上場SAPの四半期業績は明暗分かれる…ポイントはバトル系・カード系ゲームへの注力度合いか
少し時間が経過してしまったが、上場しているソーシャルゲーム関連企業の直近四半期決算をまとめてみた。今回は、ボルテージ、ケイブ、ドリコム、KLab、クルーズの四半期決算を取り上げており、ケイブとKLabが6-8月期、その他の会社は7-9月期の業績が対象となっている。また、%表示されているものは、前年同期ではなく、前年同四半期と比較した数字である。
総論的にいうと、ソーシャルゲーム関連企業は明暗分かれたといえる。2011年4-6月期あたりを境にして、前四半期比ベースで高い収益成長を達成している企業と、そうでない企業とに明確に分かれた。こうなった要因については様々な視点がありうるが、ソーシャルゲームの中でも顧客単価の高いカード系・バトル系ゲームに注力しているかどうか、という点がポイントになったと見ている。ドリコムやKLabが高い収益の伸びを見せたが、両者ともカードゲームやバトルゲームに注力している。クルーズについては従来より「くにおくん」シリーズを中心にバトル系ゲームに強みを持っている。
■ボルテージ
ボルテージ<3639>は、「王子様のプロポーズ for GREE」が月商1億円を見込める立ち上がりとなるなど新作は好調だったものの、前四半期比ベースでは横ばいだった。公式サイトの低下をソーシャルゲームで補っている状況と見られるが、決済代行手数料の高いソーシャルゲームの比率が高まったことで収益性が下がったようだ。
またテレビCMなど広告宣伝費の増加も収益を圧迫した。また、恋愛ゲームについては競争が厳しくなったようで、ランキングに占める比率が低下している。2011年6月期の第4四半期は「GREE」女性ランキングで6タイトル専有していたが、第1四半期では4タイトルに減っていた。
■ケイブ
ケイブ<3760>は、売上高は前四半期比で10%のマイナス、営業利益は同74%の減少となった。セグメントの変更で各事業での売上は開示されなくなったが、コンシューマーゲームの販売がなかったことや公式コンテンツの落ち込みが影響した模様。ソーシャルゲームは、2011年5月期の第4四半期では前四半期比1.7%減となるなど伸び悩む傾向が見られたが、大きな新作がなかったことを鑑みると他の部門のマイナスをカバーできなかったようだ。また開発費やソーシャルゲームの決済代行手数料も収益を圧迫した要因となった。「くにつく」や、GREEとの提携タイトルなどによる巻き返しが期待される。
■ドリコム
ドリコム<3793>は、前四半期比で売上高40%増、営業利益113%増と驚異的な伸びを達成した。「GREE」や「mixi」で運営中のソーシャルゲーム『陰陽師』、『ソード×ソード』、『ビックリマン』が月商1億円を超えるタイトルとなり、全体の収益の伸びをけん引。第2四半期における売上高は11億6500万円となり、全体の売り上げに占める割合は74.5%にまで上がっている。プラットフォームへの課金代行手数料などが増加したものの、ソーシャルゲームの収益の伸びで吸収した。
■KLab
KLab<3639>もドリコムと同様、売上高が前四半期比66%増・営業利益180%増と驚異的な伸びとなった。「Mobage」や「GREE」などで提供中の「真・戦国バスター」や「恋してキャバ嬢」が好調だったほか、「Yahoo!Mobage」で提供中の「キャプテン翼~つくろうドリームチーム~(PC)」がけん引役となった模様だ。「キャプテン翼モバイル」なども「Mobage」のゲームランキングで上位に入るなど足元も伸長していることが伺え、9-11月期も高い伸びが期待できそうである。中国のモバイルゲーム企業PiP社と提携し、「三国志」題材のスマホ向けオンラインゲームやFacebookのスマホへの対応など国内だけでなく海外展開も強化する方針。
■クルーズ
クルーズ<2138>の7-9月期の業績は、売上高が18%増、営業利益5%増となった。KLabやドリコムと見比べると爆発的な伸びではないものの、堅調な伸びとなっている。「くにおくん」シリーズを中心とする版権を使ったバトル系コンテンツを早い時期からリリースしており、「湘南爆走族」と「天地を喰らう」「戦国バトルくにおくん」が月次売上1億円を突破するなど好調だった。さらに「チーム× 抗争 ギャングキング」や「秘宝× 争奪!ドラゴンバトル」なども好調で、第3四半期以降の収益に寄与する見通し。第3四半期では5-7タイトルを新規でリリースする計画。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ケイブ
- 設立
- 1994年6月
- 代表者
- 代表取締役社長 秋田 英好/代表取締役CFO 伊藤 裕章
- 決算期
- 5月
- 直近業績
- 売上高122億7400万円、営業利益18億7000万円、経常利益19億4300万円、最終利益14億4100万円(2024年5月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3760
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656
会社情報
- 会社名
- クルーズ株式会社
- 設立
- 2001年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 小渕 宏二
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高140億円、営業利益6億4400万円、経常利益6億2800万円、最終利益2億5400万円(2023年3月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 2138
会社情報
- 会社名
- 株式会社ボルテージ
- 設立
- 1999年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 津谷 祐司
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高34億5600万円、営業損益9400万円の赤字、経常利益1500万円、最終利益500万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3639