
今回、クラウドサービスを提供しているアマゾン データ サービス ジャパン、グーグル、日本アイ・ビー・エム、日本マイクロソフトと、豪華メンバーが一堂に会することとなった。各社、自社のクラウドサービスでゲームを運用する際の特徴を話す予定という。
今回、登壇者の一人で、クルーズのインフラ全般のマネージメントをしている田沢知志・技術統括本部ディレクター(写真)に話を聞く機会を得たので、クラウドサーバーをテーマを選んだ背景を伺った。田沢氏はクルーズの創業メンバーでもある。
■『ACR DRIFT』の世界展開で見つけたクラウドサーバーの利点
――本日はよろしくお願いします。今回のテックヒルズは、案内を見た時に驚いたほどの豪華メンバーでした。今回取り扱うクラウドサーバーは熱いトピックなのですか?
「熱いですね。大きく分けて2つ理由がありますが、ひとつは新規参入の流れです。これまでアマゾンのAWSが老舗として大きなシェアをとっていたところに、他社クラウド業者も本腰を入れてきたという状況です」

「もうひとつは、我々が『ACR DRIFT』で挑戦している、今後実装予定の全世界同時対戦ですね。これをやろうとすると、どうしても、世界各地に拠点のあるクラウドサービスを使うという選択肢が有力となってきます」
――それはなぜでしょうか。
「モバイルアプリで世界同時対戦をやろうとすると、通信のレイテンシー(遅延)の短縮という課題に突き当たります。となると、海外に拠点があるクラウド業者の利用を考えなければなりません。(今回のテックヒルズをきっかけに)そのあたりのノウハウを聞けたらいいな、という気持ちもあります」
「バースト(瞬間的に突発する高負荷・高トラフィック)があったときに柔軟に拡張できる点も、クラウドのいいところですね。全世界のモバイル向けでゲームを配信するとなると、もちろんシミュレーションはしますが、どれくらいのバーストが発生するか、はっきり言えば読めません」
「当初はデータセンターを借りるという議論もありましたが、海外だと契約に時間がかかります。突発的なアクセスが増えたときには間に合いません。結果、拡張性の高いクラウドしかない、という結論にいたりました」
■クラウドサービス業界も競争時代に
――各社の参入の状況を見ていると、これからは「クラウドサーバーといえばAWS」という時代ではなく、選択肢が増えて、競争が激しくなりそうですね。
「確かに選択肢は増えました。競争で値段が下がり、同時に性能が上がるという状況は、利用者側からすれば嬉しいことです。過去の様々な産業でも起こった流れですが、各社の本格参入をきっかけに、クラウドサービスにも同じ流れがやってくるのではと考えています」

――マルチベンダークラウドということですか?
「そうですね。複数社のクラウドを使い分けるという形になるでしょうね。各社、強みのあるサービスが違いますので、そこを見極めながら組み合わせる、という感じでしょうか」
「インフラ構築基盤としてのIaaS(Infrastructure as a Service)型サービス、PaaS(Platform as a Service)型のサービス、物理サーバーのホスティングを含めたサービスなど、各社さまざまな特徴や強みがあります。今回のテックヒルズでは、そのあたりの説明をしていただけると期待しています」
――各社がそれぞれの強みを出して、クラウド市場で切磋琢磨するわけですね。最後に、Social Game Infoの読者にメッセージはありますか?
「みなさん、まずは(クラウドサービスを)使ってみましょう、というのがメッセージですかね。(ゲーム開発エンジンの)ユニティが登場してゲーム開発の難易度が低下したように、クラウドサービスを使えば、インフラの知識が乏しくても、比較的安いコストでワールドワイドなサーバー環境を手軽に検証できるようになったと思っています。どんどん使って試してみると、面白いと思います」
――ありがとうございました。テックヒルズでの講演も楽しみにしています。
会社情報
- 会社名
- クルーズ株式会社
- 設立
- 2001年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 小渕 宏二
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高141億9100万円、営業損益10億2500万円の赤字、経常損益8億3700万円の赤字、最終損益5億3000万円の赤字(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 2138