【ネクソン決算レポ】25年12月期は過去最高売上を更新 『ARC Raiders』世界的ヒットでIP戦略が加速 継続的な開発投資が結実

オンラインゲーム大手のネクソン<3659>は、2025年12月期通期決算(IFRS)を発表し、売上収益が前の期比6%増の4751億円となり過去最高を更新した。営業利益は1240億円で前年と同水準を確保した。主力フランチャイズの再成長に加え、新規IPの大型ヒットが業績を押し上げ、同社が掲げる「IP成長戦略」が具体的な成果として表れた1年となった。

・売上収益:4751億0200万円(同6.5%増)
・営業利益:1240億1200万円(同0.1%減)
・税引前利益:1404億5100万円(同28.3%減)
・最終利益:920億5200万円(同31.7%減)
 

 

■『ARC Raiders』が世界的ヒット、販売1400万本突破

2025年最大のトピックは、Embark Studiosが開発したオンラインシューター『ARC Raiders』の大成功だ。10月30日の発売から約2カ月で累計販売本数1000万本を突破した。発表時点では1400万本に達している。

Steamの売上ランキングで約3カ月にわたり首位を維持し、PlayStationやXboxでも上位にランクイン。最大同時接続者数はローンチから10週後の1月に96万人を記録し、WAU(週間アクティブユーザー)は約600万人規模を維持するなど、持続性の面でも高い指標を示している。

本作は売り切り型のオンライン専用タイトルだが、一部販売チャネルの売上277億円を繰延処理。これにより第4四半期および通期の売上・営業利益は同額分押し下げられた。繰延分の過半は2026年第1四半期に認識される見込みだ。

ネクソンにとっては、欧米市場でのプレゼンス拡大を象徴するタイトルとなり、グローバルIP創出力を実証する事例となった。

 

■『MapleStory: Idle RPG』は好発進も返金対応

一方、新作『MapleStory: Idle RPG』は韓国で10週間以上売上ランキング1位を維持し、台湾、シンガポールでも首位を獲得するなど好スタートを切った。

しかし、有料アイテムの数値設定に関するプログラム不具合が発覚。経営陣は返金および補償対応を決定した。これにより第4四半期売上は約90億円、営業利益は約40億円押し下げられた。さらに第1四半期も売上約50億円、営業利益約30億円のマイナス影響を見込む。

同社は「プレイヤーとの信頼関係を最優先する」との方針を強調。短期的な業績影響を受け入れつつ、ブランド価値維持を優先する姿勢を示した。

 

 

■第4四半期は大幅増収も、利益は想定下回る

第4四半期の売上収益は前年同期比55%増の1236億円と大きく伸びたものの、営業利益は72億円と黒字転換となった。ただ、想定を下回る着地となったという。

・売上収益:1235億9900万円(前年同期比55.0%増)
・営業利益:71億7500万円(前年同期は17億2900万円の損失計上)
・税引前利益:184億8800万円(同55.4%減)
・最終利益:108億5700万円(同66.2%減)

同社によると、

・『ARC Raiders』売上の繰延
・『MapleStory: Idle RPG』の返金見積り
・業績連動賞与の発生
・プラットフォーム手数料増加
・サービス終了に伴う30億円の減損損失

などが影響し、営業利益は想定を下回ったとのこと。

 

■フランチャイズ別動向

【メイプルストーリーフランチャイズ】
『メイプルストーリー』は韓国・グローバルともに好調で、フランチャイズ売上は通期で前年比43%増となり、サービス22年目で過去最高を更新した。韓国ではPCカフェシェア45%を記録している。『MapleStory Worlds』も前年比約3倍と拡大。『MapleStory: Idle RPG』を含め、IPの多面的展開が進んだ。

 

【アラド戦記フランチャイズ】
PC版『アラド戦記』は中国・韓国ともに2桁成長を達成。韓国では通期売上が前年比108%増と大きく伸び、20周年の節目を飾った。一方、『アラド戦記モバイル』は減収だった。フランチャイズ全体では通期で前の期比21%減となった。2026年はモバイル版の再成長が最優先課題となる。

 

【FCフランチャイズ】
大型サッカーイベント不在の中でも通期売上は横ばいを維持。安定収益源としての存在感を保った。

 

【マビノギフランチャイズ】
『マビノギモバイル』は韓国でゲーム大賞を受賞。コラボ施策も奏功し収益に貢献した。2026年は日本を含む展開地域を拡大する予定だ。

【シューター領域】
『ARC Raiders』に加え、『THE FINALS』も増収を確保した。中国展開も進んでおり、シューター領域は新たな柱へ成長しつつある。

 

■2026年第1四半期は大幅増収増益見通し

第1四半期は売上1505億~1640億円(前年同期比32~44%増)、営業利益512億~611億円(同23~47%増)を見込む。

・売上収益:1504億9200万円~1640億1500万円(同32.1%増~同44.0%増)
・営業利益:511億8200万円~611億2200万円(同23.0%増~同46.9%増)
・税引前利益:538億7200万円~638億1200万円(同39.2%増~同64.9%増)
・最終利益:409億1200万円~484億4200万円(同52.1%増~同84.4%増)

 

『アラド戦記』大型アップデート、『ARC Raiders』の継続寄与、『マビノギモバイル』の貢献に加え、『MapleStory: Idle RPG』も返金影響を織り込みつつ主要タイトルとして寄与する見通しだ。

 

■強固な財務基盤と積極的株主還元

営業キャッシュフローは8年連続で1000億円超。期末キャッシュは8000億円超に達した。

2025年は配当を1株45円へ倍増し、969億円の自己株式取得を実施した。さらに1000億円枠の自社株買いを完了し、取得株式の全消却も決議した。2026年は年間60円配当を予定する。

 

■IP成長戦略が実証段階へ

2023年以降、『デイヴ・ザ・ダイバー』『THE FINALS』『The First Descendant』『マビノギモバイル』『ARC Raiders』など多数の新作を投入した。その中でも『ARC Raiders』の成功は、ネクソンのグローバル・マルチプラットフォーム戦略が現実の成果に結びついた象徴的事例といえる。

今回の『ARC Raiders』の成功は、単なる新作ヒットにとどまらない意味を持つ。代表取締役社長のイ・ジョンホン氏は決算説明会の質疑応答で「世界中の数百万人が日常的にプレイする習慣タイトルとして定着しつつある」と強調した。発売から2カ月後の1月に最大同時接続者数96万人を記録し、現在もWAU約600万人を維持。リテンションは高水準で推移しているという。

2026年は年間ロードマップに基づく月次コンテンツアップデートとライブ運営を継続し、長期的な販売拡大を目指す方針だ。さらにテンセントを通じた中国向けハイパーローカライズ展開も予定しており、IP拡張の可能性も視野に入れる。経営陣は「当社のもう一つの柱へ育成する」と明言した。

一方、第4四半期に計上された277億円の繰延収益については、連結決算手続きの過程で監査法人との協議を経て処理方針を変更したことを最高財務責任者の植村士朗氏が説明した。売上の約6割を占めるSteam経由の販売の一部を2026年以降に繰り延べるもので、過半は第1四半期に収益認識される見込みだ。

業績連動賞与についても、『ARC Raiders』の想定を上回る利益創出を受けて第4四半期に発生。投資回収後の利益を開発チームへ還元する仕組みであり、成功報酬型モデルが機能していることも示した。

今回の決算は、単なるヒット作誕生というよりも、長年のスタジオ投資とグローバル展開戦略が収穫期に入り始めたことを示すものだ。前社長のオーウェン・マホニー体制下で積み上げてきた海外開発投資が、具体的な成果として結実しつつある。

既存フランチャイズの安定収益を基盤に、新規IPを世界市場で育てる――。ネクソンは今、オンラインゲーム大手からグローバルIP創出企業への構造転換を現実のものにしようとしている。

株式会社ネクソン
http://www.nexon.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4462億1100万円、営業利益1241億7600万円、税引前利益1959億8700万円、最終利益1348億4800万円(2024年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3659
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