
enish<3667>は、8月14日、2026年12月期 第2四半期累計の連結決算を発表し、売上高9億2500万円(前年同期比22.4%減)、営業損失5億4200万円(前年同期は3億8400万円の損失計上)、経常損失5億7700万円(同3億8200万円の損失計上)、最終損失5億7900万円(同6億3300万円の損失計上)だった。
・売上高:9億2500万円(同22.4%減)
・営業損失:5億4200万円(同3億8400万円の損失計上)
・経常損失:5億7700万円(同3億8200万円の損失計上)
・最終損失:5億7900万円(同6億3300万円の損失計上)
同社では、既存のネイティブアプリタイトルの売上減少が続くなか、2025年9月にリリースしたオンライン麻雀ゲーム『雀エボライブ』も初期売上が想定を下回るなど、厳しい事業環境が続いている。
こうした状況を受け、同社は個別タイトルの改善にとどまらず、開発・運営体制そのものを見直す構造改革を進めている。IP選定の見直し、開発生産性の向上、事業ポートフォリオの最適化を進めるほか、AI技術を活用した開発基盤によって新規タイトル開発の一部業務で約40%の工数削減効果を確認したとしている。
■ネイティブアプリの苦戦続く、『雀エボライブ』も想定下回る
事業については、既存タイトルの安定運営と新規タイトルの投入を両輪として展開。既存タイトルではイベントやコラボレーション、ユーザー行動データに基づく改善などを行い、長期運営による収益貢献を目指している。
しかし、既存タイトルのうち『ぼくのレストラン2』『ガルショ☆』などのブラウザタイトルが安定して推移する一方、ネイティブアプリタイトルでは市場競争の激化やユーザー嗜好の変化などを背景に売上減少が続いている。
さらに、2025年9月にリリースしたオンライン麻雀ゲーム『雀エボライブ』も、リリース初期の売上が当初想定を下回り、収益の回復には至らなかった。
enishはこの結果を踏まえ、個別タイトルの改善だけではなく、開発・運営体制そのものを抜本的に見直す必要があると判断。持続的な収益創出体制の確立に向け、構造改革を進めている。
■IP選定を見直し、開発投資の成功確度を引き上げ
構造改革の第一の柱として掲げるのが、IPと開発力を軸とした成長戦略だ。
市場性や収益性を重視したIP選定を行い、タイトルごとの売上期待値を引き上げるとともに、定量的な調査・分析に基づく意思決定を徹底。開発投資の成功確度を高めることを目指す。
また、すべてを自社で開発するのではなく、自社開発と外部パートナーの活用を組み合わせることで、開発機会を確保しながら投資効率を高める考えだ。
ここには、これまでの『タイトルを開発してヒットを狙う』というゲーム会社としての事業モデルから、市場性をより厳しく見極めたうえで開発投資を行う体制への転換が表れている。
■AI開発基盤で新規タイトルの一部業務を約4割効率化
もう一つの柱が、開発生産性の向上だ。
enishでは、エンジン化やライブラリ化によって開発基盤の共通化・再利用性を高めるとともに、AI技術の活用、自動化、標準化を進める『AI開発基盤』を構築している。
現時点で、新規タイトル開発における対象業務について約40%の工数削減効果を確認したという。
こうした開発効率化を通じて、複数タイトルを並行して開発できる体制を強化していく。
単純に開発費を削減するだけでなく、限られた開発リソースを複数のタイトルに振り向けることで、新作投入の機会を増やしながら開発投資の効率を高める狙いとみられる。
同社は今後も、AI技術の活用や開発基盤の共通化によって開発リードタイムの短縮と品質維持を両立し、資本効率の向上につなげるとしている。
■『弱虫ペダル』新作など複数タイトルを投入
構造改革を進める一方、ゲーム事業では新規タイトルの投入も続ける。7月23日にはTVアニメ『弱虫ペダル』シリーズを題材とした新作アプリ『弱虫ペダル レゾナンス・ペダイズム』をリリースした。
また、TVアニメ『ゆるキャン△』を原作とする『ゆるキャン△ みんなでワチャワチャ!キャンピングクック!』など複数タイトルのリリースも予定している。
同社は新作ラインナップを多様化することで、特定タイトルへの依存を避け、収益リスクを分散しながらゲーム事業の収益基盤回復を目指している。
■「ゲーム×DAT」で収益機会の多様化も
今回の決算では、ゲーム事業そのものだけでなく、暗号資産を活用した『アクティブトレジャリー事業(DAT事業)』も新たな取り組みとして明確になった。
enishは、モバイルゲーム事業で生み出したキャッシュフローをより効率的に活用し、収益機会を多様化することを目的に、DAT事業の本格始動に向けた準備を進めている。
6月9日の臨時株主総会で定款変更が承認されたことを受け、ゲーム・エンターテインメントやWeb3との親和性が高く、ステーキングも可能なブロックチェーン「Solana(SOL)」を中核とする方針を決定。国内エコシステムパートナーであるSOLプラネットとの協議を開始したほか、公式SNSアカウント「ENI Kishu」も開設している。
一方、資産構造の見直しとして、従来保有していたビットコインは6月9日にすべて売却。この結果、暗号資産売却損を営業外費用に計上したほか、暗号資産評価損も発生している。
今後は「ゲーム×DAT」を軸とした新たな事業展開を進める方針で、その一環として6月にはファン参加型Predictionプラットフォーム『MIRAPICK(ミラピック)』の開発も開始した。ゲーム事業における新たなコミュニティ体験の創出と、将来的なDAT事業との連携を視野に入れている。
■赤字拡大も、前期の貸倒損失の反動で最終赤字は縮小
業績面では、売上減少に加えて売上総損失が拡大し、営業損失も前年同期から拡大した。
一方、中間純損失については前年同期より縮小している。これは前年同期に貸倒損失2億4400万円を特別損失として計上していた反動によるもの。今中間期の特別損失は423万円にとどまっており、本業の収益環境が改善したことを意味するものではない点には注意が必要だ。
また、営業活動によるキャッシュフローは6億2400万円のマイナスとなっており、厳しい事業環境が続いている。
こうした状況を踏まえ、enishは2026年12月期の業績予想を引き続き開示していない。構造改革の進展に加え、モバイルゲーム市場の環境変化、新事業の開始が業績に与える影響を慎重に見極める必要があり、現時点では信頼性の高い業績予想を算出することが困難としている。
■継続企業の前提に重要な不確実性、ゲーム事業の再構築が焦点に
なお、enishは今回も重要な営業損失、経常損失、中間純損失を計上していることから、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象・状況が存在すると記載している。
これに対して同社は、既存タイトルについて収益状況に応じた運営体制や人員配置の見直しを進め、改善が見込めないタイトルについては事業譲渡や配信終了も視野に入れて損失リスクを抑える方針だ。
新規タイトルについてはIP選定の厳格化、AI技術の活用、開発基盤の共通化によって開発効率を高める。財務面では金融機関や協業先との協議を進めるとともに、新株予約権の行使による資金調達やDAT事業による収益機会の多様化にも取り組む。
ゲーム事業の収益基盤がなお厳しいなか、新作のヒットだけに頼るのではなく、開発投資の選別、AIによる生産性向上、タイトルポートフォリオの見直し、そして「ゲーム×DAT」という新領域まで含めて事業構造そのものを変えようとしているのが、今回の決算におけるenishの大きな動きとなっている。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社enish
- 設立
- 2009年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 安徳 孝平
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高21億7000万円、営業損益8億5600万円の赤字、経常損益8億3200万円の赤字、最終損益11億5100万円の赤字(2025年12月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3667
