ドリコム決算説明会 「谷間を作ってでも前に進む」…ブラウザ縮小と先行投資で2Q減速 ゲーム事業の経験活かし「三方良し」の新規事業を開拓

ドリコム<3793>は7月31日、2015年3月期第1四半期(1Q、4~6月)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開催した。売上高は前四半期(単体)比15%増の19.8億円、営業損益は1.1億円の黒字(前四半期は1.2億円の赤字)に転換と、増収・黒字転換を達成した。2つの大型IP(知的財産、版権)ゲームが好調だった。

もっとも第2四半期(2Q、7~9月)の業績予想は、売上高17億円、営業利益0憶円と、減収減益見通しを開示。説明会で内藤裕紀社長は、既存のブラウザゲームからネイティブゲームに経営資源に移し、再成長を狙うための「谷間の時期」と説明した。

今後はスマートフォンのネイティブアプリ市場に向けて、ソーシャルゲームのノウハウを活用した多様な事業を展開することで、高成長と業績変動率の抑制の両立を目指していくという。まずは音楽・マンガの分野で「ユーザー、コンテンツホルダー、ドリコムの3者が幸せになるような、フリーライダー(タダ乗り)ではなく”三方良し”の、次の時代のコンテンツビジネスに投資していきたい」と意気込みを語った。(以下、カギ括弧内は内藤社長の発言)
 

■1Qの業績改善…大型IPタイトル2本が好調


『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』と『ONE PIECE トレジャークルーズ』という、バンダイナムコゲームスと共同で提供する2タイトルの好調を受けて、1Qの売上高は5四半期ぶりの規模にまで回復した。同じく5四半期ぶりの黒字転換も果たした。
 


ブラウザゲームでは『ちょこっとファーム』が前四半期比で売上が増加と健闘したが、既存ゲームの縮小が加速した。年度が変わった直後から状況が大きく変化したという。市場は完全にネイティブアプリに移行したとの判断から、一段とネイティブアプリに経営資源を移行する体制変更が必要と指摘した。
 

なお、この図から判断するに、他社配信・パブリッシングタイトルの1Qの四半期売上高は6億円程度と推測できる。
 

■2Qはネイティブシフトに向けて「あえて谷間」


今回、内藤社長(写真)が説明の時間を割いたのは、減速を見込む2Qについてだ。ブラウザからネイティブアプリへの経営資源の移行を実施するために、あえて「谷間の時期」にするという。「谷間を作ってでも前に進む」という意気込みを語った。

大型IPゲーム2本は好調で、2Qも売上にプラスに寄与する。一方、既存ブラウザゲームは縮小方針をとるため、売上・利益ともにマイナス影響が出てくるという。「(既存のブラウザゲームは)場合によってはゲーム自体(のサービスを)を止めていく」という。「既存アプリの多くが単体で利益出ている。採算が悪くなったから、というのではなく、ネイティブアプリに移行していくにあたって人員を移していく」という格好だ。

大型IPタイトル2本というネイティブアプリでのヒットゲームが出たので、第2四半期に谷間を持ってきたという。「ソーシャルゲームのブラウザ時代から参入していた企業にとっては、どこかで味わう苦しみ。企業によってタイミングは様々だろうが、ブラウザの売上減と、ネイティブの売上増の谷間になる時期がやってくる」と述べた。

また、新規に開始したアプリのメディア事業は「良い結果が出始めているので、広告宣伝費先行で攻めていく」という。

2Qの「谷間」を乗り越えた先の3Qの売上高は20億~23億円、営業利益で0億~3億円を見込んでいる。新作ゲームは、9月後半以降に子会社グリモアから1本、下期(10月以降)に向けて2本、来期に1本と、計4本のリリースを予定している。IPタイトルではなくすべてオリジナルタイトルだ。
 
 

■今後の方向性…ソーシャルゲームの経験を活用した新規事業


ソーシャルゲーム事業への参入・展開と、同事業でのF2P(フリー・トゥ・プレイ、基本無料のアイテム課金)ビジネス拡大を経験し、「コンテンツとハードの関係が変化してきているのはゲームだけでない」と実感したという。ハードはスマホがすべて代替し、コンテンツはデジタル化が進み、F2Pが既存のハードに基づいた産業よりも大きくなるという変化だ。

また、ソーシャルゲームの売上は、「国内ではほぼ課金収入だが、グローバルでみると広告収入が大きく増えてきている状況。カジュアルゲームの子会社で、どこまで1ユーザーあたりの収入(ARPU)を上げていけるかを実験しているが、課金のARPUと比較して、結構な割合の収入を上げられることがわかってきた。このノウハウを使って、複数の分野に参入していきたい」という。

こうした変化を受けて、ソーシャルゲーム事業などで蓄積したノウハウをもとに、教育や音楽などに参入・展開していくという。説明会では無料音楽ストリーミングアプリ『DropMusic』(ドロップミュージック)と無料マンガアプリ『DropComics』(ドロップコミックス)について説明した。
 
 

■無料音楽ストリーミングアプリ『DropMusic』


『DropMusic』については、ダウンロード数の立ち上がりの速さを強調した。

下記のグラフで黄色の線が「iOS端末において2~3か月で1000万ダウンロード級のアプリ」、橙色の線が「4~5か月で500万~600万ダウンロード級のアプリ」、青線が『DropMusic』とのこと。『DropMusic』は、良い時でDAU(日次の活動ユーザー)が100万人規模という。
 

音楽ストリーミングというと、株式市場関係者は「Spotifyや他社の参入に勝てるか」を気にしがちだ。この点については、「スマホマーケットでは、例えばニュースなどの分野でネイティブに適応し、先行して多くのユーザーを確保した企業には、(既存)大手でも勝てなくなっている。一定以上のユーザーを先行して確保すれば、やっていけるマーケットだと考えている」と述べた。

現在、業界関係者と話をし、どういう共存が可能かを探っている段階という。
 

■無料マンガアプリ『DropComics』は漫画喫茶型


無料マンガアプリ『DropComics』(ドロップコミックス)については、ディー・エヌ・エー<2432>の『マンガボックス』を新しいコンテンツを毎週追加する週刊雑誌のモデルとした場合、「既刊コミックを漫画喫茶で読むような形式をネイティブアプリに持ってきたイメージ」という。

コンテンツの品揃えは、大量に用意するのではなく「作家さん、出版社に収益をお返しできるよう、良いタイトルを選別し、常時数本のタイトルを掲載していく形を取ろうと考えている」と述べた。


■関連リンク
決算説明会資料(PDF)
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
企業データを見る