
皆さんの中に、これまで「ポイ活アプリ」を利用したことがあるという方はどれくらいおられるだろうか? 特に、ゲームを遊びながらポイ活ができるタイトル、ということであればゲーム業界に身を置く者としても決して切り離せない場所にあるジャンルだ。
しかし、筆者も含めコアなゲームプレイヤーであるほど「本格的なゲームではない」、「作業感が強い」というイメージがあるのもまたポイ活アプリの一面だろう。LINEヤフーでは、そんなポイ活アプリをよりカジュアルに、楽しみながら遊べるものとして取り扱っている。そして、そのポイ活アプリの利用者が今、急増し市場がぐんぐんと広がっているというのだ。そこで今回、LINEヤフー コンテンツ&メンバーシップドメイン ゲームSBU ADビジネスユニットの増田智也氏に、同社におけるポイ活アプリの事情や、このタイミングで伸長している理由など具体的なお話を伺ってきた。
――:まず始めに、増田さんがLINEヤフーでどのようなことをされているのか、自己紹介をお願いします。
増田智也(以下、増田氏):ゲームSBUの中にあるADビジネスユニットでユニットリードをしております増田と申します。こちらは、ゲーム領域における広告全般を統括する部署になります。
今回お話する『LINEポイゲ』や『LINE WALK(ライン ウォーク)』に限らず、弊社の主要タイトルでも広告収益をいただいておりますので、その運営管理をしております。また、自分たちでプロダクトを立ち上げるという部分で『LINEポイゲ』や『LINE WALK』といった事業を推進しています。
最後にもうひとつが、デジタルマーケティング、いわゆる集客の部分で『LINEポイゲ』を軸にインハウス化を進めています。
――:御社でポイ活アプリをリリースすることになったきっかけを教えてください。
増田氏:4年ほど前になるのですが、その頃はハイパーカジュアルがグローバル的にかなり流行している時期でした。我々LINE GAMEとしても、カジュアル領域には強いという自負がございますので、ここに挑戦しない理由はないだろうというところでプロジェクトが始まりました。
ただ、グローバルが主戦場になった際、GDPR(EU一般データ保護規則)のような海外の法律に対応しなければいけなくなった時にハイパーカジュアルの利点である、高速に大量生産していく体制が作れず苦戦していました。そんな中、何とか国内だけでも成功できないかと考えてLTVを上げるために実利報酬を上げるという手段を取ったんです。なので、最初からポイ活市場を狙って参入したわけではなく、ハイパーカジュアルを国内で事業として成立させようと考えた結果、ポイ活アプリに行き着いたという経緯があります。
――:そもそもLINEヤフーにおける“ポイ活アプリ”とはどのようなものになっているのでしょうか?
増田氏:「ポイ活」というワードだけを取ると、かなり広義的に捉えることができます。イメージとしては「〇〇円分購入すると〇%還元」といったものが強いかもしれませんが、我々はそうではなく、よりカジュアルなポイ活というところを定義付けさせていただいております。
具体的に述べますと「楽しみながら・遊びながら・移動しながら」という範囲で無理せず少しずつポイ活ができるというものになります。こちらの市場が広がってきているという体感もありますので、『LINEポイゲ』や『LINE WALK』で開拓しているというのが現状です。
――:今、ポイ活市場が伸びている理由はどういったところにあるとお考えですか?
増田氏:景気に大きく左右されるジャンルではありますので、やはり物価高が起因しているのではないでしょうか。誰もが「どこかで節約したい」と考える中、ポイ活という状況がマッチしたのだと思います。
――:利用されるユーザー層も通常のデジタルゲームとは異なったりするのでしょうか?
増田氏:年齢的には、10代と40~50代が多いです。特に、10代はLINE GAMEでも多くは取り込めていなかった層なのですが、ポイ活という文脈が触れるきっかけになったのかなと考えております。あとは、もちろん普段からゲームを遊ばれている方も多いのですが、そうではなくポイ活という部分から利用いただけている層も数多くいらっしゃるのが特徴的ですね。
ユーザー様からの声で面白いなと感じたのは、お子様にゲームを遊ばせるならポイ活もできた方が良いという意見があったことです。特に狙ったわけではないですが、親子間でWin-Winな関係が作れているのだなと思いました。
――:マーケティングに関しては口コミが中心になるのでしょうか?
増田氏:そうですね。仰る通り、ポイ活サービスと口コミというのは非常に相性が良いです。現状はデジタルマーケティング中心で、まだ口コミで広がる仕組みがまだ完全には出来上がっていないので、今後はバイラル効果が期待できる機能を実装していきたいと考えています。
――:御社でポイ活アプリを作る際に重要視されているポイントについてもお聞かせいただけますか?
増田氏:誰もが楽しめる、とにかく幅広い層に刺さる作品にしたいという部分はブレずに抱いております。昔から廃れることがない数独やジグソーパズルのような、王道なものには王道たる所以がありますので、そういったものが相性は良いのかなと考えております。
――:普通のデジタルゲームを作られるのと異なるところはありますか?
増田氏:基本的には同じなのですが、ひとつのタイトルに集中して長く続けていくのではなく、どんどんラインナップを増やしていくことを是としています。
――:交換できる景品など、他の企業との連携も必要な部分があると思いますが、その辺りの仕組みはどのようになっているのでしょうか?
増田氏:そういった意味では、ラインナップを拡張していくことに重きを置いているわけではありません。今は、グループ会社である「LINE マンガ」と連携してコインを貯められるようにするなど、今後もLINEヤフーグループが持つアセットと報酬連携をしていきたいとは考えています。その結果、『LINEポイゲ』や『LINE WALK』を軸にLINEヤフー全体のサービスを潤滑油のように回していけたらと考えています。
――:現在は何と交換されることが多いのでしょうか?
増田氏:LINEスタンプなどに使えるLINEポイントと交換される方は多いです。あとは、PayPayポイントにも交換できるのでこれと交換される方も多いですね。
――:最終的に、ポイ活アプリで目指しているところはどこになるのでしょうか?
増田氏:『LINEポイゲ』や『LINE WALK』に留まることなく、ポイ活サービス最大のプラットフォームにしていくことが目標です。そういった意味では、今後はゲームに限らず“Life to Earn”でやっていきたいですね。
その中でより注力したいのはオフラインとの連携です。特定のお店に行って何かを購入したらポイントがもらえるなど、実世界でのポイ活体験を強めていきたいと考えています。
――:マネタイズに関してはどうされているのでしょうか?
増田氏:基本的には広告収益になります。一般的なバナー広告や、ユーザーがゲーム内の報酬を目的に見るリワード広告、アフィリエイト広告などがアプリ内に実装されています。ここから一部をポイントとして皆様に還元しているという形になります。
――:どういった企業がご出稿されているのでしょうか?
増田氏:さまざまな企業に出稿をいただいておりますが、たとえば『LINE WALK』では冷凍宅配サービスや、健康サービス、ジムなど、「歩いてポイ活をする」というアプリの特徴が「健康」に連想されるためか、それに紐づいた内容が多めになっています。
――:ポイ活市場は今後どのように変化していくと思いますか?
増田氏:ポイ活としても、カジュアルゲームとしても一定のニーズはなくならないと思います。加えて、ポイ活をできる手段はますます広がっていくのではないでしょうか。今は『LINE WALK』で歩くことがポイントになりますが、今後はこれに限らず全ての生活行動がポイ活に繋がってくると考えています。
――:御社としての今後の展望を教えてください。
増田氏:先ほど述べた通り「どんどんタイトルを増やしていこう」という想いで『LINEポイゲ』では現在18本ほどリリースしているのですが、これだけあるのであればよりユーザーが回遊できる仕組みを強めたいとは考えています。エコシステムのようなものを生み出すために、今仕組んでいるタイトルがあり、それを来年の1月頃にリリースする予定です。ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
――:本日はありがとうございました。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
会社情報
- 会社名
- LINEヤフー株式会社
- 設立
- 1996年1月
- 代表者
- 代表取締役会長 川邊 健太郎/代表取締役社長CEO 出澤 剛/代表取締役CPO 慎 ジュンホ
- 決算期
- 3月
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4689