【CEDEC2017】シニア世代もオンラインでゲームを遊ぶ時代…いつでも手軽に将棋を指せる相手が見つかるのは画期的

 
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、8月30日~9月1日の期間、パシフィコ横浜にて、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2017」(CEDEC 2017)を開催している。
 
本稿では、8月31日に実施された講演「はじめてスマホに触れるシニア世代のゲーム事情」についてのレポートをお届けしていく。
 
本セッションには、フレイムハーツ ゲーム本部 マネージャー/プロデューサーの洲巻雄介氏が登壇。シニア世代が初めて使うスマホとして選ばれることの多い「らくらくスマートフォン」に搭載されている専用ゲームコーナーの利用状況から、シニア世代とゲームの関わり方をレポートとして発表した。
 

▲フレイムハーツの洲巻雄介氏。これまでは、元気やディー・エヌ・エーで、コンシューマーゲームの開発やソーシャルゲーム運用などに携わってきたとのこと。
 

▲フレイムハーツは、デバッグ事業で有名なデジタルハーツのグループ会社にあたる。
 
 

■オンライン環境の発展はシニア世代にとっても画期的

 
講演の始めに洲巻氏は、まず「らくらくスマートフォン」について紹介。
 

 
シニア世代が初めて選ぶスマホとして手広く受け入れられている「らくらくスマートフォン」は、シリーズ累計販売台数は200万台を突破している。「すべての人に使いこなせる」をコンセプトに、スマホでありながらボタン風のインターフェイスなど、見た目にも分かりやすい設計になっているのが最大の特徴だ。また、分かりやすさを重視するため、使用できる機能もあえて絞って実装している。
 
本セッションでは、そんな「らくらくスマートフォン」に搭載されているゲームコーナーが題材となる。このゲームコーナーは、シニア向けSNS「らくらくコミュニティ」と連携しており、「脳トレ」「麻雀」「将棋」「リバーシ」などのゲームが遊べる。また、htmlで提供されており、サイトにアクセスできるのも「らくらくスマートフォン」使用者のみに絞っている
 


▲会員数は2017年7月時点で30万人を達成しており、その中でのアンケート結果でも「週4、5回以上利用している」というユーザーが3/4を占めており好評を得ていることが伺える。
 
洲巻氏は、「らくらくスマートフォン」のゲームコーナーが好評な理由として、シニア向けSNS「らくらくコミュニティ」の掲示板でユーザー同士の交流が盛り上がっていることを要因のひとつとして挙げる。ここでは、ユーザーが自分の作ったクロスワードの問題を載せていたり、対局後の感想戦が行われていたりするとのことだ。
 

 
なお、本ゲームはすべて無料で提供されており、「らくらくスマートフォン」をより多くのユーザーに届けるため、価値向上を目的にフレイムハーツが制作・運用部分を担っている。シニア世代としては、将棋や麻雀にしても、これまで実際に盤面を用いて集まって遊んでいたものに対して、オンラインでいつでも対戦相手が見つかるということが画期的に捉えられ熱心に遊んでもらえているという。
 
また、遊び方にも特徴が出ており、将棋を指すにも現実と同じく、じっくりと手を練り1時間以上かけて1ゲームをプレイしてもらえているというのが実情のようだ。
 
そのほか、運営においては”常にユーザーに寄り添うこと”を心掛けて運営しているとのこと。主な理由としては、初めてオンライン・スマホでゲームをプレイするユーザーが多いためだという。また、麻雀などローカルルールが入ることがあるゲームにおいてはきちんとルールを調べて実装し、問い合わせがあったものに対してはルール説明などの部分で丁寧に解説を入れている。
 

 
今後の運営としては、大会の開催によるランキングなど、ユーザー同士で競い合うイベントを開催してやりがいのあるゲームにしていきたいとのこと。昨今のスマホゲームでよく見られるインセンティブなどは用意せずとも、遊べる・競えること自体がモチベーションに繋がっているため、やりがいが大きなモチベーションに繋がると説明した。洲巻氏は、この点についても、若い世代からすると物足りなさを感じるかもしれないが、あえてこのような仕様にしたいと語った。


 
ここまでの事例から洲巻氏は、何においても「ターゲットをしっかりと絞ること」が重要になると話す。シニア世代がターゲットであれば、必要のない機能を削ぎ落とすことでシンプルに分かりやすくすることで継続して喜んでもらえるコンテンツになると説明した。
 
 

■シニア世代向けゲームのこれから

 
続いて、シニア世代向けゲームの未来についての展望も発表。
 
高齢化が進む日本では市場規模は拡大していくと予想している。また、世界的に見ても早い速度で高齢化が進んでいるため、今から取り組むことで最先端領域に付けるのではないかと展望を明かした。



 
そのためにはシニア世代向けに最適化されたサービス設計が不可欠になるが、あえて意識しなければ中々生まれてこないものではないかとの危惧も。洲巻氏は、シニア向けサービスを制作する際には自身の親や祖父母に何を作りたいかを考えるのが良いとアドバイスを送った。
 
最後に、昨今ではドラマ「光のお父さん」を例に”ゲームを通じた家族とのコミュニケーション”や、『Pokémon GO』のヒットを踏まえたうえで”位置情報ゲームを使った健康増進アプリ”など、現役世代をフックにしてシニア世代を巻き込んでいくことがポイントとなると話した。
 

▲映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で最先端の3DCG技術が使われたように、新しいもので懐かしさを出すことでよりシニア世代に受け入れられやすくなるのではないかと語った。

 
(文・撮影 編集部:山岡広樹)



■関連サイト

CEDEC2017

株式会社フレイムハーツ
https://www.flamehearts.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社フレイムハーツ
設立
2003年5月
代表者
代表取締役社長 筑紫 敏矢
決算期
3月
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