サービス1周年を迎えた『ゆるドラシル』、その堅調な売上推移や継続的な人気には注目せざるを得ない。
同作は、簡単なオート進行のバトルにコマンド入力による奥深さ、ド派手な必殺技が特徴のスマートフォン向けRPGで、神話の神々や英雄、敵対する巨人までもがコミカルなキャラクターとなって登場するのが魅力。直近では、サービス開始から1年経過したことを物ともせず、App Storeトップセールス(ゲームカテゴリー)で自己最高となる22位(関連記事)を記録した。
同作は、簡単なオート進行のバトルにコマンド入力による奥深さ、ド派手な必殺技が特徴のスマートフォン向けRPGで、神話の神々や英雄、敵対する巨人までもがコミカルなキャラクターとなって登場するのが魅力。直近では、サービス開始から1年経過したことを物ともせず、App Storeトップセールス(ゲームカテゴリー)で自己最高となる22位(関連記事)を記録した。
そんな『ゆるドラシル』を手掛けたのは、関西のゲーム会社・クローバーラボ(2009年7月設立)。同社の特徴は、企画・開発・運営まで全て内製にしており、より高い品質のサービスを効率よくユーザーに届けることができる点にある。
本稿では、『ゆるドラシル』プロデューサーにメールインタビューを実施し、『ゆるドラシル』ヒットの軌跡を辿ってみた。話を聞いてみると、同社ならではの運営力が実を結んだことが分かる。
■「指標は継続率」 … ユーザーひとりひとりの声に耳を傾ける
『ゆるドラシル』プロデューサー
きゃんP
――:サービス開始1周年おめでとうございます! まずは改めて『ゆるドラシル』の開発経緯から教えてください。
『ゆるドラシル』は2013年7月から開発・企画が始まり2014年3月下旬にAndroid版が、4月中旬にiOS版をリリースしました。開発当初、私が企画・設計とサーバー側の開発を行い、他にアプリ側プログラマー1名・デザイナー1名の3名で開始しました。その後、2013年11月頃から徐々にメンバーがアサインされ、リリース頃に10名程度、現在は全14名で運営を行っています。デバッグ、問い合わせ対応、音楽のみ外注し、開発・運営は全て社内で行っています。
実は当初、別の形のものを企画していましたが、上司からの「半年後、1年後に出ていないものを作成しろ」という指示から、今の『ゆるドラシル』の形に大きく路線変更しました。予測通り、リリースまでに当初に考えていたようなゲームが何作かリリースされ、とてもクオリティの高いものが多く、正直路線変更なしではとても太刀打ちできなかったと思います。
――:世界観が非常に独特ですが、どのように出来上がっていったのでしょうか。
最初のオーディンは、血の滴る包丁のような刀を持っており、冷酷なイメージのキャラでした。ただ、いろんな影響を考えて、もっと丸くするために現在の虫取り網を持つオーディンに変更されました。
▲オーディン
▲左がスレイプニル
――:リリース当初はいかがでしたか。
リリース当時は、事前登録が一般的になりつつあるタイミングでしたが、かなりのユーザーに登録していただき、またドリコムさんのフライングガチャを実施させて頂いたこともあって、流入は想定よりずっと多いものとなりました。リリース当時は、戦闘部分が純粋なRPGがスマホゲームには少なく、スマホユーザーには割りと新しいものだったのかもしれません。
ただ、不具合・バランス面・webviewの特性や技術面での問題もあり、継続率が高いという状況ではありませんでした。半年ぐらいかけて調整や改修を行い、100万DLのキャンペーンを行った2014年10月頃に一気にいろんなKPIが上向きました。
――:リリース後から100位圏内を維持していた印象でしたが、何を重視して運営してきましたか。
運営スタンスとしてはユーザーの声をよく聞くこと、指標としては継続率です。もちろん売上は最終的な目標ですが、実はそれほど重視はしていません。
例えば、操作ミスによるユニットの削除や、携帯の紛失・物理的な故障によるアカウントの引継ぎなどの対応に1件ずつ対応しております。また、キャラの人気投票やユーザーアンケートを定期的に行い、出来るかぎりユーザーからのご意見をゲームに反映することを心掛けています。
継続率の面では、ユーザーが最初から遊びやすいように魅力的なユニットを獲得できるようにしたり、キャンペーンを定期的に行うようにしています。
――:ゲームバランス面ではどんなことに取り組みましたか。
弊社は過去にMobageやGREEへゲームを提供していたので、ある程度ソーシャルゲームの知識があることを前提にしたゲームバランスにしていました。しかし実際は、当時のバランスは全く参考にならず、リリース当初に厳しい意見を多数頂いた覚えがあります。
また、特に私の感覚とずれていたのは、『ゆるドラシル』はもともと「かわいいキャラが出る本格的なPRG」をコンセプトとして制作したのですが、「ゆるいRPG」と認識されるユーザーが多数いらっしゃいました。そのため、「期待したものと違う」とのご意見も多く、バランス面では何度も調整を入れました。ただ、タイトルに助けられている部分もかなりあるので、タイトルの重要性は非常に高いと痛感しました。
――:他にどんなことがありますか。
『ゆるドラシル』ではユニットのステータスのインフレをかなり抑えた運営を行っています。上方修正を行ったこともありますが、現在でもリリース当初から登場するユニットが最強クラスのステータスであったり、「このユニットがいないとクリアでない」というステージがなく、非常に遊びやすい設計になっていると思います。ただコアなユーザーには物足りないかもしれませんが……。
――:『ディスガイア』とのコラボも開始されました。何か経緯や狙い、今回のコラボの見どころを教えてください。
これは私が以前から日本一ソフトウェアさんのファンで、コラボを行うならぜひ『ディスガイア』とやりたいという完全に個人的な希望から始まっています。日本一ソフトウェアさんにお願いしたところ、既に『ゆるドラシル』をプレイされていて、快くOKを頂きました。
今年3月に発売されたばかりの『ディスガイア5』の主要キャラが勢揃いし、またお馴染みの「ラハール」「エトナ」「フロン」も登場します。全員の原作の必殺技を『ゆるドラシル』バージョンにして用意しているので、『ディスガイア』のファンの方にも是非プレイしていただきたいと思います。
▲アプリアイコンもコラボ仕様に!
⇒コラボ特設サイト
――:海外展開では、現在タイ・台湾で配信中ですが、何かカルチャライズはやられていますか。
現在、台湾とタイで配信中です。また、中国でも配信の準備を進めています。基本的に現在の当社のスタンスとして、現地のパブリッシャーと契約し、開発・運用・プロモーションなど全般をお任せするようにしています。
カルチャライズについては、各国のユーザー特性を意識して行っています。一例ですが、これらの地域は日本と比べて、ユーザー同士の競争やコミュニケーションを重視する傾向があります。そのため、現地パブリッシャーとの契約前の段階で、日本でのリリース時点では存在しなかったPvP機能を、海外展開を意識して日本版に実装しました。もちろん、現地パブリッシャーも独自にカルチャライズを行っており、ゲーム内の施策に反映したり、Facebookを利用してコミュニティの活性化を図ったりしています。
『ゆるドラシル』に続く今後の新規開発タイトルについては、企画や開発段階から海外市場を意識して作りこんでいくことも検討しています。
――:1周年を迎えて今後の展望を教えてください。
無事に1周年を迎えることができ、200万ダウンロードも目前に迫ってきており、より楽しんでいただける、より満足していただけるように、盛り上がるポイントのようなものをどんどん作っていきたいと思います。新しい施策も考えています。
また、今までまだ『ゆるドラシル』に触れていない人に対して、『ゆるドラシル』をもっと知ってもらえるような施策を行っていきたいです。その第一弾が現在開催中の『ディスガイア』とのコラボです。他の作品とのコラボを含め、今までやってこなかったプロモーション施策も積極的に挑戦したいと思います。
『ゆるドラシル』としても、そしてクローバーラボとしても、もっとユーザーに楽しんでもらえるコンテンツを作り、海外を含めもっと広く世の中に届けて行きたいです。そのためには、一緒にゲームを作ってくれる人、作ったゲームをプロモーションしてくれる人を、今後より積極的に採用していかないといけないと感じています。
▲クローバーラボ社内の様子
『ゆるドラシル』に関しては、1周年記念の際に売上ランキングがかなり上昇し、ソーシャルゲームインフォさんをはじめ、多くののメディア様にも取り上げていただき、とても嬉しく思っております。次は『ゆるドラシル』2周年の際に、またこうしたインタビューを受けられるように頑張りたいです。ありがとうございました。
――:こちらこそ、ありがとうございました!
(編集部:原孝則)
■『ゆるドラシル』
■クローバーラボ
© Clover Lab.,inc.
会社情報
- 会社名
- クローバーラボ株式会社
- 設立
- 2009年7月
- 代表者
- 小山力也
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 2012年6月期の売上高2.53億円
- 上場区分
- 非上場