【インタビュー】ファンタジー世界は「攻略」から「経営」へ...発掘から5ヵ月!『ロード・オブ・ダンジョン』日本でのスピード展開はなぜ実現したのか…ケイブの開発メンバーが語る国内配信への道のり
ケイブが、2017年11月28日にApp StoreとGoogle Playにてリリースした『ロード・オブ・ダンジョン』。
もともとは韓国のEKゲームズが開発し、同国でも2017年春に配信されたばかり。それから5ヶ月程度で日本に上陸したのだから、異例のスピード展開と言っていいだろう。
さらに、『ファンタジー世界は「攻略」から「経営」へ...』と標榜しリリースするや否や、いきなりストアランキング10位台に食い込み、24時間やり始めたら止まらない中毒性に多くのユーザーが飛びついた。これまでのゲームの概念を覆した前代未聞の「ダンジョンを経営する」という本ゲームのコンセプト、そしてユーザーを惹きつける醍醐味とは?
今回のインタビューでは、ケイブで本作のローカライズに携わった主要開発メンバー5名に参加してもらい、本ゲームの日本配信までの道のりと、その裏側について伺った。
株式会社ケイブ
韓氏(マネージャー)
藤井氏(デザイナー)
金氏(プロデューサー)
ビータ芦澤氏(プランナー)
李氏(アシスタントプロデューサー)
※(写真右から)
――本日はよろしく願いします。皆さんはSocial Game Infoに登場するのは初めてだと思うので、まずは『ロード・オブ・ダンジョン』ではどんな業務を行っているのかを教えてください。
韓氏(以下、韓):『ロード・オブ・ダンジョン』の日本展開を最初に提案したのは金で、その後僕たち4人がチームに加わった形です。僕はパブリッシングするチームをまとめる役割として合流しました。
金氏(以下、金):日本版『ロード・オブ・ダンジョン』のプロデューサーを務めている金です。韓国版を最初に知ったのは今年の6月ごろで、第一印象から「日本でサービスしたい」と思いましたね。まだまだ改善するところはありますが、まずは素晴らしいメンバーとともに運営できているのでとても満足しています。
李氏(以下、李):アシスタントプロデューサーを担当している李です。金から『ロード・オブ・ダンジョン』のプロジェクトを教えてもらい、とても魅力的に映ったので参加することにしました。本作はとても多くの楽しさが詰まっており、それを皆さんに伝えていきたいと思います。
ビータ芦澤氏(以下、ビータ):僕はプランナーとしてローカライズを担当しています。『ロード・オブ・ダンジョン』は非常に面白い反面、システムが日本向きではない側面もあります。そこで単なるローカライズではなく、日本人にあったカルチャライズを提案しています。それに加えてケイブらしさを足していく“ケイブナイズ”もできるよう動いています。
藤井氏(以下、藤井):デザイナーを担当している藤井です。私の役割は、『ロード・オブ・ダンジョン』そのものの良さを、日本のユーザーさんに分かりやすいインターフェイスでお届けすることが仕事です。
――ケイブナイズというのは面白い考え方ですよね。そんなケイブらしさは、ゲームにどのような影響を与えているのですか?
金:緻密さ、ストイックさですね。ケイブのゲームはいつも、作る人たちも遊ぶ人たちも真剣になれるというか、良い意味で尖ってるんです。中でも私がもっとも意識しているのは、ユーザーさんが良い意味で悩める、考えることができるゲームを育てたいということです。
――『ロード・オブ・ダンジョン』の企画を持ち込んだのは金さんというお話ですが、社内での反応はいかがでしたか?
ビータ:日本で盛り上がりを見せるソーシャルゲームはスタミナがあり、それを元にクエストを消化するシステムが多いですが、『ロード・オブ・ダンジョン』にはチュートリアルの中にも曜日クエストを皮肉るようなセリフがあったり、チャレンジ精神が旺盛な印象を受けましたね。その反面、一般的なソーシャルゲームが好きな人には受け入れられるかな…という不安もありました。
藤井:ライトユーザー寄りの意見としては、初めて見たときはすごく難しくて分からないという印象があったのは事実ですが、私自身、プレイしてみて、すぐにこのゲームの本質的な面白さを掴むことが出来ました。そういう意味で、ユーザーさんが初見で惑うことなく、如何にスムーズにプレイを始められるかということを意識してインターフェイス作りに取り組みました。
金:分かればものすごく簡単なゲームであることも事実です。日本のユーザーさんはとにかくマニアックでゲームの研究もよくするので、理解してもらえればヒットすると確信していました。それでも、スタッフの皆さんから懐疑的な意見を言われたときは少し落ち込みましたけどね(笑)。
日本リリースにあたって強く意識したのは、先に2人が話してくれたとおりカルチャライズとライトユーザーへのアピールです。本作に限らず韓国のゲームは癖が強いので、日本のコンテンツとして溶け込ませることは必須でした。また初心者に対するハードルを低くするためになにをするべきか、リリースの直前まで徹底的に考えました。
李:私は韓国版からプレイしているので、コアユーザーと言っていいと思います。プレイを始めた当初から本当に自由度が高い作品であると感じていました。決められたルールが存在せず、自分がやりたいことをやる作品なので、他のソーシャルゲームとの差別化はできていたと思います。
金:自由度が高いという意味では、最近のソーシャルゲームよりコンシューマのゲームに近いです。ユーザーさんにすべての選択権を与えていて、時間と努力さえあれば誰でも等しく楽しめます。久しぶりに本物のゲームを見つけたと感じましたね。
韓:韓国の市場も日本と同じくレッドオーシャンで、ゲームを売るのが難しい時代です。そんな中でEKゲームズさんはかなりチャレンジングな開発をされたなと感じています。
――韓国版から日本版のリリースまではかなり短かったと思います。
韓:ゲームそのものが奥深く、本当にできることが多く、ユーザーさんの熱量も高いです。その熱量はスタッフ陣も同じで、日本版ではどこを中心にアピールするべきか、話がまとまらないのです。僕の立場からすると、それが一番の苦労でしたね(笑)。
ビータ:根本が非常によくできているゲームで、イベントやキャンペーンを急いで用意する必要がなかったのも、リリースが早くなった要因です。
金:ゲーム自体の完成度が高いおかげで、なにもいじる必要がないクオリティでした。むしろ手を加えたらこのゲームではなくなってしまうというくらいです。リリースを開始してからは多くの方が楽しんでくださり、コンテンツの枯渇速度が想定以上なんです。イベントや新しいコンテンツを、急いで追加しなければいけないと考えています。
ビータ:嬉しい悲鳴ではあるんですけど、こちらの想定以上にがっつり遊んでいただいています。イベントを早く始めてほしいといった要望もたくさん届いています。
藤井:イベントは別腹ですからね…(笑)。
――(笑)。このスピード展開を実現できた要因はどこにあるのか、皆さんはどう分析していますか?
金:正直なところ、ヒットするという確信があったから突っ走っただけな気がします(笑)。このゲームを初めて知ったときに直感で「ヒットする」と一目惚れして、すぐに社長室に走っていきました。確信があったからこそ、社長を説得するのにも時間はかかりませんでした。
韓:見切り発車ではなく、十分必要な話し合いをして、向かうべき場所まで迷いなく走り続けることができたのも大きな要因です。チーム全員が同じ目標を持って仕事を進められたので、作業の出戻りや停滞はほとんどありませんでした。
金:チームワークがあってこそですね。私がゲームを発掘してから日本リリースまで5か月程度ですが、5ヶ月もかかった感覚はないです。
――事前登録が50万人を突破したというニュースもありましたが、予想以上の滑り出しという認識でいいのでしょうか。
韓:そうですね。普段からスマートフォンでゲームを遊ぶ方だけでなく、コンシューマのゲームに慣れている人が多く入り、定着しているという印象です。
金:韓国でもプロモーションをほとんどしない状態にも関わらず、月間のユーザー数が8万から10万人を記録しています。日本より3分の1程度の人口なので、この数字は驚異的です。これはゲームに実力があったからこそで、ただの偶然ではないはずです。
――1回遊んでみると面白さが分かるというのは、日本も韓国も同じなんですね。
藤井:攻略の情報を教え合って、より楽しくなっていくのはあると思います。
ビータ:僕もこのゲームを始めてからは、周りのスタッフとのやりとりが楽しいと感じるようになりました。リセマラでコミュニティが終わるゲームではなく、まるで小学生のときにあった、ゲームのことで話し合う感覚に似ています。
金:コンシューマゲームでも選択肢によって物語が変わる作品があるじゃないですか。『ロード・オブ・ダンジョン』もそれと同じで、同レベルであっても、どんな方向でプレイしたかによって内容がまったく変わってくるんです。
――では、そんな『ロード・オブ・ダンジョン』の魅力がどこにあるか、あらためて教えてもらえますか。
ビータ:戦闘はやることがないように見えて、意外と奥が深いシステムです。同じレベルでも職業次第で難易度はまったく違うものになり、編成の楽しさがあるゲームですね。
藤井:ランキング戦でも、レベルの高いチームに勝てたり、逆にこちらが負けたりと同じ結果になることはありません。組み合わせ次第で遊び方が変わります。
李:必ずしもレア度の高いキャラクターが強いとはならないのも、このゲームの良いところです。もちろん貴重なキャラクターがいれば有利ですけど、いなくても常に勝てる可能性があるんです。
韓:僕はこのゲームをストラテジーではなくRPGとして見ているんですけど、これもプレイヤーによってさまざまだと思います。仲間を強くして進むことも、村の収益を気にしながらコツコツ進めることもできる、目的も手段も人それぞれですね。
――キービジュアルにある「稼げ、果てるまで!!」というキャッチコピーもインパクトがありますよね。
金:とにかくこのゲームはゴールドがないとなにもできないゲームですが、ユーザーさんが自分の力で稼ぐしかありません。「稼げ、果てるまで!!」というキャッチコピーはゲームの象徴というか、アイデンティティですね。
ビータ:メンバーのレベルアップにも村の拡張にもゴールドが必要で、とりあえず稼がなければ次へ進めないですからね。
韓:ゴールドはリアルマネーでは直接、買えない仕組みになっているのも作品の特徴です。自分自身で稼がなければいけない反面、やり込もうと思えば1日24時間ずっと稼ぎ続けることも可能です。実際に自分も、1日に14時間、15時間とプレイし続けてしまいます。
ビータ:長時間遊んでくださるのは一般のユーザーさんも同じで、プレイ動向を見ながら、本当に果ててしまうんじゃないかと心配になるくらいです(笑)。
金:やめるタイミングを見失う方も多いみたいで、メンテナンスに入ったらユーザーさんから「ありがとうございます」と感謝されたこともありましたね(笑)。止めるきっかけが作れて感謝されるのは、他のゲームではないことだと思います。
――現状、皆さんが感じている改善のポイントについても教えてください。
金:イベントの充実はもちろん、ユーザーさんが不便に思っていることは徹底的に改善していきたいです。ユーザーさんは想定以上にやり込んでいるので、こちらも一緒にがんばらないといけないと意気込んでいます。
ビータ:不親切さはなくしていきたいとは考えていますが、チュートリアルを強制させて自由度を奪うこともしたくないので悩みどころです。最適な方法を見つけていきますので、ゆっくり遊んで、こちらの動きを待っていただければと思います。またイベントもガチャも、自由度を阻害しないバランスで提供していきたいです。
――やり込み要素が多いゲームである以上、初心者をどう助けていくかは重要ですよね。
韓:私たちとしては、少し調べたらヒントが分かる導線を張っていきたいです。ゲーム内のヘルプのほかにも攻略サイト、友達と教えあっったりと、あらゆる手段で遊べるゲームにしていきます。
ビータ:丁寧に遊べるよう変えることもできるんですけど、それを本当にしていいのかは検討する必要があります。
金:取り組みのひとつとして、ゲームエイトさんと連携して攻略サイトを立ち上げました。こちらを閲覧しながら進めてほしいです。ただしこれも悩むことが多くて、ネタばれになってしまうことも書くべきかどうか、どこまで教えるべきなのかは今も議論しています。なにもかも教えてしまったらプレイする意味がないですし、ユーザーの皆さんが閃いたときの喜びは維持していきたいという考えです。
――いずれにせよ、ゲームサイトとの連携にも期待が持てそうです。
金:ゲームエイトさんのほかに、Lobiさんもゲームの攻略やアイテムを売り買いするチャットサービスを運営しています。
ビータ:躓くポイントの改善という意味では、一番はコミュニケーションの活性化です。その意味ではLobiさんは活躍してくれると期待しています。このほかにもコミュニケーションの環境を構築中で、情報を知る場所、教え合える場所を作れるように努めています。
藤井:ゲームが始まったばかりなので、チャットはまだ使いづらさがあると思います。今後さらにユーザーさんの腕が上がれば、素材アイテムを渡せる人も増えて活性化していくと期待しています。
――それでは、今後注目してもらいたいポイントがあれば教えてください。
金:現在、新しいイベントを実施中で、日本版限定のモンスターが登場するのでぜひ見てもらいたいです。
藤井:本作のモンスターデザインは海外向けのものが多いですが、今回は日本のユーザーさんでも親しめるデザインになっています。とてもかわいいので、多くの方に手に入れてもらいたいです。
■『ロード・オブ・ダンジョン』
©2017 CAVE Interactive CO., LTD. EKGames CO., LTD. All rights reserverd.
もともとは韓国のEKゲームズが開発し、同国でも2017年春に配信されたばかり。それから5ヶ月程度で日本に上陸したのだから、異例のスピード展開と言っていいだろう。
さらに、『ファンタジー世界は「攻略」から「経営」へ...』と標榜しリリースするや否や、いきなりストアランキング10位台に食い込み、24時間やり始めたら止まらない中毒性に多くのユーザーが飛びついた。これまでのゲームの概念を覆した前代未聞の「ダンジョンを経営する」という本ゲームのコンセプト、そしてユーザーを惹きつける醍醐味とは?
今回のインタビューでは、ケイブで本作のローカライズに携わった主要開発メンバー5名に参加してもらい、本ゲームの日本配信までの道のりと、その裏側について伺った。
株式会社ケイブ
韓氏(マネージャー)
藤井氏(デザイナー)
金氏(プロデューサー)
ビータ芦澤氏(プランナー)
李氏(アシスタントプロデューサー)
※(写真右から)
◼︎ローカライズの早さはチームワークがあってこそ
――本日はよろしく願いします。皆さんはSocial Game Infoに登場するのは初めてだと思うので、まずは『ロード・オブ・ダンジョン』ではどんな業務を行っているのかを教えてください。
韓氏(以下、韓):『ロード・オブ・ダンジョン』の日本展開を最初に提案したのは金で、その後僕たち4人がチームに加わった形です。僕はパブリッシングするチームをまとめる役割として合流しました。
金氏(以下、金):日本版『ロード・オブ・ダンジョン』のプロデューサーを務めている金です。韓国版を最初に知ったのは今年の6月ごろで、第一印象から「日本でサービスしたい」と思いましたね。まだまだ改善するところはありますが、まずは素晴らしいメンバーとともに運営できているのでとても満足しています。
李氏(以下、李):アシスタントプロデューサーを担当している李です。金から『ロード・オブ・ダンジョン』のプロジェクトを教えてもらい、とても魅力的に映ったので参加することにしました。本作はとても多くの楽しさが詰まっており、それを皆さんに伝えていきたいと思います。
ビータ芦澤氏(以下、ビータ):僕はプランナーとしてローカライズを担当しています。『ロード・オブ・ダンジョン』は非常に面白い反面、システムが日本向きではない側面もあります。そこで単なるローカライズではなく、日本人にあったカルチャライズを提案しています。それに加えてケイブらしさを足していく“ケイブナイズ”もできるよう動いています。
藤井氏(以下、藤井):デザイナーを担当している藤井です。私の役割は、『ロード・オブ・ダンジョン』そのものの良さを、日本のユーザーさんに分かりやすいインターフェイスでお届けすることが仕事です。
――ケイブナイズというのは面白い考え方ですよね。そんなケイブらしさは、ゲームにどのような影響を与えているのですか?
金:緻密さ、ストイックさですね。ケイブのゲームはいつも、作る人たちも遊ぶ人たちも真剣になれるというか、良い意味で尖ってるんです。中でも私がもっとも意識しているのは、ユーザーさんが良い意味で悩める、考えることができるゲームを育てたいということです。
――『ロード・オブ・ダンジョン』の企画を持ち込んだのは金さんというお話ですが、社内での反応はいかがでしたか?
ビータ:日本で盛り上がりを見せるソーシャルゲームはスタミナがあり、それを元にクエストを消化するシステムが多いですが、『ロード・オブ・ダンジョン』にはチュートリアルの中にも曜日クエストを皮肉るようなセリフがあったり、チャレンジ精神が旺盛な印象を受けましたね。その反面、一般的なソーシャルゲームが好きな人には受け入れられるかな…という不安もありました。
藤井:ライトユーザー寄りの意見としては、初めて見たときはすごく難しくて分からないという印象があったのは事実ですが、私自身、プレイしてみて、すぐにこのゲームの本質的な面白さを掴むことが出来ました。そういう意味で、ユーザーさんが初見で惑うことなく、如何にスムーズにプレイを始められるかということを意識してインターフェイス作りに取り組みました。
金:分かればものすごく簡単なゲームであることも事実です。日本のユーザーさんはとにかくマニアックでゲームの研究もよくするので、理解してもらえればヒットすると確信していました。それでも、スタッフの皆さんから懐疑的な意見を言われたときは少し落ち込みましたけどね(笑)。
日本リリースにあたって強く意識したのは、先に2人が話してくれたとおりカルチャライズとライトユーザーへのアピールです。本作に限らず韓国のゲームは癖が強いので、日本のコンテンツとして溶け込ませることは必須でした。また初心者に対するハードルを低くするためになにをするべきか、リリースの直前まで徹底的に考えました。
李:私は韓国版からプレイしているので、コアユーザーと言っていいと思います。プレイを始めた当初から本当に自由度が高い作品であると感じていました。決められたルールが存在せず、自分がやりたいことをやる作品なので、他のソーシャルゲームとの差別化はできていたと思います。
金:自由度が高いという意味では、最近のソーシャルゲームよりコンシューマのゲームに近いです。ユーザーさんにすべての選択権を与えていて、時間と努力さえあれば誰でも等しく楽しめます。久しぶりに本物のゲームを見つけたと感じましたね。
韓:韓国の市場も日本と同じくレッドオーシャンで、ゲームを売るのが難しい時代です。そんな中でEKゲームズさんはかなりチャレンジングな開発をされたなと感じています。
――韓国版から日本版のリリースまではかなり短かったと思います。
韓:ゲームそのものが奥深く、本当にできることが多く、ユーザーさんの熱量も高いです。その熱量はスタッフ陣も同じで、日本版ではどこを中心にアピールするべきか、話がまとまらないのです。僕の立場からすると、それが一番の苦労でしたね(笑)。
ビータ:根本が非常によくできているゲームで、イベントやキャンペーンを急いで用意する必要がなかったのも、リリースが早くなった要因です。
金:ゲーム自体の完成度が高いおかげで、なにもいじる必要がないクオリティでした。むしろ手を加えたらこのゲームではなくなってしまうというくらいです。リリースを開始してからは多くの方が楽しんでくださり、コンテンツの枯渇速度が想定以上なんです。イベントや新しいコンテンツを、急いで追加しなければいけないと考えています。
ビータ:嬉しい悲鳴ではあるんですけど、こちらの想定以上にがっつり遊んでいただいています。イベントを早く始めてほしいといった要望もたくさん届いています。
藤井:イベントは別腹ですからね…(笑)。
――(笑)。このスピード展開を実現できた要因はどこにあるのか、皆さんはどう分析していますか?
金:正直なところ、ヒットするという確信があったから突っ走っただけな気がします(笑)。このゲームを初めて知ったときに直感で「ヒットする」と一目惚れして、すぐに社長室に走っていきました。確信があったからこそ、社長を説得するのにも時間はかかりませんでした。
韓:見切り発車ではなく、十分必要な話し合いをして、向かうべき場所まで迷いなく走り続けることができたのも大きな要因です。チーム全員が同じ目標を持って仕事を進められたので、作業の出戻りや停滞はほとんどありませんでした。
金:チームワークがあってこそですね。私がゲームを発掘してから日本リリースまで5か月程度ですが、5ヶ月もかかった感覚はないです。
――事前登録が50万人を突破したというニュースもありましたが、予想以上の滑り出しという認識でいいのでしょうか。
韓:そうですね。普段からスマートフォンでゲームを遊ぶ方だけでなく、コンシューマのゲームに慣れている人が多く入り、定着しているという印象です。
金:韓国でもプロモーションをほとんどしない状態にも関わらず、月間のユーザー数が8万から10万人を記録しています。日本より3分の1程度の人口なので、この数字は驚異的です。これはゲームに実力があったからこそで、ただの偶然ではないはずです。
――1回遊んでみると面白さが分かるというのは、日本も韓国も同じなんですね。
藤井:攻略の情報を教え合って、より楽しくなっていくのはあると思います。
ビータ:僕もこのゲームを始めてからは、周りのスタッフとのやりとりが楽しいと感じるようになりました。リセマラでコミュニティが終わるゲームではなく、まるで小学生のときにあった、ゲームのことで話し合う感覚に似ています。
金:コンシューマゲームでも選択肢によって物語が変わる作品があるじゃないですか。『ロード・オブ・ダンジョン』もそれと同じで、同レベルであっても、どんな方向でプレイしたかによって内容がまったく変わってくるんです。
――では、そんな『ロード・オブ・ダンジョン』の魅力がどこにあるか、あらためて教えてもらえますか。
ビータ:戦闘はやることがないように見えて、意外と奥が深いシステムです。同じレベルでも職業次第で難易度はまったく違うものになり、編成の楽しさがあるゲームですね。
藤井:ランキング戦でも、レベルの高いチームに勝てたり、逆にこちらが負けたりと同じ結果になることはありません。組み合わせ次第で遊び方が変わります。
李:必ずしもレア度の高いキャラクターが強いとはならないのも、このゲームの良いところです。もちろん貴重なキャラクターがいれば有利ですけど、いなくても常に勝てる可能性があるんです。
韓:僕はこのゲームをストラテジーではなくRPGとして見ているんですけど、これもプレイヤーによってさまざまだと思います。仲間を強くして進むことも、村の収益を気にしながらコツコツ進めることもできる、目的も手段も人それぞれですね。
◼︎今後はユーザー同士のコミュニケーション強化も視野に
――キービジュアルにある「稼げ、果てるまで!!」というキャッチコピーもインパクトがありますよね。
金:とにかくこのゲームはゴールドがないとなにもできないゲームですが、ユーザーさんが自分の力で稼ぐしかありません。「稼げ、果てるまで!!」というキャッチコピーはゲームの象徴というか、アイデンティティですね。
ビータ:メンバーのレベルアップにも村の拡張にもゴールドが必要で、とりあえず稼がなければ次へ進めないですからね。
韓:ゴールドはリアルマネーでは直接、買えない仕組みになっているのも作品の特徴です。自分自身で稼がなければいけない反面、やり込もうと思えば1日24時間ずっと稼ぎ続けることも可能です。実際に自分も、1日に14時間、15時間とプレイし続けてしまいます。
ビータ:長時間遊んでくださるのは一般のユーザーさんも同じで、プレイ動向を見ながら、本当に果ててしまうんじゃないかと心配になるくらいです(笑)。
金:やめるタイミングを見失う方も多いみたいで、メンテナンスに入ったらユーザーさんから「ありがとうございます」と感謝されたこともありましたね(笑)。止めるきっかけが作れて感謝されるのは、他のゲームではないことだと思います。
――現状、皆さんが感じている改善のポイントについても教えてください。
金:イベントの充実はもちろん、ユーザーさんが不便に思っていることは徹底的に改善していきたいです。ユーザーさんは想定以上にやり込んでいるので、こちらも一緒にがんばらないといけないと意気込んでいます。
ビータ:不親切さはなくしていきたいとは考えていますが、チュートリアルを強制させて自由度を奪うこともしたくないので悩みどころです。最適な方法を見つけていきますので、ゆっくり遊んで、こちらの動きを待っていただければと思います。またイベントもガチャも、自由度を阻害しないバランスで提供していきたいです。
――やり込み要素が多いゲームである以上、初心者をどう助けていくかは重要ですよね。
韓:私たちとしては、少し調べたらヒントが分かる導線を張っていきたいです。ゲーム内のヘルプのほかにも攻略サイト、友達と教えあっったりと、あらゆる手段で遊べるゲームにしていきます。
ビータ:丁寧に遊べるよう変えることもできるんですけど、それを本当にしていいのかは検討する必要があります。
金:取り組みのひとつとして、ゲームエイトさんと連携して攻略サイトを立ち上げました。こちらを閲覧しながら進めてほしいです。ただしこれも悩むことが多くて、ネタばれになってしまうことも書くべきかどうか、どこまで教えるべきなのかは今も議論しています。なにもかも教えてしまったらプレイする意味がないですし、ユーザーの皆さんが閃いたときの喜びは維持していきたいという考えです。
――いずれにせよ、ゲームサイトとの連携にも期待が持てそうです。
金:ゲームエイトさんのほかに、Lobiさんもゲームの攻略やアイテムを売り買いするチャットサービスを運営しています。
ビータ:躓くポイントの改善という意味では、一番はコミュニケーションの活性化です。その意味ではLobiさんは活躍してくれると期待しています。このほかにもコミュニケーションの環境を構築中で、情報を知る場所、教え合える場所を作れるように努めています。
藤井:ゲームが始まったばかりなので、チャットはまだ使いづらさがあると思います。今後さらにユーザーさんの腕が上がれば、素材アイテムを渡せる人も増えて活性化していくと期待しています。
――それでは、今後注目してもらいたいポイントがあれば教えてください。
金:現在、新しいイベントを実施中で、日本版限定のモンスターが登場するのでぜひ見てもらいたいです。
藤井:本作のモンスターデザインは海外向けのものが多いですが、今回は日本のユーザーさんでも親しめるデザインになっています。とてもかわいいので、多くの方に手に入れてもらいたいです。
■『ロード・オブ・ダンジョン』
©2017 CAVE Interactive CO., LTD. EKGames CO., LTD. All rights reserverd.
会社情報
- 会社名
- 株式会社ケイブ
- 設立
- 1994年6月
- 代表者
- 代表取締役社長 秋田 英好/代表取締役CFO 伊藤 裕章
- 決算期
- 5月
- 直近業績
- 売上高122億7400万円、営業利益18億7000万円、経常利益19億4300万円、最終利益14億4100万円(2024年5月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3760