【インタビュー前編】『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』における新たな表現の挑戦 ──f4samuraiが語る“まどドラ”制作の舞台裏

 

 
アニプレックスから配信されている『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』(Magia Exedra:マギアエクセドラ。以下、『まどドラ』)。

本作は、TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズ歴代のキャラクターが集結し、劇団イヌカレー(泥犬)原案の新たな舞台設定・キャラクターが魔法少女の記憶とともに戦うRPGとなっている。まどかシリーズの魅力を3Dなど新しい表現にて、その世界が描かれているのが特徴だ。

本作は、アニプレックスのほか、WFSのゲームブランド「ポケラボ」とf4samuraiが協業開発している。3社による大規模なプロジェクトの中で、f4samuraiは、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下、『マギレコ』)から引き続き、世界観設計やシナリオ、Live2Dや必殺技でのエフェクト演出の制作などを中心に開発に携わっている。

本稿では、同社ディレクター・小坂氏(写真右)、シナリオディレクター・森氏(写真左)にインタビューを実施。世界観設計やLive2D演出、カードイラストの刷新、物語構造の工夫、さらにチーム文化や今後の展望に至るまで、『まどドラ』開発舞台裏やf4samuraiのモノづくりに対する姿勢について前後編のインタビューとして紹介する。

前編では、本作の立ち上げやストーリー制作について話を聞いた。
 

“『まどか☆マギカ』シリーズ”の世界観の魅力に浸れる作品『まどドラ』

―― まずはお二人の自己紹介をお願いします。

森:f4samuraiでシナリオディレクターを務めている森です。『マギレコ』ではシナリオ制作全般に携わり、今回の『まどドラ』でも引き続き、世界観に関わる設定の構築と、それに関連するシナリオを中心にディレクションも担当しています。

小坂:f4samuraiの小坂です。2021年にf4samuraiへ入社し、現在5年目です。最初は別のタイトルにプランナーとして配属され、その後『マギレコ』でコンテンツプランナー(アート・シナリオ領域の統括)を担当しました。本作『まどドラ』では、開発初期からディレクターとして関わり、f4samurai内のチームマネジメントや全体進行などを統括しています。

―― あらためて、『まどドラ』の企画概要を教えてください。

小坂:本作は、『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの魔法少女たちが登場する、ターン制コマンドバトルのRPGです。原作キャラクターはもちろん、『マギレコ』やその他スピンオフ作品のキャラクターたちも登場します。

3Dでのバトルや結界探索など、プレイヤーが魔法少女たちの世界を体感できる新しい要素も盛り込まれているのが特徴です。

森:ストーリー面では、これまでTVアニメや劇場版のストーリー以外に様々なシリーズが誕生してきました。すべてのストーリーを追いかけきれていないという方も、改めてシリーズの魅力を踏襲しながら様々な舞台と登場キャラクターを楽しめる設計になっていると思います。

―― プロジェクトの立ち上げは、どのような経緯で進められたのでしょうか?

森:『マギレコ』が4周年を迎えるタイミングで、今の時代に合った新しい体験を提供する企画を、f4samuraiもアニプレックスさんも構想を始めました。2Dベースだった『マギレコ』と異なり、今作では3Dの結界探索やバトル要素が導入されているので、よりプレイヤーが世界観に没入できるような体験を提供できたらなと。

小坂:そういった中、ご縁もありポケラボ(現WFS)さんとも協力して進めていくことになりました。f4samuraiは、『マギレコ』の知見を活かして開発協力することが期待されていました。

―― リリースから考えますと、『マギレコ』の運営と並行しての開発だったかと思います。こちらはどのように調整されていたのでしょうか?

小坂:開発時期が『マギレコ』の運営後期と重なっていたため、社内ではプロジェクト間で段階的にメンバーを異動させるようにしました。ですので、それぞれのチームにてしっかりと作品の開発と運営を進めていましたね。

森:新作があるといえど、「『マギレコ』を遊んでくださっているユーザーさんには、最後まで楽しみきってもらいたい」という思いがありました。

昨今ですと、サービス終了のお知らせ後は、復刻のキャラクター登場でそのまま終わる作品も多いですが、『マギレコ』については、最後の最後まで新規のシナリオやイベントを追加していくようにしました。

また、最後に向けてリリースされるシナリオには、『まどドラ』につながる台詞や伏線もさりげなく入れるようにしました。

―― 『マギレコ』の制作で得た知見を、今回の開発にどのように活かしていますか?

小坂:Live2Dの活用や、カードイラストの設計方針、演出手法など、『マギレコ』で培ったノウハウは本作にも多く活かされています。とはいえ、そのまま踏襲するのではなく、今作ならではの挑戦も数多く取り入れています。

森:特にシナリオ面では、舞台や時間軸の異なる複数のキャラクターが同じ場所に集まるという構造にしたことで、自由度が上がった反面、整合性を保つ設計が必要でした。

その舞台となる灯台劇場については、劇団イヌカレー(泥犬)先生に原案を頂戴したのですが、そこから様々なゲームのシステムと紐付けるための設定を考える必要があります。遊び方を踏まえつつ設定を落とし込んでいくという工程は、『マギレコ』で得た知見が役立っていると思います。

―― キャラクター間の関係性はどのように設計しましたか?

森:今回は様々なシリーズのキャラクターが登場するため、『マギレコ』のようなキャラクター同士のクロスオーバーはありません。ただ、新規でストーリーを作成する際はIFの要素も盛り込む必要があったので、その中でのバランスの取り方は意識しつつ、それぞれの個性がより立ち上がってくるような工夫や試みも加えています。

「まどか☆マギカ」らしさの表現を目指して

―― 演出表現の中で、ユーザー体験として特に意識した点はありますか?

小坂:『まどドラ』のプロジェクトとしては、3Dを活かしユーザーが魔法少女目線で作品を楽しむことができるという点にこだわっています。魔法少女として結界の中を実際に探索できることもあり、空間の恐ろしさやスケール感を体感できるよう床や天井などの美術の設定面をプロジェクトで議論しました。

イヌカレー(泥犬)先生から結界全体の構造やイメージを教えていただき設定を作成したので、探索マップでは結界全体の様子などを見ることもできます。

森:ADVパートの途中で確認できるムービーについても、アニメの見せ方とはまた異なる、魔法少女たちの目線で世界がどのように映っていたのかを描くため、一人称視点でのカメラアングルを意識してはどうか?とポケラボ(現WFS)さんに提案して3Dムービーを制作していただきました。

―― ストーリー制作で難しかったことは何ですか?

森:やはり、既存キャラクターの扱いですね。原作ファンが持っているイメージを壊さずに、新しい物語に再編集する必要がありました。『マギレコ』であれば、私たちで積み重ねてきたこともあるので、自分たちの責任で調整をしていきますが、『マギレコ』以外の作品のキャラクターを扱う場合は、原作者様の考えや思いも意識しなければいけません。

セリフや立ち位置、性格など、ひとつひとつに細心の注意を払い、原作との接点を意識しながら、新規のプレイヤーにもわかりやすい内容に調整しました。

―― 複数の世界線が交わる設定に対する挑戦も大きかったのではないでしょうか。

森:そうですね。今回は、様々な世界線からキャラクターが登場できる設定にしています。ある意味で『まどか☆マギカ』の多元宇宙的要素を取り入れつつ、整合性を保つために膨大な設定資料を作成し、ライター陣に展開していきました。

例えば『まどドラ』では魔法少女の「こころの器」を育成していくことで、ストーリーやボイスが解放されていくという、プレイをすればするほど、魔法少女を深く知ることができる機能が存在しています。

一部の「ストーリー」や「ボイス」などのコンテンツも、"報酬"の一つとして位置付けられる構成になっています。

報酬としてお楽しみいただくストーリーとは、ボイスとはを考え、「マギレコ」のときと比べても、「1話1話」「1セリフ1セリフ」をできるだけ密度高く、ボリュームたっぷりに盛り込むよう意識をしました。

既存の『マギレコ』プレイヤーに楽しんでもらえるためにも、テキスト量でどうフォローできるか、というのはかなり意識したところですね。

―― 魔法少女ごとの個別ストーリー制作も難しそうですね。

森:はい、そこも大きな挑戦でした。まだ全プレイヤーがたどり着けているわけではないと思うのですが、魔法少女個別のストーリーについても同様です。

既存のキャラクター設定をなぞるだけでは「もう知ってるよ」という印象になってしまいますし、かといって新規プレイヤー向けにすべてを説明するのも難しいです。

ですので、作品の既存ファンの方々には「新しい一面が見えた」と思ってもらいつつ、新規プレイヤーには自然にそのキャラクターの個性や背景が伝わるように、絶妙なバランスで構成する必要がありました。

―― 書く仕事として共感できますが、かなり難易度の高い執筆ですね(笑)。

森:実際、そのあたりのテキスト設計は、自分よりもライター陣が非常に苦労していました(笑)。たとえば、「どういう順番で情報を出すのか」「どのタイミングでどの設定を明かすのか」など、今まで『マギレコ』で執筆した内容も掘り返しながら、かなり繊細な調整が必要で…。

また、開発時点ではキャラクターストーリーを解放するタイミングが決まる前から執筆を進めていたので、仮に序盤でそのエピソードが見られたとしても満足感が得られるように意識していました。ライターによっては、他のキャラクターのストーリーとあとからつながって「あ、そういうことだったのか」と気づけるような、ちょっとした仕掛けも随所に入れるようにしてあります。

―― プレイ順に左右されず、どの順番でも楽しめる設計を意識されたのですね。

森:はい。仮に「このストーリーをクリアしないと他の話がわからない」という構造にしてしまうと、それはそれでリスクが生まれてしまいます。そのため、どのような順番でプレイされても“発見”や“面白さ”が残るように意識しました。

そのあたりは、細かなテキストのギミックやつながりをすごく考えてくれたライターがいて、本当に感謝しています。


後編では、ビジュアル演出へのこだわりや今後の展望について紹介していく(後編はこちら

 

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