【インタビュー】マイネットがリリースしたマーケティングプラットフォーム「CroPro(クロプロ)」のキーマンに直撃 “タイトルをグロースさせる”…その集客方法とは
マイネットは、9月4日、新たなマーケティングプラットフォーム「CroPro(クロプロ)」をリリースした。「CroPro」とは、各社のゲームとゲームが連携し、互いにユーザーを送り合う取り組みのこと。同社が以前から取り組んでいた、相互送客ネットワークの発展版とも言えるプログラムだ。
7月からβ版がスタートし、すでに約50社が参画しているという「CroPro」だが、実際のところ「CroPro」でなにができるのか、そしてどんな恩恵があるのか、把握しきれない点も多いはずだ。今回Social Game Infoでは、「CroPro」の運営に携わる祭原祐氏(写真右)、隣真都香氏(写真左)にインタビューを実施。その具体的な手法から今後の展開まで、さまざまな話を聞いてきた。
■「CroPro」はタイトルをグロースさせるエコシステム
――:本日はよろしくお願いします。まずは、私自身「CroPro」がどんなものなのか把握しきれていない部分があるので、あらためて説明してもらってもいいですか。
祭原氏:はい。「CroPro」とは、マイネットが約1年半前から進めているプロジェクトで、以前は相互送客ネットワークと呼んでいたものです。相互送客というのはゲームを運営している会社同士で、お互いにユーザーを送り合うシステムになります。
隣氏:私たちは「CroPro」を通じて、参画企業がより積極的に相互送客を行っていただけるようなシステムの整備を行っています。
――:以前から取り組んでいた、相互送客ネットワークの発展版になるのでしょうか。
祭原氏:そうなります。今までは参画企業各社が相対で1社ずつ相互送客を行っていたのですが、「CroPro」では共通の管理画面を提供することで、各社がより簡単につながり、相互送客を行いやすい環境を構築しています。
――:導入しているデベロッパーからの反響はいかがですか。
祭原氏:以前よりも効率よく、質の高いユーザーの集客ができているとのことで手応えを感じています。「CroPro」は現在、美麗・美少女系のゲームにフォーカスしていることもあり、単にDAU増加に寄与するだけでなく、ゲームと相性が良いユーザーが来てくれることを高く評価いただいています。
これまでも自社のゲーム間で相互送客を行う会社はおられましたが、それと同じ感覚で他社のゲームとも連携を図れることも魅力と感じていただけているようです。
――:美麗・美少女系のゲームにフォーカスしていることが強みとのことですが、逆にそれ以外のジャンルへの拡大はどう考えていますか?
祭原氏:ジャンルの拡大は十分あり得ると思います。私たちの強みである美麗・美少女系というのは、あくまでも世界観やキャラクター視点のジャンルであり、ゲームシステムのジャンルとはまた違います。例えばパズルゲーム、スポーツゲーム同士であるように、ゲームエンジンの観点で相性が良かったりと、なにかひとつでもフックするものがあれば、可能性を模索してみたいと考えています。
――:なるほど。では、マイネットとしては「CroPro」に対して、どのような手応えを感じていますか。
祭原氏:弊社のゲームを見ても、「CroPro」を活用することで、広告換算で月間1,200万円から1,300万円、年間にして1.5億円分の集客につながっています。当初の目標として掲げていた、効率よく相性の良いユーザーを獲得することを実現できているので、手応えは非常に強いです。
――:その数字を聞くと、かなり良い集客方法と言えそうですね。
祭原氏:元々始めたときは、弊社ともう1社しかいない状況で、なかなか集客ボリュームが出ない時期もありました。ただ継続して取り組んでいく中で、同じジャンルのゲームと複数向き合い、同時に送り合うことで、ユーザーは着実に増えていくことも分かりました。現在多くのデベロッパーから参画を希望いただいており、既に実施中のゲームと新しく参画される会社のゲームで相互送客を実施いただくことで、今後一層盛り上がっていくと思われます。
――:プロモーションにかかるコストで悩んでいるデベロッパーにとっても有効な一手になりそうですね。
祭原氏:リリース直後は広告も行いやすいかと思いますが、リリースして一定期間経つと新規ユーザーのLTVも出づらくなったり、一通りユーザー獲得が進んだことで新規ユーザー獲得のCPIも高騰したりでリクープできなくなりプロモーションを停止するというケースが多いです。プロモーション担当の方の中には、ここで手立てがなくなることもあるかと思いますが、そこで「CroPro」を有効活用してもらえればと考えています。
■相互送客をプロモーションのスタンダードに
――:では次に、「CroPro」に参画したあとの流れについて教えてください。具体的にデベロッパーは、どのようにして相互送客を始めるのですか。
祭原氏:弊社で「CroPro」の管理画面を各社に提供しています。管理画面の機能としては大きく分けて3種類あり、そのひとつがマッチングの機能です。これは相互送客の相手を簡単に見つけるための機能で、相互送客を募集しているゲームを一覧で見つけられるようになっています。もちろん相互送客のリクエストも、管理画面上から送ることができます。以前の相互送客ネットワークですと、相互送客を行うために相手の担当者とどう繋がるかから考える必要があったので、そのコストを大幅に下げることができます。
▲マッチング機能画面
次はスムーズに開始作業が行える実施準備機能です。相互送客を開始する際、効果測定用のURLやバナーなどを送り合うことになりますが、それもすべて管理画面から行えます。そして最後に、集客数の登録と報告、送集客の一元管理ができるレポート機能があります。お互いに集客数を報告するとき、今までは会社同士がエクセルでデータをまとめて送る方法をとっていました。それを管理画面で管理でき、またF.O.XやPartyTrackといった国内外主要広告トラッキングツールと連携を進めており、自動で件数反映がされるシステムとなっているため、今までかかっていた手間が大幅に削減できます。
▲レポート機能画面
――:マッチングというと、相性の良さそうなゲームを検索していくイメージなのですか。
祭原氏:はい。自社のゲームと親和性の高いゲームを一覧から探すことができます。将来的には相性の良いゲームをレコメンドする機能も提供していきたいと思っています。
――:では、これで完成というわけではなく、今後アップデートもかけていくと。
祭原氏:はい。まだまだここからです。相互送客を行う際に考えることは、ゲームの世界観が合っているかどうか、DAUのボリュームはどれくらいか、過去の実績などがあります。そういった情報も加味しながら、マッチングの精度を高めていきたいですね。
――:マッチングで相手となるゲームを見つけたあとは、どのような形で相互送客が行われるのですか。
祭原氏:ゲーム内にお互いのバナーを設置したり、ゲーム間でのコラボレーションの実施などがあります。バナーはサイズがある程度決まっていますので、画像を用意して、URLを入稿するだけで実施できます。こちらはかなり手軽に行えるので、まずはバナーでユーザーを送り合って、親和性が高いゲームとコラボレーションにつなげていくといいかと思います。
コラボレーションに関してはお互いに渡すべき画像が多く、どのようなイベント内容にするかなど決めることも多いので、そこは直接コミュニケーションをとってもらう必要があります。
隣氏:プロモーションをするとなると、普通はSDKを載せたりと、開発スタッフのかたに協力をしてもらわないといけないじゃないですか。「CroPro」は専用のSDKが存在せず、トラッキングツールのURL発行とバナーを作成するだけで開始できるんです。なのでマーケティング担当者の方が「CroPro」上でやり取りするだけで完結できる手軽さも魅力だと思います。
――:メインはバナーとコラボレーションの2つになると。ですがゲームによっては違ったアプローチが有効な場合もあるかと思います。そのときマイネット側から、新たな手法を提案することもあるのですか。
祭原氏:「CroPro」というネットワークの中では、お互いがシナジーを生み出せる状態にありますが、他にも効果的な集客方法はあると考えており、現在も新しい手法をいくつかテストしています。参画企業のゲームのDAU向上に貢献できる新しい相互送客の手法を考え、提供していきたいと考えています。
――:今後、管理画面に新機能を加えていく予定はありますか。
祭原氏:はい! 多くの新機能を計画しており、順次皆さんにご紹介させていただく予定です。
――:管理画面の提供以外では、「CroPro」参画企業向けになにか取り組みを行っているのですか。
祭原氏:昨年に2回、そして今年は7月に1回、勉強会・交流会を行っており、前回は約50社、120名のマーケティング担当者をご招待し、すでにスマートフォンゲームのマーケティング担当者の集まりとしては最大規模の勉強会・交流会になっています。
▲勉強会・交流会の模様
勉強会の内容は多岐にわたり、7月にはGoogle playのご担当者に登壇していただき、最新の機能や動向を紹介していただきました。そのときはGoogle Play上で行ったA/Bテストの効果も聞くことができ、私たちとしてもとても貴重な機会になりました。
交流会に関しては「CroPro」のコンセプトと重なっている部分もあり、アナログの場でマッチングをしてもらおうという考えです。顔を知っていれば、その先の相互送客にもつながりやすくなりますし、きっかけが作れればと思っています。
――:他のゲーム会社の開発者を交えての交流を図るケースもあるのですか。
祭原氏:コラボレーションを行う際には、プロデューサーやエンジニアの方を交えてコミュニケーションをとっています。
――:これは今後も定期的に実施していく予定なのですか。
祭原氏:今年中にもう1回実施したいと考えています。勉強会の内容についても、その時そのときで皆さんがインプットしたい情報を提供できるよう努めていきます。マーケティング担当者が集まるため、交流会では事前登録でどれだけのユーザーが集まったかなど生の情報が集まります。そのため、開発者向けのセミナーとはまた違った価値を感じていただけるかと思います。
――:祭原さん隣さんとして、「CroPro」をどのように育てていくかのビジョンはありますか。
祭原氏:向き合うゲームが増えていけば、それだけ集客の間口も広がることになるので、ぜひ多くのゲームと相互送客を行っていただきたいと考えています。その意味では、入口となるマッチング部分は積極的に強化していきたいです。いつかは、広告に頼らない集客方法として確立されたら嬉しいですね。
私自身ゲームが好きなので、「CroPro」によって各社が集客で悩む必要がなくなり、今まで集客にかけていたリソースと予算をゲーム開発、ゲーム運営にまわせる状態を作ることで、世の中に一層面白いゲームが増えてくれたらなと思っています。
隣氏:現在のプロモーション手法というと、広告の出稿やTVCMなどがありますが、その中の新たなひとつとして相互送客がスタンダードになれば嬉しいですね。私たちはそんな環境になることを目指して、積極的に展開していきたいです。
――:ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社マイネット
- 設立
- 2006年7月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 岩城 農
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高87億1700万円、営業利益1億6800万円、経常利益1億2500万円、最終利益1億4300万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3928