韓国のモバイルアプリマーケット「T-Store(Tストア)」はみなさん、耳にしたことはあるだろう。では、Tストアを開発・運営している韓国企業、Incross(インクロス)のことはご存じだろうか?
インクロス社はTストアの運営を始めた2009年からゲーム事業も開始しており、世界のモバイルゲームを韓国向けにパブリッシュする事業(ブランド名:The Apps Games)で多数の実績を残している。
今回、ドリコム社の協力のもと、このインクロスのモバイルゲーム事業部門のトップである鄭相吉(チョン・サンギル、Jung sang gil)取締役(写真)にインタビューする機会を得た。今後、日本展開を本格化していく方針や、韓国企業から見た日本市場、韓国市場の特徴を伺った。
――よろしくお願いします。早速ですが、インクロス社について教えていただけますか?
「我々は2001年に設立した企業で、スマートフォンの登場した09年にゲームビジネスを開始しました。スマホという世界的に基準となる端末が出てきたため、品質が高ければ成功できると考えたためです」
「インクロスにはモバイルゲーム、広告代理店、メディアソリューションの3つのビジネス領域があり、現在、我々のゲーム部門ではTストアの運営とモバイルゲームの配信を手掛けています。ゲーム部門がだいたい売上高の50%を占める規模感です。社員数は連結全体で700人、単独500人、うちゲームコンテンツを担当している人間が100人といったところです」
――ゲームの配信とは具体的にはローカライズですか。
「はい。他社が開発した世界の優良ゲームを韓国向けにローカライズパブリッシングする事業です。ジャンルを問わず、中国、日本、ロシア、欧州からのローカライズの成功実績を持っています」
「最近の代表作を挙げるとすれば、豪華なグラフィックと豊富なコンテンツでモバイル向けに最適化した3DのMMORPG『Legend of Gods(レジェンドオブゴッド、LOG)』と、オンラインMMORPGゲームの面白さをモバイル化したRPG『War Valley』を配信しています」
――今回の来日の目的は何でしょうか。
「我々はゲーム分野でさらに成長したいと考えております。そのためにも、大きな市場である日本とアメリカでの展開を進めるつもりです。『レジェンドオブゴッド』は日本市場での初挑戦タイトルとなる予定です」
――なるほど。これから踏み込んでいく日本市場の特徴をどうお考えですか。
「日本は独特なマーケットですが、『レジェンドオブゴッド』は非常に魅力的なゲームですので、日本市場の特徴に合わせてローカライズをすれば、日本でも成功できると思います。現在、自社でのパブリッシングを考えています。日本向けのローカライズは難しいですが、怖いという気持ちはありません。広告やマーケティングで、ドリコムなど日韓企業と協力したりアドバイスを頂いたりしました」
「『レジェンドオブゴッド』は、難しいイメージのあるMMORPGというジャンルを、簡単な操作で楽しめるよう制作したものです。戦闘も同期と非同期を組み合わせたもので、自動戦闘となっています。指一本のタッチだけでコントロールできるほか、ギルドやチャットなどユーザー同士のコミュニケーション機能も充実しています」
「本作は、韓国向けでもそうですが、ミドルコアユーザーや、カジュアルゲームに飽きてミドルコアに入ってくる人をターゲットとしています」
――韓国ではミドルコアジャンルのゲームが成長しているのですか?
「はい。韓国ユーザーの間では、カジュアルからミドルコアへの移行という現象が起こっています。その移行に伴い、Android向けゲームの市場規模も成長しました。韓国ではいま、”やさしいRPG”というのが一つのキャッチフレーズとなっています」
「カカオトークのランキング上位も、以前はカジュアルゲームばかりでしたが、最近はRPGやTCG(トレーディングカードゲーム)が多く出てきました。スクウェア・エニックスの『ミリオンアーサー』もそうですが、ミドルコア向けにゲームのラインナップが充実してきています」
――なるほど、「やさしいRPG」ですか。日本でも最近、モバイルゲームの売上ランキングでMMORPGのタイトルが上位に登場することがありますね。
「そうはいっても、韓国では、PCオンラインゲームをそのまま移植しただけのゲームが成功するわけではありません。スマートフォン向けにUI(ユーザーインターフェース)を改良して、プレイヤーが手軽に遊べ、疲れないようにしたものが成功しています」
――モバイルに最適化したMMORPG、という視点が重要というわけですね。ほかに、韓国市場の特徴を教えてください。
「韓国の最大の特徴は、コンテンツの消費速度が非常に早いことです。たとえばゲーム内のレベルの上昇ペースですが、最高レベルまで上昇するのに欧米や中国で1か月かかるとすれば、韓国では10~15日です。コンテンツの深さやシナリオの充実さが求められます」
「韓国ユーザーは競争が好きです。競争する要素が重要となります。また、韓国市場はグローバルのゲーム企業間の競争が激しくなっています。一方、韓国ユーザーは新しいコンテンツを取り入れる速度が早いというのもあります」
「韓国にはAndroid端末の大手メーカーがあるので、AndroidとiPhoneの比率は9対1でAndroidの方が多いです。この1年の売上ランキングデータを分析したところ、上位は韓国ゲームの数が多いですね。残りを欧米、日本、中国のゲームが占めているという感じです」
「プラットフォームは、カカオトークが高いシェアを占めているという状況が続いています。ただ、プラットフォームやマーケットという観点では、今後、様々な動きが起こるとのうわさもあります」
――韓国のPCオンラインRPGといえばPK(プレイヤーキル)という印象を勝手ながら持っていますが、モバイル向けのPKの状況はどうでしょう。
「モバイルではPVP(プレイヤー間対戦)はすでに存在しています。ただ、韓国のモバイルでは、まだリアルタイムバトルは一般的ではありません。ノンリアルタイムのPVPが主に遊ばれています」
「リアルタイムでなければPKの面白さは成り立たないというのもあり、それほど流行してはいません。モバイルもRPGユーザーが増え、PCオンラインのようにリアルタイムバトルが普及すれば、PKが流行る可能性はあります。その方向に進んでいるのでしょうが、まだ遠い話です」
――PKの流行はリアルタイムバトルの普及がカギということですね。韓国企業ならではの興味深いお話、ありがとうございました。最後にSocial Game Infoの読者に向けて何かメッセージはありますか?
「今年上半期中のリリースを目指している『レジェンドオブゴッズ』は誰でも遊ぶことができるシンプルなゲームです。5分以内に魅力を感じられるように制作していますので、ぜひ、手に取ってください」
「我々が韓国から日本に進出する過程をひとつひとつ見届けてほしいというのもあります。また、我々の中心事業である韓国向けローカライズパブリッシュでも、日本の企業に協力できると思いますので、ご相談を受け付けております」
インクロス社はTストアの運営を始めた2009年からゲーム事業も開始しており、世界のモバイルゲームを韓国向けにパブリッシュする事業(ブランド名:The Apps Games)で多数の実績を残している。
今回、ドリコム社の協力のもと、このインクロスのモバイルゲーム事業部門のトップである鄭相吉(チョン・サンギル、Jung sang gil)取締役(写真)にインタビューする機会を得た。今後、日本展開を本格化していく方針や、韓国企業から見た日本市場、韓国市場の特徴を伺った。
■モバイル向け3D/MMORPGで日本進出
――よろしくお願いします。早速ですが、インクロス社について教えていただけますか?
「我々は2001年に設立した企業で、スマートフォンの登場した09年にゲームビジネスを開始しました。スマホという世界的に基準となる端末が出てきたため、品質が高ければ成功できると考えたためです」
「インクロスにはモバイルゲーム、広告代理店、メディアソリューションの3つのビジネス領域があり、現在、我々のゲーム部門ではTストアの運営とモバイルゲームの配信を手掛けています。ゲーム部門がだいたい売上高の50%を占める規模感です。社員数は連結全体で700人、単独500人、うちゲームコンテンツを担当している人間が100人といったところです」
――ゲームの配信とは具体的にはローカライズですか。
「はい。他社が開発した世界の優良ゲームを韓国向けにローカライズパブリッシングする事業です。ジャンルを問わず、中国、日本、ロシア、欧州からのローカライズの成功実績を持っています」
「最近の代表作を挙げるとすれば、豪華なグラフィックと豊富なコンテンツでモバイル向けに最適化した3DのMMORPG『Legend of Gods(レジェンドオブゴッド、LOG)』と、オンラインMMORPGゲームの面白さをモバイル化したRPG『War Valley』を配信しています」
▼『Legend of Gods』
▼『War Valley』
――今回の来日の目的は何でしょうか。
「我々はゲーム分野でさらに成長したいと考えております。そのためにも、大きな市場である日本とアメリカでの展開を進めるつもりです。『レジェンドオブゴッド』は日本市場での初挑戦タイトルとなる予定です」
――なるほど。これから踏み込んでいく日本市場の特徴をどうお考えですか。
「日本は独特なマーケットですが、『レジェンドオブゴッド』は非常に魅力的なゲームですので、日本市場の特徴に合わせてローカライズをすれば、日本でも成功できると思います。現在、自社でのパブリッシングを考えています。日本向けのローカライズは難しいですが、怖いという気持ちはありません。広告やマーケティングで、ドリコムなど日韓企業と協力したりアドバイスを頂いたりしました」
「『レジェンドオブゴッド』は、難しいイメージのあるMMORPGというジャンルを、簡単な操作で楽しめるよう制作したものです。戦闘も同期と非同期を組み合わせたもので、自動戦闘となっています。指一本のタッチだけでコントロールできるほか、ギルドやチャットなどユーザー同士のコミュニケーション機能も充実しています」
▼『Legend of Gods』のプロモーション動画
「本作は、韓国向けでもそうですが、ミドルコアユーザーや、カジュアルゲームに飽きてミドルコアに入ってくる人をターゲットとしています」
■韓国市場のキーワードは「やさしいRPG」…ミドルコアユーザーへの移行進む
――韓国ではミドルコアジャンルのゲームが成長しているのですか?
「はい。韓国ユーザーの間では、カジュアルからミドルコアへの移行という現象が起こっています。その移行に伴い、Android向けゲームの市場規模も成長しました。韓国ではいま、”やさしいRPG”というのが一つのキャッチフレーズとなっています」
「カカオトークのランキング上位も、以前はカジュアルゲームばかりでしたが、最近はRPGやTCG(トレーディングカードゲーム)が多く出てきました。スクウェア・エニックスの『ミリオンアーサー』もそうですが、ミドルコア向けにゲームのラインナップが充実してきています」
――なるほど、「やさしいRPG」ですか。日本でも最近、モバイルゲームの売上ランキングでMMORPGのタイトルが上位に登場することがありますね。
「そうはいっても、韓国では、PCオンラインゲームをそのまま移植しただけのゲームが成功するわけではありません。スマートフォン向けにUI(ユーザーインターフェース)を改良して、プレイヤーが手軽に遊べ、疲れないようにしたものが成功しています」
――モバイルに最適化したMMORPG、という視点が重要というわけですね。ほかに、韓国市場の特徴を教えてください。
「韓国の最大の特徴は、コンテンツの消費速度が非常に早いことです。たとえばゲーム内のレベルの上昇ペースですが、最高レベルまで上昇するのに欧米や中国で1か月かかるとすれば、韓国では10~15日です。コンテンツの深さやシナリオの充実さが求められます」
「韓国ユーザーは競争が好きです。競争する要素が重要となります。また、韓国市場はグローバルのゲーム企業間の競争が激しくなっています。一方、韓国ユーザーは新しいコンテンツを取り入れる速度が早いというのもあります」
「韓国にはAndroid端末の大手メーカーがあるので、AndroidとiPhoneの比率は9対1でAndroidの方が多いです。この1年の売上ランキングデータを分析したところ、上位は韓国ゲームの数が多いですね。残りを欧米、日本、中国のゲームが占めているという感じです」
「プラットフォームは、カカオトークが高いシェアを占めているという状況が続いています。ただ、プラットフォームやマーケットという観点では、今後、様々な動きが起こるとのうわさもあります」
■プレイヤー間対戦の未来…PK流行はリアルタイムバトルの普及がカギ
――韓国のPCオンラインRPGといえばPK(プレイヤーキル)という印象を勝手ながら持っていますが、モバイル向けのPKの状況はどうでしょう。
「モバイルではPVP(プレイヤー間対戦)はすでに存在しています。ただ、韓国のモバイルでは、まだリアルタイムバトルは一般的ではありません。ノンリアルタイムのPVPが主に遊ばれています」
「リアルタイムでなければPKの面白さは成り立たないというのもあり、それほど流行してはいません。モバイルもRPGユーザーが増え、PCオンラインのようにリアルタイムバトルが普及すれば、PKが流行る可能性はあります。その方向に進んでいるのでしょうが、まだ遠い話です」
――PKの流行はリアルタイムバトルの普及がカギということですね。韓国企業ならではの興味深いお話、ありがとうございました。最後にSocial Game Infoの読者に向けて何かメッセージはありますか?
「今年上半期中のリリースを目指している『レジェンドオブゴッズ』は誰でも遊ぶことができるシンプルなゲームです。5分以内に魅力を感じられるように制作していますので、ぜひ、手に取ってください」
「我々が韓国から日本に進出する過程をひとつひとつ見届けてほしいというのもあります。また、我々の中心事業である韓国向けローカライズパブリッシュでも、日本の企業に協力できると思いますので、ご相談を受け付けております」
(左からインクロス社のパブリッシュ担当のチョン・ギョンファさん、チョン・サンギル取締役、マーケティング担当のパク・ヒョンヨンさん)
会社情報
- 会社名
- Incross
- 代表者
- Jae-won Lee(CEO)