【連載企画:f4samuraiマガジン⑭】次の世代へ挑戦のバトン。UIデザイナーチームリーダー対談

「世界に、“一番のワクワク”を届ける」をミッションとし、スマートフォン向けゲームの企画・開発・運営を行っているゲーム会社、f4samurai。

秋葉原に拠点を構える同社は、世界観の構築に強みを持ち、『オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-』(『オルサガ』)をはじめ、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(『マギレコ』)、『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』などを手掛け、いずれもヒット作として覚えている人も多いだろう。

そんなf4samuraiのゲーム開発はどのようにして行われているか。今回、gamebizでは、そんなf4samuraiの開発環境を、同社マスコットであるエフフォーくんと探る「f4samuraiマガジン」を特集掲載していく。同社がヒット作を輩出するその秘密について探ってみた。






皆さん、こんにちは! f4samurai・エフフォーくんです。

今回は、『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ(以下:ロススト)』で3年間ともにUI制作に携わってきたMatsuさんとNagoyaさん。2024年春にMatsuさんが務めていたUIチームのリーダーをNagoyaさんに引き継ぎました。

今回は、リーダーを引き継ぐことになった背景から、Nagoyaさんがリーダーになって変わったことや成長したと感じること、今後の目標まで語ってもらいました。

挑戦したかったリーダー業務 引き継ぎの背景

左よりNagoya(2019年9月入社)、Matsu(2019年4月入社)

ーー:お二人のf4samurai入社前のキャリアと現在の業務を教えてください。

Nagoya
新卒でWebデザイナーとしてWeb制作会社に入社したのですが、元々絵を描くことやゲームやアニメが好きだったので、もっと自分の得意なことが活かせる業界で働きたいと思い、ゲーム会社に転職をしました。前職であるその会社でUIデザインを含む幅広いデザインを経験したのち、知人の紹介で2019年にf4samuraiに入社しました。

現在は『ロススト』のUIデザインリーダーとして自身のUIデザイン業務に加えて、メンバーの制作物チェックやタスク・スケジュール管理、マネジメントなどを行っています。

Matsu
テレビCM制作会社の進行管理など、ゲームとは全く異なる業界や職種に従事していたのですが、もともとクリエイティブ職に興味があったこともあり、Webデザイナーを経て最終的にゲームのUIデザイナーにたどり着いた感じです。

f4samuraiには2019年に入社し、『ロススト』をはじめとするIPタイトルの開発と運用に携わってきました。現在は新規プロジェクトでUIデザインリーダーを担当しつつ、役職的にはデザインⅡ部部長も兼任しています。

『ロススト』でもUIデザインリーダーを務めていましたが、その役割は2024年春頃からNagoyaさんに引き継いでいます。

ーー:どういった経緯でリーダー業務を引き継ぐことになったのでしょうか?

Nagoya
最初のきっかけは、Matsuさんが新規プロジェクトへ異動になると決まったことです。異動の話が出たあたりから次のリーダーはどうしようかという話になり、当初はリーダー候補メンバーとしてベテラン層の採用をする予定でした。

Matsu
ですが、社内調整の結果、採用ではなく既存メンバーにリーダーを引き継いでもらう方向にシフトチェンジしました。候補のメンバーは何人かいたのですが、その中でNagoyaさんが適任だと判断し、お願いすることにしました。


ーー:Nagoyaさんが適任だと思った理由は何ですか?

Matsu
『ロススト』で3年近く一緒に仕事をしてきたのですが、その中でNagoyaさんの“献身性”の高さをすごく感じていたからです。

技術的な例えにはなってしまうのですが、UI制作において僕はワイヤーフレームなどの画面設計が得意で、逆にイラストを含むビジュアルデザインに少し苦手意識がありました。

一方、Nagoyaさんはイラストが好きなこともあって、ビジュアルデザインがすごく上手なんです。そういった僕が不得意とする業務をいつも助けてもらっていて、Nagoyaさん自身も積極的に提案を行ってくれていました。人に対する優しさや気遣いがあるだけではなく、状況を見つつプロジェクトのためになる行動をとれる方だなと感じていました。

Nagoya
面と向かって言われると恥ずかしいですね(笑)。

Matsu
ちなみに、Nagoyaさんは毎年バレンタインになるとプロジェクトオリジナルのチロルチョコを作って、メンバー全員に配ってくれるんです。これも献身性の表れですよね。この時期になるとメンバーの笑顔が増えるんです(笑)。

Nagoya
お遊び企画ではじめたチロルチョコですが、プロジェクトメンバーにも喜んでもらえているので楽しくやっています。
チョコのイラストは『ロススト』のUIチームのメンバーで分担して描いているのですが、毎年時間を作って一緒に描いてくれてとても感謝しています!

※「社内同人活動」として、社内でのみ配布しています。販売等は行っておりません。

 Matsu
リーダーにとって、プロジェクトのUIメンバーや他職種メンバーに対する思いやり、献身性というのは非常に重要な素質なので、「Nagoyaさんだったらすごく良いリーダーになってくれるんじゃないか?」と思い、リーダー引き継ぎを打診しました。引き受けてくれるか不安だったのですが、二つ返事で「やります!」と言ってもらえました。

ーー:Nagoyaさんも元々リーダーをやりたい気持ちがあったのでしょうか?

Nagoya
そうですね。自分のキャリアとしてリーダー職は視野に入れていたので「ぜひ!」とお受けしました。自分の中で今後ステップアップしていくためには、ただメンバーとしてデザイン制作をしていくだけではなく、新しいことにもチャレンジしていかなくてはという意識があったのと、社長の金さんとの面談の影響も大きかったです。

私が『ロススト』に配属された当時、UIチームにはMatsuさんともう一人ベテランの先輩デザイナーがいたのですが、「その2人の下でやっているうちはまだまだ」みたいなことを言われまして(笑)。そのときの自分の立場に不満もなかったですし、やっぱりMatsuさんたちの存在は大きく、尊敬もしているのですが、自分の経験不足が少し悔しくもなって。

なので、リーダーの立場になれる機会があればがんばってみたい、より成長したいと以前から思っていました。

ーー:引き継ぎ期間中、特に大変だったことはありますか?

Matsu
引き継ぎ自体が大変というよりは、新規プロジェクトへの異動の都合で繁忙期での引き継ぎになってしまったので、タイミング的に少し慌ただしくなってしまいました。

引き継ぎを始めた11月がちょうど『ロススト』のハーフアニバーサリーの月で、その後はすぐに年末年始なので、会社的にもプロジェクト的にもバタバタする時期でした。なので、お互い自分の通常業務を進めつつ、傍らで少しずつリーダー業務の引き継ぎをする……といった感じでしたね。

Nagoya
Matsuさんが基本的なマニュアルも用意してくださって、それを見つつ引き継ぎを行ったのですが、意思決定の考え方やメンバー・他部署との関わり方といった言語化が難しい引き継ぎは実際にリーダー定例などに一緒に参加させてもらって徐々に感覚を掴んでいきました。

あと、メンバーへのフィードバックは、私が実際に担当しつつ、どういう風に伝えるとより良いかなどを後からMatsuさんにアドバイスしてもらっていましたね。

「責任感」と「広い視野」リーダーになって成長したこと

ーー:Nagoyaさん自身、リーダーになって自分の中で変わったなと思うことはありますか?

Nagoya
責任感が強くなったことです。入社したばかりの頃は、自分のタスクをこなすことだけに意識を集中させていたのですが、リーダーになってからはメンバーの制作物チェックや進行・タスク管理なども行います。

なので、自分だけしっかりできていればOKではなく、「メンバーのミスは自分のミス」と考え、どの制作物もミスなく作れているかなど、チーム全体のクオリティアップを常に考えるようになりました。

また、それに付随して自分の視野が広がったと感じます。クオリティに関してもそうですが、リーダー業務としてスケジュールの進行やタスク管理もしなくてはいけませんし、プロジェクト全体のことを考えて話したり、提案したりしなければいけません。考え方が「自分のことだけ」から「チーム全体」に変わったことで、俯瞰して全体を見られるスキルが身に付いたように思います。

ーー:なるほど。そのマインドはMatsuさんからの教えで身に付いたのですか?それともリーダーをやっていく中で自然と身に付いたのでしょうか?

Nagoya
直接教えていただいたというよりは“Matsuさんの背中を見て学んだ”という感じでしょうか。Matsuさんの仕事での振る舞いや話し方など「こういう風にするといいんだ」ということを一緒に仕事をさせてもらった3年間で見て学ばせてもらっていました。

特に、メンバーや他セクションの方に対してどう話しているかや、フィードバックはどうしているかなど、言語化の難しい部分は学びが大きかったです。一緒に働くことで「自分の中でのリーダー像」を感じながらインプットすることができたと思います。


ーー:リーダーになって初めて感じた苦労はありますか?

Nagoya
リーダー業務自体が大変というよりは、リーダー業務をしながら自分のタスクも行うという両立が大変ですね。

『ロススト』のUIチームは、Matsuさんがリーダーを務めていた時からメンバーの制作物に対するチェック体制がしっかりしていたということもあり、忙しい時期はほぼ1日チェック作業に追われることもあります。その中で自分の作業時間も確保しなければいけないので、業務バランスの取り方はリーダーになったばかりの頃は難しかった部分かもしれません。

ーー:リーダー業務を通して、UIデザイナーやf4samuraiメンバーとして影響のあった部分はありますか?

Nagoya
「言語化能力」が身に付いたことは大きいですね。リーダーになるまでは誰かが作ったものに対してフィードバックをする経験はほぼなかったのですが、リーダーになってからそういった機会が一気に増えました。

そのときに「なんとなくいい」とか「もうちょっといい感じに」といった感覚的な言葉では相手に何も伝えることができません。なので、「どこをどうすればいいのか」具体化した言葉ではっきり伝えるようにするようになりました。

リーダーとしても必要なことですが、言語化の重要さを感じるようになってからは、一デザイナーとしても、会社のメンバーとしてもこの意識は大切だと思うようになりましたね。相手がきちんと納得できる伝え方は、フィードバックのとき以外でも有益だと感じています。

姿勢を受け継ぎつつ、さらに進化したチームにしたい

ーー:Matsuさんから見て、現在リーダーをされているNagoyaさんはどう映りますか?

Matsu
とてもしっかり務めてくれていて、本当にお任せして良かったと思っています!

先ほど、リーダーになって責任感が付いたとお話されていましたが、それは元々のNagoyaさんの素質だと僕は思っています。

リーダーをお任せする前から、ものづくりに対する情熱やこだわりを持っている方で、例えば、バナーやロゴを作る際にプロットを読み込んで、UIからもストーリーを感じられるようにと制作してくれるんです。「ユーザーのみなさんにちゃんと良いものを届けたい」という想いが、成果物はもちろん、作る過程でも伝わってきていました。

もう一つの視野の広さに関しては、確かに最近ぐんと成長したポイントだと思います。「立場が人を育てる」なんて言いますが、リーダーという立場になって見えるものが増えたのかなと感じます。

例えば、UIチームは各方面から様々な情報が集まるチームなので、僕がリーダーだったときから「ミスはUIチームが気付いて止めよう。最後の砦になろう」という話をよくしていました。人によってはチェックの厳しいリーダーに見えたかもしれませんが、Nagoyaさんはその姿勢を引き継いでくれていて「こういう行動をしておけばミスが減るんじゃないか、他のチームに負担を掛けずに済むんじゃないか」と考えて動いてくれるんです。

そういった物事を俯瞰して考える思考と行動は、リーダーになってからより磨きがかかったと言いますか、とてもリーダーらしくなってきたところだと感じています。


ーー:資質もありつつ、Nagoyaさんの言う通りMatsuさんの背中を見て、というのが伝わりますね。逆にMatsuさんとは違ったところでNagoyaさんのリーダーらしさを感じていることはありますか?

Matsu
僕は結構感覚で仕事をするタイプなのですが、Nagoyaさんはマニュアルなどの準備が丁寧で、誰にでも分かる形に落とし込んで進めてくれるタイプですね。特にタスク管理に関して、僕は簡単なリストでメンバーへの共有を済ませていたのですが、Nagoyaさんはより分かりやすく伝えるためにタスク管理のフォーマットを作り、日々メンバーと相談しながらきちっと管理・運用してくれています。

Nagoya
私が頭の中だけで整理できないタイプで(笑)。覚えていても抜けてしまうことがあるので、そういったことをなくすためにフォーマットで管理しています。このフォーマットはリーダー引継ぎの話が出た時から作りたいと思っていました。私がチームのタスクを管理するのは勿論ですが、自分だけでなく、メンバーも自発的に考えて、今必要なことに気付けるような体制にしたいなと思っていて。

リーダーがいなければ回らないチームではなく、メンバー全員で支え合えるようなチームにしたいという想いもあったので、まずは基本のタスク管理からみんなで可視化できるものにしていこうと考えました。これ以外にももっとできることはあると思うので、自分もメンバーもよりやりやすい方法を模索しながら今後もがんばっていきたいです。

Matsu
頼りにしています! これもNagoyaさんの良いところだと思うのですが、“みんな”というのをとても大切にしてくれるんですよね。リーダーになって初めて迎えた去年のハーフアニバーサリー施策のときもメンバーを引っ張って乗り越えてくれましたし、前任者である僕の意見まで聞いてくれて。

リーダーだからと独走するのではなく、リーダーだからこそ、メンバーから先輩・上長まで幅広い意見を求めながら進められるというのは素晴らしいと思います。

僕の背中を見てというのも光栄ですが、それだけでなく、Nagoyaさん自身の良いところも取り入れながら、自分のやり方を見つけてリーダーを務めてくれているのは上司としてとてもうれしい気持ちになりますね。

若手がもっと挑戦や成長できる環境を作る

ーー:最後に、今後の目標や展望を教えてください。

Nagoya
UIデザイナーとしては、得意なビジュアル面だけでなく、設計の経験も積んでいって、もっとデザイナーとしてスキルアップしていきたいと考えています。
リーダーとしては、もっとマネジメント観点を持てるようになっていきたいですね。

将来、リーダーだけでなく、マネージャーなどの管理職の道も考えられるよう、その第一歩として、現在任せていただいているチームリーダーを全うしていきたいです。

Matsu
僕も役職として部長などもさせていただいていますが、UIデザイナーであるという軸は自分の中にずっとあるので、現場の人間として今携わっている新規プロジェクトに貢献して、しっかりヒットする作品を作り上げていきたいと思っています。

そこはやりつつも、徐々に現役プレイヤーから組織を支える側に比重を置いていきたいとも考えています。これまでf4samuraiのタイトルは僕世代のメンバーが中心となって作ってきましたが、ずっと中心で居続けてしまうと若い世代が挑戦したり、成長できたりする機会が少なくなってしまうと思うんです。

なので、次世代のメンバーには今の自分の業務やポジションを託していければと考えています。

Nagoya
確かに今は「Matsuさんたちがいるから安心」とどうしても思ってしまうかも……。メンバーとしては有難いですが、「ずっとそのままで良い」と私たちも思っていてはいけないかもしれません。

Matsu
そうですね。なので、組織としてメンバーが今より挑戦しやすい環境を作ったり、フォロー体制を整えたりして、みんながさらに飛躍して活躍できるような仕組みづくりをすることが今後の自分の課題であり、目標でもあると思っています。Nagoyaさんのように、チャンスがあれば次の世代にどんどん託していきたいですね!

Nagoya
はい!安心して任せていただけるよう、がんばって信頼や実績を重ねていきます。引き続きよろしくお願いします!

ーー:ありがとうございました!



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