【インタビュー】クリエイティブに専念できるリモートワークや最適な開発環境…マイクロソフトに聞くゲーム業界の「働き方改革」とは

達川能孝 gamebizプロデューサー/TeeL合同会社代表
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近年では「働き方改革」が掲げられて、多くの会社にて働く環境が見直されている。

特に、この2020年では世情の影響もあり、リモートワークの導入が加速している。ゲーム業界においてもその動きは当てはまるだろう。

多くの企業が働く環境の変化を進めている中、ゲーム企業ではどのような動きがあるのか。

今回SocialGameInfoでは、ゲームサーバー提供の他にも、リモートワーク導入についても支援を行なっている日本マイクロソフトにインタビューを実施。

ゲーム会社のリモート化に対する動向やクラウドを用いた開発環境の可能性について話を聞いた。
 

■ゲーム業界の働き方改革と解決すべき懸念とは?




日本マイクロソフト株式会社
ゲーム&エンターテインメント営業本部
本部長
米倉 規通

ゲーム&エンターテインメント営業本部
アカウントテクノロジーストラテジスト
小泉 健太郎


──本日はよろしくお願いします。まずはおふたりが現在携わっている業務について教えていただけますか?

米倉氏(以下、米倉):私は昨年に発足されたゲーム&エンタテイメント営業本部という部署を統括しております。

マイクロソフトのゲーム ビジネスといえば、これまでは、「Xbox」というコンソール プラットフォーム ビジネスが中心でした。

これに加える形で、昨年の7月より、改めてゲーム事業の営業本部を発足させ、Xboxのコンソールビジネスだけでなく、ゲーム業界のお客様に360度全方位で対応出来るようビジネスを推進しております。


私自身、15年近く「Xbox」の事業に関わってまいりました。

──「Xbox」で関わったゲームメーカーとのお付き合いは今の事業でも続いているのですね。

米倉:はい。「Xbox」時代に培った業界の皆様との関係を元に、今は、Xboxのみにとどまらず、幅広いビジネスのお話をさせていただいております。

加えて、当時はお付き合いの薄かったモバイル中心のゲーム会社様や競合と呼ばれていたコンソール メーカー様とも今はお話をさせていただく機会も増えております。

私の部隊では、ゲーム業界のあらゆる業務を支援することを求められていますので、ゲーム ビジネスに直接関連していなくとも、例えば「Microsoft Surface」といったハードウェア デバイスのゲーム会社様への導入や「Windows」「Office 365」といったソフトウェアサービスの導入も責任範囲となります。

先ほども申し上げた通り、ゲームにまつわるあらゆることで、360度全方位で、ゲーム会社様のお力添えをさせていただきたいと思っています。


──小泉さんはどのような業務に携わっているのでしょうか?

小泉氏(以下、小泉):私は以前、主に大企業のお客様向けサポート部門に所属していました。

ゲームとは関係の薄い仕事をしていましたが、一方でマイクロソフトが強みとしている、働き方を改善するツールによるソリューションやバックエンドサーバーの活用事例においては多くの企業様とご一緒させていただいた経験があります。

この営業本部が立ち上がる際も、その経験をゲーム会社様に活かしたく、異動できることとなりました。


──最近は世情の影響もあり、どの産業においてもリモートワークの動きが出てきたと思います。様々な産業をみてきたお二人からみてゲーム業界におけるリモートワーク推進の動向はいかがでしょうか。

米倉:かなり増えてきてはいますが、導入が進んでいる会社と以前と変わらないスタイルの会社の差が広がってきているなというのが所感です。

ゲーム開発という業界の特性上、オフィスから離れるのが難しい業務があるので、一般企業における業務をリモート化するのとゲーム会社の業務をリモート化するのでは勝手が違ってきます。




ですので、私たちもゲーム会社様にとってリモート化におけるチャレンジがどこにあり、そのお客様が持つ課題を考慮した上でソリューションを提案していく必要があると考えています。

──具体的にどのようなペインポイントがあるとお考えですか?

小泉:他の産業と比較した場合、ゲーム開発は何十年もの間、コンピュータ技術の最先端を突き進んできたと思います。

技術が驚くべき速度で進化する一方で、定型化した働き方を形成しづらく、環境づくりが追い付いていない印象に思えます。

クリエイターの皆様は楽しんでゲームを作られていると思いますが、身体的な負担は大きいはずです。


──かつてのゲーム会社はそれぞれに開発体制の文化があり、場合によってはブラックとも言われておりましたからね。

小泉:また、ゲーム開発において主役となるのはプロデューサーやクリエイターの方々ですが、その裏側で仕事をされている情報システム担当の方が必ずいらっしゃいます。

そういった方々は、皆が仕事をしやすい環境を作るため、社内の色々な人の悩みと向き合っているはずです。

会議を効率よく進めたいとか、開発パートナーとのコミュニケーションを円滑にしたいとか、ファイルの肥大化をおさえながら、競合に負けない開発スピードを実現したいとか、データの漏洩を防ぐためにセキュリティを万全にしたいなど、本当に様々な悩みがあると思います。



 

■ゲームサーバー以外にも求められている開発環境


──実際にゲーム会社からはどういった相談が多いのでしょうか。

米倉:ゲーム会社様とモダンな開発環境とは、というテーマでお話をしている中でよく話題に挙がるのは、「ビルド時間の短縮」、「リモートワークの導入」、「セキュリティ」の3点です。

それらの問題に対して、マイクロソフトのツールやサービスは、必ず何らかの解答を提案できるものとなっています。




──最近の市場の変化は激しく、スマホゲームにおいてもリリース後も臨機応変に対応していく必要があり、「ビルド時間の短縮」は各社悩ませているでしょうね。

米倉:分散ビルド ソリューションであるIncredibuild for Azureなんかはとても引きが強いですね。Incredibuild様とも良いリレーションを築かせていただいており、多くの会社でこちらの検証を進めてもらっております。

あとは、多くのゲーム開発会社様に、「Windows」、「Visual Studio」、「GitHub」を使っていただいておりますので、これらも弊社の強みだと思っています。

こういったサービス・ソリューションを使った私たちが提唱する開発環境をもっと広く発信していきたいですね。



▲「Visual Studio」
WindowsはもちろんAndroid、iOS、Webアプリケーションやクラウドサービスに至るまで幅広いアプリケーション構築ができる総合開発環境。


──リモートワークという観点ではいかがでしょうか。

小泉:昨今ではリモートワークが注目されており、家から出ることなく会社の資料やリソースにアクセスすることや、コミュニケーションツールを活用して、家から会議に参加するようなスタイルが認められつつあります。



マイクロソフトでは、そういったリモートワークを支援するツールやサービスを展開しているので、それらの提案と導入推進も行っています。

米倉:他の産業で共通して活用されている手法であっても、まだゲーム業界には浸透していないものも多いです。そういった他業種の産業で培った良い事例をゲーム業界にも反映していくことで、ゲーム業界の力になりたいと思います。

──具体的に、どのような事例がゲーム業界で活かせるのでしょうか。

小泉:ゲーム会社では、ゲームソフトだけでなく、アミューズメント筐体やおもちゃなど、ハードウェア製造をされている会社も多くいらっしゃいます。

そういう会社には、製造業向けの工場自動化や品質チェックのプロセスが活用できます。

グッズを商品としてお客様に届けるために、商流の確立やECサイトを立ち上げる方もおりますので、そういった場合はリテール事業の事例から、ECサイトの立ち上げを支援します。

セキュリティであれば、政府や金融機関がクラウドを導入した事例をお話できます。

米倉:先日お伺いした会社様では、元々はメールサービスを見直したいというお話でしたが、遠隔でコミュニケーションをとるためのツールとして私たちが提供するビジネスコラボレーションツールである「Microsoft Teams」を紹介してみたところ、他の悩みも全て解決しそうだということで、すぐに導入を決めていただけました。



▲「Microsoft Teams」
組織のメンバーとチャットやビデオ会議といったコミュニケーションを行ったり、チームでの進捗管理や最新ファイルを一括で管理できるコラボレーションサービス。


実際に、多くのゲーム会社様でも「Microsoft Teams」の導入率は高くなってきています。

コミュニケーション用のツールは他にもありますが、プライベート用ではなく、ビジネスとして必要な機能は何かを突き詰めていることが、「Microsoft Teams」を選んでいただける要因だと思っています。

小泉:ファイルの共有を迅速に、かつセキュアにしたいという希望に応えられたのが、導入の決め手になったようです。

 

■新時代に向けたセキュリティの考え方


──リモートワークにおいて懸念としてよく挙がるセキュリティに関しても相談は多いのでしょうか。

小泉:セキュリティに関しても多くのご相談をいただきます。マイクロソフトでは、AIが最新の攻撃パターンを常にチェックし、その知見を蓄積しています。この取り組みには10年以上の研究と実績があります。

”クラウド”はITのメインキーワードとなるものですが、他社にデータを預けることや、インターネットという実体のないところを経由する接続に不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。

ですが、”クラウド”はゲーム会社さんにとって間違いなくメリットが得られるものになっています。その為に懸念となる安全性や接続性については私たちマイクロソフトが徹底的にサポートしていきたいと考えています。


──実際に、クラウド上にデータがある方が安全だと言えるのはどういった理由からでしょうか。

小泉:通常考えられているセキュリティは、外からの攻撃に対しては強固に作りますが、どんなセキュリティでもいつかは破られます。

また、内部からの情報漏洩に対する防衛が難しいという側面もあります。世の中で起きている情報漏洩のニュースにおいても、従業員や元々スタッフだった人間から発生したケースが多いのもこの一因によるものでしょう。

マイクロソフトのセキュリティ製品やネットワークの考え方は、すべての人、すべての物、すべての場所、すべてのタイミングで認証のチェック対象とするというものです。

例え私が社内からキーボードを使ってメールを打ったとしても、それにもセキュリティチェックが働き、万が一普段と違う挙動が検知されると一切の通信が自動で切断されます。

従来は信頼された特定のネットワークを用いるトラステッドネットワークだったのに対し、今では逆に全てを信頼しないゼロトラストネットワークを推進しています。これはリモートワークの大前提になると言えます。


──いつかは破られるクローズドの環境よりどんな事態でも臨機応変に対応できる環境を構築していくということですね。

米倉:そうでないと利便性も生まれません。リモートワークを進めるにあたって、外から会社のリソースに繋げないようでは話になりませんので、通常のネットワークでどこまでセキュリティを高めていくかが重要となります。

内部からの漏洩については、決して社員を疑うというわけではなく、最初からすべてをチェックする仕組みを作ってしまうことで、通常と異なる挙動が発生した際にも対応できるという考え方をしています。

 

■クリエイティブに集中できる環境づくりをサポート




──お話を聞いていると、開発そのものの支援だけでなく、開発以外の総合的なサポートを手厚くされているようですね。

小泉:ゲーム会社様としてはゲームを作るというのが本懐ですから、”クリエイティブな仕事に集中していただきたい”というのが我々の想いです。

ですので、それ以外の部分においては、私たちマイクロソフトのツールやサービスを活かすことで協力していきたいと考えています。

米倉:ゲーム産業における全てのプロセスに対して、マイクロソフトは力になりたいと考えています。ゲーム業界でクラウドサービスと言うと、ゲーム サーバーに話の重きを置きがちです。

ゲーム サーバーも重要なポイントではありますが、マイクロソフトが皆さまに提供するサービスはそれだけでは終わらないということを知っていただきたいです。




──開発環境以外の分野においてもマイクロソフトに相談できる部分は多いのですね。

小泉:そうですね。私たちは情報システム担当の方々ともお付き合いを進めていきたいと考えていますので、まずは情報システム担当の方に向けたセミナーやウェビナーなどの実施を今後予定しています。

ゲームサーバーなどそれぞれの分野に特化した勉強会も予定していますが、まずはマイクロソフトの強みを活かした、どの産業にも自信を持って提供できる部分をセミナーとして開催したいと考えています。


──セミナーではどういった内容が講演されるのでしょうか。

小泉:まず一つが、制作環境のセキュリティにまつわる話です。「Azure Active Directory」という認証技術を使うと、すべてのエッジ部分でのチェック体制が実現できます。

この技術はマルチベンダーに対応していますので、「Azure」以外のクラウドサービスを利用中であっても導入できます。

「Azure」導入必須というわけではないので、セキュリティ全般にまつわる技術として活用いただけるかと思います。




二つ目に、制作環境と開発パートナーの安全な接続についてです。

今までは社内常駐で開発していたところを、「Azure」であればVPNをソフトウェアベースでご利用いただけますし、通信キャリアさんと一緒にご提供している、Express Routeという専用線サービスもあります。


そして、PC環境統制に関するお話もご紹介させていただきます。

開発機に「Windows」を使用する方も多いと思いますが、ソフトウェアバージョンやセキュリティ対策の状態の確認を、Windows Virtual Desktopという仮想的なデスクトップ環境を使うことでどのように最適化できるかをご紹介します。


──開発ツールに関するお話はありますか?

小泉:はい、マイクロソフトは昔も今もソフトウェア開発会社です。どのソフトウェアに限らず、「Windows」、「Office」、「Azure」を作りあげたソフトウェア開発のノウハウを、皆さんに提供したいと思っています。

ただ、すべてをこのセミナーの内容通りにしてほしいというわけではありません。興味のある部分をピックアップしていただき、ゲーム開発に活用していただきたいという想いです。


──最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

米倉:繰り返しお話したように、私たちは全方位で皆さまの力になりたいと思っており、それができると信じています。マイクロソフトの強みを活かして、様々なクラウド活用法を知っていただきたいです。



皆さんのお力になるため、鋭意コンテンツの準備を進めています。もしご興味をお持ちの方は、是非とも今後実施予定のセミナーやウェビナーにご参加いただき、担当者にコンタクトを取っていただければと思います。

小泉:マイクロソフトという会社が、ゲームやエンタテイメントと少し離れたイメージを持っている方もいると思いますが、この新しいチームでは、ゲーム産業に関わる皆さんを支えていき、皆さんに寄り添った存在でありたいと思っています。

結果として、ゲーム産業の成長の後押しができるよう、マイクロソフトの技術も活用していっていただきたいですね。


──ありがとうございました。


【インタビュー後記】
今回は、日本マイクロソフト社の事例を基にリモートワークなどのクラウド活用動向の話を聞いたが、それぞれの会社には歴史があり、それぞれに合ったクラウド活用法があるはずなので、まずはどういった形であるべきかを考えることが大事だと二人は話す。

今後行われるセミナー/ウェビナーにおいても、次世代の開発環境を一緒に考える機会にしていきたいそうなので、気になる人は参加してみてはいかがだろうか。


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