家庭用ゲーム大手、6社中4社がゲーム事業で減益 巣ごもり需要後退やインフレなど環境悪化 主流ハードの端境期で少々の我慢の時期か

家庭用ゲームソフト大手6社の第3四半期累計(2023年4~12月)の決算が出揃った。今回の大手ゲームのまとめでは、これまでのように会社全体の収益ではなく、ゲーム事業にフォーカスしてみたところ、本業の儲けを示す営業利益は、6社中4社が減益となった。第4四半期に大型タイトルの投入を控えているコーエーテクモHDを除くと、発売した新作タイトルの売上が振るわなかったり、新作タイトルの開発を中止し損失計上したりした結果、利益を落とすケースが目立った。

大手ゲーム会社の一角は、ここ数年、コロナ禍で大きく盛り上がった巣ごもり需要に加えて、モバイルゲームを縮小する一方、家庭用ゲームソフトやPCゲーム、MMOに注力することで、大きな成果を収めてきた。コロナ禍の特需は「正常化」に伴いすっかり落ち着き、追い打ちをかけるように欧米におけるインフレなど経済環境の悪化が影を落としている。

新作を発売すれば一定の売上が期待できる状況ではなくなっている。中小規模から大規模まで幅広いラインナップを揃えるのではなく、プロジェクトを精査し、有望と判断したプロジェクトにリソースを集中的に投下して世界ヒットを狙う会社が大きな成果を収めている。プロジェクトの絞り込みを行っている会社では「プロデューサーが過剰雇用になっている会社も出ている」(業界関係者)。 

また、主流となっている「Nintendo Switch」のライフサイクルが後半に入ったといわれて久しく、その後継機に関する噂話や報道も多く出てくるようになった。これまでコンソールゲーム業界は、ハードウェアのライフサイクルにあわせて景気が上下してきた歴史がある。ハード・ソフトのライフサイクルの長期化やプラットフォームの多様化で以前ほどわかりやすいサイクルとして出ていないが、ハードウェアの端境期にさしかかり、少々の我慢の時期に入るのだろうか。

 

 

 

さて、個別企業の状況を見ていくと、バンダイナムコHD<7832>は、ゲーム事業を展開するデジタル事業の営業利益が96.5%減の16億円と大きく利益を減らした。前年にリピート販売で寄与した大型タイトル『エルデンリング』の反動減があったことに加えて、オンラインゲームの新作が計画を大幅に下回った。そのオンラインゲームの評価損のほか、新作5タイトル以上の開発中止に伴い評価損など210億円の損失を計上したことも響いた。

セガサミーHD<6460>は、エンタテインメントコンテンツ事業コンシューマ分野の営業利益が58%減の139億円だった。買収したRovioの寄与で増収となったものの、新作タイトルの一部が軟調に推移した。新作のモバイルゲームも投入した新作が早期にサービス終了が決まり、既存タイトルの経年による売上減を補うことができなかった。欧州拠点で開発していた『HYENAS』や未発表タイトルなど新作の開発中止も決定した。

コーエーテクモHD<3635>は、エンタテインメント事業の営業利益が10.6%減の200億円だった。『Fate/Samurai Remnant』を発売したが、収益の中心は旧作のリピート販売とモバイルゲームが中心だった。同社は開発中に開発費を費用処理しているため、リピート販売のメリットが他社に比べて少なく、モバイルについても自社配信の比率が上がったことで利益率が落ちたようだ。

ただ、同社は、一足早く大作に注力することを表明した会社であった。2022年4月の中期計画の発表時、パッケージゲームで500万本級タイトル、そして毎期200万本級タイトルの発売を重点目標に掲げていた。第4四半期に大型タイトル『Rise of the Ronin』を3月22日に発売する予定で、販売動向が注目される。

スクエニHD<9684>もデジタルエンタテインメント事業が20%減の307億円だった。『FINAL FANTASY XVI』『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』『ドラゴンクエストモンスターズ3魔族の王子とエルフの旅』等を発売したことでHDゲームは増収となった。しかし、MMOやスマホゲームの売上が前年を下回ったことに加えて、新作開発費の償却負担や広告宣伝費の増加が響いたという。

大手以外でも家庭用ゲームを中心とする会社の苦戦が目立つ。マーベラス<7844>も家庭用ゲームソフトの新作3タイトルが計画に到達せず、業績予想の下方修正を余儀なくされた。日本一ソフトウェア<3851>もエンタテインメント事業は売上が31%伸びたが、営業利益は6.5%減にとどまった。

厳しい決算が目立つなか、カプコン<9697>のゲーム事業は、営業利益が37%増の473億円と大きく伸びた。新作『ストリートファイター6』が298万本を販売し、完全新作『モンスターハンターワイルズ』の制作発表に併せ、同シリーズのリピートタイトルの販売が伸びた。『バイオハザード RE:4』も継続的なアップデート施策で売上を伸ばした。第4四半期は『ドラゴンズドグマ2』を3月22日に発売する。

コナミグループ<9766>もデジタルエンタテインメント事業の事業利益(※)が49%増の559億円と大きく伸びた。『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』や『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』を発売したほか、『eFootball 2024』や『プロ野球スピリッツA』といった主力タイトルが好調だったとのこと。ゲーム開発・運営力だけでなく、選手を含めた権利元との強い関係を武器にスポーツモバイルゲームで他社を圧倒する強さを見せている。

※事業利益は売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出。国内会計基準でいうところの営業利益に近い概念である。国際会計基準を採用している同社が他社と比較しやすいように開示しているようだ。

株式会社カプコン
http://www.capcom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社カプコン
設立
1983年6月
代表者
代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) 辻本 憲三/代表取締役社長 最高執行責任者(COO) 辻本 春弘/代表取締役 副社長執行役員 兼 最高人事責任者(CHO) 宮崎 智史
決算期
3月
直近業績
売上高1259億3000万円、営業利益508億1200万円、経常利益513億6900万円、最終利益367億3700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9697
企業データを見る
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
https://www.hd.square-enix.com/jpn/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
設立
1975年9月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高3432億6700万円、営業利益443億3100万円、経常利益547億0900万円、最終利益492億6400万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9684
企業データを見る
コナミグループ株式会社
http://www.konami.com/

会社情報

会社名
コナミグループ株式会社
設立
1973年3月
代表者
代表取締役会長 上月 景正/代表取締役社長 東尾 公彦
決算期
3月
直近業績
売上高3143億2100万円、営業利益461億8500万円、最終利益348億9500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム(ロンドン証券取引所にも上場)
証券コード
9766
企業データを見る
コーエーテクモホールディングス株式会社
http://www.koeitecmo.co.jp/

会社情報

会社名
コーエーテクモホールディングス株式会社
設立
2009年4月
代表者
代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
決算期
3月
直近業績
売上高784億1700万円、・営業利益391億3300万円、経常利益398億9900万円、最終利益309億3500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3635
企業データを見る
株式会社バンダイナムコホールディングス
http://www.bandainamco.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコホールディングス
設立
2005年9月
代表者
代表取締役社長 川口 勝
決算期
3月
直近業績
売上高9900億8900万円、営業利益1164億7200万円、経常利益1280億0600万円、最終利益903億4500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7832
企業データを見る
セガサミーホールディングス株式会社
http://www.segasammy.co.jp

会社情報

会社名
セガサミーホールディングス株式会社
設立
2004年10月
代表者
代表取締役会長 里見 治/代表取締役社長 グループCEO 里見 治紀
決算期
3月
直近業績
売上高3896億3500万円、営業利益467億8900万円、経常利益494億7300万円、最終利益459億3800万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
6460
企業データを見る