【インタビュー】祝「Mobage AWARD」W受賞の『グランブルーファンタジー』! 春田Pに喜びの声と今後の展望を訊く…「新コンテンツ準備中」
2014年3月10日にリリースされた本作は、「星の民」や「神々」を巡る物語や、「星晶獣」と呼ばれる獣の存在など、ファンタジックな世界観を基調としたソーシャルRPG。開発には、これまで数多くの大作RPGの制作に携わったCyDesignationの皆葉英夫氏と、サウンドコンポーザーとして様々なゲームに楽曲を提供する植松伸夫氏が参加している。
「ブラウザゲームの限界に挑戦」をテーマに掲げた本作は、現在登録ユーザー数が400万人を突破(関連記事)、「Mobage」総合ランキングで首位を獲得(関連記事)、App Storeのトップセールスでは最高3位(関連記事)にするなどの大ヒットを記録。
本稿では、受賞した『グランブルーファンタジー』のプロデューサーである春田康一氏に、喜びの声を聞いてきた。また、サービス1周年を迎えての振り返りや、今後の展望についてもインタビューを実施。
■「駆け抜けた一年間」…幅広い層が遊ぶ王道モバイルRPG
株式会社Cygames 取締役
『グランブルーファンタジー』プロデューサー
春田康一 氏
――:この度は「Mobageオープンプラットフォーム5周年AWARD」でW受賞、(ユーザーが選ぶベストタイトル賞+ベストヒット賞)おめでとうございます! まずは受賞した率直の感想をお聞かせください。
ありがとうございます。『グランブルーファンタジー』を選んでくださったお客様に感謝を申し上げるとともに、我々自身、今回の受賞には非常に驚いています。なかなかお客様の実態を知る機会がないため、こうした投票で明確な数字が見られたのは、社内でも「大きなタイトルに育ったなぁ…」と、賞をいただくことによって実感しました。
――:ユーザーさんから寄せられたメッセージで、何か印象的なものはありましたか。
個人的な印象ではありますが、「子育てをしながらその傍らで楽しんでいます」や「運送業ですが休憩中にカジノで楽しんでいます」、「学校の教師ですが難しい漢字が出てきて結構勉強になっています」など、お客様の生活に紐づいた形で遊ばれている意見が、多数寄せられたことは嬉しかったですね。
当初『グランブルーファンタジー』を遊ぶユーザー層については、我々も「ゲーム好きのユーザーが中心に遊ぶタイトルだろう」と想定していたのですが、実際には男女・年齢・職業問わず、本当に幅広い方々に遊ばれているタイトルであることを知りました。
――:なるほど。私も“昔からのコンシューマ王道RPG”が好きなユーザー層が遊んでいるのかと思っていました。春田さんとしては、ユーザー層の広がりに寄与したことについて、何か思い当たる施策などはありますか。
そういう意味では、ここ一年間のプロモーション施策については様々なチャネルに対してアプローチしたことではないでしょうか。DeNAさんの「Mobage」プラットフォームのご協力もあり、まずはゲーム好きの方をベースに、そこからマンガやテレビ、それこそ声優さんにご興味がある方に向けてなど、プロモーション内容を変えながら展開したことが、幅広いユーザー層獲得に繋がったのかもしれません。
――:たしかに。今思い返せば、テレビCMも様々なバリエーションがありますよね。純粋なゲーム画面を見せるものから、アニメーションだったり、実写だったりと!
そうですね、変化をつけています。リリース前に展開した最初のテレビCMでは、騎空艇が空を飛行しているシーンに、クリエイター陣の名前が出てくるだけのクリエイティブでしたが、まさにあれはコアなゲームユーザーに向けたアプローチとなっています。その後は、ゲーム画面を取り入れたり、アニメーションや実写にしたりと、様々なユーザー層に響くようなクリエイティブに変えていきました。
ちなみに、6月から夏にかけてまでも複数のテレビCMを用意しています。音楽をテーマにしたものもあれば、また別のテーマ・ターゲットを据えて展開するものもあります(笑)。ぜひ、楽しみに待っていてください。
――:楽しみにしています! ……さて、ここからは2015年3月でサービス開始1周年を迎えたこともあり、ぜひこれまでの一年間を振り返っていただきたいと思います。率直に当時のことを思い返して、いかがですか。
できるならば……もう当時には戻りたくないですね(笑)。
――:それほど、駆け抜けた一年間…ということでしょうか(笑)。
そうです。本当に色々なことをやりましたし、苦労も多かったです。着々と多くのお客様に遊んでいただけたことは、何よりも嬉しいことですが、それに伴いコンテンツの拡充や快適なゲーム運営を目指さなければならないといったプレッシャーも多かったですね。
スムーズなゲーム進行を実現するために、日本では使われていないような技術を海外の文献を調べて導入したり、サーバの構成をブラウザゲーム基準ではなくオンラインゲーム基準に変えてみたり、現場ではたびたび重要な決断に直面してきました。
――:当初からユーザーさんの数は多かったのでしょうか。
はい。リリース前に、ある程度想定ユーザー数を考えていたのですが、じつはその想定を2014年5月のタイミングで超えてしまうという、とてつもないスピードでお客様が増えていきました。なかでも初めてコラボレーションイベントを開催したときは、当時予想していたお客様からさらに超えてきましたね。
もともと本作は「ブラウザゲームの限界を目指そう」という想いで立ち上げたタイトルですし、ゲームの快適面では努力を惜しむことはなかったのですが、まさかここまで多くの方々に遊んでいただけるタイトルになるとは、正直予想していなかったですね。
――:そういう意味では、試行錯誤の日々だったのではないでしょうか。
そうですね。毎月行っている「星の古戦場」というコンテンツがあるのですが、こちらはリリース当初から実施するたびにシステムが変化しています。それこそ報酬の入手方法やお客様同士のマッチングなど、様々な面で変えてきました。
やはりお客様が増えることで、ランク100の方もいれば、まだ始めたばかりの方など、ユーザー層の裾野はどんどん広くなっていきます。そのことを考えて、「星の古戦場」では強い方たちが出場できる本戦に加え、そうでない方たちが勝利チームを予想できる「ブックメーカー」という施策を導入して、コンテンツを二分化するようにしました。つねに最善のコンテンツになることを目指しているため、恐らく今後も変わるつもりで作っていきますし、むしろ変わらなきゃダメだと思っています(笑)。
■「レア・Sレア・SSレア、かけている愛情は同じです」
――:『グランブルーファンタジー』を語るうえで外せないのが、魅力的なキャラクターたちですよね。ユーザーさんのなかで人気あるキャラクターは誰なのでしょうか。
過去に4回キャラクター人気投票を実施しましたが、圧倒的にヴィーラですね(笑)。とはいえ、そのほかのキャラクターも固定ファンとまではいきませんが、それぞれ人気が高いです。たとえば、小さな聖騎士のシャルロッテはオリジナルグッズを作る方もいますし、イラストレーター界隈ではダヌアが人気ですね。やはり我々がゲームを開発するうえで、一番時間をかけるのがキャラクター部分となります。
▲ヴィーラ(CV:今井麻美)
▲シャルロッテ(CV:名塚佳織)、ダヌア(CV:ささきのぞみ)
――:キャラクター制作では、どのようなこだわりを持っていますか。
キャラクターは、バックボーンを含めた設定の制作から始まり、その後は発注書をもとに、ラフ、線画、デザイン、SDキャラを手掛けていきます。なかでもこだわっているのは、個々のキャラクターが持つ設定(世界観)に付随した形で、物語やステータス、アビリティなどを決めることです。
たとえば、女の子にモテたいと思っているチャラ男のローアインは、パーティの女性の数に応じて自分の攻撃が上がるアビリティや、カタリナさんが好きなので彼女をサポートするアビリティがあるなど、きちんとキャラクターの設定に合わせた仕様にしました。
▲ローアイン(CV:白石稔)
このほか、直近ではDJキャラクターのJ・Jは、DJが音を何層にも重ねる職業のため、彼が使うアビリティはすべて累積することが可能になっています。
また、ラーメン好きのイッパツというキャラクターのアビリティには、ラーメンの具(味玉)を食べて回復するのですが、ときには美味しくない日もあるため回復量はランダムだったり、「ゼンマシマシチョモランマ」といった某ラーメン屋の呪文コールを取り入れたりと、様々なところで遊び心を取り入れています(笑)。ちなみにこのキャラクターはレアキャラで、キャラクターボイスは若本規夫さんです。
▲J・J(CV:木村昴)、イッパツ(CV:若本規夫)
――:(笑)。個人的に若本さんはラスボスっぽいイメージがあるのですが、まさかのSSレアではなくて……。
レアです(笑)。
というのも、レア、Sレア、SSレアと様々な希少価値がありますが、我々がかけている愛情は変わりません。たとえば、「有名な声優さんだからSSレアにしよう」というのは無くて、本当にキャラクターと適した方をボイスで選んだり、レアキャラだからパラメータも極端に弱くしたりするということもしません。むしろ、レアキャラのほうが制作するのに時間がかかっているかもしれませんね(笑)。
――:言われてみれば、たしかにそうですね。また、ガチャで手に入るキャラクターに対しても、すべての追加エピソードを見たら終わりではなくて、後になってからエピソードが追加されたり、ほかのキャラクターの掛け合いが追加されたり、それこそレアキャラがSレアキャラとして再登場したりするなど、登場済みのキャラクターも何かしらの進展・成長が見られるのが、いちユーザーとしてたまらなく嬉しいですね。やはりこうした配慮も意識されているのでしょうか。
そうですね。どのキャラクターでも“出したら終わり”という、商品のように扱いたくないんですよ。ひとりひとりキャラクターとして個性を強調し、人気が出てほしいと思っていますので、忘れずにきちんとフィーチャーしてあげたいと思っています。
個々のキャラクターには、設定資料だけでも膨大な量があります。「こうした人生背景があります」「こういうふうに生きています」など、それらのあらかじめ決めた資料をもとに、次のフェイトエピソードやバージョンアップキャラクターを生み出しています。
――:キャラクターを愛されていますね。
ええ。最近では、昔貼った物語の伏線を回収することもやっています。たとえば、ちょうど一年前に登場したユエルという「千年の歴史を刻む宝物」を求めて旅しているキャラクターがいるのですが、そのひとつを持っているソシエというキャラクターを2015年3月に登場させました。また、レオノーラという忍者のキャラクターのライバルも制作しているなど、新キャラクターを追加することで、また別の既存キャラクターが活躍する場面に関連性を持たせるようにしています。
2015年初めに登場させたゼタとバザラガは“とある組織”に所属しているのですが、それも「え、ここと繋がるの…?」という伏線があるのでお楽しみください(笑)。
▲ユエル(CV:植田佳奈)、ソシエ(CV:白石涼子)
――:各種イベントも毎回楽しみですね。何か反響の大きかったイベントなどはありますか。
コラボイベントは大反響でしたね。また既存プレイヤーの方からは、ここ最近開催した期間限定イベント「その胸にひとひらの輝きが」について、「泣きました」といった感動の声が非常に多く寄せられました。
そのイベントに付随する話なのですが、先日キャラクターコンテンツ総合展示会「character1 2015」に出展したとき、そこで過去に開催したイベント「臆病勇者と囚われの姫君」のドラマCDを販売しました。内容は、純粋にゲーム中で流れるボイスを繋げたもので、もちろん戦闘の合間などの物語にならないところはシナリオの加筆、ボイスの再収録を行いましたが、これが思いのほか非常に良い形に仕上がったのです(笑)。
――:なんと(笑)。こうもゲームのクオリティが高くて、世界観も確立されていると、こうした二次展開をすることも可能なのですね。なかなかほかのゲームには無い事例です。
そういう意味では『グランブルーファンタジー』は、ほかのチャネルとの愛称が良いですね。今回はドラマCDでしたが、今後も様々な展開を行っていきます。
■「RPGはどうあるべきか」
――:ラジオ番組「ぐらぶるちゃんねるっ!」(関連サイト)も好評ですよね。ユーザーさんからのお便りはもちろん、ラジオ発の内容がゲームのクエストとして導入されることもありました。
そうですね。そのお便りのエピソードとして、ユーザーさんから「キャラクターの名前の法則を見つけました」という内容をいただいたことがありました。じつは、開発側は実際にその法則に基づいてキャラクターの名前を決めているんですよ。ただ、なかにはその法則にのっとっていないキャラクターもいるのですが、それはそれで意味があるなど、お客様の間だけで楽しめるような“小ネタ”を用意しています。
――:それ面白いですね(笑)。ユーザーさんも見つけたら嬉しいですし。
ええ。これはもう多くの方が知っていると思いますが、タウンでタップできる場所をとある順番で押していくことで、特別なアイテムが手に入るという小ネタを入れています。じつは、この小ネタはリリース当初から入っていたものでしたが、見つけられたのは結構あとの方になりますね。もちろん、まだこのほかにも見つかっていない様々な小ネタがあります(笑)。
――:遊び心満載ですね。あまりほかのモバイルゲームでは、こうした小ネタを追加するのは見受けられませんが、実装した経緯などはありますか。
ファミコンやスーファミ、プレステなど、過去のゲームでも裏技や小ネタとかあったじゃないですか。実際にそれを見つけたとき、自分だけが得した気分になったり、驚かされたりと、ちょっとだけ面白かったと思います。いまはインターネットで情報を簡単に見つけることができますが、そうした昔楽しかったRPGのエッセンスを大事にして、本作でも取り入れるようにしました。
――:そうだったのですね。
『グランブルーファンタジー』は、あまりお膳立てしないで“ノーヒントでゲームを作ろう”という思いが開発陣のなかにあります。つまり、「こうしたほうがお得だよ」など、あまり詳しく説明しないで、自分で考えてもらう場面を用意しておくということです。
とくに今のスマホゲームに関しては、端から端まで説明する親切設計がほとんだと思います。もちろん本作のチュートリアルでも、最低限の説明は行いますが、結構省略している方で、どちらかというとゲームの操作説明よりも、物語進行に重きを置いたチュートリアルで構成しています。
――:昨今のスマホゲームでは、「チュートリアルの突破・離脱率」なども判断基準のひとつになっていますよね。そこを、あえて物語進行を重視しているのも珍しいかと思います。
よく社内でも「もう少しチュートリアルを短くしたほうがいいのでは」という意見をもらうことがあります。たしかにチュートリアルを短くすればチュートリアルを終了していただける可能性は高くなると思いますが、そのあと継続して遊んでいただけるかどうかも考えなければなりません。
きちんと冒頭でシナリオを読んでもらい、世界観をよく理解していただくことも、ゲームを長く続けていただくひとつの要因だと思っています。
――:私も個人的に遊ばせていただいていますが、『グランブルーファンタジー』の良さはモバイルという小さい端末のなかでも、重厚な物語や魅力的なキャラクター、バトルテンポなど、どこを取っても“きちんとしたRPGになっている”ところかと思っています。
恐らく「Cygamesが作るRPG」というのが表れているのだと思います。弊社には「みんなでたくさんゲームをやる」「常に<チーム・サイゲームス>の意識を忘れない」「最強のブランドを目指す」という3つのミッションを掲げています。そのなかにあるように、弊社スタッフは本当に多くのゲームを遊んでいますし、だからこそみんなが「RPGで当たり前のところは作ろうよ」という信念を持ちながら制作に臨んでいるわけです。開発中も「RPGはどうあるべきか」という内容を幾度も話し合いました。
――:とことんRPGを突き詰めていったのですね。そういう意味では、『グランブルーファンタジー』はモバイルRPGが行き着くひとつの答えなのかもしれません。
そうですね。RPGというものは、オンラインで繋がっていてもひとりで遊ぶことがほとんどなので、世界観にじっくりと浸って、きちんとロールプレイングできるようこだわって制作しました。
――:分かりました。また、海外展開も気になるところですが、いかがでしょうか。
海外展開の要望の声も多いですね。何故かアメリカに攻略サイトがあったり、台湾にはファンサイトがあったりしています。とはいえ、『グランブルーファンタジー』に関してはいつ出しても問題ないタイトルだと思っています。新しい技術やコンテンツを取り入れているタイトルであれば、早々に市場に出さないと受け入れてもらえないかもしれませんが、このゲームは本と同じように、いつ読んでも面白いわけです。まずは日本の方々に楽しんでいただくのがモットーですので、こちらに注力してまいります。
――:それでは、最後に『グランブルーファンタジー』における今後の展開について教えてください。
まずはより快適に遊んでもらうためのアプリのアップデートを予定しています。おもにAndroid端末向けに開発しているものですが、スペックが低い端末でもスムーズに動けるようになると思います。
また、ゲームとしては構想レベルですけど、スピンオフ的なコンテンツを年末に向けて開発しています。これは今の主人公たちとは別の話で、キャラクターにフィーチャーしているコンテンツになります。内容もRPGというより、また別のジャンルになるかもしれません。
このほか、クロスメディア展開も積極的にやっていきます。夏・秋ぐらいには正式に発表できる大きな情報もありますので、お楽しみください。
サービス開始から遊んでいる方もいれば、ここ数ヵ月で始めた方など様々なお客様がいると思いますが、双方のお客様たちが感動できるようなコンテンツを、別軸で準備しています。それもまた、時期が来たら発表させていただきます。
――:本日はありがとうございました。
(取材・文:編集部 原孝則)
■『グランブルーファンタジー』
©Cygames, Inc.
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432