バンダイナムコHDとソニーGが戦略的業務提携 マンガ・アニメ中心にIPファンコミュニティ拡大とエンゲージメント強化を目指す KADOKAWAとの提携の比較も

バンダイナムコホールディングス<7832>とソニーグループ<6758>は、この日(7月24日)、戦略的業務提携を行うことを明らかにした。ソニーグループはバンダイナムコホールディングスの株式1600万株を約680億円で取得し、発行済株式総数の約2.5%を保有する株主となる。
ソニーグループは、昨年12月、KADOKAWA<9468>と戦略的資本業務提携を行ったことが記憶に新しいが(関連記事)、今回の業務提携と出資を通じて、両社は急速な市場拡大が期待できるアニメ領域を中心に、世界中のアニメ・マンガなどのIPファンのコミュニティの拡大とエンゲージメント強化に注力するとともに、日本を代表するエンターテインメント企業である両社の強みを融合して、ファンにとって新たな感動体験を提供する機会や場を創造し、IP価値の最大化を図っていく。
バンダイナムコとソニーはこれまでも主にゲームやアニメ、音楽などの領域においてさまざまな取り組みを重ねてきたが、今後、より幅広い領域での協業を行う。
バンダイナムコが展開する IP の作品や商品・サービスを、アニメをはじめとする映像制作や配信、マーチャンダイジングなどのソニーのチャネルで展開するほか、アニメ・マンガなどのIPの共同開発および共同プロモーションや、体験型エンターテインメントにおける企画・技術協力など具体的な検討を進めていく。
加えて、エンターテインメント領域の技術やサービスの共同開発・運用を通じたクリエイターの支援や、ファンエンゲージメント領域における共同出資や業務提携などにも取り組んでいく。
■株式会社バンダイナムコホールディングス 取締役副社長 桃井 信彦氏
バンダイナムコグループは、IPの魅力や世界観を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして、最適な地域に向けて展開することでIP価値の最大化を目指す「IP軸戦略」を推進しています。ソニーグループの幅広いエンターテインメント領域における強みや技術力と、バンダイナムコのIP軸戦略が掛け合わされることで、新たなエンターテインメントを創造することができると感じ、わくわくした気持ちでいっぱいです。今回の協業を通じ、世界中のIPファンとつながり、ともに未来を共創し、パーパス「Fun for All into the Future」と中長期ビジョン「Connect with Fans」を実現していきたいと思います。
■ソニーグループ株式会社 代表執行役 CSO 御供 俊元氏
この度のパートナーシップを通じて、多様な IP を軸とした 360 度展開や国内外のリアルなタッチポイントでのファンとの深い結びつきを強みに持つバンダイナムコグループとともに、期待を超えるさまざまなコンテンツや体験を共創し、より多くのファンに感動を届けていきたいと考えています。両社が持つエンターテインメント領域での強みを掛け合わせ、魅力ある IP のポテンシャルを引き出すことで、ソニーの長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の実現に向けた IP 価値最大化の取り組みをより一層加速させていきます。
なお、昨年12月に発表されたKADOKAWA<9468>との提携との比較表も掲載しておく(16:22追記)。
| 比較項目 | バンダイナムコHDとの提携 | KADOKAWAとの提携 |
| 提携の内容 | ・アニメ・マンガIPの共同開発・共同プロモーション ・Sonyの映像制作・配信・マーチャンダイジングチャネルでの商品展開 ・体験型エンタメの企画・技術協力やクリエイター支援 |
・コンテンツ領域での共同出資・新クリエイター発掘・IPメディアミックス共同推進 ・実写映画・ドラマ化、アニメ共同制作 ・KADOKAWAアニメのグローバル配信拡大、ゲームパブリッシング強化 ・バーチャルプロダクション人材育成 |
| 提携の目的 | ・急拡大するアニメ市場でのIPファンコミュニティ拡大・エンゲージメント強化 ・日本を代表するエンタメ企業同士の強み融合による新たな体験創出、IP価値最大化 |
・KADOKAWAの多彩なIP創出力とソニーのグローバル展開力を組み合わせ、IP価値の最大化を図る ・KADOKAWAは約497億円を調達し、新規IP開発・コンテンツ取得や海外流通強化に充当 |
| 出資内容 | ・ソニーがバンダイナムコHDの既存株主から株式1600万株を約680億円で取得 ・取得後の保有比率は約2.5% |
・KADOKAWAの第三者割当増資でソニーが新株1,205万株を約500億円で引受 ・引受後のソニー持株比率は約10%(既保有分含む) |
■記者の視点
ソニーグループとバンダイナムコホールディングスとの戦略的業務提携には驚いた人も多いかと思う。アニメやマンガなどのIP開発や展開を共同で行っていくことは注目すべきことだが、記者は、「体験型エンターテインメントにおける企画・技術協力」にも注目すべきと考えている。
ソニーグループが今年5月に開催した経営方針説明会で、ロケーションベースエンタテインメント(LBE)の重要性を強調していた。「鬼滅の刃」や「Spider-Man」のイベントを開催し、IPを広げるためには非常に有効なツールであると気づいたという。
経営方針説明会で十時裕樹社長は「世代を超えて愛されるIPを作り出すためには家族で出かけた経験といった要素が重要になる」と述べ、LBEについては将来的にはテーマパーク化なども念頭に置いていると述べていた。
他方、バンダイナムコホールディングスもバンダイナムコアミューズメントからアミューズメント機器事業を新設したバンダイナムコエクスペリエンスに移管し、アミューズメント施設事業に特化することになった。アミューズメント施設やガシャポンの専門店だけでなく、体験型施設バンダイナムコ Cross Storeも展開している。
ちょうど7月22日、ポケモンの常設型のテーマパーク『ポケパーク カントー』が発表となった。両社の協力は、当面は店舗系の施設が中心になるだろうが、いずれソニーグループとバンダイナムコグループが保有するIPを活用したテーマパーク構想が出てくることも期待したい。
会社情報
- 会社名
- 株式会社バンダイナムコホールディングス
- 設立
- 2005年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 浅古 有寿
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1兆2415億1300万円、営業利益1802億2900万円、経常利益1864億7000万円、最終利益1293億100万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 7832
会社情報
- 会社名
- ソニーグループ株式会社
- 設立
- 1946年5月
- 代表者
- 代表執行役会長 吉田 憲一郎/代表執行役社長CEO 十時 裕樹
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高及び金融ビジネス収入12兆9570億6400万円、営業利益1兆4071億6300万円、税引前利益1兆4737億2600万円、最終利益1兆1416億円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 6758