【インタビュー】『Fate/Grand Order』開発・運営のディライトワークスが完全子会社化したミラクルポジティブとは 代表の加藤拓氏に訊く次なる一手
『Fate/Grand Order』を開発・運営しているディライトワークス株式会社は、2016年8月1日、株式会社ミラクルポジティブの全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。
ミラクルポジティブは、2010年の設立以来、スマートフォン向けディフェンス系ゲーム『ねこ戦争2 vsエルダーサイン』やPS Vita/Steam版サンドボックス・アクション RPG『エアシップ Q』などをリリースし、 プラットフォーム問わず多種多様なゲーム開発に取り組んできた。
今回の子会社化によって、ミラクルポジティブの持つ開発ノウハウやプロデュース力をディライトワークスのゲーム開発と融合させ、 今後提供を予定しているコンテンツを通じて、 より多くのユーザーが楽しめるコンテンツの提供を行っていくとしている。
そこで本稿では、ミラクルポジティブの代表取締役である加藤拓氏に、子会社化の経緯やディライトワークスの開発環境などを伺ってきた。
■スマホ、コンシューマ問わず様々な取り組みや可能性に挑戦
ミラクルポジティブ
代表取締役
加藤拓 氏
――:本日はよろしくお願いいたします。2016年8月1日付けでディライトワークス社に合流したと思いますが、そもそもミラクルポジティブを設立された経緯など、前段階からお伺いさせていただけますか。
はい。これまで複数のゲーム会社を経て、3社目のスクウェア・エニックスでは8年半ほど在籍していました。「mobage」(提供:ディー・エヌ・エー)や「GREE」(提供:グリー)がゲームをオープン化したり、Google PlayとApp Storeが出てきたりしたタイミングで、小さいチームでも良質なゲームをプラットフォーム上で開発できるのではないかと思い、独立しました。
――:独立するタイミングとしては、ちょうどソーシャルゲームバブルのときだったのですね。
そうですね。ただ、私はソーシャルゲームといっても流行りのカードバトルゲームを開発することはなく、スクエニ時代一緒に開発していた株式会社リンドブルムさんと「本当に面白いモバイルゲーム」を焦点に開発を続けていきました。当時のスタッフは、会社に常駐していたのが5人ほどで、プロジェクトごとに外部の方と協力して開発していました。
――:当時からソーシャルゲームやネイティブゲームを手掛けられていたと思うのですが、直近では『エアシップQ』のようなコンシューマ向けのタイトルも手掛けられています。事業内容としては、面白いゲームを作るためであればプラットフォームは問わずというところでしょうか。
ええ。設立から6年目を迎えるミラクルポジティブですが、基本的には面白い、そして自分たちの作りたいゲームを作ろうというのを大切にしています。
――:ここからは ディライトワークスへの合流についてお伺いできればと思います。そもそもどのような経緯があったのでしょうか。
じつは、ディライトワークス代表の庄司(代表取締役:庄司顕仁氏)とはスクウェア・エニックス在籍時代に一緒に仕事をしており、私が独立した後も度々顔を合わせる機会がありました。そして2016年3月、久しぶりに一緒に食事をしたタイミングでディライトワークスの社内の様子や、今後の展望などについて色々話を聞きました。そのときは子会社化という話ではなく、「何か一緒にやろうよ」というぐらいでした。
――:最終的に加藤さんが参画を決めた理由は何だったのでしょうか。
大きく分けてふたつあります。
ひとつめは、先ほども申し上げましたが、私が独立したソーシャルゲームバブルの時代とは違い、1タイトルを開発するのにかかるすべてが変化してきています。ゲーム創りに集中できる環境や優秀な人材を集めるのに難しさを感じていたので、ディライトワークスで開発したほうが、自分が思い描いた面白いゲームを作れるのではないかと考えました。
もうひとつは、庄司自身の「働いている人が楽しくゲームを作れるような環境を整えて、クリエイターが集う場所をつくりたい」という想いに共感したのがきっかけです。
――:なるほど。 現在加藤さんは、新作を手掛けているのでしょうか。
はい、新規プロジェクトを始めています。引き続きミラクルポジティブのメンバーをはじめ、ディライトワークスのスタッフと共に新作アプリを開発しています。現在はまだ企画の段階で、具体的にお見せできるようになったら改めて発表させていただきます。
――:これまで加藤さんは、ゲームプロデューサーとしてモバイルからコンシューマまで、様々なタイトルを立ち上げられたと思うのですが、ゲームを開発するうえでこだわっていることはありますか。
やはり自分自身が作りたいもの、そして遊びたいゲームを作るようにしています。また、スマートフォンの登場により、ゲームで遊ぶユーザーの裾野も広がってきていますので、全年齢のユーザーが楽しめるようなゲームも創っていきたいと思っています。
――:これまでゲームを遊んでいない人たちも普通に遊んでいますからね。
私の息子もスマホゲームで遊んだりしていて、いよいよ全年齢でゲームが遊ばれるようになったと感じます。
――:今のスマホゲームは日を追うごとにクオリティが高くなってきているほか、市場は競合他社が多いレッドオーシャンです。加藤さんとしては、現在のスマホ市場をどのように捉えていますか。
市場規模は徐々に鈍化しつつあり、かつランキング上位タイトルのボリュームやクオリティも高く、開発費の高騰は避けられないのが現状だと考えています。そのため、小手先で作ったゲームが通用しなくなり、ガッツリと作りこんだ本当に面白いゲームがきちんと評価される時代になるのではないかと思っています。そんな市場で『Fate/Grand Order』は、今までのスマートフォン向けゲームというくくりにとらわれず、コンシューマゲームのような作り込みで開発・運営をしています。スマートフォンゲームもコンシューマゲームを創るくらいの手間をかけて開発していくというタイミングに来ているのかと思います。
――:個人的には、ユーザーの目が肥えてきたなというのはありますね。
そうですね。だからこそ現在はディライトワークスで、きちんと先を見据えて、優秀なスタッフと共に新しいゲームを開発して、多くのユーザーさんに面白い作品を提供していきたいと考えています。
――:合流後、ディライトワークスに出入りしていると思いますが、社内や開発現場の雰囲気、環境はいかがでしょうか。
スタッフ同士は仲がいいですね。忌憚なく意見を言い合える風通しの良さがあります。オフィスは移転して間もないこともあり、とても綺麗なうえ、全体が見渡せるようになっています。開発者のデスクはチームごとにパーテーションで区切られており、集中出来る環境になってますし、プロデューサーや宣伝チームは話し合いながら仕事を進めることが多いため、フラットなデスクを使用しており声をかけやすい雰囲気です。受付や個人のデスクには、スタッフが大好きなフィギュアやポスターが飾ってあるかと思えば、本棚にはオライリーの技術書がたくさん並んでいて、ゲーム会社っぽい自由な感じと仕事しやすさが同居してるオフィスですね。
――:ディライトワークスのスタッフには、どういう方がいらっしゃいますか。
代表の庄司がいつも言っていることですが、“ゲーム創りに対して誠実な人”が多い印象を受けます。たとえば、社内政治に働きかけるなど全くなく、ゲーム創りに対して集中して臨んでいる方ばかりということです。また、コンシューマゲーム開発出身のスタッフも多いほうだと思います。
――:現在ディライトワークスでは積極採用中とのことですが、加藤さんが一緒に働きたいと思うスタッフの特徴はどういうものですか。
「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という企業サイトで掲げている開発理念の通り、これらの意志がある方と働きたいと思っています。また、すでに別の会社で何タイトルも手掛けていて、集中して誠実にゲームを開発したい方にとっては働きやすい環境なので、そういった方にも是非来てほしいと思っています。
現在はほぼ全職種で募集していますが、新規プロジェクトを進めている私としてはアートディレクターの方を積極的に募集しています。
――:今後、ご自身としては新作を出すというところが直近の目標かと思いますが、もう少し長い目で見たときに展望などはございますか。
そういう意味では、決定的なヒットを出したいと考えています。自分自身が好きなゲームを作るという思想は変わらずあるのですが、どうしても独立後はそういう思いが極端に強かったです。今後はバランスも考慮しながら、ディライトワークスのスタッフの想いや力量を含めて、総力を挙げて世界的ヒットレベルを目指していきたいと思います。
――:そこに関してはプラットフォームも問わないのでしょうか。
はい。必ずしもスマホにこだわってはおりません。直近の新作はスマホゲームですが、今後はコンシューマゲームになったりする可能性もあると思います。ディライトワークスもスマホゲームだけを作る会社ではありませんので、これから様々な取り組みや可能性に挑戦できると思います。
――:本日はありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- ディライトワークス株式会社
- 設立
- 2014年1月
- 代表者
- 代表取締役 庄司 顕仁