『あんさんぶるスターズ!(あんスタ!)』や『ラストピリオド』、『メルクストーリア(メルスト)』など、多彩なジャンルのオリジナル作品をリリースし、スマホゲーム市場で存在感を見せているHappy Elements。『あんスタ!』では新たな展開が発表されたほか、カカリアスタジオ、グリモアスタジオ、ミニアスケイプスタジオといった各スタジオの新作も制作中。
今回Social Game Infoでは、Happy Elements代表取締役CEO兼カカリアスタジオエグゼクティブプロデューサーの新井元基氏にインタビューを実施。2018年の取り組みを振り返ってもらうとともに、2019年の展望、そして新展開に向けて求めている人物像などを伺った。
■『あんスタ!』音ゲーでは3Dモデルを採用
――まず、先日発表があった『あんスタ!』の新しい展開について、あらためて教えてください。
新井氏:『あんスタ!』では、2019年度後半(2019年9月~2020年3月)を目処に『あんさんぶるスターズ!!(びっくりマーク2つ)』として大型バージョンアップし新展開をスタートします。それに合わせてリズムアクションゲーム、いわゆる音ゲーも別アプリとしてリリースします。
音ゲーは多くのファンから望む声をいただいていた反面、今のあんスタ!ゲームのユーザーさんの中には難しいゲームがあまり得意でなかったり望んでいない方もいらっしゃると考えています。そこで、既存アプリと音ゲーアプリと2つのうち好きな方を遊んでもらおうという考えです。
――音ゲーというと、これまで『あんスタ!』で実施してきたCGライブ『あんスタ!DREAM LIVE(スタライ)』のノウハウも活かされているのでしょうか。
新井氏:そうですね。ただ、ライブのモデルと全く同じではありません。ライブはプリレンダリングのCGですが、アプリではプレイに合わせて映像を変化させるためにリアルタイムレンダリングのCGとなっており、スマホで動作させるための軽量化やスマホの画面でよりよく見えるような最適化を行っています。先日発表したムービーが実際にスマホの画面に表示されて音ゲーとしてプレイできるものです。弊社は2Dイラストに軸足を置いており会社方針として「2Dと心中する」考えはこれまでと変わりませんが、この作品に限ってはアイドル達が歌って踊るシーンを表現するために3Dは外せないと考えています。
――社内でも音ゲーを作りたい声はあったのでしょうか。
新井氏:ありました。会社として全く実績が無い3Dに手を出すのは冒険でしたし、できる限りたくさんの方に遊んでいただきたいためにあんスタ!では難しくないゲーム性を採用しましたので、慎重な考えもあったのですが、やると決めたからにはたくさんの方に楽しんでいただけるようなものになるよう、社内外でしっかりした制作体制を構築していかなければと考えています。
――基本的には既存ユーザーに向けたものになるのですか?それともこれをきっかけに新しいユーザーの獲得を目指すことも?
新井氏:もちろん両方ですが、第一には既存アプリのユーザーの皆様に、引き続き『あんスタ!』の世界を楽しんでいただくための新展開となります。より長く楽しんでいただけるような作品になるよう、時代に合わせたアップデートや新たな展開を考えていきたいと考えています。新展開・音ゲーともにまだ1年ほど先の話になりますが、是非ご期待下さい。
――『あんスタ!』に関して、この1年を振り返っていかがですか?
新井氏:ユニットソングではアルバムシリーズも展開できましたし、ライブはCGライブ『スタライ』をやって、声優さんのライブ『あんさんぶるスターズ!Starry Stage(スタステ)』をやって、2.5次元の俳優さんによるライブ『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ(あんステ)フェスティバル』もやりました。それぞれで違った良さを出せたかと思います。CGライブはアイドル本人によるものですし大きな手応えがあったものの、声優さんや2.5次元俳優さんによるライブでもそれぞれならではの良さを表現することができました。
あとはアニメも絶賛制作中です。こちらはなかなか詳細が発表できず申し訳ないところなのですが、来年1月の『スタステ』の場で続報を発表予定です。なんとしてでもファンの皆様に喜んでいただけるものになるよう、練りに練って慎重に取り組んでいます。アニメは2019年に放送予定で、ゲームアプリとの連動も行っていきたいと考えています。
――アニメと言えば『メルスト』のTVアニメも放送が始まりましたよね。
新井氏:『メルスト』が持つ優しい世界観をアニメで表現できており、ユーザの皆様にも喜んでいただけている感触もあって、ひとまず胸をなで下ろしています。メルクを自力で飛ぶような設定にせざるを得なかったり、短い時間の中に収めないといけなかったりと、アニメ上での制約は大きかったのですが、その制約の中でよりよいものになるよう検討に検討を重ねました。社内でアニメを制作できるわけではなく、アニメの制作会社・製作委員会の皆様・たくさんのスタッフ・声優様の尽力によって実現しており、本当にありがたいです。
――ファンの方からは具体的にどんな反響が来ていますか?
新井氏:優しい世界観に癒やされたという声をたくさん頂いています。あと、「朝アニメみたい」というのはよく言われます。確かにメルストの世界では悪い人は出てこないし、お子様にも安心して見ていただける内容にはなっています。
――ゲームとの連動は意識しているのですか?
新井氏:『メルスト』はもともとボイスが付いていなくて、アニメによって初めてキャラクターのボイスを付けました。ゲームでは今後もボイスをつけることは考えていないのですが、ゲーム内で聴けるボイスストーリーを用意したり、アニメで登場する国に関する企画をゲームで実施したりしています。
――実際に、ゲームの盛り上がり方に変化はありましたか?
新井氏:アクティブユーザ数の増加や、ゲーム内外での盛り上がりといった大きな反響を感じています。アニメで初めて知った方はもちろん、昔プレイしていた方、名前だけは知っていたというような方にもこれを機にプレイ頂いているようです。
――『メルスト』アニメ化も実現して、さらに今後の展開をどうお考えですか?
新井氏:ゲームではメインストーリーの第一部が完結し、新展開としてタイトルも『メルクストーリア – 癒術士と鐘の音色 -』に変わって第二部が始まりました。まずはこれをしっかり展開していこうと考えています。アプリの外でも、さまざまな形で『メルスト』の世界を広げていきたいと考えています。
■新作は2Dの強みを活かした集大成に
――各スタジオでは、どんな新作が進んでいるのでしょう。
新井氏:カカリアスタジオでは『あんスタ!!』の他に2本の新作を開発中で、1本は男性向け、もう1本は女性向けです。それぞれ弊社の2Dイラストや世界観・キャラクターづくりの強みを活かし、これまでの経験を生かした弊社の集大成のような作品を目指しています。ここ1年は新作を出せていなかったですし、これらのタイトルもまだ制作の序盤ですのでまだまだ時間がかかりそうですが、是非ご期待下さい。
――ジャンルなどの詳細は聞くことは…。
新井氏:どちらのタイトルもまだ詳細をお伝えするのは難しいです。続報をお待ちください。
――グリモアスタジオ、ミニアスケイプスタジオのほうはいかがでしょうか。
新井氏:どちらも新作を開発中です。グリモアスタジオは「中二病」と言いますか“らしさ”が溢れたタイトルを開発中です。
ミニアスケイプスタジオでは、会社HP上でも開発中のクリエイティブやゲーム画面を少し公開しているのですが「剥き出しの面白さ」を目指して、新感覚の3Dアクションに取り組んでます。目指していた遊びも形になりつつあり、新しい体験と遊びの創出に手応えを感じています。
また、レアリティやユーザーレベルといったゲームデザイン部分に関しても、よくあるものを採用するのではなく、新しいゲームデザインに取り組んでいます。各スタジオでそれぞれ開発しているものに特色が出ていて面白いです。
――ちなみに、昨今のアプリゲーム市場をどう見ていますか?
新井氏:ここ2年くらいで状況が変わり、新作が出てきてもあまり話題にならないようなことがあったり、市場として頭打ちの印象があるのが正直なところです。さらに中国や韓国のゲームで日本で大きな成功を収めるものが複数出てきました。日本のテイストを完全にキャッチアップできているものが出てきたのが大きいと感じています。
――海外といえば、グループ会社のHappy Elements Asia Pacificの中国のバーチャルアイドル展開というのも気になります。
新井氏:よくご存じですね!これはカカリア・グリモア・ミニアスケイプの取り組みではないのですが、Happy Elementsグループでこれまで研究開発を重ねてきたもので、先日中国でリリースされました。アイドルに選抜されるべく、5人のアイドルの日常や訓練を描くアニメーション、生放送等のコンテンツでサポーターにアピールし、アプリ上でサポーターの応援や投票によって、3人が選抜されるリアルタイムバーチャルアイドル育成企画です。手前味噌になりますが、見た目のかわいさはもちろん、日本だと1人か2人で動画に登場するものが中心ですが、5人で登場するなど、技術的なところでも目を引くものになっています。
――スタジオも複数あり、さらに中国でも独自の展開を見せている状況で、御社の体制についてもあらためて教えてもらえますか。
新井氏:それぞれが基本独立して動いていて、それぞれが自分たちの作品に注力できている状況です。あまり規模を大きくしたいという考えは無いのですが、新規のプロジェクトも増え、リソースが十分でないのも事実です。
――足りていないスタッフというと、具体的にどのセクションになりますか?
新井氏:ゲームをつくるスタッフはもちろんですが、会社の運営を支えるスタッフも足りません。会社の規模が大きくなっていて管理部門も強化が急務になっています。ゲームづくりの方は、イラストレーター、アニメーションデザイナー、プログラマー、プランナー、ディレクター、グラフィックデザイナー、ライター、3Dデザイナー、マーケティング、会社の運営の方は、総務、人事、経営企画など、とにかく多岐にわたります。
その中でも、特に実力のあるイラストレーター、エフェクトかキャラクターモーションが得意なアニメーションデザイナー、音ゲーの経験が豊富なプランナー、モデラーや演出が得意な3Dデザイナーの方を急募しています。
――どんな人物が活躍しやすいと考えていますか。
新井氏:どんな職種でも主体的にゲームづくりに関わりたいまたはそれをサポートしたいと思う気持ちが大事です。弊社では職種毎に自分の領域だけを担当するのではなく、タイトル毎の事業部制になっており、メンバー全員が担当するゲームづくり全般に主体的に集中して関われるスタイルです。プランナーやマネージャーが決めたことをただ実行するのではなく、ゲームづくりに積極的に関わっていきたい方が活躍できると考えています。
――スタジオごとに働き方も変わってくるのですか?
新井氏:規模感という点では、京都のカカリアだけで170人、東京のグリモアとミニアスケイプもそれぞれ20-30人になっています。制度なども細かいところになると特色があるというか、それぞれがメンバーにあったやりやすいやり方になるようにしています。
――現在のスタッフにはどんな人が多いですか?
新井氏:学生時代からアルバイトで働いていてそのまま社員になったという人も多く、若いスタッフが多くなっています。セルフマネージメントを基本としたプレイヤー中心の実力主義で、誰にも十分活躍のチャンスがある環境だと考えています。現場を知らないマネージャーによる的外れな判断や理不尽なルールが無く、自分たちで正しいと思う判断がすぐにできる組織、一人一人の個性を最大限活かせる少数精鋭の組織づくりを目指しています。
――最後に、Happy Elementsの今後の展望についてお聞かせください。
新井氏:熱狂的に愛されるようなオリジナルタイトルを継続的にリリースすることを目指しています。少しづつ組織の規模も大きくなってきており、組織運営においては難しい面も増えてきていますが、少数精鋭の良さは保ったまま思う存分ものづくりできるクリエイターにとって理想的な環境を維持していきたいです。
――ありがとうございました。