グリー決算説明会 田中社長「売上反転時期は来期へ持ち越し」「単純なカードゲームではない新作ゲーム」に期待大

グリー<3632>は、5月8日、2014年6月期第3四半期累計(2013年7月~2014年3月)の連結決算を発表し、都内で記者向けの決算説明会を開いた。
 
国内向け事業が年末年始にかけ復調したものの3月にかけてトレンド維持できずに売上が低迷し、3Q(2014年1〜3月)の売上高は2Q(2013年10〜12月)に比べて15億5000万円減少した。一方、営業利益は売上高減少による減益はあったものの、コストコントロールの徹底により、同8億円増の99億5000万円となった。(関連記事1
 
説明会に臨んだ田中良和社長は、「3Qは仕込みの時期でタイトルの開発を進めていた」とした一方で、「売上の反転時期を4Q(4月〜6月)以降と考えていたが、一部のタイトルのリリースが後ろ倒しになる」ことを述べ、来期以降で売上高の増加を目指すと語った。
 
また、田中社長は、「引き続き、コストコントロールの徹底を続けていくことで、利益水準は高いところを維持しながらゲームをリリースしていく」方針を強調し、4Q以降も高水準の営業利益を目指す、と述べた。(以下、特筆がない限り、かぎ括弧内は田中社長の発言。)
 
 

■ 【3Q概要】コストコントロールの徹底 営業利益は増益達成

 
3Qの売上高は減収となったが、コストコントロールの徹底により増益を達成した。秋山仁・取締役執行役員常務兼管理統括本部長は、「売上高は前回2月の目標値からはほぼ予想通り」(関連記事2)とし、営業利益の増益は「2月の目標値よりもコスト削減ができた」ことによるもの、と述べた。

​また、営業利益率は、「前四半期より改善傾向が続いている」(秋山氏)とし、同年前四半期比3.9ポイント増の32.0%、と示した。  
 
費用の内訳をみると、変動費は同年前四半期比5億7000万円減(同比6.1%減)の87億5000万円、うち広告宣伝費が同比4.2億円減(同比12.7%減)の28億8000万円。これは、リリース計画の見直しや効率化により広告宣伝費が減少した。

固定費は17億8000万円減(同比12.6%減)の123億7000万円、うち人件費が同比3.7億円減(同比6.0%減)の57億5000万円、賃借料が同比1億5000万円減(同比12.7%減)の11億円、その他(原価および販売管理費合計額)が同比11億7000万円減(同比23.5%減)の38億円。人件費は従業員数が前四半期の2051名から157名減の1894名まで減少、賃借料がサーバー運用の効率化に伴いサーバー管理費の減少、その他がコンテンツによる減損計上の減少と外注関連費用が効率化、を図ったことで抑えられた。


 

■ 【コイン消費】コイン消費額が442億コイン 2Qよりさらに下回る

 
減収の背景には、コイン消費量の落ち込みがある。グリーのコイン消費総量は前四半期比6%減の442億コインで、450億コインを下回る結果となった。内訳は、フィーチャーフォン向けのコイン消費が同6%減の127億コイン、スマートフォン向けのコイン消費が同2.2%減の315億コイン。また、コイン消費の構成比率をみると、フィーチャーフォンが29%、スマートフォンが71%で、フィーチャーフォンが全体の30%を下回った。

 
スマートフォンのコイン消費の詳細をみると、ネイティブゲーム(海外マーケットも含む)は同1億コイン減の127億コインで微減にとどまったが、ウェブゲームが年末年始復調したもののトレンドを維持できずに同6億コイン減の188億コインとなった。

さらに、ネイティブゲームのコイン消費の内訳をみると、国内マーケットは同年前四半期と同じ水準を推移したが、海外マーケットが微減していることがわかる。これについて、田中社長は「国内から海外へ出したゲームタイトルの不調によるもの」と述べた。

 
 

■ 【ブラウザ】1Q・2Qの「選択フェーズ」から「再投資フェーズ」へ

 
コイン消費の中でも減少が続いているウェブゲーム(ブラウザゲーム)事業に関して、山岸広太郎・取締役執行役員副社長兼Web Game事業統括本部長は、「1Q、2Qでは選択と集中の選択のフェーズ」であったとし、2Qの組織再編から「現在は反転攻勢に向けて再投資のフェーズに入ってきた」と述べた。
 
山岸氏によれば、その対応策として、
  1. プロダクトポートフォリオの新陳代謝促進
  2. タイトル開発における生産性向上
  3. スマートフォンに適したユーザー体験の提供
  4. 顧客満足度の向上
の4つの柱で遂行中だという。
 
特に内製タイトルは2年以上前にリリースされたものが多く、プロダクトサイクル的にも"後期"に入っており、新規タイトルのリリース準備を進めている、という。気になるリリース時期は、来期はじめに2タイトルをリリース予定、とのこと。また、山岸氏は、「本来であれば今期中に3本リリース予定だったが、クオリティの見直しにより1本開発を取りやめた」ことを明らかにした。

この背景には、 コストコントロールと新規タイトルの開発の同時進行により、既存タイトルから新規タイトルへの人員移管の進捗が想定よりも遅延し、そのために、新規タイトルの開発にリソースを張り切れなかったことがある、という。「今後は開発体制が整い、新規タイトルの企画パイプラインの構築もできたことから、生産性が向上して順調に進んでいく」(山岸氏)としている。

また、GREEプラットフォーム事業については、「ユーザー体験を重視してゲームを全面的に出した”インビジブルプラットフォーム”体制を検討している」(山岸氏)ことを明らかにした。具体的には、5月中に”プレイファースト”という新たな仕組みをリリース予定。”プレイファースト”は、「GREEに登録していなくてもある程度ゲームをプレイでき、ユーザーがおもしろいと思ったタイミングでGREEに登録ができるものになる」(山岸氏)とのこと。
 
さらに、山岸氏は、「顧客満足度の向上がここ1年くらいで1番成果が出ている」ことを明らかにした。山岸氏によれば、これは、
  1. 懇切丁寧なカスタマーサポートの対応、
  2. 障害件数の軽減、
  3. アンケートなどのお客様のご意見調査、
  4. お客様のご意見をもとにした新企画の開発体制
によるものという。
 
なお、「足もとでは、特にスマホ向けウェブゲームのコイン消費の回復はみえていないが、着実に施策は進んでいるので、今後もさらに進めていきたい」(山岸氏)と述べた。
 
 

■ 【ネイティブ】「攻めと守りの強化」 開発力強化で挑む新規タイトルに期待大


一方、海外事業が四半期ベースで黒字化を達成したネイティブゲーム事業に関して、荒木英士・取締役執行役員兼Native Game事業本部長は、1Q〜3Qを振り返り、「新しいタイトルの仕込みの時期で、主に内部的に”攻め”と”守り”の強化を図ってきた」と述べ、”攻め”として”開発力の向上”、 ”守り”として”管理の強化”、に注力してきたことを明らかにした。

“守り”の”開発力の強化”では、「タイトル別のPL(損益計算書)かつ開発のスケジュールを管理してリスクを抑え、ありがちな失敗をおこさないことを徹底したことで、足腰が鍛えられて、収益が向上した」(荒木氏)という。“攻め”の” 開発力の向上”では、「ヒットタイトルを出すためには、その経験や、あるいは企画からはじめて、開発して世の中に出して、お客様からの評価を得る、というサイクルをいかにまわせたか」(荒木氏)が”組織力”となると述べ、組織力の強化により開発力を強化してきたことを明らかにした。
 
その成果として、ネイティブゲーム事業の新レーベル「Wright Flyer Studios」(関連記事3)から4Qにリリース予定の『消滅都市』と『天と大地の女神の魔法』について、荒木氏は「新しいゲーム体験、ユーザー体験を提供することに注力してつくっている」として、「それぞれ、ターゲットユーザーが違いながらも新しいユーザー体験を提供できるのではないか」と述べ、新規タイトルへの意気込みと期待を述べた。なお、同レーベルでは、来期以降も四半期ベースで2タイトル前後の新規タイトルをリリースしていく計画、とのこと。
 
また、今後の海外事業に関しては、既に米国を中心に成功しているタイトルを①横展開・フランチャイズ化、②他言語対応によるヨーロッパ展開、③Android展開をしていくことで、「着実な成功モデルの伸長をしていく」(荒木氏)と述べた。
 
さらに、海外事業では、「新たなジャンルへの取り組みにも挑戦する」(荒木氏)という。その一環として、「米国スタジオで3Dを大胆に活用した新しいタワーディフェンスゲームを開発しており、現在限定された地域でβテスト中」(荒木氏)という。荒木氏によれば、「これまで米国でリリースしてきたどのゲームタイトルよりも非常に良いパフォーマンスが足下で出ている状態」とのことで、非常に期待できる新作になっている、という。
 

 

■ 【新規事業】uttokuの売上高は数十億円規模を目指す 4Qで新規コマースサービス続々ローンチ予定


同社は、この日、新規事業の一環として、コメ兵と提携し、ハイブランドのバッグ類を中心としたブランド品買取サービス「uttoku by GREE」を発表。(関連記事4)これについて、田中社長は「具体的な部分は、今後、開発を進めていく中で、随時開示していきたい」と明言を避けたが、「初年度、2年目で、売上高数十億円規模を目指している」(秋山氏)と述べた。
 
また、田中社長は、「コマース業界はインターネット業界において成長している数少ない領域」と述べ、「その中でもいくつかの事業に挑戦をして舵をとっていきたい」と意欲を示し、4Q中にコマース事業の新規サービスを2〜3個ローンチ予定であることを明らかにした。

広告事業は、広告需要の高い時期でもあったことからスマートフォン向け広告が好調に推移し、広告商品の改善に向けた取り組みが順調に進展した。4Q以降では、新しい広告商品の開発や機能強化などを進め、さらにスマートフォン向け広告の売上を伸ばしていく、としている。なお、同グループの企業でインターネット広告事業を担うGlossomの社長には、この3Qより、好調な海外事業の立役者でもある青柳直樹・取締役執行役員常務が就任しており、今後に注目していきたいところだ。
 
投資事業は、3Qで、動画制作に特化したクラウドソーシング運営会社Viibarとクラウド予約管理サービス運営会社クービックの2社に投資をしており、4Qは新規投資案件の発掘と投資先企業の成長・バリューアップの支援を進めていく、としている。また、M&Aについては現在決定しているものはなく、「自分たちでつくっているサービスのリリースを進めていく」とのこと。
 

■ 【業績予想】売上高300億円 営業利益91億円 売上反転時期は「4Qから来期へ後ろ倒し」


4Qの業績は、売上高が前四半期比10億7000万円減の300億円、営業利益が同8億5000万円減の91億円と減収減益となる見込み。同社によれば、これは、新規タイトルのクオリティの見直しと向上により、タイトルのリリース時期の見直しと開発の遅延によるもの。


秋山氏は「4Qで売上高の反転を想定していたが、新規タイトルのリリース見直しにより、来期以降へ持ち越し」と述べ、「一部新規タイトルのリリースを控えているため、広告宣伝費の増加が予想されるため、営業利益の減少を見込んでいるが、引き続き、コストコントロールの徹底を続けていく」と前向きな姿勢であることを述べた。


 
なお、決算説明会のおわりには、4Qでリリース予定のブラウザゲーム『ロストランドタクティクス』、『消滅都市』、『天と大地と女神の魔法』の3本の紹介動画が放映され、「今までの単純なカードゲームではない新しいタイプのゲームをリリースしていく」ことへの強い期待と熱い意欲を感じられた。同社が新作ゲームそして新規事業を通じて、どのような"新生グリー"の姿をみせていくのか、今後に期待したい。
 

▲ 『ロストランドタクティクス』紹介動画


▲ 『消滅都市』紹介動画


▲ 『天と大地と女神の魔法』紹介動画



 

関連サイト

 



(C) GREE
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
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