
ブシロード<7803>の人的資本戦略で特徴的なのは、単に「多様な人材を確保する」というだけでなく、同社が掲げる海外展開・グローバルスケールの加速と人材戦略を明確に結び付けている点だ。
同社は中期ビジョン2030において「ライブミックスエンタテインメントとグローバルスケールの加速」を掲げており、海外進出を成長戦略の重要な柱の一つとしている。人的資本についても、こうした事業戦略を実現するために必要な人材を確保・育成するという考え方が随所に表れている。

■海外展開の加速に合わせ外国人・英語人材を拡充
特に分かりやすいのが、外国人・英語人材の確保だ。ブシロードは、グローバルスケールを加速するためには外国人社員及び英語人材が重要だと位置付けている。グループの社員は11の国と地域の出身者で構成され、2026年6月末時点の外国人比率は38.8%。外国人及び英語人材の比率は44.2%に達している。
同社は当初、2027年までに外国人及び英語人材比率をグループ全体の40%とする目標を掲げていた。しかし、2024年6月期にGorin Technical Industry (Malaysia) Sdn. Bhd.を連結子会社化したことなどから、すでに目標を達成している。
ここで重要なのは、外国人比率の高さそのものではない。同社は、日本・米国・シンガポールの各拠点で外国人社員及び英語人材が重要だと説明しており、多国籍人材の確保を「多様性」のためだけではなく、海外事業を進めるための経営資源として位置付けている。
つまり、海外展開を加速するためには、「海外でIPを展開できる人材が必要」。そして、「外国人・英語人材を採用する」という形で、事業戦略と人材戦略が直接つながっている。
今後は、採用目標を40%にする段階から、すでに確保した多国籍人材をどのように事業成長につなげるかという段階に移っていくことになりそうだ。同社も採用広報でグローバル企業のイメージを打ち出すほか、多国籍の学生を擁する大学への直接訪問など、採用活動を強化するとしている。
■「エンタメが好きな人」を国籍・性別・学歴を問わず採用
同社の採用方針にも、IPを軸に事業を展開する企業らしさが表れている。創業以来、国籍・性別・学歴を問わず、「エンタテインメントが好きな人」という点にフォーカスして採用を続けているという。
ブシロードはゲーム、トレーディングカード、音楽、ライブイベントなど、複数のエンターテインメント領域を横断してIPを展開している。そのため、特定の属性や経歴だけで人材を限定するのではなく、エンターテインメントそのものへの関心を採用の軸にする考え方には、同社の事業モデルとの整合性がある。
その結果として、11の国と地域の出身者が働く組織となっていることも注目される。
■人材を「現在の能力」だけでなく「将来への投資価値」で評価
もう一つ興味深いのが、人材の評価制度だ。同社では、人事制度を「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つで構成している。なかでも等級について、「将来への期待値(投資価値)」と定義している点が特徴的だ。5段階の等級を設定し、それぞれについて会社が期待する行動要件を定めている。
また、評価では個人の短期的な数値目標だけでなく、組織や事業への総合的な貢献を重視。年齢や社歴に関係なく役割や裁量を広げていくことを重視し、期待される役割、専門性、業績への貢献度を評価している。
評価は所属部門の上長による一次評価、担当役員による二次評価を経て、経営会議の構成員が参加する評価会議で最終評価を行う。
さらに給与については等級ごとの賃金テーブルを設け、過去4回分の評価を基にスキルや経験などを勘案して決定。賞与には直近6カ月の人事評価を反映し、業績達成度に応じて決算賞与を支給する場合もある。
これは、単に人材を採用するだけでなく、会社が必要とする人材を評価し、役割と報酬につなげる仕組みを整えることで、成長領域に人材を振り向けていく考え方と見ることができる。
■女性管理職や育児との両立も課題に
一方、人的資本に関する課題も明確になっている。正規雇用労働者に占める女性比率は34.9%。これに対して、管理的地位にある労働者に占める女性比率は18.2%にとどまる。同社は2028年までに女性管理職比率を35.0%とする目標を掲げている。
また、男性労働者の育児休業取得率は75.0%で、2028年までに100%とする目標を設定している。女性の採用だけでなく、男性の育児参加を促すことで、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境を整備し、社員が能力を十分に発揮できる環境を作るという考え方だ。
■「多様な人材を採る」から「成長戦略を担う人材を生かす」段階へ
ブシロードの人的資本戦略を全体として見ると、単なるダイバーシティ施策というより、グローバルIP企業への成長を人材面から支える仕組みづくりとして捉えると分かりやすい。
海外展開を加速するために外国人・英語人材を増やし、国籍や性別、学歴にかかわらずエンターテインメントへの志向を重視して採用する。そして、入社後は年齢や社歴ではなく、期待される役割や専門性、事業への貢献によって評価し、等級や報酬につなげていく。
特に外国人・英語人材比率はすでに目標の40%を上回る44.2%まで上昇している。今後のポイントは、こうして確保した多国籍な人材を、海外事業やグローバルなIP展開の中でいかに活躍させるかに移ってくるだろう。
人的資本戦略は、経営戦略と切り離して人材に関する指標を並べるだけでは、企業価値向上とのつながりが見えにくい。ブシロードの場合、「グローバルスケールの加速」という経営戦略から必要な人材を逆算している点に、同社の人的資本戦略の特徴がある。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社ブシロード
- 設立
- 2007年5月
- 代表者
- 代表取締役会長 木谷 高明/代表取締役社長 根本 雄貴
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高578億2300万円、営業利益47億5400万円、経常利益59億3000万円、最終利益45億6500万円(2026年6月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 7803