
転職に関する情報は世の中にあふれているが、その多くは常識として語られている一方で、実際のところ本当なのか間違いなのか、分からないまま語られているケースも少なくない。
そこで本連載では、転職にまつわる素朴な疑問や噂について、現場を知る弊社の人事担当者にヒアリングを実施。エンタメ業界に特化した求人を扱う立場から、業界ならではの視点も交えつつ、実際のところはどうなのかを紐解いていく。
「転職回数の多さ」だけの判断はしない

今回のテーマは「転職回数」。「転職回数が多いと不利になる」といった話は、転職活動ではよく耳にする。実際、職務経歴書を書きながら、「回数が多いことでマイナス評価になるのでは」と不安を感じる人も少なくないだろう。
では、実際の採用現場ではどのように見られているのか。今回、人事担当者に率直なところを聞いてみた。
まず返ってきたのは、「転職回数の多さ」だけで単純に判断しているわけではない、という回答だった。というのも、採用現場においては「転職回数の多さ」そのものより、一社あたりの在籍期間が短いかどうかを慎重に見ているとのことだ。
企業側としては、採用に大きなコストをかけている事情もあるという。企業は1名採用するために、平均で100万円以上の採用コストをかけているケースも少なくない。
求人広告費やエージェント手数料、面接工数、入社後の教育コストなどを含めると、採用には想像以上の時間とお金がかかる。だからこそ企業は、「できるだけ長く働いてくれそうな人か」を重視する傾向があるという。
その結果として、一社で一定期間経験を積んでいる人のほうが、評価されやすい場面もあるようだ。
ただ、企業側は「なぜ短期間で転職しているのか」「入社後にまたすぐ辞めてしまわないか」といった点を気にする傾向があるのは事実だろう。
特にエンタメ業界では、プロジェクト単位で動く仕事も多い一方、チームで長く関係を築きながら進める仕事も少なくない。そのため、転職回数そのものよりも、「どのような理由でキャリアを積み重ねてきたか」が見られているのかもしれない。
「何回以上だと危険?」 転職回数に明確な基準はあるのか

では実際のところ、「転職回数が◯回以上だと厳しい」といった基準は存在するのだろうか。この点について人事担当者は、「明確な回数ラインがあるわけではない」としつつも、「年齢に対して転職回数が多い場合は、慎重に見られる傾向があります」と語る。
極端な例ではあるが、社会人3年目で転職回数が5回以上あり、さらにすべて1年以内で離職している場合、「定着が難しいのではないか」と判断される可能性は否定できない。
企業側としては、「また短期間で辞めてしまうのではないか」という懸念に加え、経験の積み上がりについても気にすることがあるという。
一方で、20代前半〜中盤、いわゆる第二新卒層については、比較的ポテンシャル採用が多いこともあり、チャンスは十分あるのこと。ここで注意したいのは、同じポジションに応募している他候補者との比較は避けられない点だ。
逆に、30代以降になると、転職経験が複数回あること自体は珍しくなくなっていく。そのため、単純な“回数”だけで判断されるケースは減っていくようだ。
つまり、「何回転職したか」だけではなく、
・なぜ転職したのか
・それぞれの会社で何を経験したのか
・どんなスキルを積み重ねてきたのか
といった“キャリアの中身”が重要視されているということだろう。
転職回数が多くても挽回できる? 人事が見ている“説明の仕方”

ここまで、人事担当者は「転職回数そのもの」よりも、「なぜ転職したのか」「各社で何を積み上げてきたのか」が重要だと語ってきた。
では実際に、転職回数が多い場合でも、書類選考や面接で挽回できるケースはあるのだろうか。
この質問に対して、人事担当者は「十分あり得る」としたうえで、重要なのは“理由に納得感があるか”だと説明する。
たとえば、
・スキルアップのための転職
・業界変更によるキャリア形成
・契約終了や事業撤退など外部要因
といった背景が整理されていれば、単純に「転職が多い=マイナス」とは判断されにくいという。
一方で、人事担当者は「ただし、その説明は面接ではなく、できれば書類段階から丁寧に伝えておくことが重要」とも話す。転職回数が多い場合、理由が見えないままだと、そもそも面接前の段階で不安を持たれてしまうケースがあるからだ。
また、意外と見られているのが、「本人がその点をどう認識しているか」だ。要するに、転職回数について触れずに進めるよりも、自分なりに整理したうえで、今後どう考えているかまで伝えられると、印象が変わる場合もある。
担当者は具体例として、次のような伝え方を挙げていた。
これまで複数回の転職を経験してきましたが、その中で◯◯のスキルを培ってきました。次の環境では長期的に腰を据えて貢献していきたいと考えています。
このように、自分から触れたうえで今後の意思を示すことで、誠実さや自己分析の深さが伝わるケースもあるという。
転職回数が多いことに対して、必要以上にネガティブになる人も少なくない。
ただ、人事担当者の話から見えてきたのは、「回数そのもの」だけで判断されるわけではなく、“そのキャリアをどう説明できるか”が重要だということだろう。
転職回数が多くてもプラス評価されるケースは?

ここまでの話だけを見ると、「転職回数が多い=不利」と感じる人もいるかもしれない。しかし実際には、転職経験そのものがプラスに評価されるケースもあるという。
では、どのようなキャリアパターンが前向きに見られやすいのだろうか。人事担当者はまず、「転職理由に一貫性があること」が大きいと語る。
たとえば、「スキルアップのための転職だった」と説明できるだけでなく、客観的に見ても、その転職によってスキルや経験が積み上がっていることが分かる場合は、前向きに評価されやすいです。
つまり、「スキルアップしたい」という言葉だけではなく、実際にキャリアが積み上がっていることが重要になる。
たとえば、
・小規模案件から大型案件へ
・実務担当からリーダーポジションへ
・部分業務から全体ディレクションへ
といった形で、転職ごとに役割や責任範囲が広がっている場合は、“成長のための転職”として納得感が出やすいという。
また、業界や職種の一貫性も評価ポイントになりやすいようで、特にエンタメ業界では、プロジェクト単位で経験を広げたり、より大きなIPや開発規模へ挑戦するために転職するケースも珍しくない。
そのため、「なぜ転職したのか」がキャリアの流れとして自然につながっていると、むしろ行動力や成長意欲として評価されることもある。
一方で、単純に職場を転々としているだけに見えてしまうと、評価は変わってくる。企業側は、“転職回数”そのものではなく、その転職によって何を得てきたのかを見ているということだろう。
転職回数が多い人ほど、「なぜ移ったのか」「そこで何を身につけたのか」を整理して伝えることが重要になる。
転職回数が多い応募者を、人事は最終的にどう見ているのか
最後に、転職回数が多い応募者を見る際、最終的にどのようなポイントを重視しているかも聞いてみた。
返ってきたのは、「ひとつの項目だけで判断しているわけではない」という回答。定着性・キャリアの一貫性・スキルの積み上がりは総合的に見ており、採用ポジションによって比重が変わるという。
たとえば、長期的な運用やチーム連携が重要なポジションでは、定着性がより重視されることもある。
一方で、新規事業や変化の激しい現場では、多様な経験や対応力が評価されるケースもあるようだ。
そのうえで人事担当者は、「自分の経歴の中で、何を強みにするかを整理することが重要」と話す。
つまり、すべての人が“同じ型”で評価されるわけではなく、自分のキャリアをどう整理して伝えるかが重要になってくるということだ。
・一貫して同じ分野を深めてきた人
・複数の職種を経験して視野を広げてきた人
・小規模〜大規模案件まで幅広く経験してきた人
など、強みの出し方は人によって異なる。
転職回数は、たしかに企業側が確認するポイントのひとつだ。しかし実際の採用現場では、“回数”だけが独立して見られているわけではない。
なぜ転職したのか。その環境で何を学んだのか。そして、次の会社で何を実現したいのか。そうしたキャリア全体の流れを、自分の言葉で説明できるかどうかが重要だ。





