【特集①】期待作『八月のシンデレラナイン』は「世界観・キャラ・シナリオにこだわり青春映画を想起する作品にしたい」…アカツキ山口Pに訊く


『サウザンドメモリーズ』や各種IPタイトルのゲーム開発でヒットメーカーとして知られるアカツキ<3932>が“青春体験型野球ゲーム”『八月のシンデレラナイン』(略称:ハチナイ)の事前登録を行っている。久々のオリジナルタイトルということでユーザから寄せられる期待も非常に大きく、事前登録者数は受付開始からわずか10日で10万人を突破した。

Social Game Infoでは、今回、『ハチナイ』開発者に連載形式でインタビューを行い、それぞれの立場からゲームの魅力やこだわりポイントについて語ってもらった。記念すべき第1回目となる今回は、『ハチナイ』のプロデューサーである山口修平氏に企画全般について語ってもらった。アカツキでは2作品目のプロデュースとなる。


 
■『ハチナイ』とは

本作は、「青春×女子高生×高校野球」をテーマにした“青春体験型野球ゲーム”。プレイヤーは同級生監督として、魅力的な女子キャラクター達を指導・育成しながら、共に”甲子園”という夢を追いかけていく。

プレイヤーの使命は才能ある選手を集め、育成していくことでチームを強化し、試合を勝利に導いていくこと。時にはヒロインたちが抱える悩みや葛藤を解決してあげることも必要で、その結果、選手の大きな成長を促す事もある。このように “青春”というテーマとゲームシステムを連動させることで、ヒロインの内面を深く、豊かに体験できることが特徴となっている。


 
 


 
アカツキの強みとなる世界観やキャラクター、シナリオにこだわった『ハチナイ』

――:まずはじめに現在のお仕事をお聞かせください。

よろしくお願いします。アカツキでの役職としては、新規ゲーム開発のジェネラルマネージャー兼プロデューサーをしています。『ハチナイ』はプロジェクト立ち上げ当初からプロデューサーとして業務を行っており、今はこちらが主となっています。


――:『ハチナイ』はどのような作品になるのでしょうか?

とあるシニアリーグのエースプレイヤーだった少年が試合で怪我をしてしまい野球への夢が断たれてしまいます。その少年が高校生となり、主人公の有原翼という野球を生きがいにしている女の子との出会いによって、一度は諦めた野球の道を、選手ではなく「監督」という別の形で歩み始めるというところから物語が始まります。プレイヤーはその少年となり、有原翼を中心とする女子野球部チームの監督として、選手を鍛えたり、オーダーを考えたりしながら、甲子園を目指します。
 


――:なるほど。ゲームとしてこういうところにこだわったというところはありますか?

『ハチナイ』を作るにあたり、既存のアカツキのゲームはどのような部分がお客様から評価されているかを振り返ると、「シンデレラシリーズ」や「千メモ」など、キャラクターや世界観、シナリオの良さがありました。今回のゲームについても、青春というテーマのもとで、アカツキの強みである、キャラクターや世界観、シナリオにとことんこだわって作っています。

 
普通の美少女ゲームとは一線を画す「青春」をテーマにしたゲーム

――:具体的にはどのような部分にこだわっていたのでしょうか?

本作は仲間と一緒に夢を追いかけて成し遂げる事や、放課後や部活といった日常を通して育まれる友情など、「青春」体験を重視しています。

シナリオも、他のゲームと比べると疑似恋愛の要素はあえて薄くしている反面、友情物語や青春体験の部分は厚くしています。イラストも可愛さだけでなく、ノスタルジーというか夏の終わりの切ない感じなど、空気感・空気の匂いでドキドキするような、言葉では説明が難しいのですが、いろいろな青春映画などで表現されているような感覚が、イラストから伝わってくるように心がけています。

高校野球、甲子園というテーマを選んだのも、日本の青春の代名詞とも言える舞台だからなのですが、野球をテーマにした題材なので、本格的な野球シーンをダイナミックに描くことにも力を入れています。構図にもこだわっていて、イラストとして描くのが難しい下からあおるようなアングルや上から見下ろすアングルのカードなど、極端にパースをつけて迫力ある表現を心がけています。今までのモバイルゲームでは体験できなかった驚きをお客様に提供したいと思い、積極的にチャレンジした作品になっています。

 


――:美少女を題材としたゲームとのことですが、最近、そういったゲームは増えているのでしょうか。

はい。美少女を題材とした『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』や『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』は絶対王者とも言えるゲームだと思いますが、市場の傾向として疑似恋愛の部分よりも、頑張っている女の子を応援する、応援したいという気持ちをよりかき立てるような作品が増えてきていると思っています。

そういう作品だからこそ、男性だけでなく女性も遊んでくれる、幅の広さが生み出されます。『ハチナイ』も同様に、疑似恋愛の要素よりも、男性はもちろん女性にも楽しんでもらえるような大きなIPや作品にするための可能性を高めていきたいと思っていますが、アイドルではなく高校野球という異色のテーマでフルスイングで挑むところに心意気を感じてもらえれば幸いです。



 
夏、青春といえば、『ハチナイ』と言われるような作品にしたい

――:先ほど青春にフォーカスするという話があったと思いますが、そう判断された裏にはどういった理由はあったのでしょうか?

新しい企画をやろうとなった時に、もともとシンデレラシリーズのアイデンティティだった「美少女×スポーツ」というコンセプトをベースに、より間口を広げるために相性の良い王道のテーマとして「青春」が良いと考えました。

「美少女×スポーツ」のジャンル自体はモバゲーで『シンデレラナイン』を開始させていただいて、アカツキが開拓したジャンルと自負しています。そこにさらに「青春」というキーワードを入れて一般性を高めることによってより多くの人に遊んでもらい、シンデレラシリーズをよりメジャーなIPに拡げていきたい戦略的な意図があります。

また「青春」をテーマにしたものは映画やアニメなどでは定番のジャンルになっていますが、ゲーム、特にモバイルゲームでは定番化しているものは少ないと思っていたので、今回の作品でチャレンジしたいと考えました。特に、甲子園が開催される夏が来たら、『ハチナイ』の季節だ!と思ってもらえるような作品になれば良いなと思っています。



 
「なぜこのゲームを作っているのか?」を常に考える

――:もう一つ「甲子園」「野球で甲子園を目指す」というテーマがありますが、これも関連しているのでしょうか?

はい、関連しています。「青春」を表現するのに「野球」「高校生」「甲子園」は王道のキーワードだと思っています。もともと『シンデレラナイン』も女子が甲子園を目指すテーマですが、今回はよりリアリティを持たせた形になっています。

そもそも女の子が甲子園を目指すのは荒唐無稽なテーマで、現実的にはルールや慣習的に行くことができない、禁止されているものになります。絶対に無理なことや無謀と言われていることを、作品に登場する女の子たちがどうやって乗り越えていくのか、その姿や心の動きをリアリティをもって描くことで作品としての面白さを出していけたらと思っています。

 


アカツキではゲームを作る時に「なぜ自分たちはこのゲームを作っているのか?」を常に考えています。それは、単純に売上だけではなく、お客様にどのような体験をしていただきたいのか? お客様がゲームをプレイした後に良い変化を提供できるのか? を考えてゲームを作っています。

今回の「ハチナイ」もそれを考えて作っていて、困難なことに対して諦めずに一歩踏み出す勇気をプレイしているお客様に感じてもらいたいです。周りから絶対不可能と言われるような問題に対して、健気に頑張って立ち向かっている女の子たちと過ごす時間から何かを感じとっていただき、元気や勇気を与えられる作品になれば良いなと思っています。



 
言葉で伝えるのが難しい「青春」を様々なメディアを通して伝える

――:KADOKAWAさんとのコラボはどのような形になるのでしょうか?

ゲームはプレイしないと体験がなかなか伝わりづらいものだと思っています。しかし得られる体験を伝えられる手法は、ゲーム以外にもいろいろあります。そのうちの一つの形がKADOKAWAさんと一緒にやらせていただいたアニメーションでの表現になります。これは『ファイナルファンタジー』でいうところのCGムービーのようなもので、ゲームで得られる体験や感動をアニメーションという形を通して先行して体験できるものになります。特に「青春」は言葉で伝えるのは難しいのですが、映像を見れば感覚としてすぐにイメージできます。

また漫画と小説の公開もWeb上で行っています。漫画の方はギャグ漫画になるのですが、漫画家の大川ぶくぶ先生に作画をお願いしました。真面目に青春にアプローチしてばかりでは肩に力が入ってしまうので、もう少しリラックスして楽しめる作品になっています。小説は、文字を見て人間の脳でイメージをさせるので、イマジネーションを刺激する形で青春を表現しています。

 


KADOKAWAさんには、いろいろなメディアを使ったアプローチによって青春のイメージをゲームプレイする前にお伝えする、その世界観の拡散と深堀りという面でご協力いただいています。


――:なぜKADOKAWAさんと組まれたのでしょうか。

KADOKAWAさんがメディアミックスにおいて様々なノウハウをお持ちというのはもちろんなのですが、昔から夏に角川映画を見たり、角川文庫を読んだりといった原体験からくる企業イメージがフィットしたところも大きいです。最近だと『時をかける少女』のアニメーションのイメージは記憶に新しいですが、それ以前から個人的に「夏」「青春」のイメージをKADOKAWAさんには感じておりまして、KADOKAWAさんとやりたいなと企画当初から考えていました。


――:気になるリリース日はいつ頃になりそうでしょうか?

公式サイトで先行して出させてもらっているお知らせと同じ内容になってしまって恐縮なのですが、夏配信を目標に開発を進めてきたのですが、もう少しお時間をいただきたいと考えております。

8月1日の事前登録開始より「いつ出るのか…」「待ちきれない!」という声を多数いただいており、嬉しい反面、沢山の方をお待たせしていることは大変申し訳なく思っております。

少しだけお時間をいただく分、より良い作品をお届けできるよう制作スタッフ一同、一層の努力を重ねて参りますので、もうしばらくお待ちいただければと思います。



 
『ハチナイ』でまたひとつ可能性を拡げていきたい

――:最後に読者の方にメッセージをお願い致します。

これまでお話しした通り、今までのモバイルゲームではめずらしいアプローチで制作を行っており、これからも様々な「驚き」を提供していきたいと考えていますので、ご注目いただきたいと思います。

また昨今はAR・VRを使って今までとは違うゲーム体験や驚きを与える、という流れもありますが、もし『ハチナイ』がIPとして人気を確立し、作品性やテーマ性の部分で差別化ができれば、いろいろな表現の幅が生まれます。ゲームに多様性が出て分化するなど、また一つモバイルゲームの可能性が拡がり、ひいてはゲーム業界が発展していくことにつながっていくと思いますので、そこにも注目してもらえたら嬉しいです。成功するかどうかはこれからですので、頑張りますとしか言えないのですが(笑)。

 

――:ありがとうございました。


 
(編集部 木村英彦、編集協力 森山晃義)


 
■関連サイト
 

事前登録サイト

ポータルサイト



©Akatsuki Inc.
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高239億7200万円、営業利益26億7600万円、経常利益28億3400万円、最終利益12億8800万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
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