【インタビュー】「ひみつのアイプリ」開発・運営チームに聞く1年間の振り返り 2筐体同時展開やプリティーシリーズ史上最大ヒットとなった要因も

タカラトミーアーツの展開するアミューズメントゲーム「ひみつのアイプリ」が好調だ。2024年4月の稼動開始から1年が経過したが、シリーズ史上最大のヒット作品である「プリパラ」を上回ったという。アニメ連動のライブ体験に重きをおいた「ひみつのアイプリ」に加えて、マイキャラの育成と交流が楽しめる「アイプリバース」を同時展開するという異例の取り組みだったが、今回、タカラトミーアーツとゲーム開発を担当したシンソフィアにインタビューを行い、この1年を振り返ってもらった。

 

――:よろしくお願いいたします。それで先日の「ひみつのアイプリ リング編」発表会でタカラトミーアーツの近藤社長から「アイプリ」が「プリパラ」を上回ったというお話がありました。1年間の運営を振り返っていただけますか。

タカラトミーアーツ:その記事、すごい話題になっていましたね。プリティーシリーズは10年以上続いているコンテンツということもありたくさんのファンの皆様に支えられてきたのですが、今回の「アイプリ」からファンになってくださった方もたくさんいらして、本当にありがたく思っています。

――:リリース前からこれくらいまで行くという想定はあったんでしょうか。

タカラトミーアーツ:その点は、実際に世の中に出してみないとわからない部分が多分にありましたが、楽しさや認知を広げるために関係会社の皆様といろいろなことに取り組んできました。ゲームは前作に続きシンソフィアさんに開発をしていただき、多くの方に楽しく遊んでいただけるようなものにしたいと頑張ってきましたので、その結果がついてきたのかなと思ってます。

――:2筐体を同時に展開するという取り組みも非常に珍しいかと思います。プリティーシリーズもファンの年齢層が広がり、既存ファンと子供向けなどとターゲットを分けて開発されたのでしょうか。

タカラトミーアーツ:年齢層などターゲットを分けたというわけではなく、「遊び」を分けたというイメージです。「ひみつのアイプリ」に関しては、直感的に遊べてフィジカルな遊びを追求したところがありますし、「アイプリバース」では“マイキャラ”に自分の好みを反映できる…と遊びがそもそも異なっています。つまり、それぞれの筐体で違った遊びを提供しているということです。実際、小さなお子様でも「アイプリバース」で遊んでくださっていますし、遊びの目的に合わせて楽しんでいただける筐体となっております。 

――:ターゲットではなく、遊び・体験で分けたと。2筐体を同時に出すってチャレンジングな取り組みだと思いますが、両筐体はどういったところが人気なんでしょうか。

タカラトミーアーツ:この点は先程申し上げたところと関係していますが、2筐体がそれぞれ持つ楽しさがきちんと機能してお客様に届いているところが良い点かと思います。「ひみつのアイプリ」に関しては、カードを使った直感的な遊びを楽しめる点がちゃんと刺さっているのかなと思います。この点はシンソフィアさんを含めチューニングに力を入れたところです。

さらにカードに関しては、箔やホロを使用したキラキラで豪華な仕様となっており、お客様から欲しいと思っていただけるような品質になっているところが好評いただいております。

 

「アイプリバース」に関しては“マイキャラ”作りが好評です。自分の好きなキャラを作ってコーデを組み合わせてできた自分だけのキャラ“マイキャラ”をプリフォトにプリントして入手できるというところが皆さんに楽しんでいただけているようです。

あと、WEBサービスであるマイキャラルームでご自身の“マイキャラ”を披露して、お互いのキャラを褒め合ったり、SNS上で見せあったりされているようですね。

 

――:リリース前に事前にプレイできる体験会のようなものを店舗でされていたかともいますが、状況はいかがでしたか。

タカラトミーアーツ:プレリリースイベントですね。全国94店舗のアイプリステーションで24年3月末に実施しました。プレイベントということで、多くのお子様に遊んでいただきましたが、納品したカードがそれほど多くなかったので、店舗によってはすぐに完売してしまいました。ただ、遊ばれたお客様からの良い評価をいただけました。

――:カードを触ってみて思ったのですが、TCGのカードなどに比べて、カード類は厚めにしっかりつくられていますね。

タカラトミーアーツ:はい。お子様向けのカードですので、多少頑丈に作る必要があるためですが、筐体で排出されてモノ感といいますか、手触り感が良いものに仕上がったと思います。

――:運営されている中で気をつけたことやこういうことは絶対にやりたかったところなどはありますか。

タカラトミーアーツ:運営に限らずゲーム作りを含めてですが、誰もが楽しめることが大事だと思っております。お子様はもちろん、これまであまりゲームで遊んだことがない、親御さんにもゲームの内容が伝わって楽しんでいただけることを大事にしております。これはゲームもそうですし、プロモーションでも同じです。

また、深みなどはなくすつもりはなくて、シンプルでわかりやすく、ということは大事にしております。このあたりの説明はなかなか難しいのですが、過度に低年齢層向けにしすぎないといいますか、ゲームとして浅くするのではなく深みを伸ばしたうえで伝えやすく、わかりやすくする、ということを念頭においています。

――:先ほどユーザーコミュニティやコミュニケーションに関しては少しお話がありましたが、それ以外に何かやってらっしゃることってありますか?

タカラトミーアーツ:我々としての取り組みは先ほどお話したところですが、ゲームセンターの店舗さんで自主的に取り組んでくださってるところがあります。筐体の装飾や、キャラのスタンディを店舗さん自身で制作されています。それをみるために多くの方が集まって、さらに特別な場所になっているように思います。

――:タカラトミーグループとしての連携が強いように感じましたが、実際はどうだったんでしょうか。

タカラトミーアーツ:タカラトミーに限らず、アニメや関連商品など多くのパートナーさんにご協力をお願いして一緒に取り組んでおります。タカラトミーも玩具分野での強みを活かして商品化を行っていますし、多くのライセンシーさんにも興味を持っていただき、盛り上がりにつながっております。

――:話は少し変わって、筐体に関して想定よりも多く遊んでもらっているのかなと思ったのですが、カードの完売で遊べないというお話もちらほら見ました。実際はどうだったのでしょうか。

タカラトミーアーツ:カード不足についてはお客様に大変ご迷惑おかけしました。おもちゃショーやイベント、各種のコラボレーションを経てお客様が急激に増えてカードの供給が追いつかなくなってしまったところがあると思います。お客様にご迷惑をおかけしたことには変わりはありませんので、真摯に受け止めて対応してまいります。

――:遊んだユーザーからのフィードバックなどはあったんでしょうか。

タカラトミーアーツ:はい。イベント会場やお問い合わせなどからご意見やご要望をいただくことはありますが、イベントや店頭でのお客様の反応を拝見しながら、良かったところや、改善すべきところをまとめています。

また、定期的にアンケートなども行って、お客様からのフィードバックを直接吸い上げてどういう状況にあるのか、どういう点を楽しんでいただいてるのか、といったところも確認させていただいています。

アンケートの自由回答のところでは様々なご意見をいただくことがあるので、それも見ながら、シンソフィアさんと協議して説明のわかりやすさやゲームの難易度調整など改善点を随時修正しながら運営を行っています。

シンソフィア:フィードバックとは違いますが、小さなお子さんが手を伸ばしてリズムゲームが楽しめるか、衣装の要素など、リリース前にすごくチェックしましたね。ちゃんと合格できるのかとバランスのチェックにも力を入れました。実際にリリースされて、楽しく遊んでいただいているのをみるとすごく良かったと思いました。

また、昨年夏に行われた「おもちゃショー」や「ガールズコミックフェス」に出展したとき、多くの方がいらっしゃっていて本当に感動しました。あのときは「アイプリ」がスタートしてからまだ 3〜 4 ヶ月が経過したタイミングでしたが、こういった反響は本当に嬉しかったですね。

タカラトミーアーツ:「おもちゃショー」はすごい行列で驚きましたね。「アイプリ」初年度なので、どういった反応があるのか、どれくらいの方に来ていただけるのか半信半疑でしたが、蓋を開けてみると多くの方にお越しいただきました。ブースを囲むような形で行列ができましたが、これは「プリパラ」以来でした。「プリマジ」など、コロナ禍などもあって思うような展開ができない時期がありましたが、「おもちゃショー」の列をみたとき、新たなプリティーシリーズをすごい形で展開できたなと感じました。

――:筐体ビジネスですし、コロナ禍の影響は非常に大きかったですよね。

タカラトミーアーツ:はい。我々のやっていることは変わらなかったのですが、店舗が閉まっていたり、お客様の外出機会が減ってしまったりしました。イベントをやる際、どうしても感染症の対策も必要でしたが、ここ最近はお客様もイベントなどに参加しやすい状況になってきたと思います。

――:アニメとゲーム、玩具を同時に展開するって非常に難易度が高い仕事ですよね。2筐体を同時に出すとなるとなおさらです。業界の取材をしていても、ゲームとアニメを同時に出すつもりだったけど、どこかが遅れてしまって機会損失になったという話をよく聞きます。

タカラトミーアーツ:私どもとしても正直、難易度は高いと思います。それぞれの企画、制作開始から完成までにかかる期間が異なっていますし、全て足並みをそろえてローンチするのは非常に難しいです。今回、皆様のご協力もあって24年4月に全て立ち上げることができたというところが大きかったと思います。ゲームに関してはシンソフィアさんのおかげです。

シンソフィア:今回は大変でしたね。「アイプリ」チームとして2筐体の開発に取り組んだのは初めての経験でした。1つのラインで2個のゲームを作るのとは少し違った感じなのですが、それぞれの機器やゲームプレイ、体験のイメージを作るところから始めました。モニターの反応を見ながら調整して開発を進め、最後に形になってチューニングは喧々諤々と主張が飛び交い、いい形で落とし込めたと思います。特に「アイプリバース」の方はプレイ感はどうかなと少々心配していましたが、「プリマジ」以前から遊んでいただいている方にも楽しんでいただけて嬉しかったですね。

 

タカラトミーアーツ:あと、弊社とシンソフィアさんで世界観やキャラクターなどの設定を色々と作り込みましたので、なるべく早くパートナーさんに展開していくところにも気をつけました。

シンソフィア:プリティーシリーズはオリジナルのキャラですし、ゲームの素材が発信点になりますので、そのあたりの作り込みはしっかりやってからスタートになります。我々としても頑張りました。

――:オリジナル作品だと設定も細かく作り込んだつもりでも、パートナーさんから予想外の質問や確認がくるでしょうし。ここで基本的なことで申し訳ないのですが、筐体ゲームは、スマホゲームとかコンソールゲームとはまた違った方法論や難しさがあると思うのですが、どういったところがありますか。

タカラトミーアーツ:ゲームとしての相違点は、より大きい筐体で遊ぶところにあります。ご自宅では難しい、フィジカルな操作や体験が得られるところが違います。ご家族で楽しめば特別な体験になるところがアミューズメントゲームの楽しさでもあると思います。

また、カードを画面上で物理的に動かすというのは、他のゲームではできない体験だと思いますし、お子さんによっては本当に曲に合わせて歌ったり踊ったりしながら遊んでいる方もいらっしゃいました。そういった意味でも自宅ではできない体験を提供したいと思っています。

シンソフィア:そうですね。家で遊ぶゲームと異なり、アミューズメントゲームで遊ぶということはある種のイベントです。モニターであれば自宅の方が筐体よりも大きいという方もいらっしゃるでしょうし、もっと高性能なゲームで遊んでいる方もいらっしゃるはずです。今日、ゲームセンターに行って遊んで楽しかったという特別な体験を提供することが大事だと思います。

タカラトミーアーツ:そうですね。お休みの日に、家にいる時からアイプリしに行くところから楽しいが始まって、帰り道でご家族と「アイプリ楽しかったね」「好きなキャラのカードが当たってよかった」「今日は上手にできた」などと話しながら帰っていただく…といったところが1番違うところですし、我々にとってもやりがいがあるところかなと思います。

――: 2 年目に入っての抱負を。

タカラトミーアーツ:「ひみつのアイプリ」については、リングシリーズを 2年目に入る月から稼動させていただきましたが、1 年目で大事にしていたシンプルさ、わかりやすさ、直感的な操作は大事にしつつ、演出面においては「バズリウムチェンジ」について、そのキラキラ感がアップしたり、いろいろなバリエーションを増えたりといったところがあります。パワーアップした演出には是非ご注目いただきたいと考えております。

シンソフィア:「バズリウムチェンジ」と「バズリウムライブ」は、うまくゲームができた人だけが体験できる特別な演出なんですけど、お子様にとって今まで生きてきて 1番キラキラしたものをお見せしようと思って丹精込めて作りました。その後の人生がキラキラしたものになると思って遊んでいただければと思います。

――:アイプリバースに関してはいわゆるチュートリアル的な機能ですか。

タカラトミーアーツ:そうですね。ざっくり言うとチュートリアルのような感じで、主人公の1人である「星川みつき」が「ここはこうやって遊ぶんだよ」と説明してくれる機能です。

あとは先程お話にも出ましたが、アニメや玩具と足並みを揃えて展開するところは難易度が高いながらもすごく頑張っているので、引き続き 2 年目も足並みを揃えて頑張っていきます。とはいえ多くはまだ明かさないですけど、プロモーション的なところでも多方面で展開していきたいと思っています。そこもご期待いただければと思います。

お子様を始めとして多くのお客様に遊んでいただいているということは実感しています。また、イベントを開催すると多くの方に集まっていただいています。特に「アイプリちゅ~ぶ」上で活躍している「ひみつのアイプリ部」のメンバーがステージに上がると、お子様が集まってくれますし、一緒にステージ踊ってくださっているのをみると、「アイプリ」をやってよかったと思いますし、我々自身も元気をチャージしておりますので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。引き続き楽しいゲーム体験やイベントを多くの方に届けていきたいので、今後期待いただければと思います。

 

© T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / AP製作委員会

 

株式会社タカラトミーアーツ
http://www.takaratomy-arts.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社タカラトミーアーツ
設立
1988年2月
代表者
代表取締役社長 近藤 歳久
決算期
3月
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シンソフィア

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シンソフィア
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