【グリー決算説明会】新作4本がTOP20入り、本格攻勢へ "面白さ"生む「エンジン×IP×グローバル戦略」 1Qは「一過性にしない」ための投資に



グリー<3632>は、8月3日、2017年6月期の連結決算を発表するとともに、グリー本社でアナリスト・機関投資家・メディア向けの決算説明会を開催した。同日発表した決算は、売上高653億円(前の期比6.5%減)、営業利益79億円(同43.8%減)、経常利益100億円(同4.7%減)、最終利益121億円(同44.2%増)と減収・営業減益だった。通期では厳しい数字だが、四半期業績を見ると好転していることが見て取れる。

第4四半期会計期間(4~6月)の数字を見ていくと、売上高192億円(前四半期比[QonQ]で33.5%増)、営業利益24億円(同8.6%増)、経常利益28億円(同20.0%増)、最終損益21億円の赤字(前四半期15億円の黒字)となり、QonQでは増収・営業増益となった。最終赤字となったのは、子会社Fantasy Legend Studiosのゲームの減損損失と海外拠点の閉鎖による特別損失を計上したことによる。
 


前回の第3四半期から改善の兆しが見えていたグリーだが、新作4タイトルが全てアプリストアの売上ランキングでTOP20に入り、いよいよ反転攻勢を見せてきた。今回の決算説明会レポートでは、2017年6月通期よりも、第4四半期の状況と、続く第1四半期の見通しを中心にみていくことにしたい。
 


 

■第3四半期の振り返り


まず、第3四半期(1~3月)から振り返ろう。売上高はQonQで5.3%増の153億円だった。Webゲームのコイン消費の減少が続いたものの、ネイティブゲームの伸びでカバーした。第3四半期におけるネイティブゲームのコイン消費はQonQで31.7%増の54億コインと大きく伸長した。『ららマジ』(1月)や『武器よさらば』(4月)が寄与したほか、海外で展開した他社IPタイトルが押し上げた。

営業利益は同0.5%増の55億円だった。増収効果に加え、広告宣伝費を抑制が寄与した。ただ、ネイティブアプリの売上の伸びに伴って、アプリストアなどへの支払手数料が伸びたことに加え、3ミニッツのグループ入りに伴いのれんの償却額が増えたこと、新作リリースに伴う外注費の増加などが響き、費用全体では2億円増の89億円となった。
 


 

■大幅な増収を達成した第4四半期


続く第4四半期をみていくと、売上高が前四半期比で33.5%増の192億円と大きく伸びた。この四半期にリリースした『アナザーエデン』と『シノアリス』中心にネイティブアプリが好調に推移し、コイン消費が大きく伸びたことによる。国内ネイティブゲームのコイン消費は85%増の100億コインと大幅増となった。コイン消費全体に占めるネイティブアプリの比率は50%を超え、グリー全体のコイン消費も16%増の215億コインとプラスに転じた。
 


売上の増加に伴い、営業利益も伸びたものの、同8.6%増の24億円にとどまった。リリースしたヒットタイトルへの広告宣伝費を増やしたことに加え、AppleとGoogleなどプラットフォームに支払う手数料やIPホルダーへのレベニューシェアなどの支払い、6月期末に伴い期末賞与が発生したことなどが増益幅を抑える要因となったという。

同社によると、プラットフォーマーやIPホルダーへの手数料については、ブラウザゲームが最も低く、続いてオリジナルタイトルのネイティブアプリ、そして他社IPを活用したネイティブアプリと高くなっていく関係にある。採算性の高いブラウザゲームの売上が下がる一方、ネイティブが伸びるという、プロダクトミックスが変化したことも減益要因となった。
 
 
▲スクウェア・エニックスとの共同開発の『乖離性ミリオンアーサーVR』はSteamVRランキングで首位を獲得した。ただ業績にインパクトを与えるほどの収益はないとのこと。プラットフォームや言語、配信国を増やすことで売上を伸ばしていく考え。

 
▲広告・メディア事業は動画を主軸にする。オリジナル動画とアプリの制作を継続的に行い、メディア力を強化していく方針。第3四半期から第4四半期でメディアのPVが2.8倍に拡大した。


 

■第1四半期は減益見通し


続く2018年6月期の第1四半期(7~9月)は、売上高が前四半期比6.7%増の205億円を見込む。前四半期にリリースした新作4タイトルのうち3タイトルが6月リリースで、1ヶ月間のみの計上だったが、第1四半期から3ヶ月分の売上が寄与する見通し。ただ、IPタイトルは初月の売上が大きく出るため、保守的にみて「落ち着いた水準」の売上を想定しているという。

営業利益は同37.5%減の15億円と大幅な減益となる計画だ。増収と期末賞与がなくなることが増益要因となる一方、広告宣伝費を大きく増やすほか、売上の増加に伴いプラットフォーマーやIPホルダーへの支払いも増加する。「ネイティブゲームがヒットしたが、一過性のものとせず、長期的な視点で収益化させるため広告宣伝を積極的に行う。しっかり積み上げを図りたい」(田中良和社長)。
 


プロモーションについては、『アナザーエデン』で展開しているが、その効果が出ているそうだ。新規ユーザーや復帰ユーザーが増えており、継続率も上がっているという。大規模なプロモーションを行うことで、ユーザーの間で「流行っている」「今後もアップデートなど力を入れるのでは」という認識が広がり、友人を誘うといった口コミ効果を確認しているとのことだった。
 


 

■新作のパイプラインは6本


グリーでは、2018年6月期においては、合計6タイトルの開発パイプラインがあるという。そのうち、IPタイトルが5タイトルで、上・下の内訳は上期が1本、下期が4本となる。ただし、この数字については、開発承認を受けたものだけであり、新しく開発承認が出た段階で追加される可能性がある。
 


現在開発中の『WILD ARMS(ワイルドアームズ)』については「順調に進んでいる。リリース時期についてはパブリッシャーであるフォワードワークスから発表されるが、原作者の方々と一緒に開発を進めており、非常に盛り上がってきている。いいモノができあがってきているという手応えはある」(取締役執行役員の荒木英士氏)とのこと。
 
▲事前登録を受け付けているが、「ファンからの熱量を感じている」という。ゲームで推せばリアルで推せるという特徴への期待が大きいという。総選挙以外の手段でお気に入りのメンバーを推す手段を待ち望んでいた人も多かったという。「ユーザーの絶対数は『シノアリス』に比べると少ないが、熱心なファンの人に遊んでもらうことを想定している」(取締役の前田悠太氏)。
 

▲これまでグリーでは男性向けのRPGが多かったが、今回はアイディアファクトリー(オトメイト)と組んで女性向けのゲーム開発に取り組む。「事前登録は目標値以上に出ている」(取締役の小竹讃久氏)。


 

■グリーのゲーム戦略


▲ゲームエンジン戦略。グリーのゲームへの評価が向上した要因はここにある。同じジャンルのゲームを開発しつづけ、技術基盤部分を独自のゲームエンジンとして蓄積・洗練させていく。新しいゲームを開発する際、その基盤をベースにするため、ゲームとしての面白さの追求により多くの時間と予算をかけられるようになる。これはいわゆる同じゲームシステムで世界観やキャラクターだけを変える「側替え」とは異なるものだ。ネイティブアプリの開発・運用を経験にとどまらせず、資産として活用している。

 
▲グリーでは、オリジナルIPと、アニメ制作会社などと組んで新規創出する共同原作IP、すでに存在しているIPを活用する他社有力IPを使い分ける戦略をとっている。

 
▲グローバル戦略。従来は海外向けは海外スタジオから、日本向けは日本スタジオで開発する方針だったが、日本で開発したゲームを海外向けに出す戦略に転換した。海外展開にあたって、自前でリリースするだけでなく、現地の市場に詳しいパートナーと組んで提供していく。



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グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高754億4000万円、営業利益124億9800万円、経常利益130億8600万円、最終利益92億7800万円(2023年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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