2004年に個人のエンジニアが作ったサイトで、一時北米メディア企業に売却されたあとに、2014年にDeNAさんが買収されてます。DeNAさんも様々トライされてきたとは思いますが、これだけ大きくても、やはり「Webサイト」なのでユーザーはちらっと見て素通りしてしまいますし、思った以上に事業としてマネタイズしていくのは大変だったのではないかと推察します。

――:いわば「アニメ好きが集まる渋谷の交差点」みたいなもんですよね。皆がここを通るけど、誰もそこに溜まらない。どう広告をうったり、どこのECサイトに誘導して購入者を促進するのか、交差点のマネタイズが問われてますね。

このあいだ(23年7月)AnimeExpo(米国・ロサンゼルス開催、以降「AX」)に行ったんですよ。その時、思いましたね。あ、これってMALのリアル版なんだな、と。客層もほぼ全く同じだったと思いますよ。

――:それは非常に分かります。約2000万人のMALのうち1%の20万人がAXにきている、というわけですね。

だからAXが4日間で15億円の収入を確保するのにどうやっているかを考えればいいんです(AXは6割チケット収入、2割が企業ブース出展料、1割が広告協賛で、あとは自社物販や政府補助に依存している)。彼らも年1回のこの機会をとても楽しみにしている。モノを買いたいか、アニメ好きと集いたいか、プロデューサー・声優に会いたいか。そうして集うためにあれだけ高い費用をかけて楽しんでいる。それはデジタルではまだ実現できていないんですよ。

ああいったAXでしか味わえない体験を、デジタル上で気軽に疑似体験できるかどうか、というところにMALの次が問われてますよね。マネタイズの課題は依然として残ってますが、彼らがどんなイベントに反応して、何を求めているか、というのはAXを見ていれば、そこにヒントがあるんじゃないかなと思います。

 

■エンタメを中心としたi-modeの窓口担当者、1万件を越える企画提案に叩かれた20代

――:そもそもメディアドゥはいつごろからある会社なんですか?

創業はかなり昔なんですよ。創業社長の藤田恭嗣が大学時代に携帯電話販売業で1994年に創業していますが、卒業後、1999年になってから「メディアドゥ」という社名で携帯販売とインターネットサービスの会社を立ち上げ、現在に至ります。

――:実はもうすぐ創業30年を迎えるんですね。今のメディアドゥって「電子書籍の取次」のイメージが強いですけど、2000年代は全然違う業態やってたんですよね。

携帯電話販売事業に保証金が不要になった90年代、たくさんの起業家が新規参入するなかで藤田も大学の仲間と始めるんですよね。自前でショップも持ってかなり精力的に展開していたんですけど、より会社を成長させるために事業をピボットして、2004年からは着うた配信サービスとして音楽事業を手掛けるんですよ。僕も藤田とはNTTドコモの担当者時代に出会ってます。

――:溝口さん、最初はNTTドコモ入社ですもんね。1999年にi-modeが開始されたばかりですごい競争倍率の人気企業だったんじゃないですか?

NTTドコモには2000年に入社しました。たしかに絶好調の会社でしたから、なんで自分が受かったかわからないくらいの競争倍率でしたね。最初にPHS上での音楽配信事業をやって、その後i-modeのコンテンツ開拓の担当者になります。

――:仕事はどんな感じだったんでしょうか?

間違いなく、あの時代が今の僕の基盤になってますね。毎日毎日大量の企画が持ち込まれて、そのクライアントとの壁打ちをするわけです。何百何千じゃなくて、もう多分企画書だけで1万はいっています。そこで音楽からゲームから書籍、決済から金融に至るまで、ありとあらゆるサービスの企画をみて、それがどうやったらより成功するどうかのお話をするわけです。そこから立ち上げプロセスと栄枯盛衰を全部見届けて。当時パートナーとして接している企業さんも凄い人が多くて。20代そこそこでしたが、今現在私が上場企業役員として出会っている人たちと当時で変わっていないんじゃないかと思います。音楽、ゲーム、テレビ、芸能事務所から新聞とか證券まで、トップの方々とお仕事させてもらっていました。本当にありがたい事だと今でも思っています。

――:まさにそのリレーションがメディアドゥの成長にも貢献したと聞いています。CRO(Chief Relationship Officer)ですもんね、溝口さん。

昔も今も、人と人、事業と事業の連携をどうやって紡いでいくのかを考え続けている感じです。メディアドゥに来てからも、ずっと変わらずお付き合いを頂いている皆さんに感謝しかありませんし、それなくして、メディアドゥへの貢献はなかったと思っています。

――:いつごろメディアドゥには入社されたんですか?

2008年ですね。まだ社員数十名規模で年商20億円くらいの時代です。

――:入社して8年、あれだけ絶好調の会社にいながら、なぜ転職されたんですか?

ドコモで「あのポジションではかなり頑張った感」があったんですよ。当時のi-modeはそれこそエンタメのど真ん中にも位置していて、着うた、着うたフル、映像配信、タワーレコード、ナップスターも手掛けていましたし、モバイル広告から決済まで担当させてもらって、携帯におけるおよそ著作物と言われる形式のものにひととおり携わってきました。夏野剛さん(i-mode責任者、KADOKAWAの現CEO)はじめ、主だった上司や仲間達が辞めていっていたこともあり、自分も何か新しいことをやってみようと当時32歳で思っていたんですよね。

――:でもそれこそ色んな選択肢があったのでは?

そうですね、テック系の会社さんやメディア系や外資まで声をかけてくれる会社は何社かありました。その中で、藤田はその数年前からずっと誘い続けてくれていましたし、経営メンバーで入ってホントにゼロイチで会社そのものを作っていく過程が面白そうに思えたんです。あと、彼のなにか“事業だけじゃない感じ"がよかったんですよ。彼は徳島県の旧木頭村出身で、当時から地元を元気にするために地方創生にも精力的に取り組んでいました。実直にやり続ける気力とか胆力とか、そういうところも含めて面白い人だな、一緒にやってみたいな、と思っていました。彼は地元でも10年前に法人を立ち上げてからいくつもの事業を手掛け、今でも活動を続けています。それは僕自身の目標にもなり、大きな活力になっていると感じています。

 

■業界の外野だったメディアドゥが2010年代後半に電子書籍取次の最大手に

――:出版市場は2.6兆円(1996年度)をピークに25年間ずっと落ち続けてきました。書籍流通の要である取次100社もそれにあわせて売上を減らし、トーハン・日販の2強が現在5千億円ずつといった感じでしょうか。よく100年以上歴史があるこの「取次」業界に入っていきましたね。

電子書籍事業を始めたのは2006年、私が入るちょっと前のタイミングです。着うただけだと競争も多いし、厳しかった。印税を計算してロイヤリティで戻す、という仕組みと著作物を扱うことの原理原則を持っていたので、これを他の著作権ビジネスにも展開できないかというところで映像や本のビジネスにも参入していったんです。でも当時電子書籍のビジネスはまだまだ規模が小さかった。

――:「電子書籍元年」は何度もありました。2004年ソニーが「リブリエ」など電子端末が出た時期(2007年発売中止)、2007年AmazonのKindle発売時、2010年AppleのiPad到来。それでも全然普及しない。世界的にみても2010年段階で“ケータイコミック市場"としてガラケーでマンガを買っていた日本の電子書籍600億円市場が、米国300億、中国30億よりも大きくて「世界一」でした。よく、そんな領域に飛び込んで、市場をつくっていきましたね。

当時から書籍の市場自体は大きかったので、信じるしかないですよね。毎回毎回、電子書籍で動きがあるたびに「既存の紙市場に影響するのではないか」という議論がありました。最終的にはやっぱりマンガの力とスマートフォンの普及により、2010年代後半に入ってから急激に伸びていって、それにあわせてメディアドゥも大きくなってきました。

――:これ、紙の本だったら、配本もあるし返品もあるし書店へのファイナンスもある。「取次」の役割の重要性はわかるんですが、なぜネット書店に出すだけなのに出版社がダイレクトにやらないのでしょうか?

不思議ですよね。電子書籍には「棚」もないので、実は増やせば増やすだけ本は並べられるんですよ。紙の店舗では書棚の限界があるので、必然的に陳列を考える必要がありますが、電子書店なら無限に陳列することができる。

でも結局のところは「立ち上げの難しさ」「手間」のところなんです。日本は3000社以上の出版社がありますし、年間数万点も出版される。そこに何百と電子書籍のサイトがある。メディアドゥは、元々出版社と電子書店をつなげて取り扱える本をデジタルで流通するだけでなく、電子書店を簡単に構築するためのCMS(コンテンツマネジメントシステム)開発を手がけ、電子書店を大きくしていくところにも注力した会社なんです。

――:まだまだ立ち上がっていない市場だから、競合も少なかったというのはあるんですか?

トーハンさんや日販さんといういわゆる紙の取次は電子には参入されてなかったです。ただ出版と付き合いの深い印刷業界はどんどん参入していて、2強は存在していました。大日本印刷さんのMBJ(モバイルブックジェーピー)と、凸版印刷さんのビットウェイです。

――:なるほど、ケータイコミック時代から既に大手はあったんですね・・・2強に対して、メディアドゥがどうやって勝っていくんですか?

当初、新たにメディアドゥと契約することに懐疑的な出版社さんが多かったですね。すでに大手2社に出しているんだから、売上があがるかどうかわからないメディアドゥと契約する意味あいがあまりない。既存の2社とメディアドゥも契約したら良いんじゃないか?という話しが多かったです。でも単に中継をしてしまうと、弊社としての取り分もどんどん小さくなり、私達が存在する意義もなくなってしまう。

そこでメディアドゥは大きくなりそうな電子書店を一緒に作っていったんです。すでに大手の出版社、電子書籍サイトはMBJとビットウェイと契約されていたので、CMSや配信システムを作って「電子書店の仕組みを提供し一緒に大きくなること」にフォーカスをせざるをえなかった。

――:現在は紙の出版市場が1.1兆円でトーハン・日販が大半を握ります。逆に電子書籍の5000億市場のうち(2022年度)、1/3がメディアドゥ経由となって、「日本最大の電子書籍取次No.1」となりました。これはいつ頃が大きな転換点になったのでしょうか?

先ほどお話しした電子書店を一緒に大きくしていくという戦略がうまくいったのもありますが、やっぱり産業革新機構から、当時の電子書籍取次で国内No.1だった出版デジタル機構(ビットウェイを2013年に買収、当時206億売上、7.4億純利益)を2017年3月に買収したタイミングですね。あそこでまだ2千億円弱だった電子書籍市場が、その後5年間で2倍以上になりましたから。

 

――:メディアドゥでは、AmazonやNTTドコモ、NTTソルマーレなど「出し先」としての電子書籍サイトが150店舗以上、出版社は2200社以上(うちマンガで約500社)と取引があり、すでに電子書籍を提供する出版社の99%をカバーしている状況です。2010年ごろの大手を追う時代、2017年の大勝負のM&A、そしてこの7年の間にほぼ10倍規模に成長しました。貴社だけがこういう動きができたのはなぜなのでしょうか?

基本的に独立系のベンチャーだったこともあり、信じた事を貫けたというのがあったと思います。電子書店を一緒に大きくしていくために、システムや仕組みを自社エンジニア中心で柔軟に作っていきましたし、出版社さんとも、どうやったらたくさんの人に少しでも読んでもらえるのか?を膝詰めでお話しする機会もたくさん作りました。今では当たり前の仕掛けや仕組みも、既存の枠に捕らわれる事無く採用できたこともあります。ビジネスモデルに関しても、かなりリスクテイクしていった事もあって、この電子書店を一緒に作っていくけどこれがコケたらもしかしたら危ないかもな、という大型案件のときも、藤田が見極めてGOを決断したんですよね。そういう起業家ならではの判断もあって、ようやくここまできた感じです。

 

■海外アニメファンが参加するDAO型組織、ファンパワーを促進させるための「祭り」のつくり方

――:電子取次で盤石になったメディアドゥは直近、上流から下流まで幅の広げ方が著しいです。IP発掘部分では日本文芸社(21年、RIZAPグループから約15億円で買収)やエブリスタ(21年、DeNAから約20億円で買収)、出版支援ではFlier(2016年、VCから約4億円で買収)や縦スクロールコミック(Webtoon)市場で専門の新レーベル「Yuzu Comics」のスタート、販売・マーケティングではNFTサービス「FanTop」の立ち上げ、海外ではMALのほか、Firebrandグループの米国書誌情報管理サービスや、マーケティングツールとしてのNetGalleyなどを展開されています。こうした中でメディアドゥは特にどこに力を入れていっているのでしょうか?

やっぱり海外というのは大きいと思います。日本国内における電子書籍の流通増というのは今後もありますが、長いスパンで考えた時に海外展開をやらない選択肢はない。これって10年前の電子書籍市場と同じですよね。立ち上がること自体はわかっているけど、いつ、どのくらいのサイズで、というのが見えない。ただ成長することだけは分かっている。

――:MALが日本資本になったことで、こうした「北米ユーザーの変化」が分析・公開できるのは非常に有意義だと思っています。過去の分析資料も拝見しましたが、この表なども大変面白かったです。

 

 

2022年10-12月クールのMALでの登録者数を、放送前(9月末マンガ等での期待値)/初速(10月3週目、3話終わったタイミングの期待値)/放送終了後(12月末、放送中の話題の増幅)の3段階でどのタイミングで一番大きく広がったかを分析

・放送前ですでに50万人超がいた『チェンソーマン』(放送終了後で100万人突破)
・放送前で2万人弱の『ぼっち・ざ・ろっく!』は放送終了後で20万超えと10倍成長(2022年では『リコリス・リコイル』を超えるレベル。他クールでも放送後で大きく跳ねた作品で『転生したら剣でした』『夫婦以上、恋人未満。』『ロマンティック・キラー』などを挙げている)

いわゆる一般的な人気作品だけでなく、“発掘型"のものを抽出したり、国によって実は違う人気のあらわれ方をしている分析などができる(本来は『NARUTO』や『僕のヒーローアカデミア』などバトルものが人気が出るといわれてきたが『その着せ替え人形は恋をする』(2022年1-3月クール)が人気を博するようになった過程などはMALならではの分析)。

各クール別のベスト評価アニメも『呪術廻戦』(21年1-3月クール)、『僕のヒーローアカデミア』(21年4-6月クール)、『転生したらスライムだった件』(21年7-9月クール)、『古見さんは、コミュ症です。』(21年10-12月クール)『その着せ替え人形は恋をする』(22年1-3月クール)『はたらく魔王さま!!』(22年7-9月クール)『チェンソーマン』(22年10-12月クール)といった具合に分析できる。

 

――:『古見さんは、コミュ症です。』『その着せ替え人形は恋をする』などが流行するようになった背景として、やはりアニメのすそ野が広がっていると言える状況なのでしょうか?

もともとアニメ好きはCrunchyroll(世界No.1の海外アニメ専業OTT:2021年にソニーが買収)やFunimation(北米2番手のアニメ専業OTT:2017年にソニーが買収)をみてきました。でも「上澄み」としてのカジュアル層がNetflixでアニメに親しむようになって、もっとたくさん作品をみたいというときにCrunchyに登録するようになってきました。それがこの3年で2倍になった部分なんでしょうね。

――:MALのModsの仕組みも気になります。これは拡張性があるものなんでしょうか?

そうですね、この60名というのも出入りはありますが大体同じ数で、ただ、最近は更新速度のほうが早くて未承認のページが溜まりつつあるのでもっと増やしたいなという状況にはなってきています。ただ、単に人数を増やすだけのように思いがちですが、そんな単純な話しでもありません。こちらの図のように60名のModsだけの組織があるんですよ。MALのチームは広告・企画・営業・契約周りやユーザーサポート、開発を行いますが、このModsがデータベース更新、News配信、SNSやDiscordの管理と運用を行っているんです。組織化もしていてこの表のようにMods自体もDB、コンテンツ、コミュニティにわかれてチームがあって、それぞれ担当者に役割が配分されているんです。

 

 

――:これ、、、まるっきりDAO(分散型自律組織)じゃないですか。このModsは無給なんですよね?

原則無給です。ただ彼らはMALで育ったから恩返ししたい気持ちもあるし、こうしたコミュニティマネジャーとしての名誉職でもある。我々としては彼らがより動きやすいように環境を整備することが非常に大切な役割になっています。今、コミュニティが主催するイベントに参加してくれた人たちにバッジなどを付与していく仕組みがあるんですが、Modsを含めたMALへの貢献者に対しても同様な仕掛けをもっと整備していかないとなと考えています。

この自立組織を尊重していくことも大切にしているので、足りないから増やそうといって、簡単に増やせるわけではないというお話しにつながっていきます

 

▲各自のページにこれまでのMALでの活動履歴がわかるよう、左側に「バッジ」がみえる仕組みにしてある

 

――:ある程度自律的に動いている中で、MALは今後なにをテコ入れしていくんですか?

オペレーションがきちんとまわるようにするサイト改修だけでも実はかなり投資が入っています。正直なところ、20年近く前に、個人が書いたコードの上につけたしで作ってきたから完全にスパゲティコードになっていましたし、データベースもゴチャゴチャしていました。残念ながらハッキングもよく受けるし、こうした状況をまず整えて、まだ完全ではないですが、現在の状態にまでもっていくのにかなり投資したんです。この投資により、ユーザデータがしっかり取れるようになってきたのも、ここ最近の話です。

これからもまずは基本的なサービス、特にDBの質と量を上げ、ファンに信頼して使い続けてもらうサービスにすることが重要だと思っています。それと同時に、MALコミュニティによるイベントや企画など、このコミュニティに参加しているファンが楽しめる仕掛け作りをサポートしていく事も大切だと考えています。そして、その上に、有名作品はもちろん、コアな作品も含め、アニメやマンガを軸とした日本IPをより多くの海外ユーザーに観て、読んで、遊んで、楽しんでもらえるようにしていくこと。このためのサービス展開を株主やアライアンス企業と共に加速させて大きくしていきたいと考えています。

――:そうですよね、今溝口さんが着ていらっしゃるTシャツも、山口つばささんの『ブルーピリオド』のユーザー投稿ですよね。

はい、まさにこういうイベントですね。僕も大好きな作品で、“ファンそれぞれにとっての『ブルーピリオド』の青から連想するイラスト"を募集したんです。4~5千作品の応募があって、それを全部まとめて一枚の絵にしてTシャツにプリントして販売したりしています。

他にもWriting Contestで賞をつくってユーザーから募集しました。受賞作品は講談社から出版可能性もあるかも、ということで第二回(2022年6-9月)は800件もの応募がありました。この時は学校生活(School)、ラブコメ(Rom-Com)、サイバーパンク(Cryberpunk)などをテーマに設定しました。

――:なるほど。思ってみた99%海外ファンばかりのサイトでこういう日本アニメが主題のイベントをやったり、アンケートがとれたり、といったこと自体が非常に貴重ですよね。

はい、おかげさまでユーザー数もゆっくりですが伸びてきていますし、あとはきちんとこの文化を壊さないようにビジネスとしても安定性をもって運営をしていく、というのが目標になりますね!海外のアニメファンに商品を届けたい企業さんの広告や事業アライアンスは絶賛募集中ですし、一緒にやってみたい!という仲間も職種問わず大募集してます!

 

 

株式会社メディアドゥ
https://mediado.jp/

会社情報

会社名
株式会社メディアドゥ
設立
1996年4月
代表者
代表取締役社長CEO 藤田 恭嗣
決算期
2月
上場区分
東証プライム
証券コード
3678
企業データを見る
MyAnimeList

会社情報

会社名
MyAnimeList
企業データを見る

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
企業データを見る