■第十四回「【おもいやり】の向こう側」
今回は、ゲームに関する「おもいやり」について語ろうと思います。
おもいやり、というと、
・仲間をおもいやる
・夢の世界へ、想像力をかきたてる
・創造力を駆使する
・お客さんのプレイするさまをイメージする
などなど
いろいろあります。
活人研的には、やはり、「仲間をおもいやる」を最初に語るべきでしょうか。
■仲間をおもいやる
これは、人間関係をさして、お互い気遣って、仕事をしていきましょう!ということではありません。それは、「言うまでもなく、当たり前」のことです(笑)。
複数の人間がチームを組んで仕事をしていくのですから、気遣いのない職場、仕事というのは、辛いだけですからね。「人は、人によって活かされている」ところがありますから。
今回は、それではなく、
「仲間との境界線、役割分担を考える」
という点に、仲間をおもいやる想像性を発揮して欲しいという話です。
たとえば、ゲーム開発をしていると、ときおり「これは、わたしの仕事か?彼の仕事か?」と仕事の境界線が見えづらくなる時があります。この時、時間的にも精神的にも余裕があるといいのですがそれがないと、放置してしまうことがでてきます。
・どちらの人もがやらない⇒結果、期限が来ても未実装のまま
・どちらの人もやってしまっている⇒結果、時間が無駄に過ぎて両者とも締切を守れなかった
みたいなことが起きてしまうのです。これの解決方法は簡単です。
1に確認、2に確認、3,4がなくて5に報告
です(笑)。
気づいた刹那、「ごめん、これってどっちがやるんだっけ?俺だっけ?」と聞けばいいんです。どちらもが、自分だ!といったら、片方がゆずればいいですし、どちらもが、自分はやらないつもりでスケジュールを組んでいたら、調整しておさめにいくか?おさまりきらなかったら、2人してリーダーのところに報告にいかなくてはいけないです。
「遅れる」となった段階で、2人だけの問題ではなくチームの問題になってしまうからですね。
なので、気づいたら、確認。
自分のためにも、相手のためにも、チームのためにも、大事なことです。
当たり前のようですが、けっこう現場で起きていることです。
まずは1人1人が意識していきましょう!
■夢の世界へ、想像力をかきたてる
これは、ゲーム開発のことだと思うかもしれません。
ここでは、就活に紐づくことをお話したいと思います。
就職活動のとき、新卒の学生さんにせよ、中途のプロの方にせよ、エントリーシートや履歴書、自己アピールの書類、職務経歴書など、多くの書類を作成し、提出すると思います。中には、企画書やポートフォリオを求められることもあると思います。
これらの書類を出すのはなぜでしょう?というところに思いを巡らせたことがあるでしょうか?もちろん、手続きの1つなのは間違いありません。
ですが、提出された書類には、読む人がいます。
たとえば、エントリーシートを提出したとします。よくエントリーシートの項目には、
・趣味はなんですか?
・アルバイト経験ありますか?
・好きなゲームはなんですか?
そして、それらの理由を求められることが多いと思います。
たとえば、好きなゲームの理由に「友達とやって楽しかったから」「兄と最初にやったゲームだから」など、ほぼ、個人の思い出を書いてくれる人が大勢います。
ですが、これは、あくまでも「選考」なのです。この書類を見た人は、候補者の思い出を聞きたいわけではないことは、なんとなくわかると思います。
エントリーシートは、アンケート用紙ではない
のです。自身をアピールするために用意されていますし、そもそも、出題者がなぜこの質問をだしてきているのだろう?というところに想像を広げないといけません。そうすれば、すくなくとも回想ではなく、当該ゲームの分析やシステムの観点から好みを語ることをするのではないかと思います。
相手が何を求めているのか?
特にこの就活の各種書類のように、実際にこの書類を前にして、審査する人と候補者が議論をすることができない状況のものであればあるほど、意図を理解することにつとめ、審査の場所にいなくとも、ある程度以上、後悔のないように自身を伝えられるものに仕上げなくてはいけない、ということです。
また、就職活動(特に新卒採用)では、毎年数多くの候補者さんがエントリーします。
これは、どの会社であってもそうですが、数多くの中から、キラリと光るものを見つけて採用したいですし、でも、多くの候補者を選考しなくてはいけないので、毎回毎回合否をだしていかねばなりません。なので、どの選考にも、決して「なんとなく」の設問はありません。
1つ1つに意味、意図が込められていることを理解してください。
その意図を読みとり、しっかり準備できれば、おのずと面接の際もおちついて対話できるのではないでしょうか?
次に企画書についてです。
これは、企画職のひとが対象の中心になってしまいますが、候補者が、各企業から要求される分量はマチマチです。10枚の企画書を2種類以上!というところもあれば、3枚以内で1部のみ、というところもあります。枚数が多いものは、目次をきめて、1ページ1ページ構成をしっかりしないと、読み手を情報過多で混乱させる可能性があります。枚数の少ないものは、単純に表現方法を工夫するだけでなく、絶対に伝えないといけない内容が、正しく伝えられているか?がポイントになってきます。企画で言えば、コンセプトを伝え、そのシステムをさらに伝えることができているか? に尽きると思います。もちろん、ターゲット設定も大事ですが、難しいです。
ですが、学生さんは特にそうですが、おもいのたけをぶつける道具だと思っていることが、往々にしてあります。なので、枚数制限こそ守りつつも、文字文字している、読むのが辛い、否、見る・眺めるではないものが増えてくることでしょう。でも、これ、審査側にたつとどうでしょう? たしかに枚数は課したけど、要素に相関が少なく、分量だけ書き散らかされいて、見づらい書類をだしてきていただくと、審査の際に非常に辛いわけです。第一印象で、こんな企画だ!がわからないわけですし…
ともすれば、ギミックをたくさん使うだけの、点で目立つところあれど、大きな1つの流れ、線でつながったものでないものを提示しがちです。そして、絵が少ないと、その読みづらさは助長されてしまいます。読み手のことを考えた企画書作りを心がけたいところです。
■自身の熱中体験から、お客さんの遊ぶ姿をイメージして欲しい!
どんなに描き込まれ、わかりやすい企画書だったとしても、それを拝読した際に、お客さんがどうプレイしているんだろう?想像がつかない、という企画も多くあがってきます。
まずは、自分をユーザとしてイメージして、操作系から、どこに気持ちが動いたから、次に進んでいるのか?などを検討していただきたいのです。
案外、「頭の中でシミュレートしました!」と言われることも多いのですが、だったら、完全なシミュレートをしてほしいと思います。が、それはなかなか難しいでしょう。だったら、やはりプレイしてみることなんです。頭の中で。この時、よく引っかかってくるのが、UIの問題です。説明しないと使い方がわからない、とか発生しますが、それは、1つ1つのギミックを点で設定しているものの、自分自身が製作者であるために、隙間のうまってないところを補完してしまうのです。
特に、視線誘導のことを考えていない企画が散見されます。
どういうことかというと、UIとしてはたしかにレイアウト的に配置はされておさまっているのですが、主にどこをみてゲームをしてほしいのか?の観点が抜け落ちていると、オブジェクトを順次1つ1つ目で追っかけていくことが自然な配置になっているといいのですが、たいていが、「同時に3箇所も見れないよ」みたいな設計になっていることが多いです。
なので、実際に操作系もですが、プレイしているイメージで画面仕様をおいかければ、そもそもつくってみなくとも書類場で欠点をみつけることもできるはずです。
なので、よりお客さんを想像して、ゲームを開発、チェックしてほしいと思います。
さて、総括です
・仲間との仕事
・就活での書類
・思いのたけをぶつけるだけではダメ
どれも、これらは、おもいやりから、想像をはたらかせ、創造していかないといけません。
学生さんは、これを読んだらまずは、エントリーシートを見直してみるとよいのではないでしょうか?
そして、企画書の作成の時にも頭の片隅に覚えていてくれたら、読み手側、審査する人の気持ちを考えて企画書を作成されることでしょう!
※ちなみにお客さんに媚びるということではないのでご注意ください。
今回は、以上です。
■著者 : 馬場保仁
DeNA プロデューサー 兼 採用担当。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。DeNA入社後は、スマホアプリの開発にプロデューサーとして従事。現在は、プロデューサーとしてゲーム開発を行うと同時に、人事も兼任し、ゲーム業界の人材育成のためにも尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
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■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432