世界エンタメ特集「マレーシア編」:エンタメハブとなったショッピングモール、三井不ららぽーとが激変した理由

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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マレーシアで日本IPのフロアができている、という報をうけてマレーシアに飛んだのが2025年8月。三井不動産は近年東京ドームをグループに迎え、秋元康と男性アイドルグループを組成したり 、以前インタビューしたようにIP体験型施設を作っていったりとエンタメのトレンドをとりいれようとするなど 、先鋭的な不動産企業の一角である。マレーシア首都クアラルンプールのららぽーとは台湾・上海につぐ海外3店舗目の商業施設だが、コロナ中の2022年にスタート、日本のららぽーとと比較すると苦戦していたのが2022~24年。だが2025年に目にした光景は、その中身が大きく変わり、ポケモンとコラボした盆踊りで数万人集客し、アニメイトも直営進出している。この「激変」の背景に何があったのか。海外展開においては日系リテール企業の協力が欠かせない日本のアニメ・ゲーム業界にとって「商業施設とどう向き合っていくか」について大きなインサイトが得られたインタビューであった。

 

■コロナ禍低調スタートのらぽーとマレーシア、好転のきっかけはアニメイト

――:自己紹介からお願いします

MITSUI FUDOSAN(ASIA)MALAYSIAのSenior Managerをしている安田嵩央(やすだ たかひろ)です。

 

▲マレーシア・クアラルンプールの中心街に位置する三井不動産ららぽーと

 

――:前回2022年11月に訪問した時とはあまりに違い、驚きました。大盛況ですね。

私は2024年に赴任しまして、ちょうど1年半この三井不動産の「ららぽーと ブキッ・ビンタン シティ センター(BBCC)」(13万平米に約400店舗で構成される6階建ての大型ショッピングモール、三井不動産としては東南アジア初、台湾・上海金橋に次ぐ国外3番目のららぽーと)のフロアコンセプトの刷新に向けて動いてきました。

このモールは2022年1月に開業したのですが、ちょうどコロナ禍の真っただ中。その中でスタートしたこともあり、中山さんが来られた時と、現在とでは「様変わり」していると感じていただけるかと(同じ2022年6月に併設のZepp Kuala Lumpurも開業)。この状況を打開してくれたのは「エンタメ」でした。

 

▲2022年11月時点で5Fのフードコートは低調だった。ちょうどteamLab★の球体展示なども行われていた時期である 

 

▲同じフードコートが休日とはいえこの混み具合(2025年8月23日(土)撮影)

 

――:何がきっかけだったのでしょうか?

この2年本当にいろいろ中身のコンセプトを詰めて、訴求価値を高めるべく頑張ってきたが、明確に「反撃ののろし」のようなタイミングがつくれたのは、2024年11月末のアニメイトさんのPOPUPショップの開始ですね。また、この夏、マレーシアでは盆踊りが各所で行わたるのですが、ららぽーとの盆踊りで「ピカチュウ音頭」をご協力いただき、ららぽーとの盆踊りが楽しすぎるとSNSでも話題になりました。

 

▲2024年11月に開店し、ららぽーとマレーシアの反撃のきっかけを作ったアニメイトPOPUP

 

▲2025年7月のポケモン盆踊りイベント

 

――:安田さんは赴任後どんなことに取り組んでこられたのですか?

「ゾーン形成」に力を入れてきました。簡単にいうと主に日本エンタメのIP系店舗を集積的につくっていって、「エンタメIPゾーン」のようなものに1フロアまるまる変えていったんです。6フロアある中で3Fフロアの約半分以上が全部エンタメを扱う店舗に変わりました。

このゾーンはACG(アニメ・コミック・ゲームの略)Baseと名付けております。アニメイト(カフェ・オンリーショップ含む)、Kadokawaのマレーシア法人が運営する書店K+、VTuberコラボなどのDoko koko、TCG取り扱いのCARD Master、インターナショナルIPに強くNYでもお店を開いているアニメカフェのDimension、そこにAKB48の姉妹グループKLP48(2024年8月からスタートしたマレーシア首都クアラルンプール拠点で活動するアイドルグループ)の専用劇場もできます。アニメコラボカフェや限定グッズ、書店、アイドル劇場、IPコラボスイーツ店などあらゆるエンタメ体験詰まったゾーンができつつあります。

 

▲2025年10月時点のACGベースの光景

 

▲2025年10月にオープンしたKADOKAWAのマレーシア合弁会社Kadokawa Gempak Starzによるショップ「K+」

 

――:一気に変わりましたね。約1500坪、約20店舗ほどが刷新され、「日系エンタメIPゾーン」みたいな状態になるのですね。まだこれから出店する準備の店舗も多いですが(2025年8月時点)、ここまでエンタメにふりきった理由はあるのでしょうか?

2025年11月にはほとんどの店舗がオープンになるので、年末にいらっしゃればすごいことになっていると思いますよ。

きっかけはアニメイトさんの成功ですね。2024年6月からアニメイトさんにご相談させていただき、11月から30坪の小規模スペースで期間限定のPOPUPという形で開始しました。最初の1か月で1万人が来場、3万個あまりのグッズが売り切れました。特に11月12月は行列が途切れない日も続き、人種・年齢層問わず、多くのファンが熱狂して購買していく姿が印象的でした。

――:アニメイトさんが出る前からもいろいろと日系IPのMDを扱うローカル企業もありましたし、すでに「競争過多」というイメージもあったんですよね。近くにAKIBA StationやTOKYOStreetなどもありますし。

アニメイトさんは「ホンモノ」を公式でもってきているんです。ローカル企業をACG(アニメ・コミック・ゲーム)文化としてとりあえずきたもの全部ひとくくりにしてなんでも入れてしまっていると、あっという間に全体的に非公式っぽい海賊版のグッズショップばかりになってしまう。そこはファンにもわかっちゃうんですよ。

やっぱり「本家」「オフィシャル」は必ず必要です。海賊版ばかりではユーザーの熱量もあがらない。アニメイトさんが本家として正規な版元からのオリジナル商品を仕入れるから自然とその周りでちゃんと商売をする現地事業者も呼応するんですよね。この場所に日本IP好きのユーザーが集まってくるので、アニメイトさん出店きっかけで大量のローカルIPグッズ店から出店オファーが殺到しました。

 

 

■現場にしか「コンセプト」は眠っていない。アニメイトを誘致できた理由

――:そもそも2022年にオープンしたときはどういう状況だったのでしょうか?

まずマレーシアは「モール文化」です。ショッピングモールがKL中心部・周辺にかなりの数が存在します。中心地の1km圏内に複数の巨大なモールがあります。一番のフラグシップがツインタワーの足元のSuria KLCC(1998年開業)、街の中心街にあるPavilion KL(2007年開業)、最新モールのTRX(2023年開業)で、こちらにはApple Storeなどピカピカのストアもあり、この3つが富裕層・インバウンド向けに世界トップブランドが展開されるモールとなっています。そのほかにも、屋内遊園地があるBerjaya Times Square(2003年開業)が隣にあり、Lot10(1990年開業)5km圏内になるとMid Valley Megamall(1999年開業)、10Km圏内にはまさに今中山さんが参加されてこられたAnimangakiをやっているMines Shopping MallやPavilion Bukit Jalil(2021年開業)などがあります。

 

 

――:モールが都心・郊外で10も20も点在し、競合しあっている。インドネシアもマレーシアもシンガポールも、都心は似たような状況ですよね。

暑い気候の中で大都会の諸都市は「ショッピングモールが都市生活者のライフスタイル」なんですよね。一度モールに入ると、そこで食べて、お洋服・雑貨を買って、アミューズメント施設で子供と過ごして、という形で一日そこで過ごす。だから顧客層にあわせてバラエティの広い過ごし方を提案していかないと勝てない。モールで過ごす上で、必ずお客様に求められるカテゴリーは用意しながら、

他のモールとは2-3割違うものを取り入れていくなかで、差別化をはかります。今回は日系エンタメがその一つです。1年前ぐらいから、周辺のモールが日系IPを取り扱ったショップを運営し初めていたので、我々こそがなんとしてでも「エンタメ×ほんもの」を届けたかった。

――:そうした中で安田さんは「日本のエンタメフロアを作ろう」と決めていくわけですね。エンタメ輸出「輸出6兆円→20兆円」みたいな国の目標設定も影響しているのでしょうか?

20兆円って何ですか・・・笑?。私自身は好きなアニメ・漫画はありますが熱狂的なファンの類ではないです。現場でみていて、いろんな実験をしていくなかで食、アパレルといったジャンルのなかで「エンタメ」の引きがとにかく強い反応があった。だからそれを仕入れていこうと決めたんです。

――:こういう「モールのコンセプト」ってどうやって作るものなのでしょうか?

机上の空論では絶対できないです。現場にいてPOPUPなど一時的な仕掛けを動かしながらお客さんの反応もみて、それで徐々に気づいてくるんです。我々日系企業ができるユニークかつマレーシアのお客様に真に求められているものは何か。広くマスに受け入れられながら、体験価値も高く購入も進むようなもの・・・と考えた結果が「日本のキャラクターストリートエリアを作ろう」でした。

マレーシアではアニメ・コスプレ4大フェスが行われて多くの参加者がマレーシア国内外から集まったり、他のモールなども色々見る中で「アニメファンってこんなにいるのに、その消費に見合うオフィシャルなショップがないのではないか」と思ったんですよね。私自身がKLに入って現場で四苦八苦しなければ、絶対に気づかなかったことですね。

――:そうしたなかで「日系IP」×「ホンモノ」をとりにいく、という選択肢がでてきたんですね。

Pavilion Bukit Jalil が「呪術廻戦展」をしていたり、Fahrenheitもエンタメ系に積極的だったり競合は多かった。その中で、アニメイトさんへのお声がけさせていただき、我々ができうる中で、何とかPOPUPをやっていただけることになった。その後も一緒に汗をかいて、半年間でのぞみうる数字がえられるようにこちらもすり合わせしていった。

アニメイトさんが出店されると、ファンのみならず、関連事業者も集まって店舗をかまえたがる。そこをうまくコーディネートとできるとゾーンが形成され、推し活する若者たちがそのモールにたまるベースができる。実際にアニメイトのPOPUPと同時にその隣にはローカルの「Dokokoko Café」が出来てますしね。

 

▲アニメイトに隣接してつくられたローカルのVtuberShop「Dokokoko」

 

――:このOverprintもアニメイトの隣で「呪術」や「薬屋のひとりごと」のTシャツ売ってますね。

こちらも日系の店舗ですよ。これはららぽーとBBCCでしか買えない限定Tシャツを揃えており、観光客からの評判も良いです。。

 

▲「呪術廻戦」や「薬屋のひとりごと」と独特のセンスでTシャツコラボをするOverprint

 

――:私もアニメイトは韓国、台湾、中国4か所、タイとほぼ全部まわってきました。2010年代でも人気でしたが、特にコロナ後の2020年代に入ってからは「集客装置」として完全にどのモールでも看板ブランドショップになっています。

アニメイトさんもおそらく他のモールからもいくつも出店要請があったとおもいますが、ららぽーとに決めていただきました。マレーシアの多くのファンにアニメイトさんの商品を届けたいと心から願っておりましたので、常設店の検討をお願いし、ご快諾いただいた際にはとても震えました。

しかも、たんなる現状の店舗の塗り替えじゃないんです。現在のPOPUPスペースはもはやららぽーとのアイコンのような存在になったので、それはそれでオンリーショップとして残しつつ、2025年10月に150坪もの大型スペースで「アニメイトのマレーシア公式店1店舗目」としてオープンすることになります。同時にアニメイトカフェもオープンします。

同時にこの3FのエンタメフロアにIP大手の会社さんにも全面的に出店依頼をお願いしてきました。マレーシア中のユーザーにとって、ららぽーとBBCCの3Fにいけばとりあえず「日本IPの最先端に触れられる」状態になってきています。

 

▲2025年10月開店したアニメイト・マレーシア公式店舗、150坪の大スペース

 

▲今回ACG Baseのゾーン形成を推進した安田嵩央氏

 

 

■400社営業でつかみとったACG Baseづくり。K-POPの見習うべきファンダムづくり

――:アニメイトだけでなく、安田さんが2024~25年と様々な日系企業に営業されてました。どのくらい声をかけたんですか?

この1年半の間に私が営業でお声をかけたのは300-400社くらいですね。当たり前ですが各社ごとのASEAN展開の現状や重視しているところなどニーズが多様なので、面白くもあり、難しくもありました。

――:どぶ板営業力がすごいですね。海外赴任はじめてじゃなかったでしたっけ?安田さんは英語しゃべれるんですか?

赴任ははじめてでしたし、英語はいまも苦手ですが、とにかく足は止めませんでしたね。

――:アニメイトだけでなく、5Fのフードコートが大きく様変わりしました。盆踊りでも連携したPokemon社ですが、これだけ大きなスペースでPokémon Play Labが「フードコート併設である」という作り方も珍しいですね。

私がイオンファンタジーさん(イオンのアミューズメント部門)とお付き合いがあって、ららぽーとにお越しのヤングファミリー・Z世代の来館者の滞在価値を高める仕掛けを一緒に仕掛けませんかとお話しをしていたところ、「Pokémon Play Lab」と「太鼓の達人道場」を持ってこれるかもというお話だったんです。

共用部含め1,500坪あったフードコートの一区画をそのままこのゲームセンターとPokemon Play Labにしてファミリー層をフードコートでおしゃべりしながらゲームもできるようにと大改修しました。

その動きとは別ではあったのですが、中山さんも取材された弊社の粟谷チーム の繋ぎから、ポケモン社様からピカチュウ音頭をマレーシアでをやりませんか?というお話を4月にいただいて、時期を聞くと「8月です」と笑。もう2か月しかなくて普通だとあんまりありえないことなのですが、とにかく特急スピードで巻いてなんとか実施までもっていきました。本当にやってよかったです。

 

▲2025年7月のららぽーと盆踊りでの風景 

 

▲2025年7月のららぽーと盆踊りで一番の催しになったポケモン盆踊り

 

▲フードコートに隣接するPokémon Play Lab

 

▲フードコートに隣接するゲームセンター&太鼓の達人道場

 

 

――:3Fの「エンタメIPゾーン化」も驚きましたが、この5Fも驚きました。さっきもみていたら30~40代女性がK-POPアイドルの推し活やってるんですよね。

そうですね、ヒジャブ(女性のスカーフ)被った女性たちがK-POPの推し活しているというのは私からするともはや見慣れた光景です笑。ファンの有志でカフェを貸切って推しの誕生日をお祝いする、ユーザーさんたちでイベントを主催してやっていたりします。

音楽・アーティストという文脈ではマレーシアではKPOPが根強く人気です。Spotifyのマレーシアランキングも上位はK-POPが独占で、韓国勢のこういう「海外ファンダムづくり」はうまいですし、施設にうまく取り込んでいきたいと常に思っています。KPOPのオフィシャルショップも未だマレーシアではあまり見ないので、誘致していきたいと考えてます。

 

 

――:ローカルの強さですよね。先ほど「エンタメゾーン」も20店舗ほどとありましたが、さすがに日系企業で直接、という事例はかぞえるほどでメインはローカル企業が運営するわけですよね?

「Doko koko」のオーナーのJoshua Wongという中華系マレーシア人が辣腕ですね。もともと2010年代は住宅系をやっていてこちらの業界とは関係なかったのに、2019年にアニメ系に商機ありと参入して、ホロライブとかにじさんじのコラボをしながらイベント主体型物販で大きくなっていった会社です。

今回のカードショップやったりカフェやったりといった4-5店舗は全部ブランドは違いますが彼ら自身がアニメイトさんが公式店舗つくるという話と相まって、オペレーションも含めて彼らがやっていくモデルで展開しています。こうしたビジネススピードは圧倒的です。

――:ここまでIP系に振り切ったモールって、他にクアラルンプールであるのでしょうか?

他のモールにはないです。恐らくアジアの中でも量・質ともにこれだけのダイナミックなフロアは少ないと思いますので、観光客の需要も取り込みたいです

――:エンタメ誘致以外にはどんな展開をされるのでしょうか?

エンタメも一つの軸なんですが、「アウトレット」と「バスターミナル」です。

8月から、KLで唯一の「アウトレット」エリアを展開しており、主にスポーツ系のストアを中心に展開してます。また「バスターミナル」施設内までひきこみ導線をつくって、バスを待つ時間もショッピングやカフェなどができるように室内での乗り場を作りました。観光バスの需要を取り込み施設とウィンウィンの関係をきづいていきたいです。

 

▲完成間近のバスターミナルの引き込み線

 

――:そうか、今(2025年8月23日)すんごい変わったなと思ったんですが、実は8月頭の盆踊りに、アウトレット&エンタメ&バスターミナルなどの施策が全部折り重なった結果で本当に直近こんなに人流がかわったばかり、ということなんですね。不動産業の面白さってこういうところにあるんですね。

人の流れが変わるんですよね。いままで行っていなかったところに人が流れるようになって、コミュニティ化すると急に場の盛り上がりが変わってくる。そういうのはこの仕事をしていて感動できるポイントですよね。

8月のアウトレットから始まり、10月に満を持してアニメイトの公式店舗とともに20店舗以上ものキャラクターフロアがそろってきて、これからこそがさらに期待できる状態なんです。

 

■エンタメIPはニッチなヒットから一つの「カテゴリー」になった。商業施設×エンタメの新時代

――:VTuberはいかがでしょうか?

いまも人気はありますね。マレーシアではイベント出演もされてますし。でも店舗を運営する、というところまでは会社としては厳しいようで、先ほどの「Dokokoko」のようなローカルの会社がライセンスで商品を仕入れて独自で展開する、という形で人気を保ってますね。

――:ヒット商売だからリスクもある話ですよね。

もちろん在庫を抱えすぎたりといったこともあります。でもアニメって毎年300本が回転して常に新しいものがでてきているじゃないですか?

その新陳代謝と回転率こそが今の日本のアニメの海外人気の根源だと思うんです。一つトレンドが終わっても、全然違うヒット作が生まれ続ける。「アニメ」というジャンル自体で考えればほとんど落ちることなく、維持できるんです。作品は終わっても、ジャンル自体が愛され続けている。

――:面白いですね。これはプラットフォームである三井不さんだからみえる視点だと感じます。

私自身、日本にいるとき以上にエンタメの力ってマレーシアに赴任して強く感じるんです。こっちでもマンガやアニメビジネスが「当たり前」であることが本当に凄くて、来店者も7割以上が10~20代ですよ。なかなか他のジャンルでこんなに若い層を集客しつづけ、しかも消費単価もずっと高く見込めるものって存在しないんです。時間帯によっては平日に中学校終わってからくる学生が一番のユーザー、みたいな時もありますからね。

――:しかし先ほどから案内してもらって、安田さんの把握振りがすごい。各店舗の売れ筋商品からゲームセンターまで「この台が一番まわっている」まで理解していて・・・普通商業施設の担当者ってここまで理解しているものですか?

それは僕のタイプですね笑。一緒に作ってきたプロジェクトでもあるので、どの台がどこまで売れているかまで把握しておかないとお客様が何をもとめて、どこに刺さっているのかわかりませんからね。

――:コロナ前とコロナ後で、商業施設にとってエンタメというものはどう変わったと定義できますか?

「エンタメIPは一つのカテゴリーになった」と感じます。食、アパレル、サービスなどは商業施設を作る時の標準装備として必ず必要だったカテゴリーで、そこに“新興"としての「エンタメIPゾーン」というカテゴリーは同じレベルまで来ました。単なるブームだったら数年のうちに消えて、こうしたカテゴリーにまで育つことはないんです。でももう今後商業施設にとって、エンタメは標準装備として必ず誘致すべき対象になったのだ、と感じますね。

――:それはエンタメの「周辺」としてもアパレルや食などにも広がっていく可能性はありますか?

そうですね、この130坪のWEGOさんも「推し活」需要をとらえた商品づくりをしてますよね。こういう痛バックなどで20-30代が一番の顧客になっています。

 

▲WEGO店舗のフロントは「Oshikatsu」でオタク向けのラインナップで飾られている

 

――:この傾向は今後も続くのでしょうか?

今後はわからないです。中国系は本国からどんどんASEAN市場に出てきている。彼らからのIP系への問い合わせも増えていて、彼らが一気に日本IPゾーン形成を短期間で進めてしまう可能性も十分にあると思いますが驚異的なスピードで拡大する一方で、撤退のジャッジも早いと思います。一定のゾーン形成ができ、日本IPを体験する場所=ららぽーととイメージを醸成しつつありますので、今後はよりその中でほんものにこだわり、マレーシアのファンの方々に喜んで頂ける仕掛けを積極的におこなっていきますね。

 

 

■マレーシアのアニメイベントANIMANGAKI

最後にマレーシアのアニメイベントについての写真も掲示する。マレーシアではComic Fesが7-8万人サイズで一番大きく、今回は2番目で次に16回目の開催となるAnimangakiがあり(3.5万人)、ほかにもNijigen FesとACG Fes、Cosmicまでいれると5つのアニメ系イベントが存在する。

 

▲人気投票では今シーズン話題の青ブタ、着せ恋、ダンダダン、チェンソーマン、薫凛などのヒロインが並んでいる

 

▲マレーシアでは女性向けコンテンツが特に人気を博していた

 

▲一番人気はPaperGames『恋と深空』、日本のロート製薬「肌研」×現地コスプレーヤーとコラボしたイケメン勢が一番の集客を獲得していた

 

▲『恋と深空』コスプレーヤー待ちの列

 

▲推しのコスプレーヤーの握手会待ちはところどころに列をなしていた

 

▲2Fでは有名な海外インフルエンサーブースのMeet&Greet。朝一で並んだ列はここをめがけて突進していった

 

▲超絶最かわてんしちゃんコスプレ『NEEDY GIRL OVERDOSE』より

 

▲劇場版公開直前の「鬼滅の刃」ブース

 

▲エレンのコスプレ『ゼンレスゾーンゼロ』より

 

 

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
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