7~9月の決算発表シーズンも一巡し、大手ゲームソフト、主要モバイルゲーム企業の2016年7~9月期(一部5~7月期と6~8月期)決算が出そろった。
まずは、四半期業績の売上高規模で並べてみたのが下の表となるが、決算期の都合で、gumi<3903>とエイチーム<3662>の数字は5~7月期と、これまでと同様に2ヶ月前の数字となっている。また、従来どおり、gloopsなどを含むネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載し、サイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げている。
表を見ると、33社中、20社が増収、12社が減収、1社が横ばいとなっており、この四半期は増収となった企業が多数派だった。これは、5~7月期の2社を除く多くの企業がいわゆる夏休み期間を含むシーズンであることも影響していると思われる。ただし、ミクシィ<2121>やガンホー<3765>が2ケタ超の減収となっており、市場全体に強い追い風が吹いていたというわけではなさそうだ。
一方、この四半期の赤字計上企業は9社で前四半期(4~6月)の7社から2社増加した。カプコン<9697>とgumi<3903>が黒字転換を果たした一方で、ボルテージ<3639>とアクセルマーク<3624>、ケイブ<3760>、エディア<3935>が赤字に転落した。また、全体で32社中、19社が営業減益となっており、この四半期は利益率を落とした企業が多数派になっているものと思われる。
ちなみに、32社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。
増収増益…コーエーテクモHD<3635>、KLab<3656>、enish<3667>、コロプラ<3668>、オルトプラス<3672>、モバイルファクトリー<3912>、アカツキ<3932>、セガサミーHD<6460>、マーベラス<7844>、カプコン<9697>
増収減益…クルーズ<2138>、エイチーム<3662>、イグニス<3689>、ケイブ<3760>、Aiming<3911>、LINE<3938>、サイバーエージェント<4751>、バンダイナムコHD<7832>、スクエニHD<9684>、コナミHD<9766>
減収増益…ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、グリー<3632>、gumi<3903>
減収減益…ミクシィ<2121>、アクセルマーク<3624>、ボルテージ<3639>、モブキャスト<3664>、ガンホー<3765>、ドリコム<3793>、カヤック<3904>、シリコンスタジオ<3907>、エディア<3935>
続いてまずは四半期売上高100億円以上を抽出して並べたグラフを見てみたい。順位の変化は前四半期と比べてカプコンとグリーが入れ変わっているほかは変動がない。ただし、ミクシィとDeNAの売上高が接近し、ガンホーとサイバーエージェントの売上高の差が開くなど、ミクシィとガンホーが売り上げを落としているのはやや目立つ。
このグラフに掲載されている大手ゲームソフト企業各社のゲームにかかわる事業のみを取り出して比較してみたのが以下のグラフとなる。こちらで見るとミクシィがセガサミーHDとスクエニHDに追い抜かれる形となっており、前述の売り上げを落としている状況がさらにはっきりと分かる。
次に四半期売上高100億円未満の銘柄では、KLabとアカツキがこの四半期は大きく売り上げを伸ばしている。なお、クルーズはこの四半期はゲーム事業がフル寄与しているが、次の四半期からは『エレメンタルストーリー』をのぞくゲーム事業をマイネット<3928>に譲渡した影響が出てくる予定で、事業規模に大きな変化が出てきそうだ。一方のマイネットも今回はまだ過去の業績データの蓄積が足りないため集計に加えていないが、今後はデータがそろい次第取り上げる予定だ。
四半期の営業利益20億円以上の企業をまとめたのが以下のグラフとなる。セガサミーHDが大きく利益を伸ばし、カプコンが黒字転換を果たしているが、バンダイナムコHDやミクシィをはじめ、そのほかの企業は総じて利益を減らす傾向となっている。特にスクエニHDは利益率が大きく低下する結果となったようだ。
四半期の営業利益20億円未満の企業を見ると、売上高に比例する形でKLabとアカツキが約10億円水準まで大きく利益を伸ばしている。一方で、先行投資のタイミングとなったアクセルマークとAimingは大幅な赤字を計上している。
ちなみにこの四半期で赤字計上となったのは前述のとおり9社で、オルトプラスは10四半期連続、enishは7四半期連続の営業赤字とまだ長いトンネルの中にある。ただ、両社とも赤字幅は縮小しており、ここからいかに利益を上げられる体質に事業構造を作り変えていけるかがポイントとなってきそうだ。
モバイルゲーム大手の売上高推移と営業利益推移をまとめたグラフを次に見てみたい。まずは売上高だがQonQで減収が続いており、やや右肩下がりのトレンドに入ってきた感が否めない。よくモバイルゲーム市場が成熟期に入ってきたという表現が使われるようになってきたが、そうした影響がより色濃く表れていると言えそうだ。特にこの四半期はミクシィとガンホーの2社が落ち込んだ影響が大きく、『パズル&ドラゴンズ』と『モンスターストライク』という一世を風靡した2大タイトルがピークアウトし、怪物級のパワーを放つ状況ではなくなってきたということだろうか。
営業利益を見ると、さらにこうした状況は顕著で、2012~2013年ごろの水準と同じレベルまで落ち込んでいる。ミクシィとガンホーに加え、コロプラも2四半期前と比べると数字が低下しており、ピーク時と比べると3社で合計500億円規模だったものが300億円規模に縮小している。新作リリースに絡んでガンホーやコロプラは費用が膨らんだ部分もあるが、これが一時的なものなのかどうか、次の四半期でじっくりと確認したいポイントとなってこよう。
一方、四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの売上高推移は、QonQで増収となり、2四半期前には及ばないものの、それに近い水準まで回復した。モバイルゲーム大手と若干状況が異なるわけだが、ここから考えられる推論として、モバイルゲーム大手のビッグタイトルが実は『ポケモンGO』の影響を大きく受けているのではないかというものだ。つまり、よりコアな層向けのタイトルが多いこちらの上場SAPは、その影響が大手と比較すると小さかったということが1つの説として考えられる。
続いて四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの営業利益推移も見てみたい。こちらは営業赤字の企業も含むため、合算値でグラフを作成している。営業利益はQonQでもYonYでも増加しており、こちらもモバイルゲーム大手とは大きく異なる状況となっている。
『ポケモンGO』がリリースされた当初には、自社のタイトルに影響は見られないとしていた各社だが、実際にある程度期間が経ってみると特に大手をを中心に影響を受けている可能性がありそうだ。ゲームのプレイ時間という点でのシェアの奪い合い、そして既存のガチャによる課金という形へのユーザーのスタンスの変化が売り上げに影響を及ぼした可能性は否めないだろう。
こうした影響は一時的なものなのか、それとも長期的な市場の変化として影響を与えるものなのか、次の四半期はしっかりと見極める必要があるだろう。
続いて、各社の個別の状況を見てみたい。今回は増収増益の企業が32社中10社と約3分の1を占める結果となっている。
・コーエーテクモHD<3635>
第2四半期累計(4~9月)の連結決算は、売上高9.3%増、営業利益11.0%増と前年同期比で2ケタ増益を達成した。なお、業績を四半期推移(QonQ)で見ても売上高は前四半期比62.4%増、営業利益は前四半期の7億円の赤字から24億円の黒字に大幅黒字転換を果たしている。主力のエンタテインメント事業がそのけん引役で、「ω-Force」ブランドにおいてハンティングアクションゲーム『討鬼伝2』をPS4、PS3、PS Vita向けに7月にリリースしたことが大きく貢献している。なお、現時点で通期予想は期初予想が据え置かれているが、まずは順調な上半期と見ることができそうだ。
・KLab<3656>
第3四半期(7~9月)決算は、QonQで売上高40.6%増、営業利益8.0倍と大幅に業績が改善した。これは主力タイトルである『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』(以下『スクフェス』)と『BLEACH Brave Souls』の好調によるもので、特に『スクフェス』は7月5日の大型アップデート以降、TVアニメに連動したキャンペーンや、ユーザー数全世界3000万人突破に伴うセット商品が好調に推移したという。ただ、こうした動きは第4四半期はやや落ち着いてくるもようで、QonQで見ると減収減益となる見通し。
・enish<3667>
第3四半期(7~9月)決算は、8四半期連続の営業赤字となったものの、QonQでは7四半期ぶりの増収を達成し、赤字幅も若干縮小した。海外拠点の整理・縮小、人員数の最適化、不採算が見込まれるタイトルの譲渡、凍結を実施するなどコスト管理施策などを進めている成果が徐々に表れているようだ。また、『12オーディンズ』が累計150万ダウンロードを突破し、バンダイナムコエンターテインメントの『仮面ライダー バトルラッシュ』の開発協力も展開、AR事業での提携も発表するなど、明るい話題も出てきており、次の四半期以降で収益性改善が進むのかどうか注目したい。
・コロプラ<3668>
8月1日にリリースされた新作『白猫テニス』が同社のタイトルとして「最も早い立ち上がり」を見せたことで、第4四半期期間(7~9月)は売上高5.9%増、営業利益8.4%増と増収増益での着地となった。ただし、主力タイトルである『白猫プロジェクト』がQonQで落ち込んでおり、縮小傾向が続いたことで拡大期から成熟期に移行した可能性は高まった。こうした状況を受けて打ち出した2017年9月期の業績予想は売上高35.1%減、営業利益65.5%減という大幅減収減益予想であり、まずはその第1四半期がどの程度の数字となるのかじっくりと見極める必要がありそうだ。
・オルトプラス<3672>
第4四半期期間(7~9月)は、期中に自社タイトルと他社の協業タイトルを合わせて5タイトルリリースし、売上高13.0%増とQonQで2ケタ増収を達成した。また利益面については、10四半期連続の営業赤字となったものの、営業赤字は前四半期の1億7500万円から5900万円と約3分の1に縮小した。協業先の台湾XPEC社の株価下落に伴う投資有価証券評価損の計上などネガティブなニュースが目立ったが、数字面から見ると長く続いたトンネルの出口がようやく見え始めたと言えそうだ。
・モバイルファクトリー<3912>
主力タイトルの『ステーションメモリーズ!』が足元で最高のDAU(日時アクティブユーザー数)を更新するなど好調を持続しており、第3四半期期間(7~9月)は四半期ベースで過去最高の営業利益を更新した。続く第4四半期は、首都圏向けにTVCMと交通広告を実施することで利益率が低下する予想としているが、第3四半期までの順調な業績進捗状況を見れば、通期計画の下ブレリスクは小さいものと思われる。
・アカツキ<3932>
第2四半期期間(7~9月)の決算は、売上高がQonQで42.4%増、営業利益が37.4%増と大幅な増収増益を達成した。そのけん引役となったのは、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』(バンダイナムコエンターテインメント提供)が国内外で好調に推移したことで、売上高、営業利益とも四半期ベースで過去最高を更新している。ただし、2017年3月期通期の見通しについては、レンジ予想のレンジを下方修正した。これはおそらく新作『八月のシンデレラナイン』のリリースが今夏から来春に延期になったことなどが影響しているものと思われる。
・セガサミーHD<6460>
9月発売の『ペルソナ5』などの主力タイトルの販売が好調に推移したパッケージソフトを中心にゲーム事業が好調に推移し、第2四半期累計(4~9月)の連結決算は、売上高が前年同期比9.9%増、営業利益は同2.6倍と大幅な増益を達成した。また、足元の業績の進捗状況を受けて、2017年3月期通期の連結業績予想の修正も発表しており、各利益項目は業績予想の大幅な上方修正が実施されている。デジタルゲームは主力タイトルが好調を持続しているものの、それに続く新作ヒットタイトルを創出することが引き続き課題と言えそうだ。
・マーベラス<7844>
「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」のパッケージ販売が、同社のステージ作品としては過去最高の販売本数を記録するなど音楽映像事業がけん引役となって、第2四半期期間(7~9月)の売上高はQonQで9.6%増、営業利益は6.4%増と増収増益で着地した。ただし、主力のオンライン事業は売上高が5.0%減、セグメント利益が34.0%減となっており、立て直しには少し時間がかかりそうだ。
・カプコン<9697>
第2四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が62.4%増、営業利益は前四半期の7億円の赤字から24億円の黒字に転換した。スマホゲームでは、女性中心のスタッフが開発した意欲作『囚われのパルマ』が存在感を放っているが、デジタルコンテンツ事業では看板タイトルが下期に集中していることもあって、第2四半期累計(4~9月)期間は前年同期比で減収減益となっている。
・クルーズ<2138>
インターネットコマース事業が過去最高の四半期売上高を更新したこともあり、第2四半期期間(7~9月)はQonQで売上高が3.2%増となった。一方で相対的に利益率の低いコマース事業の売上高における比重が上昇したこともあり、営業利益は9.7%減となっている。なお、第3四半期期間に入った11月に『エレメンタルストーリー』を除くインターネットコンテンツ事業のマイネットへの譲渡を実施しており、次の四半期はコマース事業が中核となり、事業構造が大きく変わることは注意しておきたい。
・エイチーム<3662>
第4四半期期間(5~7月)の決算は、売上高はQonQで9.4%増と増収ながら、営業利益は6.4%の減益となった。新作『ヴァルキリーコネクト』が6月23日より課金を開始ということで、約1ヶ月半の収益寄与となったことで売上高は四半期ベースで過去最高を更新した。一方、利益面については、『ヴァルキリーコネクト』のプロモーション費用3億円の計上など広告宣伝費が膨らんだことで減益にとどまっている。なお、2017年7月期については、第1四半期にエンタメ事業で大型プロモーションを実施するなど7億円の追加投資を実施することもあり、下期偏重の予算となる見通し。
・イグニス<3689>
第4四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比8.8%増と増収を達成し、四半期ベースで過去最高を更新した。一方、利益面については、『ぼくとドラゴン』で当初予定していたTVCMは取りやめたものの、「with」のリリースに伴い広告宣伝費が前四半期比24.5%増と膨らんだこともあり、各利益項目とも減益での着地となっている。今期予想は売上高のみを開示しているが、「with」に続くタイトルのリリースなど無料ネイティブアプリ事業の立て直しを踏まえると、費用が先行する展開も予想されるところだ。
・ケイブ<3760>
2017年5月期の第1四半期(6~8月)は、QonQで4.7%の増収を達成するなど、売り上げは順調に伸ばしているものの、各利益項目は4四半期ぶりの赤字転落となった。これは、主力タイトルの『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい~』について、全国でのTVCM放映など積極的なマーケティング活動を実施したことによる先行投資負担が影響したもので、要因としては一過性のものとなる。この先行投資によってユーザー数の増加やDAUの上昇などプラスの効果がどの程度出てくるのかを第2四半期以降の決算でじっくりと確認したい。
・Aiming<3911>
第3四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が27.9%増となったものの、営業赤字は前四半期の7000万円から6億9200万円に大幅に増加した。増収の要因は、『剣と魔法のログレス いにしえの女神』のKPIが施策の成果によって改善したことに加え、新作の1つ『空と大地のクロスノア』が堅調な推移となっていることが上げられる。一方、利益面については、過去最大規模のプロモーションを実施したことで広告宣伝費が大きく膨らんだことと、『クロスノア』の売り上げが増加に伴うライセンス費用の増加などでロイヤリティが大きく拡大したことなどが影響している。
・LINE<3938>
広告サービスが順調に拡大したことで、第3四半期期間(7~9月)の売上収益は前四半期比6.1%の増収を達成した。一方で、営業利益については、前四半期に福岡土地売却およびBIZ Plus(タイ)の評価益の効果が利益を押し上げていた反動もあって、減益という結果になっている。なお、最終利益は前四半期は特殊要因で黒字転換していたのに対し、この四半期は実質的な黒字転換を果たしており、見た目の減益という結果よりも良好な内容ととらえることができそうだ。
・サイバーエージェント<4751>
第4四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が12.1%増、営業利益は49.3%減となった。過去最高の売上高を記録したゲーム事業が売上高を大きくけん引したが、そのゲーム事業で番組スポンサーやテレビCM、街頭ジャックなど広告宣伝費を「思い切って使った」こと、AbemaTVへの先行投資が大きく拡大したことなどが利益率を押し下げた。続く2017年9月期もAbemaTVへの大幅な先行投資は続く見通し。
・バンダイナムコHD<7832>
第2四半期決算の発表とともに2017年3月期の連結業績予想の上方修正を発表するなど業績は順調で、第2四半期累計業績は全ての事業で年初に掲げた利益計画を上回って着地した。ただし、第2四半期期間(7~9月)の業績をQonQで見ると、売上高は3.4%増と横ばいながら、営業利益は33.9%減と落ち込んでいる。なお、スマートフォンゲームを中心とするネットワークコンテンツは、既存主力タイトルが安定した人気となったことに加え、海外で『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』などのタイトルが人気となり、上半期は前年同期比70.6%増で着地した。
・スクエニHD<9684>
第2四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高は7.7%の増収となったものの、営業利益は75.8%の減益での着地となった。これは、新規大型タイトル発売による償却負担が増加したことや、スマートデバイス・PCブラウザ向けゲームなどにおける上期ローンチタイトルの実績が想定を下回ったことが要因となっている。なお、デジタルエンタテインメント事業は今期2000億円の売り上げを見込むなど下期偏重で伸びる見込みとしている。
・コナミHD<9766>
第2四半期累計(4~9月)では2ケタ増益となっているが、業績をQonQで見ると第2四半期期間(7~9)は12.5%の営業減益となっている。これをデジタルエンタテインメント事業に絞ってみるとさらに減収減益幅が大きいのは少し気になるところ。足元はスマホ向け最新作となる『遊戯王 デュエルリンクス』が好スタートを切っているが、これで第3四半期期間に上向くことができるのかをしっかりと確認したい。
・ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>
第2四半期期間はQonQで0.1%の減収ながら6.9%の営業増益を達成した。これは今シーズン好調だった横浜DeNAベイスターズが大きく貢献したスポーツ事業の寄与によるところが大きい。ちなみにゲーム事業はQonQで国内コイン消費が前四半期の370億円から343億円に減少しているが、これはブラウザゲームの減少分が大きく影響しており、アプリのコイン消費は堅調に推移した。なお、任天堂<7974>との協業タイトル『スーパーマリオラン』はリリース日が12月15日に決定した。
・グリー<3632>
第1四半期(7~9月)は、QonQで売上高が7.3%減となったが、営業利益は3.3%増と増益を確保した。これは、前四半期は広告宣伝費や、サーバー費用削減に向けた先行投資、のれんの一括償却など一時費用の発生で利益率が大きく低下していた反動も影響している。また、新作の寄与により、国内ネイティブゲームのコイン消費が前四半期の37億コインから46億コインに急回復したことは明るい材料と言えよう。
・gumi<3903>
第1四半期(5~7月)は、売上高は前四半期比0.6%減となったものの、各利益項目はいずれも黒字転換を果たした。営業利益については7四半期ぶりの黒字転換となる。海外拠点の再編(事業撤退・事業縮小)に伴うコスト削減などにより売上原価が減少したほか、広告宣伝費の削減などにより販売費及び一般管理費が減少し、利益率が改善した。なお、第2四半期は売上高が前四半期比12.5%増となる見通しながら、営業利益と経常利益はゼロの見込み。
・ミクシィ<2121>
第2四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が16.9%減、営業利益は26.8%減となった。主力タイトルである『モンスターストライク』のアクティブユーザーがQonQで8%減となり、特に9月が単月売上高で大幅な予算未達となったことが響いたとしている。一方で、10月はオフラインイベントや3周年キャンペーンなどの成果もあって過去最高のアクティブユーザー数を達成しており、第3四半期で大幅な立て直しに成功するのかどうか注目しておきたい。
・アクセルマーク<3624>
第4四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.7%減となり、営業損益は3.8億円の赤字計上ととなった。コンテンツ事業を売却した影響に加え、主力の『ワールドクロスサーガ』(『ワクサガ』)が7月と8月に伸び悩んだ。『ワクサガ』は、初のテレビCMを中心とする大規模プロモーションを9月に実施し、9月は大きく伸長したが、そのプロモーションコストが影響し、四半期ベースで赤字に転落した。
・ボルテージ<3639>
第1四半期(7~9月)は、QonQで売上高は6.8%減となり、営業損益は4四半期ぶりの赤字計上となった。過去を見ても第1四半期は費用が先行しやすい傾向があるが、既存タイトル(主力の女性向けタイトル)の売上が減少傾向にあるのは気になるところ。「男性向け」「パズルアクション」など新規モデルは伸長しているが、こちらは売り上げ規模的にもここからどう育てていくかが課題となってきそうだ。
・モブキャスト<3664>
第3四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高は9.2%減となり、2四半期連続の営業赤字計上となった。減収の要因は、マイネット<3928>へのプラットフォーム事業移管に伴う引き継ぎを優先したため、『モバプロ』『モバサカ』などで施策を打てなかったためだという。一方、費用面では『18』の積極的な広告施策を実施しなかったことで、広告宣伝費が大きく減少したが、マイネットとの提携により外部委託費が増加した。事業移管の完了で新作開発に弾みがつくかが今後のポイント。
・ガンホー<3765>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比12.7%減、営業利益が同21.1%減と減少トレンドが止まらず、営業利益は100億円の大台を割り込む結果となった。これは既存のスマートフォン向けゲームの売上高が減少したことが、ストレートに表れた結果と言えるだろう。続く第4四半期は新作RPG『セブンス・リバース』のリリースや、パートナーパブリッシングによる『ディズニー マジックキングダムズ』の配信開始で減少トレンドに歯止めがかかるかどうかが注目される。
・ドリコム<3793>
第2四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.5%減、営業利益は同44.2%減と大幅な減益での着地となった。オリジナルのネイティブアプリの売上が低下した影響で減収となったものの、期中は『ONE PIECEトレジャークルーズ』の海外版が寄与し始めるなどIPタイトルは順調に推移した。一方、大幅な減益となった要因は新作開発に係る外注費や原材料費が多くなったことで、特にテレビCMなど『ダービースタリオンマスターズ』の広告宣伝費が膨らんだとしている。
・カヤック<3904>
第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.0%減、営業利益は同19.6%減と減収減益での着地となった。ソーシャルゲームの売上高については前四半期比で12.6%減となっているが、これは前四半期に子会社ガルチの受託開発売上1億6000万円を計上していた反動によるもの。また、スマートフォンゲームに特化したコミュニティを提供するLobiは、前四半期比でほぼ横ばいとなった。ただし、プレミアム会員については、会員獲得が苦戦しているもようだ。
・シリコンスタジオ<3907>
第3四半期期間(6~8月)は、売上高は前四半期比1.4%減となり、1.6億円の営業赤字を計上した。営業赤字計上は3四半期連続となる。開発推進・支援事業において、導入コストの低い他社製品との受注競争が激化しており、苦戦が続いている。コンテンツ事業は、収益性の悪化したタイトルの運営移管を進めるとともに新作4タイトル(うち1タイトルは『逆襲のファンタジカ:ブラッドライン』をリリース済み)に経営資源を集中し、開発を進めている。
・エディア<3935>
第2四半期期間(6~8月)は、売上高が前四半期26.9%減、営業損益は700万円の赤字計上となった。これは新作ゲームタイトル『蒼の彼方のフォーリズム-ETERNAL SKY-』のリリースが遅れた影響が大きいほか、3月にリリースした『マギアコネクト』が低迷したこと(11月30日をもってサービス終了)も要因となっている。なお、2017年2月期の業績予想の修正を実施しており、通期予想は3800万円の最終赤字見通しに下方修正された。
この四半期の数字を集計して、一番気になったのはモバイルゲーム大手の数字の落ち込みだ。これは前述のとおり、『ポケモンGO』の空前の大ヒットがやはり市場に大きな影響をもたらしたとみるべきだろう。ちなみにミクシィやコロプラは決算説明会の席上でその影響を受けた可能性を示唆していた。
こうした流れが一過性のものなのか、それとも市場に構造変化やユーザーの嗜好の大きな変化が起こっているのかなどは、次の四半期でさらにじっくりと見極める必要があるだろう。
ちなみに次の四半期はクリスマス・年末商戦期を含むタイミングとなるため、大手ゲームメーカー各社の決算動向を見る上でも重要な四半期となるほか、任天堂がDeNAとの協業タイトル『スーパーマリオラン』を12月15日にリリースする予定であり、その動向も大いに注目されるところだ。
(編集部:柴田正之)
まずは、四半期業績の売上高規模で並べてみたのが下の表となるが、決算期の都合で、gumi<3903>とエイチーム<3662>の数字は5~7月期と、これまでと同様に2ヶ月前の数字となっている。また、従来どおり、gloopsなどを含むネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載し、サイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げている。
表を見ると、33社中、20社が増収、12社が減収、1社が横ばいとなっており、この四半期は増収となった企業が多数派だった。これは、5~7月期の2社を除く多くの企業がいわゆる夏休み期間を含むシーズンであることも影響していると思われる。ただし、ミクシィ<2121>やガンホー<3765>が2ケタ超の減収となっており、市場全体に強い追い風が吹いていたというわけではなさそうだ。
一方、この四半期の赤字計上企業は9社で前四半期(4~6月)の7社から2社増加した。カプコン<9697>とgumi<3903>が黒字転換を果たした一方で、ボルテージ<3639>とアクセルマーク<3624>、ケイブ<3760>、エディア<3935>が赤字に転落した。また、全体で32社中、19社が営業減益となっており、この四半期は利益率を落とした企業が多数派になっているものと思われる。
ちなみに、32社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。
増収増益…コーエーテクモHD<3635>、KLab<3656>、enish<3667>、コロプラ<3668>、オルトプラス<3672>、モバイルファクトリー<3912>、アカツキ<3932>、セガサミーHD<6460>、マーベラス<7844>、カプコン<9697>
増収減益…クルーズ<2138>、エイチーム<3662>、イグニス<3689>、ケイブ<3760>、Aiming<3911>、LINE<3938>、サイバーエージェント<4751>、バンダイナムコHD<7832>、スクエニHD<9684>、コナミHD<9766>
減収増益…ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、グリー<3632>、gumi<3903>
減収減益…ミクシィ<2121>、アクセルマーク<3624>、ボルテージ<3639>、モブキャスト<3664>、ガンホー<3765>、ドリコム<3793>、カヤック<3904>、シリコンスタジオ<3907>、エディア<3935>
■ミクシィとガンホーの売り上げ減少が目立つ KLabとアカツキは伸長
続いてまずは四半期売上高100億円以上を抽出して並べたグラフを見てみたい。順位の変化は前四半期と比べてカプコンとグリーが入れ変わっているほかは変動がない。ただし、ミクシィとDeNAの売上高が接近し、ガンホーとサイバーエージェントの売上高の差が開くなど、ミクシィとガンホーが売り上げを落としているのはやや目立つ。
このグラフに掲載されている大手ゲームソフト企業各社のゲームにかかわる事業のみを取り出して比較してみたのが以下のグラフとなる。こちらで見るとミクシィがセガサミーHDとスクエニHDに追い抜かれる形となっており、前述の売り上げを落としている状況がさらにはっきりと分かる。
次に四半期売上高100億円未満の銘柄では、KLabとアカツキがこの四半期は大きく売り上げを伸ばしている。なお、クルーズはこの四半期はゲーム事業がフル寄与しているが、次の四半期からは『エレメンタルストーリー』をのぞくゲーム事業をマイネット<3928>に譲渡した影響が出てくる予定で、事業規模に大きな変化が出てきそうだ。一方のマイネットも今回はまだ過去の業績データの蓄積が足りないため集計に加えていないが、今後はデータがそろい次第取り上げる予定だ。
■赤字計上企業は9社に拡大 利益を落とす企業も多数
四半期の営業利益20億円以上の企業をまとめたのが以下のグラフとなる。セガサミーHDが大きく利益を伸ばし、カプコンが黒字転換を果たしているが、バンダイナムコHDやミクシィをはじめ、そのほかの企業は総じて利益を減らす傾向となっている。特にスクエニHDは利益率が大きく低下する結果となったようだ。
四半期の営業利益20億円未満の企業を見ると、売上高に比例する形でKLabとアカツキが約10億円水準まで大きく利益を伸ばしている。一方で、先行投資のタイミングとなったアクセルマークとAimingは大幅な赤字を計上している。
ちなみにこの四半期で赤字計上となったのは前述のとおり9社で、オルトプラスは10四半期連続、enishは7四半期連続の営業赤字とまだ長いトンネルの中にある。ただ、両社とも赤字幅は縮小しており、ここからいかに利益を上げられる体質に事業構造を作り変えていけるかがポイントとなってきそうだ。
■モバイルゲーム大手が大きく後退 その他上場SAPの業績は回復
モバイルゲーム大手の売上高推移と営業利益推移をまとめたグラフを次に見てみたい。まずは売上高だがQonQで減収が続いており、やや右肩下がりのトレンドに入ってきた感が否めない。よくモバイルゲーム市場が成熟期に入ってきたという表現が使われるようになってきたが、そうした影響がより色濃く表れていると言えそうだ。特にこの四半期はミクシィとガンホーの2社が落ち込んだ影響が大きく、『パズル&ドラゴンズ』と『モンスターストライク』という一世を風靡した2大タイトルがピークアウトし、怪物級のパワーを放つ状況ではなくなってきたということだろうか。
営業利益を見ると、さらにこうした状況は顕著で、2012~2013年ごろの水準と同じレベルまで落ち込んでいる。ミクシィとガンホーに加え、コロプラも2四半期前と比べると数字が低下しており、ピーク時と比べると3社で合計500億円規模だったものが300億円規模に縮小している。新作リリースに絡んでガンホーやコロプラは費用が膨らんだ部分もあるが、これが一時的なものなのかどうか、次の四半期でじっくりと確認したいポイントとなってこよう。
一方、四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの売上高推移は、QonQで増収となり、2四半期前には及ばないものの、それに近い水準まで回復した。モバイルゲーム大手と若干状況が異なるわけだが、ここから考えられる推論として、モバイルゲーム大手のビッグタイトルが実は『ポケモンGO』の影響を大きく受けているのではないかというものだ。つまり、よりコアな層向けのタイトルが多いこちらの上場SAPは、その影響が大手と比較すると小さかったということが1つの説として考えられる。
続いて四半期売り上げ規模100億円未満の上場SAPの営業利益推移も見てみたい。こちらは営業赤字の企業も含むため、合算値でグラフを作成している。営業利益はQonQでもYonYでも増加しており、こちらもモバイルゲーム大手とは大きく異なる状況となっている。
■『ポケモンGO』の登場が大手のヒットタイトルの売り上げに影響した可能性も
『ポケモンGO』がリリースされた当初には、自社のタイトルに影響は見られないとしていた各社だが、実際にある程度期間が経ってみると特に大手をを中心に影響を受けている可能性がありそうだ。ゲームのプレイ時間という点でのシェアの奪い合い、そして既存のガチャによる課金という形へのユーザーのスタンスの変化が売り上げに影響を及ぼした可能性は否めないだろう。
こうした影響は一時的なものなのか、それとも長期的な市場の変化として影響を与えるものなのか、次の四半期はしっかりと見極める必要があるだろう。
続いて、各社の個別の状況を見てみたい。今回は増収増益の企業が32社中10社と約3分の1を占める結果となっている。
■増収増益組
・コーエーテクモHD<3635>
第2四半期累計(4~9月)の連結決算は、売上高9.3%増、営業利益11.0%増と前年同期比で2ケタ増益を達成した。なお、業績を四半期推移(QonQ)で見ても売上高は前四半期比62.4%増、営業利益は前四半期の7億円の赤字から24億円の黒字に大幅黒字転換を果たしている。主力のエンタテインメント事業がそのけん引役で、「ω-Force」ブランドにおいてハンティングアクションゲーム『討鬼伝2』をPS4、PS3、PS Vita向けに7月にリリースしたことが大きく貢献している。なお、現時点で通期予想は期初予想が据え置かれているが、まずは順調な上半期と見ることができそうだ。
・KLab<3656>
第3四半期(7~9月)決算は、QonQで売上高40.6%増、営業利益8.0倍と大幅に業績が改善した。これは主力タイトルである『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』(以下『スクフェス』)と『BLEACH Brave Souls』の好調によるもので、特に『スクフェス』は7月5日の大型アップデート以降、TVアニメに連動したキャンペーンや、ユーザー数全世界3000万人突破に伴うセット商品が好調に推移したという。ただ、こうした動きは第4四半期はやや落ち着いてくるもようで、QonQで見ると減収減益となる見通し。
・enish<3667>
第3四半期(7~9月)決算は、8四半期連続の営業赤字となったものの、QonQでは7四半期ぶりの増収を達成し、赤字幅も若干縮小した。海外拠点の整理・縮小、人員数の最適化、不採算が見込まれるタイトルの譲渡、凍結を実施するなどコスト管理施策などを進めている成果が徐々に表れているようだ。また、『12オーディンズ』が累計150万ダウンロードを突破し、バンダイナムコエンターテインメントの『仮面ライダー バトルラッシュ』の開発協力も展開、AR事業での提携も発表するなど、明るい話題も出てきており、次の四半期以降で収益性改善が進むのかどうか注目したい。
・コロプラ<3668>
8月1日にリリースされた新作『白猫テニス』が同社のタイトルとして「最も早い立ち上がり」を見せたことで、第4四半期期間(7~9月)は売上高5.9%増、営業利益8.4%増と増収増益での着地となった。ただし、主力タイトルである『白猫プロジェクト』がQonQで落ち込んでおり、縮小傾向が続いたことで拡大期から成熟期に移行した可能性は高まった。こうした状況を受けて打ち出した2017年9月期の業績予想は売上高35.1%減、営業利益65.5%減という大幅減収減益予想であり、まずはその第1四半期がどの程度の数字となるのかじっくりと見極める必要がありそうだ。
・オルトプラス<3672>
第4四半期期間(7~9月)は、期中に自社タイトルと他社の協業タイトルを合わせて5タイトルリリースし、売上高13.0%増とQonQで2ケタ増収を達成した。また利益面については、10四半期連続の営業赤字となったものの、営業赤字は前四半期の1億7500万円から5900万円と約3分の1に縮小した。協業先の台湾XPEC社の株価下落に伴う投資有価証券評価損の計上などネガティブなニュースが目立ったが、数字面から見ると長く続いたトンネルの出口がようやく見え始めたと言えそうだ。
・モバイルファクトリー<3912>
主力タイトルの『ステーションメモリーズ!』が足元で最高のDAU(日時アクティブユーザー数)を更新するなど好調を持続しており、第3四半期期間(7~9月)は四半期ベースで過去最高の営業利益を更新した。続く第4四半期は、首都圏向けにTVCMと交通広告を実施することで利益率が低下する予想としているが、第3四半期までの順調な業績進捗状況を見れば、通期計画の下ブレリスクは小さいものと思われる。
・アカツキ<3932>
第2四半期期間(7~9月)の決算は、売上高がQonQで42.4%増、営業利益が37.4%増と大幅な増収増益を達成した。そのけん引役となったのは、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』(バンダイナムコエンターテインメント提供)が国内外で好調に推移したことで、売上高、営業利益とも四半期ベースで過去最高を更新している。ただし、2017年3月期通期の見通しについては、レンジ予想のレンジを下方修正した。これはおそらく新作『八月のシンデレラナイン』のリリースが今夏から来春に延期になったことなどが影響しているものと思われる。
・セガサミーHD<6460>
9月発売の『ペルソナ5』などの主力タイトルの販売が好調に推移したパッケージソフトを中心にゲーム事業が好調に推移し、第2四半期累計(4~9月)の連結決算は、売上高が前年同期比9.9%増、営業利益は同2.6倍と大幅な増益を達成した。また、足元の業績の進捗状況を受けて、2017年3月期通期の連結業績予想の修正も発表しており、各利益項目は業績予想の大幅な上方修正が実施されている。デジタルゲームは主力タイトルが好調を持続しているものの、それに続く新作ヒットタイトルを創出することが引き続き課題と言えそうだ。
・マーベラス<7844>
「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」のパッケージ販売が、同社のステージ作品としては過去最高の販売本数を記録するなど音楽映像事業がけん引役となって、第2四半期期間(7~9月)の売上高はQonQで9.6%増、営業利益は6.4%増と増収増益で着地した。ただし、主力のオンライン事業は売上高が5.0%減、セグメント利益が34.0%減となっており、立て直しには少し時間がかかりそうだ。
・カプコン<9697>
第2四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が62.4%増、営業利益は前四半期の7億円の赤字から24億円の黒字に転換した。スマホゲームでは、女性中心のスタッフが開発した意欲作『囚われのパルマ』が存在感を放っているが、デジタルコンテンツ事業では看板タイトルが下期に集中していることもあって、第2四半期累計(4~9月)期間は前年同期比で減収減益となっている。
■増収減益組
・クルーズ<2138>
インターネットコマース事業が過去最高の四半期売上高を更新したこともあり、第2四半期期間(7~9月)はQonQで売上高が3.2%増となった。一方で相対的に利益率の低いコマース事業の売上高における比重が上昇したこともあり、営業利益は9.7%減となっている。なお、第3四半期期間に入った11月に『エレメンタルストーリー』を除くインターネットコンテンツ事業のマイネットへの譲渡を実施しており、次の四半期はコマース事業が中核となり、事業構造が大きく変わることは注意しておきたい。
・エイチーム<3662>
第4四半期期間(5~7月)の決算は、売上高はQonQで9.4%増と増収ながら、営業利益は6.4%の減益となった。新作『ヴァルキリーコネクト』が6月23日より課金を開始ということで、約1ヶ月半の収益寄与となったことで売上高は四半期ベースで過去最高を更新した。一方、利益面については、『ヴァルキリーコネクト』のプロモーション費用3億円の計上など広告宣伝費が膨らんだことで減益にとどまっている。なお、2017年7月期については、第1四半期にエンタメ事業で大型プロモーションを実施するなど7億円の追加投資を実施することもあり、下期偏重の予算となる見通し。
・イグニス<3689>
第4四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比8.8%増と増収を達成し、四半期ベースで過去最高を更新した。一方、利益面については、『ぼくとドラゴン』で当初予定していたTVCMは取りやめたものの、「with」のリリースに伴い広告宣伝費が前四半期比24.5%増と膨らんだこともあり、各利益項目とも減益での着地となっている。今期予想は売上高のみを開示しているが、「with」に続くタイトルのリリースなど無料ネイティブアプリ事業の立て直しを踏まえると、費用が先行する展開も予想されるところだ。
・ケイブ<3760>
2017年5月期の第1四半期(6~8月)は、QonQで4.7%の増収を達成するなど、売り上げは順調に伸ばしているものの、各利益項目は4四半期ぶりの赤字転落となった。これは、主力タイトルの『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい~』について、全国でのTVCM放映など積極的なマーケティング活動を実施したことによる先行投資負担が影響したもので、要因としては一過性のものとなる。この先行投資によってユーザー数の増加やDAUの上昇などプラスの効果がどの程度出てくるのかを第2四半期以降の決算でじっくりと確認したい。
・Aiming<3911>
第3四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が27.9%増となったものの、営業赤字は前四半期の7000万円から6億9200万円に大幅に増加した。増収の要因は、『剣と魔法のログレス いにしえの女神』のKPIが施策の成果によって改善したことに加え、新作の1つ『空と大地のクロスノア』が堅調な推移となっていることが上げられる。一方、利益面については、過去最大規模のプロモーションを実施したことで広告宣伝費が大きく膨らんだことと、『クロスノア』の売り上げが増加に伴うライセンス費用の増加などでロイヤリティが大きく拡大したことなどが影響している。
・LINE<3938>
広告サービスが順調に拡大したことで、第3四半期期間(7~9月)の売上収益は前四半期比6.1%の増収を達成した。一方で、営業利益については、前四半期に福岡土地売却およびBIZ Plus(タイ)の評価益の効果が利益を押し上げていた反動もあって、減益という結果になっている。なお、最終利益は前四半期は特殊要因で黒字転換していたのに対し、この四半期は実質的な黒字転換を果たしており、見た目の減益という結果よりも良好な内容ととらえることができそうだ。
・サイバーエージェント<4751>
第4四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が12.1%増、営業利益は49.3%減となった。過去最高の売上高を記録したゲーム事業が売上高を大きくけん引したが、そのゲーム事業で番組スポンサーやテレビCM、街頭ジャックなど広告宣伝費を「思い切って使った」こと、AbemaTVへの先行投資が大きく拡大したことなどが利益率を押し下げた。続く2017年9月期もAbemaTVへの大幅な先行投資は続く見通し。
・バンダイナムコHD<7832>
第2四半期決算の発表とともに2017年3月期の連結業績予想の上方修正を発表するなど業績は順調で、第2四半期累計業績は全ての事業で年初に掲げた利益計画を上回って着地した。ただし、第2四半期期間(7~9月)の業績をQonQで見ると、売上高は3.4%増と横ばいながら、営業利益は33.9%減と落ち込んでいる。なお、スマートフォンゲームを中心とするネットワークコンテンツは、既存主力タイトルが安定した人気となったことに加え、海外で『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』などのタイトルが人気となり、上半期は前年同期比70.6%増で着地した。
・スクエニHD<9684>
第2四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高は7.7%の増収となったものの、営業利益は75.8%の減益での着地となった。これは、新規大型タイトル発売による償却負担が増加したことや、スマートデバイス・PCブラウザ向けゲームなどにおける上期ローンチタイトルの実績が想定を下回ったことが要因となっている。なお、デジタルエンタテインメント事業は今期2000億円の売り上げを見込むなど下期偏重で伸びる見込みとしている。
・コナミHD<9766>
第2四半期累計(4~9月)では2ケタ増益となっているが、業績をQonQで見ると第2四半期期間(7~9)は12.5%の営業減益となっている。これをデジタルエンタテインメント事業に絞ってみるとさらに減収減益幅が大きいのは少し気になるところ。足元はスマホ向け最新作となる『遊戯王 デュエルリンクス』が好スタートを切っているが、これで第3四半期期間に上向くことができるのかをしっかりと確認したい。
■減収増益組
・ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>
第2四半期期間はQonQで0.1%の減収ながら6.9%の営業増益を達成した。これは今シーズン好調だった横浜DeNAベイスターズが大きく貢献したスポーツ事業の寄与によるところが大きい。ちなみにゲーム事業はQonQで国内コイン消費が前四半期の370億円から343億円に減少しているが、これはブラウザゲームの減少分が大きく影響しており、アプリのコイン消費は堅調に推移した。なお、任天堂<7974>との協業タイトル『スーパーマリオラン』はリリース日が12月15日に決定した。
・グリー<3632>
第1四半期(7~9月)は、QonQで売上高が7.3%減となったが、営業利益は3.3%増と増益を確保した。これは、前四半期は広告宣伝費や、サーバー費用削減に向けた先行投資、のれんの一括償却など一時費用の発生で利益率が大きく低下していた反動も影響している。また、新作の寄与により、国内ネイティブゲームのコイン消費が前四半期の37億コインから46億コインに急回復したことは明るい材料と言えよう。
・gumi<3903>
第1四半期(5~7月)は、売上高は前四半期比0.6%減となったものの、各利益項目はいずれも黒字転換を果たした。営業利益については7四半期ぶりの黒字転換となる。海外拠点の再編(事業撤退・事業縮小)に伴うコスト削減などにより売上原価が減少したほか、広告宣伝費の削減などにより販売費及び一般管理費が減少し、利益率が改善した。なお、第2四半期は売上高が前四半期比12.5%増となる見通しながら、営業利益と経常利益はゼロの見込み。
■減収減益組
・ミクシィ<2121>
第2四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高が16.9%減、営業利益は26.8%減となった。主力タイトルである『モンスターストライク』のアクティブユーザーがQonQで8%減となり、特に9月が単月売上高で大幅な予算未達となったことが響いたとしている。一方で、10月はオフラインイベントや3周年キャンペーンなどの成果もあって過去最高のアクティブユーザー数を達成しており、第3四半期で大幅な立て直しに成功するのかどうか注目しておきたい。
・アクセルマーク<3624>
第4四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.7%減となり、営業損益は3.8億円の赤字計上ととなった。コンテンツ事業を売却した影響に加え、主力の『ワールドクロスサーガ』(『ワクサガ』)が7月と8月に伸び悩んだ。『ワクサガ』は、初のテレビCMを中心とする大規模プロモーションを9月に実施し、9月は大きく伸長したが、そのプロモーションコストが影響し、四半期ベースで赤字に転落した。
・ボルテージ<3639>
第1四半期(7~9月)は、QonQで売上高は6.8%減となり、営業損益は4四半期ぶりの赤字計上となった。過去を見ても第1四半期は費用が先行しやすい傾向があるが、既存タイトル(主力の女性向けタイトル)の売上が減少傾向にあるのは気になるところ。「男性向け」「パズルアクション」など新規モデルは伸長しているが、こちらは売り上げ規模的にもここからどう育てていくかが課題となってきそうだ。
・モブキャスト<3664>
第3四半期期間(7~9月)は、QonQで売上高は9.2%減となり、2四半期連続の営業赤字計上となった。減収の要因は、マイネット<3928>へのプラットフォーム事業移管に伴う引き継ぎを優先したため、『モバプロ』『モバサカ』などで施策を打てなかったためだという。一方、費用面では『18』の積極的な広告施策を実施しなかったことで、広告宣伝費が大きく減少したが、マイネットとの提携により外部委託費が増加した。事業移管の完了で新作開発に弾みがつくかが今後のポイント。
・ガンホー<3765>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比12.7%減、営業利益が同21.1%減と減少トレンドが止まらず、営業利益は100億円の大台を割り込む結果となった。これは既存のスマートフォン向けゲームの売上高が減少したことが、ストレートに表れた結果と言えるだろう。続く第4四半期は新作RPG『セブンス・リバース』のリリースや、パートナーパブリッシングによる『ディズニー マジックキングダムズ』の配信開始で減少トレンドに歯止めがかかるかどうかが注目される。
・ドリコム<3793>
第2四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.5%減、営業利益は同44.2%減と大幅な減益での着地となった。オリジナルのネイティブアプリの売上が低下した影響で減収となったものの、期中は『ONE PIECEトレジャークルーズ』の海外版が寄与し始めるなどIPタイトルは順調に推移した。一方、大幅な減益となった要因は新作開発に係る外注費や原材料費が多くなったことで、特にテレビCMなど『ダービースタリオンマスターズ』の広告宣伝費が膨らんだとしている。
・カヤック<3904>
第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.0%減、営業利益は同19.6%減と減収減益での着地となった。ソーシャルゲームの売上高については前四半期比で12.6%減となっているが、これは前四半期に子会社ガルチの受託開発売上1億6000万円を計上していた反動によるもの。また、スマートフォンゲームに特化したコミュニティを提供するLobiは、前四半期比でほぼ横ばいとなった。ただし、プレミアム会員については、会員獲得が苦戦しているもようだ。
・シリコンスタジオ<3907>
第3四半期期間(6~8月)は、売上高は前四半期比1.4%減となり、1.6億円の営業赤字を計上した。営業赤字計上は3四半期連続となる。開発推進・支援事業において、導入コストの低い他社製品との受注競争が激化しており、苦戦が続いている。コンテンツ事業は、収益性の悪化したタイトルの運営移管を進めるとともに新作4タイトル(うち1タイトルは『逆襲のファンタジカ:ブラッドライン』をリリース済み)に経営資源を集中し、開発を進めている。
・エディア<3935>
第2四半期期間(6~8月)は、売上高が前四半期26.9%減、営業損益は700万円の赤字計上となった。これは新作ゲームタイトル『蒼の彼方のフォーリズム-ETERNAL SKY-』のリリースが遅れた影響が大きいほか、3月にリリースした『マギアコネクト』が低迷したこと(11月30日をもってサービス終了)も要因となっている。なお、2017年2月期の業績予想の修正を実施しており、通期予想は3800万円の最終赤字見通しに下方修正された。
■まとめ
この四半期の数字を集計して、一番気になったのはモバイルゲーム大手の数字の落ち込みだ。これは前述のとおり、『ポケモンGO』の空前の大ヒットがやはり市場に大きな影響をもたらしたとみるべきだろう。ちなみにミクシィやコロプラは決算説明会の席上でその影響を受けた可能性を示唆していた。
こうした流れが一過性のものなのか、それとも市場に構造変化やユーザーの嗜好の大きな変化が起こっているのかなどは、次の四半期でさらにじっくりと見極める必要があるだろう。
ちなみに次の四半期はクリスマス・年末商戦期を含むタイミングとなるため、大手ゲームメーカー各社の決算動向を見る上でも重要な四半期となるほか、任天堂がDeNAとの協業タイトル『スーパーマリオラン』を12月15日にリリースする予定であり、その動向も大いに注目されるところだ。
(編集部:柴田正之)