
「アニメに関わる仕事」と聞くと、アニメーターや制作進行、演出など、アニメ制作会社で働く職種を思い浮かべる人が多いかもしれない。
しかし、ひとつのアニメ作品が視聴者のもとへ届き、さらにグッズやイベント、書籍などへ展開されていくまでには、制作会社以外にも多くの企業が関わっている。グッズを企画するメーカー、作品を世の中に広める広告代理店やPR会社、イベントを運営する会社、関連書籍を手掛ける出版社など、その関わり方はさまざまだ。
アニメ制作の現場で働くことだけが、アニメ業界に関わる方法ではない。本記事では、アニメ制作会社以外で作品を支える代表的な仕事として、グッズ制作、広告・PR、ライセンスビジネス、イベント・ライブ制作、出版社・編集プロダクションの5つを紹介する。
目次
グッズ制作――商品企画から営業、マーケティングまで幅広い仕事

アニメグッズと聞くと、アクリルスタンドや缶バッジ、ぬいぐるみなどを思い浮かべる人が多いだろう。近年は、ゲームセンターに並ぶプライズやカプセルトイの人気も高まっており、アニメ作品を活用した グッズビジネス はますます広がりを見せている。
グッズ制作の仕事は、商品をデザインするだけではない。どのキャラクターを、どのような商品として展開するのかを考える商品企画をはじめ、販売店へ商品を提案する営業、作品の権利や監修を管理するライセンス担当、売上や市場の動向を分析して販売戦略を立てるマーケティングなど、多彩な職種が関わっている。
もちろん、グッズデザイナーも代表的な仕事のひとつだ。キャラクターや作品の世界観を生かしながら、商品の形状や用途に合わせてデザインへ落とし込んでいく。絵を描く力を生かしたい一方で、アニメスタジオ以外の働き方も検討したい人にとって、有力な選択肢になるだろう。
広告代理店・PR会社――作品の存在を世の中へ広く届ける

どれだけ魅力的なアニメが完成しても、その存在を知ってもらえなければ視聴にはつながらない。広告代理店やPR会社は、作品の魅力や最新情報を発信し、より多くの人へ届ける役割を担っている。
こうした 宣伝業務 は、アニメ制作会社や製作委員会の内部で担当するケースもある一方、広告やPRを専門とする外部企業へ依頼することも多い。特に劇場版アニメなど、公開規模が大きく、多方面への露出が求められる作品ほど、専門のPR会社が参加するケースは増えていく。
仕事の内容は、大きく「宣伝・広告」と「パブリシティ」に分けられる。宣伝・広告は、テレビCMやWeb広告、交通広告などの広告枠を購入し、届ける相手や時期、見せ方を設計しながら作品の認知度を高める仕事だ。
一方のパブリシティは、Webニュースサイトや雑誌、テレビ番組などのメディアに対し、作品をニュースや記事として取り上げてもらうための働きかけを行う。プレスリリースの配信、取材や試写会の案内、素材提供、問い合わせ対応など、メディアとの窓口を担う仕事でもある。
広告枠を使って情報を届ける宣伝と、第三者であるメディアを通じて情報を広げるパブリシティでは手法が異なる。ただし、作品の魅力を整理し、世の中へ届けていくという大きな目的は共通している。
ライセンスビジネス――作品と企業をつなぎ、新たな展開を生み出す

ライセンスビジネス とは、キャラクターや作品、ブランドなどの権利を他社へ貸し出し、商品やサービスに活用してもらう仕組み。権利を利用した企業は、その売上の一部をロイヤリティとして権利元へ支払う。
この仕組みには、権利を持ち、使用を許諾する「ライセンサー」と、権利を借りて実際の商品やサービスを展開する「ライセンシー」が存在する。
ライセンサーの代表例としては、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ポケモン、サンリオなどが挙げられる。ただし、ライセンサーになれるのは大手企業だけではない。規模の大小を問わず、オリジナルのキャラクターやコンテンツを持ち、それを他社へ展開していればライセンサーに当たる。
一方のライセンシーは、許諾を受けたキャラクターや作品を使い、グッズ、食品、アパレル、ゲーム、イベント、キャンペーンなどのビジネスを組み立てる側である。扱う商品やサービスに制限はあるものの、極端にいえば、あらゆる業界の企業がライセンシーになる可能性を持っている。
ライセンス担当者は、使用条件や契約内容の調整、企画内容の確認、デザインや表現の監修、ロイヤリティの管理などを行う。アニメと異業種をつなぎ、作品の可能性を広げていく仕事といえるだろう。
イベント・ライブ制作――企画から当日運営まで、作品とファンが出会う場をつくる

声優が登壇する作品イベントや音楽ライブ、展示会なども、アニメをファンへ届ける重要な場のひとつ。こうしたイベントは、アニメ制作会社だけでつくっているわけではない。イベントの企画や制作、運営を専門に手掛ける会社が存在し、作品の権利元や主催者と連携しながら会場をつくり上げている。
仕事内容は、イベントのコンセプトや内容を考える企画・提案から、会場や機材、スタッフの手配、スケジュールの作成、当日の運営・進行管理まで幅広い。出演する声優やアーティストをはじめ、権利元、制作スタッフ、会場関係者など、多くの関係者をまとめる調整役も担う。
そのため、ファンが喜ぶ企画を考える発想力だけでなく、決められた予算やスケジュールの中で準備を進めるマネジメント力も欠かせない。イベント当日には予期せぬトラブルが起こることもあるため、現場全体を見渡しながら判断し、人を動かすリーダーシップも求められる。
ひと口にアニメ関連イベントといっても、その種類は幅広い。声優イベントに強い会社、アニメソングのライブや音楽フェスを得意とする会社、展覧会や展示会の企画・施工を手掛ける会社など、得意分野は企業によって異なる。イベント制作の仕事を探す際は、会社がこれまでどのような催しを手掛けてきたのかにも注目したい。
出版社・編集プロダクション――原作から関連書籍まで、作品の世界を広げる

出版社や編集プロダクションも、アニメと深く関わる仕事のひとつである。出版社が刊行する漫画や小説がアニメの原作になることもあれば、反対にアニメ作品をもとにコミカライズやノベライズを展開することもある。
原作を保有する出版社は、アニメ化に際して権利元の窓口となり、制作会社や製作委員会との調整、版権管理、監修などを担う場合もある。また、アニメの放送や公開に合わせて、設定資料集、ムック本、公式ファンブックといった関連書籍を企画・制作することもある。
出版社と編集プロダクションは似ているようで、立場には違いがある。出版社は、書籍の企画や編集だけでなく、出版、流通、販売までを手掛ける。一方の編集プロダクションは、取材、構成、原稿制作、デザイン進行など、より書籍づくりの現場に近い部分を担うことが多い。
編集プロダクション側から出版社へ企画を持ち込むケースもある。ひとつの出版社で企画が通らなかった場合でも、内容を調整して別の出版社へ提案できるなど、柔軟に企画を動かせる点は魅力だ。
また、出版社には編集者だけでなく、書店営業、宣伝・広報、ライツ、販売促進など、さまざまな職種がある。書籍制作そのものに携わりたいのであれば編集プロダクション、職種を限定せず少しでもアニメや原作作品に関わりたいのであれば出版社というように、希望する働き方に応じて選択肢を考えられる。