【インタビュー】100万DL突破で勢い付く『三国志乱舞』ヒットの要因を開発陣に聞く。中国の大手IT企業・テンセント社を起点に行う海外展開も直撃
スクウェア・エニックス初となる「三国志」をテーマにしたスマートフォンアプリ『三国志乱舞』。本作は、曹操や劉備、孫権、関羽、張飛など三国志に登場する有名武将たちを配下に従え、天下統一を目指し戦うドラマティック三国志RPGとなっている。プレイヤーは三国志の舞台に降り立ち、妖艶な美女軍師「孔明」に誘われて軍師となり、名だたる「男武将」 「女武将」を率い成長させながら、天下分け目の戦いを繰り広げていく。
2013年6月20日のiOS版を皮切りに、超美麗な武将、新感覚オリジナルバトルシステムの搭載など、「スクウェア・エニックスが贈る新たな三国志」として、プレイヤーの注目と人気を集めていった。そして、ついに先日、大台となる100万ダウンロードを突破。
そこで本稿では、間もなくサービス開始1周年も迎える『三国志乱舞』のプロデューサーに、現状や今後の展望に加えて、ヒットの要因や海外展開の取り組みなどをインタビューしてきた。
■そもそも『三国志乱舞』とは
本作は、曹操や劉備、孫権、関羽、張飛など三国志に登場する有名武将たちを配下に従え、天下統一を目指し戦うドラマティック三国志RPG。多数の超美麗な男女の武将がゲーム内を彩るほか、ワラワラ動く兵たちを指先ひとつで指揮する新感覚のバトルなどが魅力だ。
バトルでは、それぞれに特徴がある全30種以上の兵科を配置し、リアルタイムで指揮して戦う新感覚のシステムを搭載。多種多様な攻撃を繰り出しワラワラと動く兵たちの細やかなモーションによる戦闘は、まさに手に汗握る大乱闘である。
また、武将を指揮して挑む戦闘で勝利をつかむ決定打のひとつが「必殺技」。 一部の武将たちが持つ「必殺技」は、兵をタッチするだけで即座に発動するのだが、その「必殺技」がキレイに決まると爽快感を味わえる。さらに3段階のランクでリーグ分けされているギルドバトル「乱舞戦・天」では、開催期間中に獲得貢献ポイントを競い合いながら戦っていく。プレイヤーは、各ランク内でギルド1位を目指していく。
そして、三国志に登場する英雄豪傑たちが、著名イラストレーター陣による超美麗な「武将カード」となって登場。杉田智和さん・田中敦子さん・中田譲治さんといった人気声優の方々がゲーム中の三国志武将のボイスを担当しているのも見逃せない。
■配信開始日
iOS版:2013年6月20日
Android版:2014年3月27日
■魅力あるゲーム仕様に昇華したのは開発パートナーからの一声
『三国志乱舞』プロデューサー
株式会社スクウェア・エニックス
第12ビジネス・ディビジョン
長谷川 友洋氏
――:よろしくお願いします。込み入った話で恐縮ですが、まず長谷川さんの経歴を伺わせていただければと思います。
じつは過去に勤めていた会社では、カジュアルゲームのポータルサイトを運営していたことがあります。当時のサイトでは、FlashやShockwave、JavaScriptで制作されたゲームを中心に取り扱っていました。海外からタイトルを日本国内で展開したり、国内のクリエイターさんに協力してもらいゲーム開発などを行い、ディレクターではありましたが、トータルプロデュースのような業務をしていました。そのほか、海外で制作されたMMOタイトルなどの運営にも携わりました。
――:なるほど。今回のソーシャルゲームを手掛ける前から、すでにオンラインゲーム運営のノウハウなどをお持ちのようですね。それでは、月並みな質問ですが『三国志乱舞』の開発経緯について教えてください。
企画を立ち上げた当初は、もともと本格的なタワーディフェンスゲームとして開発を進めていました。というのも欧米では、リアルタイムストラテジー(RTS)のカジュアル版として、比較的タワーディフェンスゲームは受け入れられていたのですが、まだ当時の日本ではゲームジャンルとしてあまり知られていませんでした。だからこそ、あえてガッチリしたタワーディンフェスを作ろうと思い立ったのです。そのため当時は、現在のゲーム内容とは全く異なりました。
――:結果的にはソーシャル要素のあるタイトルになったということは、本格的なタワーディフェンスのところから、あえて要素を削ぎ落とす作業も行ったのでしょうか。
ええ、だいぶ削ぎましたね。当時はルートが複雑化していたり、追加で自由に新しい武将を置けたり、アップグレードできたりと、たくさんの要素が備わっていて、本当にガチのタワーディフェンスゲームでした。ただ、それはそれで社内テストの結果では概ね好評でしたね。しかし、実際に自分で遊んでいて、なかなかストレスに感じるポイントも多く、当時はカード型のソーシャルゲームも全盛期であったため、色々と考えてしまうところがありました。そして、タワーディフェンスの流れと要点だけはきちんとまとめて、そこにソーシャル要素を加えていったのです。
――:そうだったんですね。そこからどのようにして、タワーディフェンスの要素とソーシャル要素を切り分けて加えていきましたか。
まず武将の配置を決めたり、戦闘中に必殺技を繰り出したりできる点を、タワーディフェンスの要素として残していきました。そして、当時は戦闘時間が2~3分でしたが、ソーシャルゲームのテンポの良さを高めるために、バトル中のスピードも調整していきました。また、もともとオンラインゲームの運営にも携わっていたため、何処でプレイヤーが離脱するかといった分析も意識的に行っていきました。その離脱率を徐々に無くしていくことはもちろん、タワーディンフェスの強みを残すなど、なかなかトレードオフで難しいところは多々ありましたが、緻密に調整していき現在の形に行き着きました。
――:スクウェア・エニックス初となる「三国志」タイトルとなりますが、このテーマを選定した理由について教えてください。
ふたつ理由があります。ひとつは単純に私が三国志好きであることです(笑)。子供の頃からゲームを遊んだり、横山光輝さんの漫画『三国志』を読んだり、そのほか小説や映画なども一通り網羅していきました。三国志のシミュレーションゲームでは、王朗軍の弱い武将で全国統一したり、黄巾賊で国を黄色に埋めつくしたりと、My縛りプレイで繰り返し遊ぶほどハマっていました(笑)。
ふたつ目は、多くの人が知っている世界観のため、ゲームの魅力を伝えやすいという点です。たとえ三国志を知らない人でも「呂布が強い」、「関羽はヒゲ」といった武将イメージがあると思います。そんな確立されたイメージで、ゲーム性までも補完してくれるのは、三国志の強みであると思っています。
――:とはいえ、昨今のモバイルゲーム市場には、本当に多くの「三国志」タイトルが存在していると思います。他社との差別化については意識されましたか。
本作をリリースした2013年6月では、まだ三国志とディフェンスゲームを組み合わせて、なおかつカードソーシャルの要素を備えたゲームは無かったと思います。もともと当時から今後も三国志タイトルが出続けるということは予想していたため、そこまで特別意識はしていませんでした。単純に「どういう箇所でプレイヤーの心が動くのか」という三国志好きな自分なりの視点で、三国志の世界観はもとより、ゲーム性を昇華していきました。あとはスピード勝負ですね。私が考えているということは、他にも考えている人がいると、常に思っております。
――:ちなみに開発中はどのような感じでしたか。
『三国志乱舞』は、株式会社ヴァンガードさんとの共同開発でして、大胆にもリリース半年前に一度企画概要を大幅に変えることがあったんですよ……。先ほど、申し上げた本格なタワーディフェンスゲームから、ソーシャル要素を加えたゲームにするといった流れのことですね。
弊社では、きちんとモック版→α版→β版と段階を踏んで開発していくのですが、そのモック版を作った段階で「タワーディフェンスはおもしろいけど難しいよね」という話が挙がりました。ここの時点で私も見直しが必要かもしれないと思っていたところに、なんとヴァンガードさんのほうから「企画概要を変えよう」と提案してくれました。「もっと成功するためには」とか、「こういう機能はいらない」「シンプルにしましょう」などなど。
――:それを聞いた長谷川さんは。
きちんと我々が伝えてきた意図を理解してくれたうえで、最善の手段を見つけて提案してきてくれたので……これは本当に嬉しかったですね。
■堅いイメージの「三国志」という間口を広げるために…
――:開発者視点から見る『三国志乱舞』の魅力はどこにあると考えていますか。
ひとつは“シンプルなディフェンスゲーム”であることです。他作品と比べて手軽に攻防戦が味わえるのは魅力と感じています。また、武将カードイラストのクオリティの高さも注目してほしいです。もともとスクエニ内の複数の著名タイトルに携わっていたベテランデザイナーが今回の『三国志乱舞』のアートディレクターとして、今回デザイン周りやカードイラストをチェックしています。
▲曹操、関羽(女)
――:武将のイラストは外注でしょうか。となるとクオリティ維持のため、御社のチェックも大変かと思います。
一部、社内で制作をしていますが、ほとんどが外部のイラストレーターさんとなります。イラストレーターさんにお願いする場合、本来であれば、かなり細かい調整や修正なども依頼すると思いますが、私のほうではそれをなるべくしないようにしています。
やはりみなさん、それぞれイラストレーターとして活躍されている方が多いため、その方たちのポテンシャルをフルに発揮していただくことが、何よりも大切だと思っています。これから『三国志乱舞』を2年、3年と長い期間、皆さんに楽しんでいただくためには、パートナーとなるイラストレーターさんとの関係を厚くする必要があるということです。
イラストの発注では、描いていただく武将の名前に加えて、その武将の年代や活躍シーンなどの要点を添えて依頼しますが、あとはイラストレーターさんの独創性を尊重して任せてしまいます。もちろん、明らかに修正すべきポイントはお声がけしています。
――:個人的には、ホーム画面のUI(ユーザーインターフェイス)が非常に操作しやすく印象に残っています。こちらのご苦労などもありましたか。
※上記のTOP画面はiOS版のものです。
ありがとうございます。UIは、見た目的に格好いいことに加えて、使いやすさ、どこが最初に目をひくかを意識しながら手掛けました。じつは、UIはアートディレクターと相談しながら私が切った部分もあります。もともとゲーム業界に入る前には、DTPやWEBデザイナーなどもやっていたため、見る方の目線の動きやフォントサイズ・書体・色など、要点と理由を考えながらデザインしております。
――:なるほど。ちなみにiOS版『三国志乱舞』では、これまで『戦国炎舞』(サムザップ)や『にゃんこ大戦争』(ポノス)など、様々なコラボをやられてきましたが、こちらは御社から声をかけたのですか。
我々のほうからお声がけしました。コラボでは、とあるお仕事関係で繋がりを持たせていただいて、そこから話が発展していくことが多いですね。
――:なかでも『にゃんこ大戦争』は、かなりインパクトがありましたね(笑)。
すごいゲーム画面ですよね(笑)。世界観が異なるため、プレイヤーの反応も気にしていましたが、実際には驚きつつも、良いお祭り要素として反応も上々でしたね。やはり自分自身が三国志をテーマにした作品を手掛ける者として、その敷居の高いイメージを緩やかにして、多くの人に三国志を味わっていただきたい想いもあったので、そういう意味ではコラボが三国志をテーマにしたゲームを広く遊んでいただけるきっかけにも繋がったと思っています。
――:配信当時のユーザーからの反響はいかがでしたか。
やはり弊社はコンシューマのイメージがあるため、スマホのゲームとしてスクエニ初の三国志タイトルが出たということで、みなさん注目してくれましたね。実際にゲームが開始してからは、嬉しいことに初期の定着率が非常に高かったです。つい先日に配信開始したAndroid版もおかげさまで好評ですね。
――:細かいところですが、 iOS版とAndroid版のアイコンが違いますよね。こちらには、何か意図が……。
▲iOS版のアイコン(貂蝉)、Android版のアイコン(曹操)
もともとiOS版も男性の曹操でしたが、その後に女性の貂蝉に変更しました。曹操のイラストは、アイコンはもちろん、広告としても非常に好評でしたが、長く続けているとアップデート感が伝わらないため、がらりと変えて貂蝉となりました。もちろん貂蝉にアイコンを変更してからは、ユーザーからの反響を検証したうえで最終決定をしています。そしてAndroid版では、iOS版のリリースからの流れを汲むために、曹操としています。あとは験担ぎですね(笑)。
――:験担ぎですか(笑)。
結構、験を担ぐチームなんです。新宿にはとても有名な神社があって、「酉の市」が行われて熊手が売られるのですが、そこで熊手を買っては社内に飾ったりもしています。成功の秘訣として恐らく最終的に行き着くのは、もう神頼みです(笑)。
■「海外展開も積極的に行いたい」
――:先日、中国の大手IT企業であるテンセントさんが、『三国志乱舞』を同国でも展開していくという発表がされたと思います。こちらの取り組みについて詳しくお聞かせいただければと思います。
現在、テンセントさんではゲーム事業の拡大を視野にいれているようで、内製はもちろん、海外ゲームの取り組みのために、世界中の企業と取り組みを行っております。そのなかで弊社にもお声がけいただいて、本作がテンセントさんとお取り組みさせていただくことになりました。今回4月にテンセントさんから発表されたスマートフォン向けの新しい海外タイトルのなかには、弊社の『三国志乱舞』のほかに、『キャンディークラッシュ』や『LINE タッチモンスター』の2タイトルがありました。
――:テンセントさんは何が決め手で『三国志乱舞』を選んだのでしょうか。やはり三国志をモチーフにしたゲームだから……というのが理由ですか。
もちろん三国志だからというのも大きな理由だと思っています。とはいえ、中国で出る歴史物のゲームの半分近くが「三国志」で、残りが「武侠」、「西遊記」などなので、それらに埋もれてしまう恐れはありましたね。
しかし、中国は比較的ターン制のバトルが多いため、『三国志乱舞』のようにリアルタイムで流れていくバトルに加えて、時折必殺技が放てるなど、同じ三国志を扱ったタイトルとはいえど、絶対的な差別化が図れているといったゲーム性が評価されたと聞いています。あとは武将のイラストも気に入っていただけました。日本の要素が十二分に詰まったイラストであり、うまくクールジャパンを表現できたのかと思います。
――:実際に手掛ける際は、テンセントさん側がローカライズとなり、御社側が監修にまわるという形でしょうか。
はい。ローカライズはテンセントさん側となります。ただ、弊社側では監修や調整などはそこまで行いません。基本的には信頼してお任せしています。もちろん腑に落ちる議論はしたいので、何か追加や変更点が生じる際には、きちんとしたコンセプトを共有いただいたり、お互いで認識をすり合わせることができたりすれば、あとは問題ないかと思います。
――:分かりました。ちなみに『三国志乱舞』の今後の展望については。
今後は武将の育成にスポットをあてた施策を盛り込んでいこうと考えています。たとえば、一部の武将が持つ「リーダースキル」に、新たな要素を加えて今まで以上に武将の編成に幅を広げようとしています。また、これまでの大男や巨大怪物とは異なり、三国志の名場面「赤壁の戦い」を舞台にした新レイドボスを用意しています。
※画面は開発中のものです。
――:それでは、最後に「Social Game Info」読者にメッセージをお願いします。
ぜひ、遊んでください! この一言に尽きてしまいますね。『三国志乱舞』では、自分のロマンを武将に重ねることができるため、様々な視点から触れてみてください。また、今後も他社様とのコラボレーションを積極的に取り組んでいきたいと思っています。私としても色々な方と手を組んで、一緒にゲーム業界を盛り上げていきたいと考えているため、ぜひ、コラボレーションのご提案などがあれば、「Social Game Info」さんまでご連絡をお願いします(笑)。
――:ありがとうございました(笑)。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)