【インタビュー】『逆転オセロニア』の事例から訊く、動画マーケティング支援ツール「kamui tracker」を活用したプロモーション手法や作業効率化

2016年2月に配信が開始され、現在1,900万ダウンロードを突破している、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>の『逆転オセロニア』。
 
同タイトルでは、YouTuberを起用した動画企画やイベントが活発に行われていることが、ひとつの特徴となっている。その際、動画市場の分析やYouTuberの選定、発掘のヒントに大きく貢献しているのが、エビリーが提供する動画市場分析データ及びYouTube分析ツール「kamui tracker」だという。「kamui tracker」は、日本最大級のクリエイターデータを保有する、エビリー提供の動画マーケティング支援ツールだ。
 
そこで今回は、DeNAの宣伝業務を担当している古賀美奈子氏と、エビリーの大谷洋平氏、玉井友里氏、原田大希氏の4名に、『逆転オセロニア』におけるマーケティングの事例から、YouTuberを起用したマーケティング手法の利点や、「kamui tracker」を使ってできること、その後の効果などについてお話を伺ってきた。


写真左から順に、
玉井友里氏(エビリー):広報・マーケティング担当
古賀美奈子氏(DeNA):宣伝担当
大谷洋平氏(エビリー):セールス担当
原田大希氏(エビリー):カスタマーサクセス担当

 
 

■『逆転オセロニア』で見せたかったのは「逆転、対戦、観戦」

 
──:まずは各々どういった業務を担当しているか、自己紹介からお願いします。
 
古賀氏(以下、古賀):DeNAで、ゲームタイトルまわりのYouTube広告のプランニングや、その分析評価など、YouTuberマーケティング業務全般に従事しています。動画としてのYouTube広告以外にも、YouTuberを起用したコラボやイベントなどに携わっています。タイトルは主に『逆転オセロニア』ですが、他のタイトルをお手伝いするケースもあるので流動的です。
 
大谷洋平氏(以下、大谷):エビリーでは、動画とインターネット・テクノロジーを掛け合わせたサービスを提供しています。BtoBのサービスには2種類あり、動画マーケティング支援ツール「kamui tracker」と、クラウド型の動画配信サービス「millvi」です。
 
その中で私は「kamui tracker」のセールスを担当しており、ゲーム系の企業様をメインに様々な方とお会いして新規開拓をしています。また、多くのマーケターの情報収集の場をご提供できるよう、セミナー企画も行っています。
 
玉井友里氏(以下、玉井):私は「kamui tracker」の広報およびマーケティングを担当しています。「kamui tracker」の認知拡大と、法人からの問い合わせの獲得、さらにはYouTuberの会員獲得が私のミッションです。2017年YouTuberランキングや、今年ブレイクするYouTuber予想ランキングといった記事を通して、「kamui tracker」の認知拡大を図っています。
 
原田大希氏(以下、原田):カスタマーサクセス担当の原田です。主な業務内容は「kamui tracker」の機能実装および改善になります。そのため、「kamui tracker」を導入していただいているお客様へのサポートやヒアリングをしています。あとは、「kamui tracker」のお取引企業様宛てに、YouTuberタイアップに関するレポートを毎月提供しています。

 
──:改めて、『逆転オセロニア』がどういったゲームか教えてください。
 
古賀:オセロをベースにした対戦ゲームアプリになります。後半に大逆転が起きるかもしれないというハラハラドキドキ感があるシステムが特徴で、各駒に宿っているキャラクターのスキルを駆使しながら戦うという、カードバトルゲームのような要素も入っています。馴染みのあるオセロをベースにしたゲームで全国のプレイヤーとリアルタイム対戦ができるため、幅広い層にプレイいただいております。
 


──:馴染み深いという点では広くの層に受け入れられそうですが、プロモーションにおいてはどのようなところに気を付けましたか?
 
古賀:まず課題となったのは、『逆転オセロニア』が提供したいユーザーエクスペリエンスをどう伝えるかでした。本作を通して伝えたいことは”逆転を巻き起こすかもしれない”というハラハラドキドキ感のあるプレイです。且つ、ゲームを観戦して楽しんだり、自分で実践したりという楽しみもあります。そこで、「逆転」、「対戦」、「観戦」という3つの点を伝えるためには動画で対戦している様子を見せるべきだと考え、YouTuberマーケティングが効果的だろうという答えに至りました。
 
──:YouTuberを起用して、どのようにゲームの魅力を伝えていこうと考えておられたのでしょうか。
 
古賀:対戦の面白さを伝えることが重要なので、動画を視聴しているプレイヤーが一緒にハラハラできるものとして、動画の中で罰ゲームを設けたり、一種の企画要素を持たせることにしました。あとは、心から『逆転オセロニア』を好きなYouTuberにプレイしていただくことを大事にしています。視聴者の態度変容を狙うためにも、心からゲームを楽しんでいる人のリアクションが最重要だと考えています。
 



古賀:あとは、「提供だけど面白い」ではなく「提供だからこそできる」企画を実現していくことに力を入れてきました。大事なのは、プレイヤーがYouTubeで見たことのないものを見せるということです。提供動画の場合、時には企業の広告色が全面に出てしまうことがあります。それでも、これまで見たことのないものを見せることで純粋に面白いと思っていただける、楽しみの中で情報に触れて頂けるのではと思いました。そこで、YouTuber動画に出演をしないような、TVをメインの舞台として活躍している某有名タレントさんとYouTuberがコラボした動画を作成してみることにしました。
 

・まさかのデヴィ夫人登場!?ガチバトルでまさかの結果に【ヒカキンゲームズ】【逆転オセロニア】​
https://www.youtube.com/watch?v=rJ8kPbqsqFM&t=0s&index=27&list=PLlojrgR2BiEfhEO36HpnjCbKLpwMsskjo
 
 

■自動化によって生まれる余裕が新規開拓を生む

 
──:続いては、そういったプロモーションにエビリーさんの「kamui tracker」がどのように貢献してきたのかをお聞きしたいのですが、最初に「kamui tracker」の導入を決めた経緯を教えてください。
 
古賀:まず、そもそもの背景をお伝えさせて頂きますと、『逆転オセロニア』のYouTuberプロモーションに取り組むにあたり、データに基づいたプランニングとデータを主軸にした振り返りを行うことで、しっかり施策の成功確度を高めると共に、成功したマーケティング施策の再現性を高めていきたいという思いがありました。
 
また、YouTuberを大規模に起用するケースが増えたことで、横並びで比較してデータを管理するにあたり、手作業で対応していた分、業務効率が下がってしまうという課題も生じていました。
 
そのような状況下で、様々な切り口で比較分析でき、且つ膨大な『逆転オセロニア』のYouTubeタイアップ動画広告のデータを一元管理することができる「kamui tracker」は非常に有効性が高いのではと思い、導入を決意することになりました。

 
──:では、そんな「kamui tracker」ではどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
 
大谷:エビリーでは、YouTubeを中心とした動画の視聴データや、動画をアップロードしているアカウントのチャンネルデータ(YouTubeで言うところの、チャンネルのポテンシャルデータ)を毎日更新しています。そうしたデータをアップデートしながらデータベース化することで、業務効率を上げることができる支援ツールが「kamui tracker」です。
 


――:導入するにあたって苦労された部分はありますか?
 
古賀:URLとID、パスワードがあればログインできるので導入工数は少なかったです。
 
──:具体的にはどのような活用法がありますか?
 
大谷:「kamui tracker」では、例えば、YouTuberを起用した様々な業種や商品のスポンサード動画実績、さらには、ゲーム関連動画については、YouTuberが自主的に配信している非スポンサー動画を、700以上のタイトルごとに比較できるようになっています。そこから、自社のタイトルが好きなYouTuberを発掘したり、プロモーションを打った後にどれだけ反応があったのかを把握できたりするので、明確な数値を基に振り返りが行えるようになります。
 

▲各ゲームタイトルのスポンサード動画・非スポンサード動画の本数比較ができる。

――:エビリーさんとしては、「kamui tracker」を導入されてからはどのようなサポート体制を敷かれているのでしょうか?

大谷:「kamui tracker」の機能改善や、新たな分析データの実装により、各社様のマーケティング業務課題を解決することはできるか?」という軸で、定期的にヒアリングをしております。そこで、各社様から頂いた様々なご要望に合わせた開発をエビリー社内で話し合い、ご利用いただいてる各社様にフィードバックしています。やはり、自分たちが想像するものより、実際にマーケティング業務をされている現場の声の重要度は高いと考えています。そのため、他の企業様にもニーズがありそうな機能か?という点も考慮しながら、随時「kamui tracker」の開発ロードマップに優先的に付け加えています。

──:DeNAさんでは、実際に「kamui tracker」を利用されてみて印象はいかがでしたか?
 
古賀:本当に助かっています。「kamui tracker」により、これまで人力では見つけられなかった伸び盛りのYouTuberと組めるようになり、メジャーな方を起用するのに比べてコストの低減化が捗り、想定していた費用対効果以上の成果を得られるケースが増えました。同じことを繰り返すだけでは、効果は停滞していくばかりですので、チャレンジをしていかねばならないと思うのですが、一方でチャレンジにはリスクもつきまといます。その中で、データドリブンな意思決定を可能にし、確度の高いチャレンジをサポートしてくれる「kamui tracker」はとても心強い存在です。
 
あとは、先ほど課題として挙げた業務効率の改善にも成功しています。手動のときは集計、分析に時間を取られることが多く、プランニングにかける時間が減ってしまっていました。集計や分析を自動化で時間短縮できるようになったことで、次の施策を前倒しで考えられるようになったことは非常に大きいです。他のタイトルと横連携をする際も管理画面を共有するだけで良いので、組織的にYouTuberに対する見識を高めることにも役立っています。

 


──:どういった部分で作業の効率化が図れたのでしょうか。
 
大谷:とあるマーケターの方の場合ですと、YouTube上での情報収集を、毎日2~3時間かけていらっしゃいましたが、kamui trackerでは最新データを毎日アップデートしていることで、見たいデータを、見たい時に閲覧が可能なため、かなり効率的にマーケティング業務を行っていただいております。
 
また、これは余談ですが社内でYouTubeに詳しい方がいても、その技術や知識を他の方へ伝達するのにはどうしても時間が掛かってしまいますよね。そういったところを「kamui tracker」で共有することで解決できます。
 
原田:「kamui tracker」で情報を共有することでYouTuberに詳しくない人にも簡単に再現性を持たせることができます。
 
古賀:プランニングの精度を上げるという意味では、他社が行った施策の結果を見られるという点で非常に助かっています。他社タイトルで一定の効果を上げたYouTuberであれば自社でも効果を出せるであろうという見積りが取れます。なので、他社のデータもまとめられるというのは導入の決め手になったポイントのひとつですね。
 
玉井:動画はマーケティング手法としてダイナミックではあるものの、次にどう活かすかという点では、まだまだ試行錯誤している企業様が多い印象です。
 
大谷:あとは、「kamui tracker」ならYouTuberが自主的にアップロードしている動画と、スポンサードの動画を仕分けることもできます。この機能は、弊社側のロジックでフィルタリングした後、精度を上げるために人力でもフィルタリングをかけているので、かなり精度の高いデータを提供できていると思います。
 
古賀:確かに、以前は気になるYouTuberのチャンネルに自分たちでアクセスして「提供」というワードでページ内検索をかけ、引っかかった動画をひとつずつチェックしていたりしたので非常に大変でした。これがタブひとつで分かるようになるというのは大きな効率化です。 



▲各ゲームタイトルのスポンサード動画の統計情報を一覧で見ることができる。


▲各ゲームタイトルごとのスポンサード動画詳細を一覧で見ることができる。

 

■「好き」という感情こそが良いものを作りだす

 
──:「kamui tracker」ならではのメリットというのは他にも存在するのでしょうか?
 
古賀:月1回いただける、YouTuber市場全体のレポーティングサービスは非常に役立っています。このレポートを見るだけで他社がどのような取り組みを行っているかをマクロな視点で分析できます。トレンドなども逐一追ってくださっていて、「今はこういう動画がウケる!」という部分が言語化されていて参考にしやすいです。

原田:情報を提供するだけで終了ではなく、動画マーケティングの作業をいかに改善するか、僕らも一緒に考えています。
 
大谷:日々のマーケティング業務をより効率的で有意義なものにするという点においては、「kamui tracker」と合わせて、このレポートで市場動向のインプットに活用してもらえれば必ずマーケティング業務に効果があると思います。原田が作成するレポートは本当に最高ですよ!

 
──:そのレポートにはどういったことが書かれているのでしょうか。
 
原田:毎月のYouTuberタイアップ動画に関する実績データと傾向を、様々な軸でまとめています。「視聴回数」「動画投稿本数」「起用クリエイター数」や、「ゲームタイトル別」「クリエイター別」「広告主別」などの軸をもとにしたランキングをはじめ、さらには、こちらで注目しているタイアップ動画のお知らせや、目立った実績数値が出た動画とキャンペーンの内容なども紹介しています。例えば、Twitterと連動したキャンペーンであれば、Twitterで何が起きたかまで調べて、その情報もレポートに添えています。

古賀:弊社としてもそこまで調べる手間はかけられないので、多くの情報が簡潔にサマリーとしてまとまっているのは本当にありがたいです。




──:それは唯一無二のサービスというか、真似できない強みですね。
 
大谷:そうですね。これはまだ理想論ですが、「kamui tracker」はただインフォメーションを渡すだけのツールではなく、アンサーを出せるようなツールにしたいという気持ちがあります。
 
玉井:この機会にひとつお伺いしたいことがあるのですが、逆にゲームメーカーであるDeNAさんは今のYouTube市場をどのように捉えておられますか?
 
古賀:私の個人的な見解になりますが、YouTube上の動画量が年々増えていく現在に於いて、如何にその中で、視聴者から選ばれるコンテンツを提供できるかが、より一層問われてきているように思います。ですので、広告主側としては、その競争の中で、如何に動画を視る方に対して、魅力的で心地の良いコミュニケーションを実現できるかが課題だと考えています。
 
原田:確かに古賀さんが仰る通り、動画を見ている方の目は肥えてきていると思います。ただ、逆にそのハードルを超えられた動画は、より効果が出ているとも私は思っています。コメントを見ても「提供なのにすごく良かった」といった意見を目にすることもあります。
なので、より企業様とクリエイターが連携した企画も良いと思います。最近なら、ドラマを作ったり、色々と新しい取り組みが出てきているので、そういうところも重要になってくるのではないでしょうか。
 
──:今の視聴者にはどういったものが刺さりやすいのでしょうか?
 
古賀:人にもよるとは思いますが、YouTuberの動画を見に来る人には、そのYouTuberが好きだという理由の方が多いです。その場合、起用したYouTuberの人間性やリアリティが垣間見えるような作りになっているかどうかが重要です。例えば、『逆転オセロニア』が好きな人と、初めて『逆転オセロニア』を触った人では、視聴者に違和感なく伝えられるかどうかが大きく異なります。出演者に本音で語ってもらえるかどうかは大きいと思います。
 
大谷:動画内で使用しているキャラやデッキからも「この人は絶対にこのゲームが好きだな」と視聴者から見極められたりするので、心から好きになって「面白いよ」と言っていただけるYouTuberが出演している動画の方が反応は良くなります。
 
古賀:そうですね。だから「愛」がある動画については、より一層、視る人の心を動かすものに仕上がるのだと思います。なので、「愛」が見える動画作りにおいても、日頃そのタイトルで動画をアップロードしているプレイヤーを探せる「kamui tracker」の存在は大きいと感じています。

 
 

■ターゲットを絞らずに全世界に展開し続ける「kamui tracker

 
──:「kamui tracker」と相性の良いコンテンツとはどのようなものなのでしょうか。
 
大谷: YouTubeというプラットフォーム自体、ゲーム関連コンテンツが過半数を占めており、プロモーションとの親和性という意味では、ゲーム全般は相性がいいです。kamui trackerは、マーケターの日々の業務をサポートするためのツールなので、YouTubeをはじめとした動画マーケティングを行っている企業様であれば、ジャンルを絞ることなく、どんな企業様であっても用途は見いだせるのではないでしょうか。
 
──:ちなみに、ゲーム業界以外ではいかがですか?
 
原田:最近はスポーツ用品などが増えてきていますね。これまでYouTubeとはあまり繋がりのなかった、ナショナルクライアントと呼ばれる大企業も増えている印象はあります。
 
──:今後の展望について教えてください。
 
玉井:「kamui tracker」は、特定の事務所やYouTuberに固執することなく、国内のYouTuberの情報を持っているので、その情報を世の中に提供できるのが大きな特徴です。なので、今後も世の中に向けてYouTuber年間ランキングを始め、役に立つ面白い情報を発信していくことで、YouTuberの認知度やブランドを上げていきたいと思っています。
 
──:最後に読者の方々へメッセージをいただけますか。
 
大谷:エビリーは、「kamui tracker」という商品を通じて、『動画マーケティングをもっと簡単に、もっと賢く」をテーマに、各業界のマーケターにとって、もっと有意義なツールにできるよう、今後もアップデートを進めていきます。まだまだ試行錯誤しているところではありますが、お客様の現場でどういう課題が発生し、それを解決するために何ができるかを日々チームで協議しながら開発を進めていますので、今後も色々な方にお会いし、様々なケースに立ち会いたいと思っています。
 
また、YouTuberを起用したプロモーションを検討・実施したいという企業様がおられましたら是非、お声掛けいただけると嬉しいです。
 
古賀:『逆転オセロニア』はリリースから約2年経ちますが、今まで新規のお客様向けのマーケティングに取り組んできました。逆に言えばもう2年も経っているので、これからは既存のプレイヤーにより『逆転オセロニア』楽しんでいただく為の、遊び方の情報を伝えていけるような動画も作っていかないといけないと考えています。その場合、どういった指標を見て、どういう動画を作るかは、まだ模索している状態なので、「kamui tracker」の力を借りながら『逆転オセロニア』ならではの成功パターンを構築していければ良いなと考えております。

 
――:本日はありがとうございました。
 
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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