
ASUS JAPANは、10月16日に発売する予定のポータブルゲーム機「ROG Xbox Ally」と「ROG Xbox Ally X」のメディア向け発表会を東京都内で開催した。発表会では、ASUSだけでなく、マイクロソフトXboxチームやAMDのキーパーソンも登壇し、製品の主な特徴や機能を紹介していった。この記事では発表会の模様をレポートしていこう。
【主な内容】
■「ROG Ally」のこれまでの展開
■進化した「ROG Xbox Ally」は高性能と省電力を実現
■「ROG Xbox Ally」シリーズに搭載されたAMDのプロセッサー
■ROG Xboxシリーズの開発背景
■Asusとマイクロソフトとの取り組み
■冷却システムと充実したアクセサリ
■「ROG Ally」のこれまでの展開
ASUS JAPANコンシューマービジネス事業部 統括部長 David Chu氏が開会の挨拶をした後、「ROG Ally」のこれまでの展開について紹介した。

「ROG Ally」は、ASUSが2023年に日本市場に投入したポータブルゲーム機だった。「すべてのゲームを手のひらで」をコンセプトに、AAAタイトルからカジュアルゲームまであらゆるゲームをより手軽に楽しめるよう設計したという。発売に至るまでには、約5年の開発期間を要したそうだ。
「ROG Ally」には3つの利用スタイルがあるという。1人で楽しむ「Me Time」、家族や友人とリビングで楽しむ「We Time」、そして、外付けGPUを接続してデスクトップゲーミングPCとして使う「Pro Time」だ。
「ROG Ally」は、様々なプラットフォームのゲームを1台でまとめて遊べる「オープン」な設計が、日本のユーザーにも広く受け入れられた。ユーザーからの意見やフィードバックもあり、それをもとに改善を行ったのが2024年に発売した新モデル「ROG Ally X」だった。
「ROG Ally X」では、
・AAAタイトルをよりスムーズにプレイできるよう メモリを24GBに強化
・80Whの大容量バッテリーを搭載し、駆動時間を延長
・ユーザーからの声を反映し、ジョイスティックやDパッドの位置を最適化
といった点の機能強化を図った。これらのアップグレードにより、ユーザーから高く評価され、ポータブルゲーミングデバイス市場において強い存在感を確立することに成功し、日本ではナンバーワンのWindowsハンドヘルドPCとなった。PCゲーマーだけでなく、コンソールゲームのプレイヤーからの支持を集めている。

■進化した「ROG Xbox Ally」は高性能と省電力を実現
続いてマーケティング部 PRマネージャー 藤原 拓馬氏が新製品を説明した。2025年、新たな挑戦として Microsoftとパートナーシップを締結し、「ROG Xbox Ally X」と「ROG Xbox Ally」を発表した。ROG Ally本体のハードウェア設計から、WindowsやXboxアプリのUIに至るまで緊密に連携し、共同開発を進めてきたとのこと。その結果、細部にまでこだわった、より洗練された体験を実現した。

新製品について、ROGとXboxが生み出した、かつてないポータブルゲーム機とし、従来のROG Allyのコンセプトを継承しつつ、さらに進化したという。自分に合ったプレイスタイルで、いつでもどこでもゲームを楽しめる。これまでAllyを愛用してきた人だけでなく、これから手に取る人にも最適な製品になっていると自信を示した。
これまでのAllyシリーズは、各世代で1つのスペック構成だけを展開してきたが、今回、両社が共同開発するにあたり、ユーザーがポータブルゲーム機に求めるものを改めて調査した。その結果、ユーザー層は大きく高性能なスペックを求めるユーザーとスペックにはこだわらず、カジュアルに楽しみたいユーザーに分かれると認識したそうだ。

そこで、2つのモデルを用意した。
・ROG Xbox Ally X:AAAタイトルをより多く楽しみたいユーザー向けのプレミアムモデル
・ROG Xbox Ally:カジュアルゲームに最適化したモデル

この新シリーズを支えるのは、ポータブルゲーム機向けに最適化された最新の AMD Ryzen Z2シリーズ・プロセッサー。高性能でありながら省電力性に優れており、長時間のプレイを可能にする。
上位モデルの「ROG Xbox Ally X」には Ryzen AI Z2 Extreme プロセッサー を搭載し、内蔵NPUは50TOPSを誇り、AI処理にも対応している。一方、ライトモデルには省電力性を重視した Ryzen Z2 A プロセッサー を搭載。どちらも用途に応じた最適な性能を発揮する。
「ROG Xbox Ally X」では省電力性に優れたサイレントモードに設定すると、前世代の「ROG Ally X」のパフォーマンスモードに設定した場合のゲーム性能と同等という結果になるなど、省電力化と性能向上を実現した。少ない電力供給で前世代の「ROG Ally X」に匹敵する性能を実現しており、外出先でもパフォーマンスを落とすことなく長時間プレイできるようになった。電源に接続した場合はさらに高いパフォーマンスを発揮する。

これ以外にも、長時間プレイしても疲れないようなXbox コントローラーとの融合や、新しいXBOXアプリの開発、Windowsのコンソールを開発して導入した。ゲームのキャプチャーの保存や、XBOXアプリ内のフレンドとのチャット、音声通話などもシームレスにできるようになった。


「ROG Xbox Ally X」と「ROG Xbox Ally」は、ゲームプレイに最適化された新しいAMD Ryzen Z2シリーズと、プロセッサに再摘花されたXBOXエクスペ入りエンス、カスタマイズされたWindowsOSにより、圧倒的なゲーム体験を得られるとまとめた。
■「ROG Xbox Ally」シリーズに搭載されたAMDのプロセッサー
ここからは、日本AMD株式会社 代表取締役副社長 アジアパシフィック クライアントビジネスディレクターの 関 路子氏が登壇し、新しい「ROG Xbox Ally」シリーズに搭載されたプロセッサーを紹介した。

関氏は冒頭、Microsoft、ASUSと共に新しい「ROG Xbox Ally」製品について、プロセッサーの観点から協業できたことに謝意を述べた後、世界的に拡大するポータブルゲーミングデバイスへの需要と課題を説明した。
その主な課題は、「高性能を追求すると本体が重くなる」「サイズが大きくなる」「バッテリー駆動時間が短くなる」というものだった。今回の新製品は、AMDのプロセッサーがそれらの課題を解決できたと自負しているという。
AMDのプロセッサーは、高性能なハンドヘルドゲーミングデバイスにおいて、「ハイパフォーマンス」と「スピード」を実現しつつ、長時間プレイを可能にする「バッテリーライフ」にも配慮しているという。今回、上位モデルの「ROG Xbox Ally X」には AMD Ryzen AI Z2 Extreme プロセッサーを搭載した。このチップには以下の特徴がある。
・GPUコア:RDNA 3.5世代のグラフィックスコアを16基搭載
・CPUコア:合計8コア(高性能コア3基、省電力コア5基)/16スレッド
・可変TDP:15W〜35Wの範囲で調整可能
・NPU:50TOPS以上の演算性能を持つ内蔵AIプロセッサーを搭載

このNPUは、ハンドヘルドデバイスとしては初めて搭載されるレベルの性能を誇るという。すでにAIによるアップスケーリングなどの機能に対応しており、今後はゲームタイトルにも幅広く活用されることを期待している。
一方、ライトモデルの Ryzen Z2 A プロセッサー は、省電力性に優れており、長時間のバッテリー駆動や小型軽量化に貢献するものとなった。
・GPUコアは8基
・CPUコアは全て省電力設計
・TDPは6Wから対応可能

Ryzen Z2シリーズは、ExtremeからAモデルまで幅広いバリエーションを用意している。GPUコア数やCPUコア構成、スレッド数、TDPレンジを柔軟に調整可能で、ゲーミングデバイスから省電力モバイル機まで、あらゆるニーズに応えることができるという。AMDは、今後もポータブルデバイス向けプロセッサーの開発を加速させ、ASUSをはじめとするパートナーの製品に貢献していきたいと述べて、プレゼンテーションを終えた。

■ROG Xboxシリーズの開発背景
続いてROG製品のプロダクトマネジメントディレクターであるガブリエル・メン氏が新しいROG Xboxシリーズの開発背景を説明した。

今回発表した新シリーズについて、メディアやコミュニティから熱意あるポジティブなエネルギーがもらえたとし、開発チームとして「大きな力をいただいたことを改めて感謝申し上げます」と述べた。自身は、開発者であり、ゲーマーでもあるとしながら、ゲーマーとしてその夢を実現するデバイスを作ることを目指したと明かした。
同社では、ユーザーコミュニティからのフィードバックを非常に重視しており、その声を真摯に受け止め、製品開発に活かしてきたという。2024年には「もっと性能が欲しい」「バッテリーを長寿命化してほしい」「ストレージを大容量にしてほしい」「冷却性能を高めてほしい」「カスタマイズの自由度を広げてほしい」といった声があったという。

2025年モデルでは、こうした要望をすべて結集し、ゲーミングからソフトウェア、パフォーマンス、ハードウェアに至るまで、あらゆる領域で「最高の体験」を提供できるデバイスを追求した、としている。「体験は、デバイスを手に取って電源を入れた瞬間から始まる」という考えからユーザーがゲームに集中できるよう、余計な操作は可能な限り自動化し、バックグラウンドで処理することを目指した。

そのためには、パフォーマンスの最適化、バッテリー寿命の改善、UI/UXの柔軟性やカスタマイズ性の向上が不可欠だった。今回のROG Xboxシリーズは、まさにそれを実現したという。
そして、Microsoft Xboxチームと協力し、ゲームパッドやナビゲーションの新しいエコシステムの構築にも取り組んだ。ROGとXboxの強みを結集し、よりシームレスなゲーム体験を提供できるようにした。これにより、ハンドヘルドデバイスでありながら、まるでコンソールのようなダイナミックな体験が可能になった。ユーザーが普段から慣れ親しんでいるXboxフルスクリーンUIを取り入れることで、自然で直感的な操作を実現した。

最後に、「これからもゲーマーの夢を叶えるために、イノベーティブな製品を作り続けてまいります」と述べて締めた。
■Asusとマイクロソフトとの取り組み
続いてマイクロソフトXboxチームよりシニアプロダクトマネージャーの ドミニク・ゴードン氏が登壇し、パートナーシップや新しい機能を説明した。「ROG Xbox Ally X」 および 「ROG Xbox Ally」について、6月に情報公開を始めた際、ゲーミングコミュニティから大きな反響があったと明かした。

ASUSとの協業を始めた経緯は、非常に自然な流れだったと振り返った。ASUSとポータブルゲーム機についての話し合いを重ねる中で、「別々に開発するよりも、協力した方がユーザーにもっと良い体験を提供できる」と確信したという。そこで、Xboxの強みとASUSの強みを融合させるプロジェクトがスタートした。
マイクロソフトでもユーザー調査を行い、数多くのフィードバックを得たという。その中で多かったのは、「ハンドヘルドであっても、Xboxコンソールと同じような体験を求めていること」、そして「Windows環境における使いやすさを改善してほしい」といったことだった。
こうした声を受けて、ハードウェアとソフトウェアの両面で改善を進めた。ハードウェアの工夫では、Xboxらしい操作感を追求した。グリップ形状を見直し、握りやすさを向上させるだけでなく、Xboxユーザーが慣れ親しんだ A/B/X/Yボタンの搭載、Xboxボタンでゲームやユーティリティに素早くアクセス可能、インパルストリガーを搭載し、より深い没入体験を実現などを行った。

また、ソフトウェア面では「Xboxらしいフルスクリーン体験」を導入した。「ROG Xbox Ally」を起動すると、すぐにフルスクリーンのXbox UIが立ち上がる。まるでコンソールを起動したときと同じ感覚が得られる。さらに、SteamやEpic Games Storeなど複数のゲームストアを横断して1つの統合ライブラリにまとめる仕組みも搭載した。クラウドゲーミングにも対応し、別のデバイスでプレイしていたゲームの進行状況を、そのまま「ROG Xbox Ally」でも引き継ぐことができる。
このほか、新たに「互換性バッジ制度」を導入した。各ゲームの詳細ページに「ハンドヘルド最適化」または「ハンドヘルド対応」というバッジを表示し、ユーザーが一目で確認できるようにしている。PCゲームの約85%がいずれかのバッジに対応しており、安心してプレイできるという。
・最適化バッジ:解像度、UIサイズ、操作性など、ハンドヘルドで違和感なく遊べるゲーム
・対応バッジ:一部設定を調整すれば快適に遊べるゲーム
日本は世界でも有数のハンドヘルド市場であり、非常に熱心なゲーマーが多く、マイクロソフトにとって特別な市場と捉えているという。実際に製品を手にとって体験し、ぜひXboxらしい新しいポータブル体験を味わってほしいと呼びかけた。

■冷却システムと充実したアクセサリ
最後にAsusの藤原氏が再び登壇し、新しいROG Xboxシリーズをさらに快適に使用するための機能とアクセサリーを紹介した。
【冷却システムとディスプレイ】
ROG Xboxシリーズには、独自の冷却技術 「ROG Intelligent Cooling System」 を採用している。どの角度でプレイしても冷却性能を損なわないように設計されており、本体を効率的に冷却する。さらに、ダストフィルター を搭載し、内部へのホコリの侵入を防ぐ。ディスプレイは 7インチ フルHD、120Hzリフレッシュレートに対応している。スムーズな描画でゲームプレイをサポートする。


【接続性とアクセサリー】
インターフェースも充実している。
・USB4ポートにより高速なデータ転送が可能
・充電しながら周辺機器に接続可能
・HDMIやLANポートを備えた専用ドック「ROG Bulwark Dock BG300」も用意
・専用ケースもラインナップ。持ち運びが容易で、ACアダプタやSDカードを収納でき、スタンドとしても使用可能。背面のガジェットポーチは取り外して単体で使うこともできる。


【発売日と展開】
新しい ROG Xboxシリーズは、2025年10月16日に発売する予定。ASUS公式オンラインストアをはじめ、家電量販店各社で取り扱いを開始する。さらに、発売を記念して10月16日以降の週末にはイベントも開催する。詳細は ROG Japan公式X(旧Twitter) にて随時発表する。

なお、発表会終了後には実機での体験会も行われた。『FINAL FANTASY VII REBIRTH』や『ELDEN RING NIGHTREIGN』『ストリートファイター6』『Virtua Fighter 5 R.E.V.O.』などのインストールされた実機が展示されていた。3Dのゲームでどういった挙動を見せるのか確認してみたところ、概ねスムーズに動作していた。

▲ライトモデルである「ROG Xbox Ally」でも『ELDEN RING NIGHTREIGN』はスムーズに動作していた。格闘ゲームなどもコンボも出しやすかったという。排熱口から暖かい風が出ていたが、手に当たることはないため、プレイしている分には気にならない。


▲『FINAL FANTASY VII REBIRTH』での動作状況も簡単に確認できた。こちらも問題なく動作していた。パフォーマンスモードでは温度が76℃だったが、サイレントモードにすると57℃に急低下した。排熱風の温度も体感ではっきりと分かるほど下がった。高温の場面では火に囲まれて赤くなっているが、意図した演出ではなく、ただの偶然である。

▲歴代の「ROG Ally」シリーズが展示されていた。
試遊会の現場では、ゲームデバイスとしてはどちらのモデルも非常に良好なプロダクトであると好印象を受けた人が多かったようだが、価格がどうなるかも話題になっていた。他のライターとは、上位モデルは15万円を切るかどうかがポイントではないか、15万円を下回る設定であればかなりの売れ行きが期待できるのではないか、と話していたものだった。ただ、当日は価格の発表がなかったので、評価のしようがなかった。
そして本日9月26日、予約開始のアナウンスとともに、希望小売価格については、「ROG Xbox Ally」が8万9800円、「ROG Xbox Ally X」が13万9800円になることが明らかになった。記者個人では15万円を超えるかもしれないとみていたので、この価格設定はサプライズであった。これに対して他メーカーがどう動いてくるかが注目されるが、ハイエンドモデルであってもかなりの売れ行きが期待できるのではと感じた次第だ。