【決算まとめ①】ゲーム関連企業の24年7~9月期決算は増収増益が多数派に バンダイナムコHDは全事業で増収増益 採算改善進むDeNAは次の四半期より『ポケポケ』貢献も

柴田正之 編集部記者
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主要モバイルゲーム企業の2024年7~9月期の決算を振り返りたい。いわゆるスマートフォンゲーム専業企業だったゲーム会社が、コンシューマゲーム市場も意識した体制に転換する動きが進んでいる。

先月11月14日にそうした方針をはっきりと打ち出したのがグリー<3632>だ。グリーは、ゲーム・アニメ事業のWFS、ポケラボ、グリーエンターテインメントの3社のライブサービスゲーム事業を中心に統合する一方で、コンシューマゲーム事業のGREE Studiosを11月1日付で新たに設立し、より強固な体制で事業推進を行うことを発表した。

また、ブシロード<7803>もデジタルゲームの開発パイプラインがモバイルゲーム2タイトル、コンソールゲーム13タイトルとコンソールゲームへの鮮明なシフトを打ち出している。

今期(2025年3月期)中のNintendo Switch後継機の公式発表が予定される中で、コンシューマゲーム市場を視野に入れてくる企業はますます増えてくることになりそうだ。

さて、今回も前回までの形と同じく、テーマごとに少し切り分け、この記事では7~9月期の決算シーズンの主要モバイルゲーム企業の決算の概略をまとめてみたい。これまでの記事とデータの連続性も踏まえ、エイチーム<3662>とgumi<3903>、アピリッツ<4174>、coly<4175>などの決算は既に次の期のものが発表されているが5~7月期の数字を使用している。

なお、これまでと同様にサイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げている。また、表中では各企業の四半期推移(QonQ)での増収率・減収率で各企業を並べている。

また、今回は子会社チャリ・ロトの不適切な資金のやり取りの問題に関する調査の影響でMIXI<2121>の決算が現時点(2024年12月24日)で未発表となっている。

■『ドッカンバトル』をけん引役にアカツキが急回復 バンダイナムコHDは全事業が増収増益に

この四半期に四半期推移(QonQ)での増収企業で目立ったのはアカツキ<3932>だろう。『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』で実施した世界同時の夏の大型キャンペーン「地球まるごと!熱烈激戦キャンペーン」が奏功したことがその最大の要因だ。ただ、8月31日より、『レスレリアーナのアトリエ』の運営から離れることが発表されており、次の10~12月期にどのくらいの影響が出てくるのかは注意しておきたいところだ。

家庭用ゲーム大手で強さを見せたのはバンダイナムコホールディングス<7832>だ。この四半期は『ELDEN RING』の大型ダウンロードコンテンツと新作スマホゲームの『学園アイドルマスター』の貢献でデジタル事業が好調だった。また、IPを軸としてトイホビー事業、IPプロデュース事業、アミューズメント事業のすべてが第2四半期累計業績で増収増益となっており、現時点では死角がない状況と言えそうだ。

半面、売上の落ち込みが目立ったのはガンホー<3765>だ。4~6月期は主力の『パズル&ドラゴンズ』が好調に推移したことが大きかったが、この四半期はその反動に加え、『Ragnarok』関連タイトルリリースに関する広告宣伝費が膨らんだことも影響した。

また、ドリコム<3793>は、第1四半期にリリースした新作『悪魔王子と操り人形』が想定を下回り、将来収益の再評価を行い減損処理を実施した(2025年1月31日付でのサービス終了が決定)。ただ、一方で10月15日にリリースした『Wizardry Variants Daphne』が想定以上の推移となっており、10~12月期でのばん回が進むのかどうか注目される。

■採算改善が進むDeNAは『ポケポケ』大ヒットでさらなる飛躍も

この四半期決算では、集計対象企業35社中の19社が増収、16社が減収となり、増収の企業がやや多かった。また、営業利益については、18社が増益(赤字幅の縮小を含む)、17社が減益と増収の企業がわずかに多かった。

業績の好転という評価ではディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>が注目される。中国事業の縮小でゲーム事業の採算改善が進む一方で、日本シリーズに勝利して1998年以来となる26年ぶりの日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズを軸にしたスポーツ事業も順調な推移を見せている。なお、中国事業の縮小で売上が減少していたゲーム事業も次の10~12月期からは『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』が寄与してくる予定となっており、次の四半期の業績動向も大いに注目される。

なお、35社(未発表のMIXIを除く)を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。

増収増益…ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、KLab<3656>、ネクソン<3659>、enish<3667>、コロプラ<3668>、オルトプラス<3672>、カヤック<3904>、Aiming<3911>、アカツキ<3932>、coly<4175>、ワンダープラネット<4199>、イマジニア<4644>、東京通信グループ<7359>、バンダイナムコHD<7832>、マーベラス<7844>
増収減益…サイバーエージェント<4751>、セガサミーHD<6460>、スクエニHD<9684>、コナミグループ<9766>
減収増益…エイチーム<3662>、アエリア<3758>、gumi<3903>
減収減益…、ボルテージ<3639>、グリー<3632>、コーエーテクモHD<3635>、ケイブ<3760>、ガンホー<3765>、ドリコム<3793>、モバイルファクトリー<3912>、マイネット<3928>、アピリッツ<4174>、テンダ<4198>、バンク・オブ・イノベーション(BOI)<4393>、ブシロード<7803>、カプコン<9697>

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高239億7200万円、営業利益26億7600万円、経常利益28億3400万円、最終利益12億8800万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
企業データを見る
株式会社バンダイナムコホールディングス
http://www.bandainamco.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコホールディングス
設立
2005年9月
代表者
代表取締役社長 川口 勝
決算期
3月
直近業績
売上高1兆502億1000万円、営業利益906億8200万円、経常利益1041億6400万円、最終利益1014億9300万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7832
企業データを見る