
日本BS放送(BS11)<9414>が、アニメを成長領域と位置付け、放送にとどまらない事業展開を進めている。従来からアニメ作品の放送に加え、配信やアニメ製作委員会への出資などを通じて収益化を進めてきたが、2026年8月期には新たに放送作品を活用したグッズ展開にも取り組んだ。全国にアニメを届ける放送網を入口に、作品・IPとの接点を収益機会へ広げる動きが鮮明になっている。
■全国のアニメファンに視聴機会を提供
BS11のアニメ事業を考えるうえで重要なのが、同社が「全国無料BS放送局」であることだ。アニメについては、東京MXなど特定の地上波局が多数の作品を放送している一方、そうした局の放送エリア外では、地上波でリアルタイムに視聴することが難しいケースもある。その点、BS11は全国を対象とした無料BS放送を行っており、地域による地上波の放送環境の違いを越えてアニメを届けることができる。
同社は2026年8月期も、四半期あたり約40本のアニメ関連タイトルを維持している。アニメ作品を継続的に放送することで、全国の視聴者と作品・IPとの接点を確保しているわけだ。これは単に「アニメに強い放送局」というだけではなく、多数のアニメ作品を扱えること自体が、その後の事業展開につながる基盤になっている。
■配信や製作委員会への参加で放送以外の収益を拡大
実際、同社はアニメを放送するだけでなく、配信やアニメ製作委員会への投資など、放送以外の収益機会を広げてきた。2026年8月期の個別決算では、放送事業の売上高が減少する一方、「その他」の売上高は11億5500万円と過去最高を更新し、前期比36.6%増となった。この「その他」には、TVerなどの配信関連収入に加え、アニメ製作委員会への投資による配当収入、イベント収入などが含まれている。
「その他」の売上高は2025年8月期の8億4589万円から大きく伸び、全社売上高に占める構成比も7.7%から10.4%へ上昇した。同社自身も、アニメや配信などの成長分野が大きく伸びたと説明している。つまり、これまでの「アニメを放送して広告収入を得る」モデルに加え、作品を起点として配信や製作委員会などにも収益源を広げている。

■さらに「グッズ化」という新たな収益機会へ
そして2026年8月期に目立つのが、その先の展開だ。同社は壽屋との協業を通じ、BS11で放送したアニメ作品のオリジナルグッズをオンラインくじとして販売する取り組みを複数タイトルで展開。また、A3との協業では「逃げ上手の若君」のオリジナルグッズを松屋浅草のアニメカルチャーセンターで展開した。
ここで重要なのは、BS11が自らグッズメーカーになるということではない。自社が持つアニメ作品との接点を、外部企業との協業によって商品化という別のビジネスにつなげている点にある。
放送によって視聴者を集め、配信や製作委員会への参加で作品の収益化に関わり、さらにグッズやイベントへと広げる。アニメを「番組」として扱うだけではなく、IPとして多面的に活用する方向へ事業領域を広げていると見ることができる。
■2027年8月期は「その他」売上を57.6%増へ
こうした動きは、2027年8月期の計画にも表れている。個別業績では、売上高120億円(前期比7.7%増)、営業利益21億円(同15.3%増)を計画。そのなかで、タイム収入は81億1100万円(同2.9%増)、スポット収入は20億6800万円(同1.8%減)とする一方、「その他」の売上高は18億2000万円(同57.6%増)を見込んでいる。「その他」の売上構成比は10.4%から15.2%まで上昇する計画だ。
アニメについても、2027年8月期の10月期クールで約40本の関連番組を予定するほか、壽屋とのオンラインくじ企画を継続し、BS11で放送したアニメ作品のオリジナルグッズを積極的に展開する方針を示している。イベントについても音楽や演劇など幅広い取り組みを進める。

■「全国で届ける」ことがアニメ事業の土台に
日本BS放送のアニメ事業は、全国の視聴者に作品を届ける放送網を土台として、そこから配信、製作委員会、商品化、イベントへと収益機会を広げるモデルへと変化しつつある。特にアニメは、作品を放送しただけで終わらず、配信、グッズ、イベントなど複数のビジネスへ展開できる。全国無料BSという立ち位置を生かして多くの作品を視聴者に届けられることは、その入口を数多く持てるという意味でも強みになる。
放送事業そのものでは、2026年8月期にタイム収入が3.3%減少するなど厳しさも残る。一方で、番組制作費を前期比10.3%増やして既存コンテンツの強化や新規コンテンツ開発、質の高いアニメの確保などに投資している。
放送局としてアニメを増やすことが、次の収益機会を生み出すための投資になる――。日本BS放送にとって、アニメは単なる編成上の強みではなく、放送を起点にIPの価値を広げていくための成長事業へと位置付けが変わりつつある。
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会社情報
- 会社名
- 日本BS放送株式会社(BS11)
- 設立
- 1999年8月
- 代表者
- 代表取締役会長 齋藤 知久/代表取締役社長 近藤 和行
- 決算期
- 8月
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 9414