
ボルテージ<3639>の人材戦略では、オリジナルIPコンテンツの創出を成長の源泉と位置付け、そのための組織づくりを進めている。特徴的なのは、成果だけでなく「挑戦すること」や「後輩を育てること」「社内のノウハウを次世代に継承すること」まで人事評価に組み込んでいる点だ。
同社は「アート&ビジネス」という企業理念のもと、変化の激しいエンターテインメント市場で持続的に企業価値を高めるため、会社のビジョン実現に向けて自律的に行動し、組織の力を最大化できる人材の育成と環境整備を進めている。
人材育成の基本方針として掲げるのは、「多様性の中で自律・創造的に行動し、失敗を恐れずチャレンジし続け、自他ともに成長を促し組織パワーを発揮する人材」の育成だ。
その中でも「挑戦風土の醸成」を重視しており、成功・失敗にかかわらず挑戦そのものを評価・フィードバックする仕組みを整え、試行錯誤からヒット作を生み出すカルチャーを維持・強化するとしている。
■「成果」だけでなく「どう行動したか」を評価
こうした方針を具体化するのが評価制度だ。同社は従業員の給与・待遇について、「発揮能力評価」と「成果評価」の両輪による評価制度を導入している。
成果評価では、定量的な目標に対する達成度や生み出した成果を評価する。一方、発揮能力評価では、「課題解決力」「チャレンジ行動」「後輩の育成」「組織への貢献」など、同社が求める人材としての行動プロセスを評価し、昇給や能力開発、成長支援につなげている。
つまり、ヒット作を生み出したかどうかという「結果」だけでなく、そこに至るまでにどのような行動を取ったのかも評価する仕組みだ。
これはコンテンツビジネスとの相性が良い。新しいIPや企画は必ずしも成功するとは限らず、失敗を恐れて挑戦しなくなれば、新たなヒットを生み出す可能性も低下するからだ。挑戦そのものを評価することで、試行錯誤を続けられる組織を目指しているとみられる。
■「自分でやる」から「人を育てる」へ
さらに注目されるのが、「後輩の育成」と「ノウハウの継承」を評価する仕組みである。
同社は、社内に蓄積された知見・ノウハウの次世代への継承と後輩育成を評価項目に組み込み、チーム全体としてのパフォーマンス向上を組織的に促進するとしている。
現場では、経験豊富な社員ほど「自分でやったほうが早い」と考え、後輩に仕事を教えたり任せたりすることが後回しになりやすい。しかし、育成やノウハウ継承が評価対象になれば、社員にとっても「自分が成果を出す」だけでなく、「後輩を育てて組織として成果を出す」ことが評価される。
これは、個人に蓄積されたコンテンツ制作の経験や知見を、組織全体の資産へ変えていく仕組みともいえる。特にボルテージのようなコンテンツ企業では、企画や制作に関するノウハウは必ずしもマニュアル化できるものではない。過去のヒットや失敗から得た経験、ユーザーの感性を捉える方法、企画を改善する際の判断など、個人の経験に依存する部分も大きい。
そのため、ベテラン社員が持つ経験を次世代に移転すること自体を評価することには、組織としての継続性を高める意味もある。「挑戦する人を評価する」だけでなく、「挑戦によって得た知見を次の世代に渡す人も評価する」。ここまで含めて考えると、同社の人材戦略は、個人のクリエイティビティを組織能力へ転換することを意識したものといえそうだ。
■女性人材が組織の中核を担う
また、女性向けゲーム・コンテンツを主要領域としてきた同社らしく、女性人材の比率も高い。2026年6月末時点の連結従業員数は132人。女性正社員比率は66%、女性管理職比率は50%、新卒採用者に占める女性の割合は75%となっている。
女性管理職比率については、内閣府の第5次男女共同参画基本計画が掲げる「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合30%程度」という目標を上回っているとしている。同社は多様性についても、多様なバックグラウンドや感性を持つ社員がそれぞれの強みを生かして自律的にプロジェクトを牽引できる環境を整える方針を掲げている。
■「人を育てる」ことを組織戦略に
ボルテージの人材戦略を整理すると、「挑戦」「自律」「多様性」に加えて、「育成」「ノウハウ継承」が重要な柱になっている。「自分で成果を出す」ことだけを評価するのではなく、挑戦し、経験を蓄積し、その経験を後輩に伝え、組織全体の力を高めるところまでを評価する。
挑戦する → 経験・ノウハウが蓄積される → 後輩に継承する → 組織能力が高まる → 次のIP創出につながる。
ボルテージの人材戦略は、この循環を人事制度の中に組み込もうとしている点に特徴がある。女性人材が多いという組織特性だけでなく、個人のクリエイティビティと経験を、いかに次世代と組織全体へ引き継いでいくかという視点から見ると、同社の人的資本戦略の狙いがより明確に見えてくる。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社ボルテージ
- 設立
- 1999年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 津谷 祐司
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高28億1800万円、営業利益1400万円、経常利益1700万円、最終利益1300万円(2025年6月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3639