コロプラ<3668>は、2016年8月17日にOculus Rift向けの新作VRロボット格闘ゲーム『STEEL COMBAT』をOculus Storeにて配信開始した。
VR事業に積極的な展開を見せる同社は、コロプラ本体によるゲーム開発をはじめ、100%子会社・360Channelの360度動画サービス事業の展開、そして「Colopl VR Fund」によるVR関連企業への投資など、グループ一丸となっていち早くVR事業へ参入し業界を盛り上げている。
このほか米国子会社・COLOPL NI初となるVRゲーム『Cyberpong VR』をHTC Vive向けにリリースしたほか、2016年10月13日に発売予定のPlayStation®VR(以下、PSVR)のローンチタイトルも開発するなど、話題に事欠かない。
本稿では、コロプラのVRゲーム事業部を統括する小林傑氏にインタビューを実施し、これまでとこれからの取り組みについて聞いてきた。
■リリースラッシュ 運用型のVRコンテンツも構想
――:本日はよろしくお願いします。これまでも複数のVRゲームをリリースしてきましたが、改めて事業部として立ち上がった頃からお聞かせください。
そもそも弊社が最初にVRゲームを手掛けたのは2014年の夏頃でした。まだ当時は事業部ではなく、小さいチームのなかで『the射的! VR』や『白猫VRプロジェクト』といった、既存のモバイルゲームのVR化・移植を行っていました。その後、代表の馬場(コロプラ 代表取締役社長 馬場功淳氏)より「今後はVRに特化したオリジナルコンテンツを作っていこう」という話を受けて、2015年1月頃にVRゲームを開発する事業部が立ち上がりました。
――:当時、今でもそうだと思いますが、事業部のメンバーにはモバイルコンテンツを開発していた方が中心だったのでしょうか。なかなか「VRゲームを手掛けていました」という経験者はいないと思いますし。
ええ。立ち上げ当初は他部署から合流してきました。期間が経つにつれて、チームとして大きなコンテンツを作るために採用活動を始めましたが、当時はVR事業で採用活動を行っているところは非常に少なかったです。現在は、コンシューマ出身者の方や新しいプラットフォームでゲームを作りたいという意欲的な方が集まり、結構な大所帯となりました。
――:開発環境はUnityが中心でしょうか。昨今、Unreal Engineなども取り沙汰されていますが。
現状リリースしているタイトルについては、すべてUnityで開発しています。もちろん理由としては、これまでモバイルコンテンツの開発でUnityを使用していたほか、会社としてもノウハウが多いからです。簡単なモックを作るレベルであれば、アセットストアを用いてスピーディーに開発できる点などが魅力ですね。
ただ、VR開発においてはどちらが最適なゲームエンジンかは分かりません。今後は我々のチームでもUnreal Engineを導入していこうという構想はありますが、学習コストがかかるものなので、短いスパンでコンテンツを手掛けて、ノウハウが徐々にたまってきたタイミングで大型タイトルに繋げていければと思っています。
――:事業部が立ち上がってからは、2016年3月を皮切りにOculus Rift向けに VRゲームを2タイトル配信されました。それぞれお聞きしたいのですが、はじめに『Fly to KUMA』について。主観視点のアクションゲームが多い印象のVRゲームですが、同作では敢えてのパズルゲーム。どのように企画として始まったのでしょうか。
開発当初はパズルゲームを作るというよりかは、先行研究としてVR空間上でどういうふうにオブジェクトを移動できるかを行っていました。コントローラで選んで動かしたり、視線で選択して移動させたりと、VR空間上の操作方法について研究していたところ、積み木やドミノなどを並べてみたら、パズルゲームとしても相性がいいのではないかと考え、現在の『Fly to KUMA』に行き着きました。
■『Fly to KUMA』ゲーム概要
本作は、たくさんのクマたちをゴールまで導くパズルゲーム。クマたちは一定の法則に従いつつ前進していく。そのため、プレイヤーはクマたちが進むルート上にうまくブロックを配置することで段差を登らせたり、障害物から守ったりしながらゴールまでのルートを確保してあげなくてはいけない。ステージは100種類以上あり、ステージが進むにつれて難易度も増していく。また、本作のLINEスタンプも配信開始している。
――:続いて『VR Tennis Online』についてですが、こちらは打って変わってTPS(サードパーソン・シューティング – 第三者視点)の作りになっています。“VRゲームならでは”を打ち出す際に、どのような工夫をされましたか。
視点の主観と第三者については、馬場やチームメンバーと議論を重ねました。いわゆる第三者の俯瞰視点だと、これまでのコンシューマ・モバイルゲームと比べて、どこが違うのかなどが問題として挙がっていました。
そこで考えたのは、通常は第三者視点として、サーブや必殺技など特定のシーンの際に目線をボールのタイミングに合わせられるようにしました。特に必殺技は現実離れしたオーバーな演出が多いので、目線の位置ひとつで感じ方もだいぶ変わってくると思います。そのほか、ダブルスのときには後方の味方キャラクターの立ち位置を確認する際に、自分で後ろを振り返って確認するのはVRらしさが出ています。
■『VR Tennis Online』ゲーム概要
本作は、白熱のテニスを楽しめるスポーツアクションゲーム。コントローラのボタンでショットを打ち分けられ、シンプルな操作で奥深い駆け引きを楽しめる。また、ゲームを進めることで必殺ショットを習得できる。リアルな世界で実現することが難しい必殺ショットを、VRならではの臨場感で体験可能。必殺ショットは同時に最大2つセットできるため、どのショットを組み合わせるかが勝敗のカギを握る。腕を磨き、世界中のプレイヤーと白熱のオンライン対戦が楽しめるのも魅力。
――:ありがとうございます。端末の普及を考えると、まだ限られた方しか遊ばれていませんが、直近で何か体験された方からのコメントなどはありますか。
おっしゃる通り、正直まだまだ一般のユーザーさんの手元には届いていません。ただ、ローンチのタイミングに業界関係者やメディアの方に遊んでいただく機会があったのですが、『Fly to KUMA』ではクマが悲惨にやられるシーンで、みなさん良いリアクションをとっていました。もちろんクマの可愛さも伝わっていますが、ブラックユーモア溢れる演出も取り入れたことで、海外の方にも受け入れられた印象です。
『VR Tennis Online』は、Oculusの創業者であるパルマ・ラッキー氏にも遊んでいただいて、一緒に勝負するなど長い時間プレイしていました。また、30本近くのOculusローンチタイトルのなかで、オンライン対戦要素が入った数少ないタイトルというころもあり、挑戦的な作品であることは伝わったのではないでしょうか。
――:VRゲームを手掛けるうえで、ジャンル問わず開発中に意識することなども恐らくあるかと思います。
はい。開発当初はVRゲームを作ることも初めてだったので、どういうカメラワークにしたらいいのか、ユーザーさんにVRならではの体験をしてもらうのに演出はどうするかなど、企画立案の段階から苦労しました。
ただ、それ以上に今後一般のユーザーさんにも多く普及した際、様々な課題点が挙がってくるのかと思います。数年前に歩きスマホが禁止になったなど、実際にユーザーさんの手元に渡ってから発生する問題も多いと思います。もちろん弊社では挙がってくる課題点に関しては、ひとつずつ解消していく体制を整えていきます。
――:課題点も出てくるかと思いますが、VRゲーム自体の今後の遊び方についてはいかがでしょうか。
やはり今後HMD(ヘッドマントディスプレイ)が当たり前のように多くの方に使われるようになったときに、長時間でも遊べるようなコンテンツが求められてくるのかと思います。たとえば、今のコンテンツは5分~10分ほどの短い体験で終わってしまうのがほとんどです。直近リリースした2タイトルのデータを集めて、ユーザーさんがHMDを装着している時間、それが5分だとしても、1ステージ5分のものを複数作るなど、提供の仕方は様々あるかと思います。
――:なるほど。コンシューマに代わるものとしてあるならば、確かに長時間遊べるのは理想的ですね。また一般ユーザーに普及させるためには、誰かと一緒に遊べるなどのコミュニティやソーシャル性も重要になってくるのかと思います。
ソーシャル要素はありませんが、『VR Tennis Online』も対人戦が楽しめるひとつのコンテンツですね。今後はVR空間でコミュニケーション取れたり、一緒にゲームを遊んだりできるタイトルを作っていきたいと思います。一般ユーザーさんに普及するには、やはり端末を買ってまででも遊びたいキラーコンテンツが必要だと思いますし、そこを我々が作れるように努力していきます。
――:PSVRでのローンチタイトルも決まっていますが、開発されている小林さんとしてOculus Rift、HTC Vive、PSVRといったハイエンド端末の印象はいかがですか。
Oculus Riftは、親会社がFacebookということもあり、海外の認知度は非常に高い印象です。早くからDK2というデベロッパーキットを配布するなど、プロトタイプ含めてかなりスムーズに開発できた点は大きかったですね。Viveについては、やはり初めから内包されているハンドモーションコントローラーの存在は大きいです。広いスケールとトラッキングエリアは、良質なVR体験ができるのは素晴らしいです。
一方でPSVRはまだ発売されていませんので何とも言えませんが、プレイステーション4の全世界累計実売台数が4000万台を突破したところを見ると、かなりのスピードで多くのユーザーさんの手元に届くのではないでしょうか。価格も安価ですし、普及という意味では初速にとても期待しています。
――:VR事業部でも積極的に人材を採用しているとお聞きしています。
はい。エンジニアに関しては、先ほどもお話した通り今後通信対戦をはじめ多人数との体験を取り入れていきたいので、サーバサイドやクライアント側で描写周りに強い方が求められるかと思います。正直なところVR開発は未経験なのが当たり前だと思いますので、決して経験者が優遇されるとは限りません。
――:VRという未開拓の分野で新しいことに挑戦していきたい、そういうマインドも大切なのですね。
ええ。VRの可能性を信じているのは非常に重要かなと思います。今我々が取り組んでいる事業は、日の目を見るのがまだ先かもしれませんが、今後絶対来るであろう市場、そして面白いVRコンテンツを作りたいという方と一緒に働きたいと思います。
――:これまでVR事業を中心に携わってきたと思いますが、小林さんがVRの市場に対して今後「来るだろう」と手応えを感じたのは、どういうときだったのでしょうか。
これについては2回ありました。
1回目は、Oculus さんのコンシューマバージョンのデモ機「Crescent Bay」を初めて体験したときです。開発者向けキットのDK2と比べて、解像度の向上や大幅な軽量化と小型化が図られており、急に身近な存在に感じました。こういうものが世の中の人の手に渡ると思ったときは、とても興奮しましたね。
2回目は、Oculus Touchを体験させてもらったときです。このとき初めてハンドモーションコントローラーを体験したのですが、自分の手がVR空間にあって、物を掴むだけでも本当に面白かったのを覚えています。あの瞬間から、今後コントローラに対応したVRコンテンツを作っていかなければならないと思いました。
――:具体的に今後のアクションとしては、新しいゲームを作っていくことが中心ですよね。
はい。弊社のVR事業には投資や子会社の360channelなど複数ありますが、我々はそのなかでもゲームが専門となります。
詳細は申し上げられませんが、現在は複数のVRゲームの開発ラインが動いています。なかには、きちんとマネタイズを考えた運用型のコンテンツも含んでおります。今はパッケージ販売が主流ですが、相性の良いVRならではのマネタイズもあるのではないかと考えています。VRゲームを中心に開発していますが、それ以外にも関連していくVR事業に関しても随時研究を進めていきたいと思います。
――:それでは、最後に今後の展望について教えてください。
多くの一般ユーザーさんの手元に届くのは、まだ先の話かもしれませんが、そこに向けて今は色々なジャンルのVRゲームを手掛けていきたいと思います。規模に関しては、大なり小なりあるかと思いますが、どこか早いタイミングで「VRゲームにはこのジャンルが合うんだ」など、相性を見つけて世に出してデータを集めていく…といったことが重要なのかと考えています。VR市場が大きくなったときに考えては遅いので、早いタイミングから準備は進めていきたいと思います。
――:本日はありがとうございました。
■コロプラ新作VRゲーム① 『STEEL COMBAT』
『STEEL COMBAT』は、360度全方位を見渡せる仮想現実世界ならでは闘技場を舞台に、個性豊かなロボットたちを操作して戦う近未来型格闘ゲーム。プレイヤーはコントロールパッドで自律型ロボット「VR(Voluntary Ranger)」を操作し、対戦相手の体力ゲージを0にすると勝利となる。対戦中に自由に切り替えられる2つのモード(近距離戦闘モード、遠距離戦闘モード)を状況に応じて使い分けることが勝利のカギ。
また、本作はインターネットに接続することで世界中のプレイヤーとも通信対戦を楽しむことができる。さらに操作やコンボの練習ができるトレーニングモードを搭載。対戦するだけでなく、ほかのプレイヤーのバトルを、最大6人まで観戦する機能も実装されている。
本作の開発は、コロプラ子会社であるエイティングが担当。エイティングは家庭用ゲーム機向け格闘ゲームの開発実績を豊富に持ち、開発技術力について多くの知見を有しノウハウを蓄積していることから、本作においてもVRならではの表現はもちろんのこと、 本格的な対戦格闘ゲームの醍醐味を存分に詰め込んだタイトルを実現している。
■『STEEL COMBAT』
■コロプラ新作VRゲーム② 『Dig 4 Destruction』
『Dig 4 Destruction(以下、『D4D』)』は、制限時間内に地中を掘って見つけた武器で敵を倒すシューティングバトルゲーム。プレイヤーはVRならではの360度に広がるフィールドを縦横無尽に移動しながら、「HTC Vive」のコントローラーを使って武器を入手し戦っていく。制限時間5分以内に一番多くの敵を倒したプレイヤーの勝利。
ゲーム中は実際に手を使って地面を堀ることで、銃や爆弾などの武器を手に入れられる。また、敵は周囲の地形と敵の場所を知ることができる「ソナー機能」を利用して発見可能。敵からの攻撃は壁に隠れる、移動する、跳ね返すなど、地形や武器を利用して避けていこう。
手にした武器によって攻めや守りの戦略が変わってくるため、状況に適応する力を求められる点も本ゲームの魅力だ。何度もプレイして、自分なりの戦略を見つける楽しさもある。
本作はインターネットに接続することで、世界中のプレイヤーと最大4人までオンライン対戦を楽しめる。さらに、対戦が始まるまでの間は対戦相手とコミュニケーションできる部屋で待ち合わせを行うという。この待機ルームでは、バトル中に入手できる武器を手に取って試すことができるだけでなく、相手から見えるマスク(アバター)の付け替えなども可能。
本ゲームはボイスチャット機能にも対応しているので、世界中のプレイヤーとトークしながらプレイできる。
■『Dig 4 Destruction』
■コロプラ新作VRゲーム③ 『Fly to KUMA MAKER』
一定の法則に従いながら前進するクマたちを誘導しゴールまで導く『Fly to KUMA』のゲーム性はそのままに、 HTC Viveのワイヤレスコントーラーに合わせ、 ゲーム内で物を掴む機能を実装。それにより、ブロックを叩いて壊す、レバーを操作して仕掛けを動かす、といったギミックが登場する。
ゲーム内のステージは『FlytoKUMA』とは異なる全60ステージが収録されている。さらに新機能として、自由にステージを作成するモードが追加。プレイヤーの発想次第でステージのバリエーションは無限に広がる。作成したステージはインターネットに接続することで世界中のプレイヤーに公開が可能だ。
また、他のプレイヤーが作成したステージをプレイすることもできる。楽しいステージを作成して、たくさんのプレイヤーにプレイしてもらおう。さらに本作は、Valve社が運営するオンラインPC用ゲームストア「Steam」で実施されているゲーム開発者支援システム「Greenlight」を経て、配信が行われる。
■関連サイト
(C) 2016 COLOPL, Inc.
会社情報
- 会社名
- 株式会社コロプラ
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3668