エイチーム<3662>は、6月12日、2015年7月期第3四半期(2014年8月~2015年4月)の決算を発表し、都内にて決算説明会を開催した。発表された決算は、第3四半期累計で売上高が112億6400万円(前年同期比23.8%増)、営業利益16億4200万円(同61.9%増)、経常利益17億1100万円(同65.6%増)、四半期純利益10億8300万円(同82.8%増)と増収増益を達成した。また、第3四半期会計期間(2015年2月~4月)で見ても、売上高は44億700万円(前年同期比33.2%増、前四半期比20.6%増)、営業利益6億1800万円(同15.7%増、同15.7%増)、経常利益6億5000万円(同20.2%増、同15.2%増)、四半期純利益4億100万円(同23.0%増、同13.5%増)と前年同期比(YonY)でも前四半期比(QonQ)でも2ケタ増収増益となり、売上高は過去最高を達成した。
決算説明会では、同社の林高生代表取締役社長(写真)が、まずは12日に発表した韓国NHNエンターテインメントとの提携解消の経緯などを説明し、続いて第3四半期の状況について一通り説明を行い、その後に質疑応答が行われた。質疑応答では、前述のNHNエンターテインメントの件や、『ユニゾンリーグ』や『三国大戦スマッシュ』の足元の状況など多彩な質問が行われた。そうした内容も踏まえつつ、会見の様子をまとめてみた。
■NHNとの提携解消…理由は両社が作った体制が現状にそぐわなくなったため
今回の説明会では、まずは重要なトピックスがいくつか説明された。1つは前述の韓国NHNエンターテインメントとの資本提携解消・合弁会社の清算についてで、これは「約1か月前にNHN側から提携解消申し入れがあった」(林社長)という。背景は、外部環境の変化やそれに伴う戦略の変化で、もともと両社はカカオトーク向け、LINE向けでカジュアル向けゲームを継続的に作っていくという方針で合弁会社の設立に至ったわけだが、開発タイトルのコンセプトがミッドコアへとシフトし、両社の作った体制が現状にそぐわなくなったという。なお、2本のタイトルが開発されていたが、1本はエイチームが『三国大戦スマッシュ』としてリリース。「もう1タイトルは開発中止」(取締役エンターテインメント事業本部長・中内之公氏)になったとしていた。
また、NHNエンターテインメントが同社株の売却の意向を示したことを受け、同社はNHNエンターテインメントが保有する58万株を上限とした自社株買いを実施することを発表。取得価額の総額は上限20億円としている。
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ほか、連結業績予想の上方修正や期末配当予想の修正もトピックスとして紹介していたが、これは話の流れに合わせて後述したい。
■エンターテインメント事業、ライフスタイルサポート事業とも過去最高売上を記録
さて、話を本題の第3四半期決算の内容に移したい。第3四半期(2月~4月)決算は前述の通り、YonYでもQonQでも2ケタ増収増益となり、過去最高の四半期売り上げを記録した。ちなみにこれをエンターテインメント事業、ライフスタイルサポート事業に分けてみても、いずれも過去最高の四半期売り上げを達成したという。
エンターテインメント事業では、既存タイトルが大きく下がることなく堅調に推移したことに加え、『ユニゾンリーグ』と『三国大戦スマッシュ』という新作タイトルが大きく貢献した。特に『ユニゾンリーグ』はTVCM放映など積極的なプロモーション費用投下が功を奏したという。ちなみに『ユニゾンリーグ』は4月に過去最高の売上高を達成。エンターテインメント事業全体もこれまでの月商5億円台から7億円台となり、「8億円も見えてきた。第4四半期(5~7月)は売上高24億円くらいを予想している」(林社長)としていた。一方で利益については、YonYでもQonQでも減益となっているが、これは広告投資の増加がそのまま影響している。
一方、ライフスタイルサポート事業は、引越し関連の「引越し侍」、自動車関連の「ナビクル」、自転車販売の「cyma -サイマ-」が繁忙期にあたることもあり、前年同期比で34.9%の増収、前四半期比では30.3%の増収を達成した。なお、「引越し侍」と「ナビクル」はそれぞれ過去最高の四半期売り上げとなっている。
続いて下のグラフは、セグメント別の広告宣伝費の推移となる。第3四半期は、エンターテインメント事業、ライフスタイルサポート事業ともに広告宣伝費が増加しているが、ライフスタイルサポート事業については、繁忙期に合わせて第3四半期に広告宣伝費のピークが来るのは例年通りということになる。
一方、エンターテインメント事業は第2四半期の2億5300万円から5億6700万円に倍増強となっているが、これは『ユニゾンリーグ』のTVCMによる費用増がストレートに表れている。ちなみに第3四半期期間では、「『ユニゾンリーグ』のCMで3億円のプロモ費用を投下した」(林社長)とのことだ。
セグメント別の人員数は、第3四半期も大きな変動はなく、ここ3四半期は合計でほぼ530人くらいの体制が続いている。ただ、これは今後大きな変化が出てくることも予想される。その要因となるのが、東京スタジオの開設だ。ゲームアプリの開発・運営強化の一環として開設されるもので、来期中に60~80名の採用が予定されている。また、「大阪スタジオについても採用を強化する」(林社長)としていた。同社は、現在4、5タイトルくらいの開発体制となっているが、これを「これを8タイトルくらいにしたい」(林社長)という。
■TVCM効果で『ユニゾンリーグ』のDAUは倍増
続いてエンターテインメント事業の詳細に目を移してみよう。エンターテインメント事業は、『ユニゾンリーグ』の好調により、自社ネイティブの比率が大きく上昇した。『ユニゾンリーグ』については、TVCMの効果が大きく、「DAU(デイリーアクティブユーザー)はCM前後で倍増した」(中内氏)とのことだ。そうした状況を受け、現在は「新規ユーザーを定着させるための施策を推進している」(同)という。
また、3月26日に配信を開始した『三国大戦スマッシュ』は、4月16日に100万ダウンロードを突破するなど好スタートを切ったものの、売り上げとしては伸び悩んでいるいるもよう。これは同社が想定していたよりもユーザーにライトな層が多かったことが要因なようで、「中身の構造的にゲームバランスが(コア向けで)厳しかった。現在、コア層よりライトな層向けに改修をかけている」(同)としていた。
海外売上の推移を見ると、海外売上比率は第2四半期の23.4%から20.9%に減少した。ただし、これは『ユニゾンリーグ』と『三国大戦スマッシュ』が4月30日の時点では国内のみのリリースであったことが影響しており、海外売上の総額については、ほぼ横ばいでの推移となっている。ちなみに『ユニゾンリーグ』は5月14日に英語版を全世界127ヵ国で配信開始。6月1日には、台湾の艾玩天地(IWPLAY)と繁体字圏(台湾、香港、マカオ)配信における独占ライセンス契約を締結(関連記事)した。こうした展開により、「『ユニゾンリーグ』の海外売り上げは、まずは日本の半分が目標。最終的に日本と同じくらいにでできれば…」(中内氏)と、中期的には海外も大きく成長させていくことを目指しているようだ。
■繁忙期の「引越し侍」と「ナビクル」が過去最高売上に
一方、ライフスタイルサポート事業は、前述の通り、「引越し侍」と「ナビクル」が過去最高の四半期売上を達成したほか、新規サービスである「ナビナビキャッシング」と「cyma -サイマ-」も順調に推移したという。なお、前回の説明会の時には、そろそろ黒転となりそうとしていた「ナビナビキャッシング」は、黒字化を達成したようだ。一方、苦戦しているのは、「すぐ婚navi」で、引き続き「てこ入れに注力していく」(林社長)としていた。
■15年7月期予想の上方修正を発表も、依然として保守的か
なお、同社は、同日に2015年7月期通期の業績予想の上方修正を発表。売上高は従来予想の150億円から155億円(前期比28.8%増)、営業利益は同17億円から20億円(同37.7%増)、経常利益は同17億円から20億円(同36.0%増)、当期純利益は同10億8000万円から12億円(同48.5%増)に修正されている。
また、期末配当予想については、これまで未定としていたが、1株当たり7円50銭(1対2株の株式分割を考慮すると前期の実績10円から15円と5円分の増配の計算)とすることを発表した。
ちなみに、この修正後の予想と第3四半期までの実績を用いて計算すると、第4四半期期間(5~7月)は売上高42億3600万円(前四半期比3.9%減)、営業利益3億5800万円(同42.1%減)、経常利益2億8900万円(同55.6%減)、四半期純利益1億1700万円(同70.8%減)ということになってしまう。第3四半期までの進捗状況や過去の四半期ごとの業績トレンドを踏まえてみても、いささか保守的な予想になっていると言えるのではないだろうか。
(編集部:柴田正之)
会社情報
- 会社名
- 株式会社エイチーム
- 設立
- 2000年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 林 高生
- 決算期
- 7月
- 直近業績
- 売上高239億1700万円、営業利益5億6200万円、経常利益6億900万円、最終利益9億5300万円(2024年7月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3662