WBC・W杯波及効果は『eFootball』『プロスピA』だけでなく野球盤・サッカー盤にも スポーツゲームが特需となる理由と価値を考える

WBC・W杯の波及効果は『プロスピA』『eFootball』だけでなく野球盤・サッカー盤にも スポーツゲームが特需的に売れる理由と価値を考える
WBCやFIFAワールドカップのような大型スポーツイベントが開催されると、その競技を題材にしたゲームの需要が高まる。ゲーム業界では以前から知られている現象だが、2026年はその動きが改めて数字として表れた。
2026年3月に開催された「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC(WBC)」では、KONAMIの『プロ野球スピリッツA』が大きく伸長。サッカーでは、6~7月に開催されたFIFAワールドカップに合わせて『eFootball』が国内モバイルゲーム市場で高い収益を記録した。
そして今回、東京ビッグサイトで開催された「東京おもちゃショー2026」を取材していて、さらに興味深いデータに出会った。
エポック社が展示していた「野球盤」「サッカー盤」でも、販売数が大きく伸びていたのだ。どうやら、大型スポーツイベントによって動くのは「スポーツゲーム」というカテゴリーそのものではない。

スポーツを見た人が、その熱狂を自分でもう一度体験したい――。そんな「追体験」の需要が、デジタル、アナログを問わず、さまざまな商品に向かっているのではないだろうか。
■WBCで『プロスピA』のインストール数が7.8倍に
まず分かりやすいのが『プロ野球スピリッツA』だ。KONAMIは4月、2026年3月に開催されたWBCの盛り上がりを背景に、同作の新規ダウンロード数と売上が大幅に伸長したと発表した。
3月5日の大会開幕に合わせて、過去の侍ジャパン選手が登場するスカウトを展開。翌週には別の歴代侍ジャパン選手、そして決勝戦に合わせて今大会に出場した侍ジャパン選手が登場する特別なスカウトを実施した。
さらに、イチロー氏、ダルビッシュ有選手、大谷翔平選手が出演するCMをNetflixや地上波、東京ドームで放映。YouTubeでの同時視聴企画など、ゲームの内外で現実の大会と連動した施策を展開した。 その結果、2月と比較した3月のインストール数は約7.8倍、売上は前月比3.3倍に伸長した。
KONAMIは、試合を観戦するだけでなく、「観戦以外でもWBCを楽しみたい」というファンのニーズを捉えたと説明している。
ここには、今回のテーマを考えるうえで重要なヒントがある。WBCを見ることと、『プロスピA』をプレイすることが、ユーザーの中で別々の行動ではなく、ひと続きの体験になっているのだ。
■W杯でも『eFootball』が国内収益1位に
同じことはサッカーでも確認できる。Sensor Towerによると、KONAMI『eFootball』は2026年5月、6月、7月と3カ月連続で国内モバイルゲーム収益ランキング1位を獲得した。
6月にはFIFAワールドカップの開催に合わせて大きく順位を上げ、ダウンロード数ランキン
グでは5月の79位から6位へ急上昇。収益ランキングでも2カ月連続で首位となった。7月も収益1位を維持。Sensor Towerは、W杯終了後の7月についても「ワールドカップ効果のインパクト」で370万ドル以上の収益を達成したとしている。
さらに2026年上半期の国内モバイルゲーム収益ランキングでは、『eFootball』は前年同期の13位から3位へと大きく順位を上げている。Sensor Towerは、その要因として4月の『NARUTO-ナルト- 疾風伝』とのコラボとともに、ワールドカップ効果が大きなインパクトを与えたと推察している。
メーカー側が「W杯効果」を前面に出して説明することは難しい部分もあるが、第三者データから見ると、大会とゲームの需要が連動したことは興味深い。
■伸びていたのはデジタルゲームだけではなかった
ここで東京おもちゃショー2026のエポック社の展示に目を向けたい。エポック社が展示していた販売実績によると、野球盤の販売数は27.5%増。さらにサッカー盤は2026年度に入って70%増で推移しているという。

デジタルゲームとアナログ玩具。販売形態も遊び方もまったく違う商品だが、共通しているのは「スポーツを自分で遊ぶ」ことだ。そして、この動きも2026年に突然生まれたものではない。2023年のWBCでも、エポック社の野球盤は大きく販売を88%伸ばしたという。

■「見る」から「自分でやる」へ
では、なぜ大会が開催されると、こうした商品が売れるのか。一つの仮説として考えられるのが、大会の追体験だ。
WBCで侍ジャパンの試合を見る。大谷翔平選手やダルビッシュ有選手のプレーを見る。劇的な試合に興奮する。…すると、その熱量を自分でもう一度味わいたくなる。そこで『プロスピA』を起動して侍ジャパンの選手を集める。あるいは野球盤を取り出して、実際にボールを投げ、バットを振る。
サッカーでも同じだ。W杯の試合を見る。スター選手のプレーに興奮する。そして『eFootball』でその選手を使ってみる。あるいはサッカー盤で自分たちの試合を始める。
つまり、
スポーツを見る
↓
競技への関心が高まる
↓
自分でもやってみたくなる
↓
ゲームや玩具で追体験する
という流れだ。
ここではデジタルかアナログかは、それほど重要ではない。重要なのは、リアルなスポーツ観戦によって生まれた感情や興奮を、自分自身の体験に置き換えられることなのかもしれない。
■デジタルとアナログ、それぞれに異なる「準備」
ただし、スポーツイベントの需要を取り込む方法は、デジタルとアナログで異なる。
デジタルゲームも、もちろん大会が始まってから準備するわけではない。『プロスピA』では、WBCの開幕、翌週、決勝戦という大会の展開に合わせ、侍ジャパン関連のコンテンツを段階的に投入した。大会の日程と盛り上がりの山を見据え、ゲーム内外の施策を事前に準備していたと考えられる。
一方、野球盤やサッカー盤の場合は、需要が高まってから生産することが難しい。商品を製造し、流通させ、店頭に並べるまでに時間がかかるからだ。
つまり、どちらも大型スポーツイベントを商機として捉えている点は同じだが、デジタルは大会の展開に合わせてコンテンツを柔軟に投入し、アナログは需要が発生する前に商品そのものを準備しておく必要がある。
スポーツイベントによって生まれる「追体験需要」を取り込むための準備の仕方が、それぞれ異なるのである。
■「現実にはできないことを体験できる」というゲームの価値
「追体験」という言葉を考えていくと、もっと根本的なゲームの価値にも行き着く。以前、米国で実際にあった有名な話がある。障がいのため、現実の野球場でバットを振ったりボールを投げたりすることができなかった少年の野球ファンが『MLB: The Show』をプレイしていた。
彼が2008年、ゲームを作ったメーカーに感謝の手紙を送った。そこには、現実には野球場に立つことができない自分に、ゲームが「野球をプレイする体験」を与えてくれたという思いが綴られていた。ゲームを通じて、実際の野球と同じような興奮や緊張、フラストレーション、喜びを感じられる、と。
この手紙に開発チームは大きく心を動かされた。その後、その少年はゲームの中に自身をモデルにした選手として登場することになる。さらに翌年の『MLB 11: The Show』では、障害のあるプレイヤーもより遊びやすくするための簡略化された操作モードも導入された。
これは「スポーツゲームが売れる理由」を考えるうえで、象徴的なエピソードではないだろうか。ゲームは、現実のスポーツを完全に代替するものではないが、現実にはできないことを体験できる。そこにゲームならではの価値がある。
■大会の熱狂を「自分の体験」に変える
WBCやW杯の期間中にスポーツゲームが伸びるのも、単純に「大会の知名度が高いから」というだけではないのかもしれない。
大会を見て、選手のプレーに興奮する。そして今度は、自分がその選手を動かしてみる。あるいは、自分でボールを投げ、打ち、試合を作ってみる。見るだけだったスポーツを、自分の体験に変える。
その受け皿が、スマートフォンのゲームであったり、家庭の野球盤やサッカー盤であったりする。そう考えると、今回の『プロスピA』『eFootball』、そして野球盤・サッカー盤の販売増は、別々の現象ではないのかもしれない。
大型スポーツ大会が生み出しているのは、単なる「観戦需要」ではない。「あの興奮を自分でも体験したい」という需要。そして、それを実現する手段はデジタルであっても、アナログであってもいい。ゲームや玩具がスポーツイベントから受け取っているのは、競技そのものの人気だけではない。リアルなスポーツではできないことを、自分自身の手で体験できるという価値なのではないだろうか。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社コナミデジタルエンタテインメント
- 設立
- 2006年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 東尾 公彦/代表取締役社長 早川 英樹
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1940億1100万円、営業利益336億4700万円、経常利益348億9300万円、最終利益278億2800万円(2023年3月期)
会社情報
- 会社名
- エポック社





