セガゲームスが開発・運営するスマートフォン向け海洋冒険バトル『戦の海賊』の配信権が、マイネットに移ることが決定した。本作はプレイヤーが名もなき海賊船団の船団長となって、さまざまなクエストに挑むRPG。海賊船団どうしがぶつかり合う迫力のバトルが最大の特徴であり、2015年8月の配信開始から現在までで、300万を超えるダウンロード数を記録している。
好評を博している『戦の海賊』の運営をなぜマイネットが引き継ぐことになったのか。セガゲームス、マイネット両社の中心人物に話を伺ってきた。ゲーム、そして楽しんでいる人への影響など、興味深い話も伺うことができたのでぜひ読み進めてほしい。
好評を博している『戦の海賊』の運営をなぜマイネットが引き継ぐことになったのか。セガゲームス、マイネット両社の中心人物に話を伺ってきた。ゲーム、そして楽しんでいる人への影響など、興味深い話も伺うことができたのでぜひ読み進めてほしい。
■成長期だからこその運営移管
株式会社セガゲームス
セガネットワークス カンパニー
ゲーム事業本部 副本部長
木岡 勝利 氏(写真右)
株式会社マイネット
代表取締役社長
上原 仁 氏(写真左)
――本日はよろしくお願いします。まずは『戦の海賊』がマイネットへ運営移管することになった経緯から教えてもらえますか?
上原氏:そもそもの発端として、弊社がさまざまなゲームの運営を移管させていただくゲームサービス事業のきっかけを作ってくれたのが、木岡さんだったのです。約4年前にゲーム事業に進出し、これから先の戦略を考えているときに相談に乗ってくれて、「これからは運営のニーズが高まってくる」というアドバイスもいただきました。もちろんそれだけでなく、ゲームサービス事業の第1号も木岡さんのご協力あっての案件でしたし、すべての原点と言っても過言ではないのです。
木岡氏:きっかけは上原さんがおっしゃったとおりで、初めてお会いしてから継続的に両社の強みは何なのかを何度も議論してきました。こうした話し合いや自社の事業を展開する中で見えてきたセガネットワークスのこだわりは「新しくて面白いタイトルを作る」に尽きます。他方、マイネットさんは運営に特化している点が最大の強みと我々は考えています。
今回上原さんから『戦の海賊』の運営を引き継ぎたい、とのお話をいただき、マイネットさんであれば私たちが自信を持って作り上げ、幸いなことに多くのお客様に支えていただきながら育てて来られたものをお預けしても大丈夫だと思い、運営移管を決断しました。
上原氏:セガさんにはモノ作りの魂があって、私たちには運営の魂があります。私たちにとっての移管はシステムだけでなく、メーカーさんの魂そのものを受け継ぐ大きなテーマがあり、それを深く理解してくれている木岡さんと仕事ができたのはとても感慨深いものがありましたね。
――なるほど。長い積み重ねの中で運営移管の話が出てきたのですね。では『戦の海賊』の現在の状況についても教えてください。
木岡氏:2015年8月にリリースして、ダウンロード数は300万件を突破しています。現在も非常に多くの方にプレイしていただいており、昨年12月に大きなアップデートを実施して盛り上がりを見せているところです。
上原氏:今回特に意気に感じているのが、アップデート直後のタイミングで運営を移管していただくことです。まだまだこれから育っていく状態でお預かりできるのは、こちらとしてもとても嬉しく思っています。
木岡氏:スマートフォンゲームアプリは成長期、安定期を経て衰退期に入るのが一般的です。衰退期に入ると運営上でできることは限られてしまいます。ですから、つい先日アップデートを行い、かつたくさんの方が楽しんでくださっている成長期と言っても良い状況にある今、運営をマイネットさんに引き継いでいただくことで、サービスの質はさらに高まると考えています。
――なぜセガゲームスさんは『戦の海賊』の運営をほかの会社に任せることにしたのでしょうか?
木岡氏:少なくとも『戦の海賊』について運営を他社にお預けすることは考えていませんでした。しかしサービスを通してお客様に対して高い価値をご提供し続け、1日でも長くゲームを楽しんでいただける場を保っていくことが重要になってきます。そして検討を重ねた結果、マイネットさんであれば、サービスの質を落とすことなく、むしろ向上させていただく可能性があると考えたからです。
――具体的に、マイネットさんのどんなところを高く評価したのでしょう。
木岡氏:『戦の海賊』の面白さをよく理解してくれている点が大きかったです。マイネットさんはゲームに対する理解が深いのが非常に好印象でした。
上原氏:運営をする以上、セガさんよりもさらに良いゲームにしていく自信と気概があります。そうでなければ引き受ける理由はないですし、セガさんとしても渡す理由はないですからね。まずは魂もしっかりと引き継いだということを今後示していければと思います。
■ユーザーさんに価値を感じてもらえるゲームに
株式会社セガゲームス
セガネットワークス カンパニー
『戦の海賊』開発ディレクター
奥田 禎 氏(写真中央)
株式会社マイネットゲームス
代表取締役社長
田中 亘 氏(写真左)
プロデューサー
伴 正史 氏(写真右)
――これまでの『戦の海賊』ではどういった方針で運営していたか教えてください。
奥田氏:運営を始める前から、ユーザーの皆様がいかに長く遊べるかを第一に考えていました。面白いゲームを提供することはもちろんですが、まずは長く遊べることを最重視して、ストーリーの配信、新システムの追加を継続して行っています。
――これまでの『戦の海賊』のユーザーさんへの想いをお聞かせいただけますか。
奥田氏:ユーザーの方々にはさまざまな場面で温かい声や厳しいご意見をいただきつつ、ともにゲームを盛り上げていただきました。ただ遊ぶだけでなく、ゲームを育てていただいたという意味でもとても感謝していますし、とても良い関係性が築けたと感じています。
――運営移管となると、ユーザーさんへの影響も気になるところです。両社としてはどのような考えをお持ちですか?
奥田氏:良い意味で変わらないと考えています。私達が『戦の海賊』で培ってきた技術的な部分はもちろん、ゲームに対する思い、こだわりをマイネットさんはとても理解してくれていると感じています。運営移管が行われた後も今まで通り、そして今まで以上のサービスが提供できると確信しています。
伴氏:ユーザーさんのデータという意味でも、変わりはありません。ゲームデータもマイネットへ引き継がれますので、ユーザーさんの保有していたゲーム内資産がなくなってしまうとか、不利益になることは一切ありません。もちろんセガさんの想いも、しっかりと受け継いでいきたいと考えています。
――セガさんから受け継いだ意志というのは、具体的にどのような思いなのでしょう。
伴氏:『戦の海賊』はセガさんの開発チームもユーザーさんも、同じ楽しみを共有しているんですよね。開発チームが面白いと確信を持って実装したものが、しっかりとユーザーさんに届いているからこそ続いてきた運営です。それはしっかりと引き継いでいこうと考えていますし、これがズレてしまいますと、ユーザーさんに「求めている楽しさはこれじゃない」と思われてしまいますからね。
田中氏:マイネットは常に、ユーザーさんに長くワクワクする空間を提供しようと励んでいます。私たちはゲームを、ユーザーさんが安心して遊べる居場所であると考えており、これがゲームの価値にもつながってきます。私たちが運営することになっても、安心できる居場所には変わりありません。
――やはりこれまでにも、受け継ぐ意志を共有するための協議を重ねてきたのでしょうか。
田中氏:もちろんです。お互いの強み、ユーザーさんにとっての価値を高められるかなどあらゆる角度から話し合っています。
奥田氏:現場レベルではかなり密にコミュニケーションを取りながら作業を進めています。ゲームの状況であったり、ユーザーの方々の声もしっかりと共有しています。
――マイネットさんとしては、セガさんとともに仕事をしていく中で得られたことはありますか?
伴氏:ゲームをより良くしようとする思いが非常に強く、モノ作りの魂を感じますね。さらにユーザーさんのことをスタッフの方ひとりひとりが考えていて、その姿勢もとても勉強になります。
――今後『戦の海賊』をどう成長させていくか、ロードマップはあるのでしょうか?
伴氏:セガさんから今後のアップデートスケジュールを共有していただいているので、基本はそれに沿う形になります。昨年の12月には大型アップデートでは「英雄海賊」の配信がスタートしましたが、マイネット体制でも継続的に提供していきます。シナリオの部分も引き続き提供していく予定です。そしてプラスアルファとして、マイネットらしさも出していけたらと考えています。
――マイネットらしさというと、やはりコラボレーションなどの展開になるのですか?
伴氏:そうですね。とはいえ『戦の海賊』は定期的にコラボレーションを行っていたので、その方針を引き継ぐ形になります。ユーザーさんがワクワクできるコラボレーションを考えていきたいですね。
――奥田さんからマイネットさんに対して期待していることはなにかありますか?
奥田氏:「長く遊べるゲームを作る」というポリシーが両者に共通している点で、頼もしく思っているところです。ですので心配もしていませんし、共有すべきものをきちっと共有すれば必然的に良いゲーム、良いサービスが生まれると思います。
――今後『戦の海賊』を運営していくマイネットさんからは、ユーザーさんへ伝えたいメッセージはありますか?
伴氏:『戦の海賊』はセガさんが0から1を作り上げたコンテンツであり、それをユーザーさんも楽しいと感じてついてきて頂いた大切なタイトルであると考えています。私たちはこの関係性も大切にしていますし、1を10にできるよう頑張っていきたいと思います。
またマイネットはほかにもたくさんのゲームを運営しており、独自のノウハウも持っています。『戦の海賊』でもそのノウハウを充分に活かし、ユーザーさんにより楽しいと思ってもらえるよう還元していきたいです。
田中氏:確かに弊社が持つノウハウは『戦の海賊』でも使っていきたいですね。ユーザーさんに価値を感じてもらえるゲームにできるようひとつずつ積み上げていきたいです。
――ありがとうございました。
(取材・文:ライター ユマ)
■『戦の海賊』
会社情報
- 会社名
- 株式会社セガ
- 設立
- 1960年6月
- 代表者
- 代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長執行役員COO 内海 州史/代表取締役副社長執行役員Co-COO 杉野 行雄
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
会社情報
- 会社名
- 株式会社マイネット
- 設立
- 2006年7月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 岩城 農
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高87億1700万円、営業利益1億6800万円、経常利益1億2500万円、最終利益1億4300万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3928