ボルテージ決算説明会 横田社長「激しい競争環境」「人件費増やしていきたい」 広告と新作効果で3四半期ぶりに売上増

ボルテージ<3639>は11月1日、2014年6月期第1四半期(7~9月期)の決算を発表し、都内で決算説明会を開いた。広告出稿の効果や新規タイトルの好調で7~9月の売上高22億9300万円と前年同期比3.4%増、4〜6月比でも3.1%増え、営業赤字額も1億1200万円と計画よりも小幅にとどまった(関連記事)。横田晃洋社長は説明会で、人件費(労務費)について「激しい競争環境なので生産性を維持しながら増やしていきたい」と述べた。一方、広告費については「ガラケー中心に減らした」「月額モデルのための広告費はやめる方針」「回収できるのならiOS・Android向けの広告費を増やしていく」と効率化を進めていく方針を主張した。(以下、かぎ括弧内は横田社長の発言)
 

▲説明会の横田社長



■3四半期ぶりに売上増、ガラケー・ソーシャル専業PF向け広告を削減

四半期の推移をみると、前四半期比で低下基調にあった売上高は、3四半期ぶりに増加に転じた。「既存のゲームタイトルの状況はそんなに下がっていない。一方で、7、8月のCMのポジティブな影響が9月にあったと思う」と話した。7月、8月は大規模なCMを実施したため赤字だったが、効率的な広告出稿の効果と新規タイトルの好調で7、8月の赤字幅は計画よりも縮小し、9月の黒字幅は計画よりも拡大した。「ガラケー(フィーチャーフォン)を中心に広告宣伝費を減らした」といい、広告宣伝費の総額は6億3200万円と、前年の7~9月より2億円ほど少なかった。決算説明会資料には「主にソーシャル専業プラットフォーム向けモバイル広告出稿を削減」と記載している。
 
 
 

■人件費は生産性維持しつつ「増やしたい」、広告費もネイティブシフト

今後の費用動向に関する質問が出た。約1年半前から開始した人員増計画「ビッグバン」は半年前頃に終了し、直近は人員増は抑制しているが、「激しい競争環境なので人員は今の数のままではいかないかなと思っている。効率的な生産性は維持した状態で、人員を増やせば比例して売り上げが増えるような状況を維持しながら、労務費は増やしていきたいと思っている」と述べた。広告宣伝費は引き続き抑制的だといい、「月額モデルに執行していた広告宣伝費はもうやめる方針。月額モデルの売上減少ペースが速くなり、売上にはマイナスだが、利益にはプラス。一方、App StoreやGoogle Play向けの広告宣伝費とCM費は、回収できるようだったら増やしていく」と指摘した。広告費については、従来のフィーチャーフォン・ブラウザゲーム向けを削りながら、ネイティブ向けに回していくという姿勢を示した。

 


■海外現地制作は「ヒット生むため試行錯誤中」

初参加というアナリストが複数いたことから、基本的な事業モデルを説明する場面も目立った。ボルテージの主要商品は「ストーリーコンテンツ」で、1作品の大ヒットで急速に売上高が増える企業ではないと説明。課金モデルは、「パーソナル」分野については「いわゆる『落とし切り』で、漫画の単行本を購入するようなマネタイズ。アプリダウンロードとプロローグは無料だが、本編購入が有料で400円くらい。番外編や続編も同水準で販売する。海外も基本的にこのモデル」という。一方、「ソーシャル」分野はフリートゥプレイのアイテム課金型。この2本柱で事業を運営している。19歳から44歳の女性約2000万人がボルテージのターゲットユーザーで、現在のMAUは30万~40万人、ARPUはビジネスモデルによるが数千円といったところ、と述べた。App Storeでは「エンターテインメント」に分類され、ランキングではボルテージのタイトルが上位に多数登場するが、エンタテインメントの市場規模はゲームほど大きくないという。

海外展開や今後の成長策に関する質問も相次いだ。米国向けは日本タイトルの翻訳と現地オリジナル作品の二方向があるが、英語圏では日本で開発したタイトルを日本の絵のまま翻訳したモデルが受け入れられており、このタイプがランキングの上位に来ることが多いという。一方、サンフランシスコで米国オリジナルタイトルを製作している。パーソナル分野で米国のオリジナル化を推進し、現地中心の製作を進めているところだが、「ヒットを生むために試行錯誤中」という。ソーシャル分野では北米版大型コンテンツの投入を検討しているようだ。日本でリリースした『ゴシップガール』の英語版については、IP(知的財産)を保有するワーナー・ブラザーズとの交渉などもあり、「検討中」との回答にとどめた。

 

 

アジア向けの展開については、市場規模の拡大に伴った成長を見込んでいる。「基本英語のみだが、東南アジアなどで現地語のアプリが出てくればそことの戦いになる」と述べた。「英語以外で、次はどの言語でアプローチするかが難しい。海賊版の状況や人口などを検討している段階。引き続き英語に注力する方針だ」という。

 

■フルネイティブを10月に投入、『地下鉄からの脱出』はマネタイズ最適化

ソーシャル分野では100%ネイティブアプリのタイトルを投入する。この7~9月までに投入したタイトルのなかにはネイティブアプリもあるが、キャラクターがしゃべるところなど一部web(技術)を使っているという。すでに10月に『ダーリンは芸能人』をフルネイティブとしてリリースした。男女向けコンテンツである『生存率0%!地下鉄からの脱出』を、マネタイズ仕様を最適化して、年明けに投入するという。「『地下鉄からの脱出』は好評だが課金に結び付ける力が弱いと考えており、ユーザーに楽しんでもらいながら、課金してもらえるモデルを検討している」と述べた。

 



■関連リンク

決算説明会資料


 
株式会社ボルテージ
http://www.voltage.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ボルテージ
設立
1999年9月
代表者
代表取締役社長 津谷 祐司
決算期
6月
直近業績
売上高34億5600万円、営業損益9400万円の赤字、経常利益1500万円、最終利益500万円(2024年6月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3639
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