【インタビュー後編】『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』における新たな表現の挑戦 ──f4samuraiが語る“まどドラ”制作の舞台裏

 
アニプレックスから配信されている『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』(Magia Exedra:マギアエクセドラ。以下、『まどドラ』)。

本作は、TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズ歴代のキャラクターが集結し、劇団イヌカレー(泥犬)原案の新たな舞台設定・キャラクターが魔法少女の記憶とともに戦うRPGとなっている。まどかシリーズの魅力を3Dなど新しい表現にて、その世界が描かれているのが特徴だ。

本作は、アニプレックスのほか、WFSのゲームブランド「ポケラボ」とf4samuraiが協業開発している。3社による大規模なプロジェクトの中で、f4samuraiは、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下、『マギレコ』)から引き続き、世界観設計やシナリオ作成にて携わっている。

後編となる本稿では、同社ディレクター・小坂氏、シナリオディレクター・森氏にインタビューを実施。

前編に続き、ビジュアル演出でのこだわり、さらにチーム文化や今後の展望に至るまで、『まどドラ』開発舞台裏やf4samuraiのモノづくりに対する姿勢について話を聞いた。

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プレイヤーを惹き込むビジュアル演出の工夫



 ―― シナリオは多くの作品が関わるので、かなり調整されたのですね。ビジュアル面ではいかがでしょうか。

小坂:ビジュアル面は、シナリオほど過去作とのつながりに縛られるわけではなかったので、比較的自由に構築できました。制作にあたっては、開発チームがこだわり抜いた演出がふんだんに盛り込まれています。

たとえば、カードイラストに関しては「物語の一場面を切り取った記憶のような絵にしよう」という意図がありました。単なるポーズカットではなく、「この魔法少女がこの魔女結界で戦っているワンシーンなんだ」と感じられるようにしたかったんです。

加えて、どのキャラクターがいつ登場しても違和感がないよう、過剰な演出は避けながらも、並べたときのバランスが取れるように設計しています。たとえば、まどかといろはのように“W主人公”的な位置付けのキャラクターは、並べたときにペアに見えるようなイメージも意識していますし、みかづき荘のメンバー同士も、画面上で違和感なく並ぶようデザインしました。

さらに、今回3Dモデル化されたことで「上から見たら魅力的なキャラクター」「下から見たらより映えるキャラクター」など、視点によって印象が変わるような要素にも気づけるようになりました。それを逆手に取り、上から見たときにスカートが広がる表現などをカードイラストに反映したりもしています。

―― 3D化に際して、演出面やアート面で工夫したポイントを教えてください。

小坂:様々な作家さまが魔法少女のキャラクターデザインを担当されているので、3D化にあたりバトルなどで横に並んだ時に等身や身長差が違和感なく見えるようにこだわりながらポケラボ(現WFS)さんとも調整しました。実は身長差は少し実数値より大きめに設定しています。

また、360度どこから見てもかわいく見えるよう、整合性を取りつつ頭部を3D化するのも本当に難しく、3面図やモデリング後の見え感もポケラボ(現WFS)さんと試行錯誤しました。


―― エフェクト演出などの表現にもこだわりを感じます。

小坂:「エフェクトは3Dゲームでありながらも、2Dアニメーション作画っぽい」表現を目指しました。3Dだからといって、セルルックのキャラクターに対してエフェクトをただリアルにしてしまうと野暮ったい画面になってしまいます。3DCGっぽさは極力排除し、自然かつ誇張された、”画面を綺麗に盛れる”エフェクトを目指しました。

また、必殺技でのエフェクト演出では、空が晴れ渡る瞬間や空気の層の色彩変化といった、原作に忠実な描写を再現するため、1カ月ほどかけて調整したパートもありました(笑)。


―― Live2Dの塗りや動きも印象的でした。

小坂:Live2Dについても、塗りとモーションの両方でかなりアップデートを行いました。塗りに関しては、旧作の魅力を残しつつも“今っぽさ”や“華やかさ”を取り入れ、リムライト(縁取り光)をすべてのキャラクターに追加しました。

モーション面では、可動域や揺れるパーツを全体的に増やしたほか、新たに5動作と2つの表情を追加しました。

左右の首振り角度を広げたり、感情表現も悲壮や愕然など、作品に特有の心の揺れをより豊かに表現できるようになっています。



作品を愛し、みんなでより良くしようとチャレンジする会社f4samurai



――お話を聞いていると、f4samuraiの皆さんはかなり「世界観を作り出す」ことに丁寧であるなという印象ですが、お二人から見てf4samuraiの開発文化について、感じていることはありますか?

森:全体的に「原作リスペクト」が非常に強いチームだと感じます。IPと向き合うことに真摯で、開発中も作品を深く理解しようという姿勢が自然と共有されているなと感じますね。

小坂:その一方で、過度に保守的というわけではなく、「新しい価値をどう付与するか」という視点も自然と意識している人が多いなと思います。既存の世界観に要素を追加することに対する責任感を持ちながらも、拡張することへの意欲も感じますね。

森:意欲がありすぎて、やり過ぎてしまうことはありますね(笑)。ただ、そこはチームとしてフォローしています。

小坂:職種や年次に関係なく、提案が歓迎される空気があります。演出案やシナリオ構造など、若手メンバーがアイディアを出して、それが実装されたケースも少なくありません。

森:何より「作品が好き」「作品を良くしていこう」という気持ちがチームの根底にあるのが大きいですね。だからこそ、チーム内での衝突も少なく、方向性に迷ったときの判断軸が自然と一致する。それが心地良さにもつながっているのかなと思います。

完全分業ではなく、作品をより良くしていけるなら職種や役割も超えた意見や提案も受け入れられます。

 ―― 現在、コンテンツプランナーの採用も強化されていると聞いています。f4samuraiにおけるコンテンツプランナーは、具体的にどのような役割を担うのでしょうか?

小坂:当社におけるコンテンツプランナーの業務領域は大きく3つ、あるいは広義には4つあると考えています。どれか一つだけを担当するというよりは、可能な限りすべてに関与していただくスタイルです。

まず1つ目が「進行管理」です。アートワーク制作に関わる外部・社内とのやり取りや、制作物の監修業務など、定められた物量やスケジュールに沿って制作を円滑に進めていく役割ですね。

2つ目は「企画・構成の立案」です。たとえば新規企画であれば、どういうキャラクターを登場させるのか、どのような世界観で構成するのかといった要件定義から始まりますし、既存タイトルの運用フェーズでは、イベントごとのシナリオ設計やビジュアル、ギミックを含むアイディア出しなどが主な業務になります。

3つ目は、アート監修も行います。実際に出来上がってきた素材を見て「絵的に良いか・悪いか」を判断するといったものです。ですので、「進行管理に加えて、絵の良し悪しも判断する」ことに、やや難しさを感じるかもしれません。

ただ、最初からそれができる必要はまったくありません。むしろ「将来的にはそこも判断できるようになりたい」と思っていただける姿勢があれば大丈夫で、チームでフォローしながら進めています。

4つ目は、少し広義にはなりますが、「外部連携・プロモーション」です。グッズやプロモーション施策、マーケティングとの連携など、タイトルの価値をユーザーさんにどう届けていくかという観点での調整や提案も業務に含まれます。

―― なるほど。つまり、一つのタイトルに対して、企画から実装、プロモーションまで一貫して関わるような形なのですね。

小坂:おっしゃる通りです。「進行だけを担当しています」や「企画しかやりません」といった縦割りではなく、「これも、それも、あれもやります」といったスタイルに近いですね。その分、関われる範囲がとても広いという魅力もあります。

もちろん、1タイトルに1人というわけではないので、進行寄りの方、企画寄りの方など、それぞれの得意領域に軸足を置いたチーム編成にはなっています。ただ、他の領域には一切関わらない、ということではなく、「そこにも興味がある」「将来的には挑戦してみたい」といった方であれば、柔軟にスキルの幅を広げていける環境です。

―― 今後の展開についてお聞かせください。

小坂:『まどドラ』はまだ始まったばかりのタイトルです。これから本格的な運用フェーズに入っていく中で、まずはコンテンツをしっかりと積み上げていくことが最重要と考えています。シナリオ更新や、季節イベントなどを通して、ユーザーの皆さんが「この世界で生きている」と感じられるような体験を提供し続けたいです。

森:物語面では、シリーズの地図帳のような存在になれたらと思っています。どこか懐かしく、それでいて新しい。ユーザーさんが過去作への愛着を再発見したり、これから『まどか☆マギカ』シリーズに触れるきっかけになったりするような、そんな入り口としても機能してほしいです。

―― 開発チームとして、今後強化したい領域はありますか?

森:やはりシナリオの深度でしょうか。単なる文章量ではなく、どれだけ読後感が残るか。そういった体験設計をさらに磨いていくためにも、新たなシナリオの領域へチャレンジしていきたいですね。

小坂:よりキャラクターを身近に感じられるような要素の追加や、『まどドラ』自体がシリーズ歴代の物語を追体験できるというコンセプトもあり、今はまだ登場していない作品だったり、世界観をベースにした展開など、新たな可能性も模索していきたいと思っています。

―― 最後に、この記事を読んでいる読者にむけてメッセージをお願いします。

森:『まどドラ』は、『まどか☆マギカ』シリーズを知らない方でも楽しめるよう設計されていますし、長年のファンの方も思わずニヤリとできるように、随所に新しいシナリオを盛り込んでいますので、読んでいただけると嬉しいです。そして、作品の奥行きやつながりに気づいていただきたいです。

小坂:私たちは、ただ仕事としてこの作品に関わっているのではなく、心から好きという気持ちをもって開発に携わっています。その熱量が、少しでもゲーム体験に伝わっていれば嬉しいです。

もしこの作品や制作スタイルに興味を持ってくださった方がいたら、ぜひ一緒に次のチャレンジをしていけたらと思っています。

森:『まどか☆マギカ』シリーズが好きという方はもちろん、ゲーム開発や表現の追求にチャレンジしたいという方は、今のf4samuraiはすごく合っているタイミングだと思います。

気になる人はぜひ気軽に話を聞くといったところからでも良いので、お会いしたいですね。

―― ありがとうございました。





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