【セミナー】ゲームアプリ事業者が留意すべき資金決済法の要点とは…渡邉弁護士が『LINE POP』と『ポケモンGO』を事例に解説



アプリ開発者向けセミナー「アプリ×資金決済法 第1回セミナー」が9月26日、東京都内で行われた。資金決済法に関する著作を出すなど、この分野の第一人者として知られる、弁護士の渡邉 雅之氏(写真)が登壇し、「資金決済法の注意点」と題する講演を行った。『LINE POP』と『ポケモンGO』を事例としてあげ、資金決済法の「前払式支払手段」に該当要件を解説した。

「資金決済に関する法律」(以下、資金決済法)とは、(1)前払式支払手段、(2)資金移動業、(3)資金清算業を規制し、利用者保護とサービス提供の促進を図るための法律だ。前払式支払手段については、当初は商品券やプリペイドカードが対象だったが、ここ数年、マーケットとして急拡大してきたソーシャルゲームやスマートフォンアプリ、PCオンラインゲームなどで使われる「サーバ型の前払式支払手段」も適用対象になった。

それでは「前払式支払手段」とは何か。以下の3つの要件を満たしているものが該当する。
 
・金額などの財産的価値が記載・保存されていること(価値の保存)
・対価を得て発行されること(対価発行)
・商品・サービスの代金の支払に利用されること(権利行使)

昨今、「前払式支払手段」の適用範囲を巡る問題が各所で報じられている。そのひとつが『LINE POP』の「宝箱の鍵」だ。4月に毎日新聞が報道し、5月に関東財務局が「前払式支払手段」と認定した。「宝箱の鍵」については、ゲーム中に出現し、様々なアイテムが手に入る「宝箱」を開けるために必要なもので、当時は、写真フレームのほか、タイムプラス、イージーコンボ、「ルビー」などゲームの進行を有利にするアイテムが含まれていた。
 


仮想通貨「ルビー」はともかく、現金で買えない「宝箱の鍵」がなぜ「前払式支払手段」に該当するのだろうか。不思議に思った方もいるはずだ。まず、「宝箱の鍵」そのものは、現金の対価として取得した「ルビー」を使って購入できることが問題となったのではと述べた。つまり、「対価発行」に該当する可能性があるという。また、「宝箱の鍵」は途中、宝箱を開けるための専用アイテムに仕様が変わったが、ゲームの進行を有利にするアイテムやルビーが取得できる、つまり、役務提供のための利用という点で「権利行使性」があると判断された可能性がある。

なお、「宝箱の鍵」については、「ルビー」を使って入手したもののみが対象となる。このため、ログインボーナスやミションクリア、友達紹介など対価を払わないで得たものについては「前払式支払手段」には該当しないそうだ。

続いて、『ポケモンGO』の「ポケコイン」が「前払式支払手段」に該当する可能性があるとする日本経済新聞の報道についても言及した。氏によると、購入したポケコインの金額がナイアンティックのサーバに記録されること(価値の保存)に加え、ポケコインの購入のために現金を支払うこと(対価発行)、ゲーム内アイテムの購入のために、購入したポケコインを使用すること(権利行使)になる。このため、前払式支払手段の3要件を満たしている可能性があり、届け出が必要になるかもしれないとのことだった。
 


ここで「前払式支払手段」に該当するか否かのポイントとして、以下の3点をあげた。
 
・要件のひとつである「対価発行」の対価については、現金に限らず、現金で購入した「仮想通貨」も対象になる可能性がある。ただし、無償で提供されるものであれば該当しない。
・『LINE POP』のイージーコンボや、『ポケモンGO』の「おこう」などゲームの進行を有利にするアイテムそれ自体は「前払式支払手段」に該当しない。
・ゲームの進行を有利にするアイテムを取得するための道具は、その取得の対象となるアイテムがどのようなものかわからない場合でも「前払式支払手段」に該当することがある。

また、前払式支払手段の種類は、「自家型前払式手段」と「第三者型前払式手段」があり、ゲームアプリは多くの場合、前者に該当する。発行保証金については、基準日(毎年3月31日と9月30日)における前払式支払手段の未使用残高が1000万円を超えたときには基準日の翌日から2月を経過する日までに届け出を行い、供託などを行う必要がある。逆に言えば、基準日残高が1000万円未満の場合は届け出る必要がないということだ。また仮想通貨に6ヶ月の有効期限がある場合にも該当しないという。
 


発行保証金の保全については以下の方法がある。
 


最後に、法令遵守の重要性を説いた。上場を目指している場合、上場審査のプロセスで「法令遵守」が審査される。残高が1000万円を超えているにも関わらず、届け出を行っていない場合、上場できなくなる恐れがあるという。また、どこかに事業売却を行う場合でも、買い手によっては、デューデリジェンスの過程で法令遵守の度合いがチェックされるとのこと。条件を満たすのに届け出を怠っていた、あるいは「前払式支払手段」に該当するのか判断に迷った場合、自分たちだけで判断せず、専門家もしくは財務局に相談することが大切になりそうだ。

 
(編集部 木村英彦)

■関連サイト
 

資金決済法ドットコム