【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>グループとしてゲーム事業のさらなる強化を目指し、ゲーム運営力をより一層高めるため、2015年に設立されたDeNA Games Tokyo(略称DGT)。
そこで「DGT特集」と題し、DeNA Games Tokyoのキーマン達へのインタビューを実施する。Vol.1の代表取締役社長・川口俊氏、Vol.2の採用・広報チーム マネージャー・徳田悠輔氏、Vol.3の技術部 部長・平岡洋祐氏に続き、最後のインタビューは企画部 部長の佐藤亮太氏だ。
佐藤氏には、ゲーム運営プランナーを統括する立場から、良いプランナーの条件や必要なスキルを身に付けるための育成の仕組みなど、ゲーム運営プランナーのためにどのような環境を用意しているのか、お話を伺った。
株式会社DeNA Games Tokyo
企画部 部長
佐藤 亮太 氏
――:はじめに佐藤さんの経歴を教えてください。
僕は2015年にDeNAに新卒として入社しました。元々は自分で事業を起こすことに興味があり、学生時代に起業していたんですが、一度、事業を作っている会社に就職して色々と学ぼうと思い、DeNAに入社しました。
入社後、ゲームの事業部に配属されたのですが、たまたま僕自身ゲーマーだったので、好きなことがそのまま仕事に繋がって良かったと思っています(笑)。
その後、IPタイトルのプロデューサー、ディレクターとゲーム運営の仕事を経験してきました。DGTとの関わりは、DeNAからDGTへ移管するタイトルのプランナー、プロデューサーとしての対応がきっかけです。そしてタイトルの移管完了後もDGTに残り、企画部の部長を任されるというキャリアを重ねてきました。
――:プロデューサー、プランナーとしてゲームに携われてきた佐藤さんが考える、ゲーム運営における良いプランナーの条件とは何でしょうか?
ゲームが好きということは前提で、シンプルに言うと"おもしろい体験"が作れること。かつ、ゲーム運営の場合はサービスの先にいらっしゃる"プレイヤーと真剣に向き合う"こと。この2つが条件かなと思ってます。
"おもしろい体験"を作るって難しくて、何をもって"おもしろい体験"なのかを考えたとき、どうしても主観的になってしまう。考え方、作り方は人それぞれかなと思うんですけど、誰にでも日常生活の中で「こういうことっておもしろいな」という感覚はあるはずなんです。
そのおもしろさの要素みたいなものをプロダクトに反映させるとしたらどうすれば良いのか。反映させるために、おもしろさを分解して抽象化、言語化して考えられることが重要な気がします。
――:常に色々なことに興味を持つというか、おもしろいと思ったものに対してなぜおもしろいのか意識して考えることが必要だと。
そう思います。良いゲームに触るというのもすごく勉強になると思いますし、ゲーム以外のエンタメや日頃自分が興味を持っている領域で"楽しい"とか"惹かれる"と思うことに対して、"何でおもしろいのか"というところまで深く考えられたら良いと思いますね。
その上で、プレイヤーと目線を合わせて真剣に向き合えるかどうか。そのゲームが好きで遊んでくださっているプレイヤーのことを考えず、"おもしろい体験"が独りよがりになってしまってはいけません。そこは両方の視点で物事を考えられると良いですね。
――:プレイヤーと向き合うという点で、DGTではゲームを運営していく中でUXについてはどのような考えを持って設定されているのでしょうか。
各プロダクトで、プレイヤーのハマり度合い、熱量の度合いというのは区分されると思っています。やはりすごくハマってくれている、一番のファンでいてくれているプレイヤーがそのゲームを"なぜそこまで魅力に思ってくれているのか?"、"なぜずっと続けてくれているのか?"というところで真剣に向き合って、深く考えていくようにしています。
またDGTのタイトル全体としても、"このタイトルは何がおもしろいのか"、"どういう体験がこのタイトルらしさなのか"、"このタイトルの一番のファンでいてくれるプレイヤーには何が刺さっているのか"、というところで真剣に向き合い、開発チームの中で議論し「これだよね」というところは言語化してブレないようにしています。
例えば戦国時代をテーマにしたゲームだったとしても、史実を再現した硬派なものか、それとも姫武将のようなキャラ立ちさせたものかで違うじゃないですか。ゲーム性にしても、サクサク敵を蹴散らす爽快感なのか、それとも歯応えのある戦略重視なのか。何がそのタイトルらしさかというのはポリシーによるところなんです。
プレイヤーにどういう体験を届けたいかというのがベースにあって、そこから全てが決まっていくという形です。だからポリシーをどこに置くか、そのポリシーが今のプレイヤーとマッチしているのかというのはとても大事な考え方ですし、我々も慎重に議論しながら進めています。
――:おもしろい体験、UX以外でプランナーとして大事なことはありますか。
プランナーは専門スキルみたいなものは特にありません。結局、おもしろいことを考えついたとしてもエンジニアやデザイナーを巻き込んでいくことになりますから、「これはおもしろいから作ってプレイヤーに届けましょう」とリーダーシップをとって開発を進めていくことはどうしても必要になってきます。なので、何で自分がそれを作りたいと思うのか、何でこれを作るとプレイヤーのために良いと思うのかを、熱意を持ってメンバーに説明できるかはすごく大事です。
あとはそもそも遊びを作るって難しいことなので、作っていると絶対に壁にぶち当たるんです。企画段階でプランナーの経験値不足から考え切れていなかったところが出てしまったり、思ったよりも手触り感が悪かったり、バランス調整ができる想定だったのにぶっ壊れ気味のパターンが出てきてしまったりといったことは作っている中で出てくるもの。
そういうときにピタっと手が止まってしまい「できません」とならずに、何とかしてプレイヤーに届ける方法はないかと最後まで食らいついて作り切る。そういう状況になると開発チーム全体がしんどいですが、そこでリーダーシップをとって作り切るところまでみんなを引っ張れるかは大事だと思いますね。
――:良いプランナーを育てるためにDGTではどのような取り組みをしているのでしょうか。
まず良いプランナーはゲームが好きであることと、先程お話したようにおもしろい体験が作れ、プレイヤーと目線を合わせられるということは絶対に必要なベースだと思っています。そうじゃないと、そもそも土台がズレたモノづくりが始まってしまうので。
その上で、やはりモノづくり自体は難しいことです。僕もこれまでの経験を振り返ってみると、キャリアの最初に作っていたモノって、自分ではおもしろいと思って作っていたつもりでも、今考えると残念なものを作ってしまったなというものもあります。
そういった、どのくらいモノづくりをしてきたか、みたいな経験値、一個一個のモノづくりの中でどれくらい真剣に最後まで考え切って作ったかということがとても大事なのかなと思います。なので、まずそういうチャレンジングだけどモノづくりの打席に立てるか、立たせる環境を用意できるか、というところはとても大事。どんなに座学の勉強をしたとしても、モノづくりを経験した人にしかわからない感覚ってありますから。もちろん、自己流で自作ゲームに取り組むことも良いんですけど、多くのプレイヤーの反応があるというのはやはり生のプロダクトならではの経験。
打席に立つことは大体しんどいことですが、ゲーム開発の壁みたいなものに当たりながら、最後まで作り切る。そういう打席に1度でも立てば、学んで得られるものは大きいはずです。プレイヤーから厳しいご意見をいただくことはありますが、その声も含めてこれはダメだった、でもここは良かったと素直に受け止めて、次の開発に活かしていくというサイクルを回せるというのがすごく大事かなと思います。
――:そういった打席を用意する環境はDGTにはあるのでしょうか。
はい。DGTでは打席に立ってもらうための環境を整えています。
打席があるときには、立つことによってプラスになるような人をどんどん打席に立たせていくという文化があります。また、開発経験の浅いメンバーは開発経験のあるメンバーがサポートに付くという形でモノづくりを進めることが多いです。
――:開発経験の浅いメンバーを開発経験のあるメンバーがサポートしつつ、打席に立つチャレンジをしてもらうことで成長に繋がると。
その通りです。とはいえ経験の浅いメンバーは、まぁ最初は大体ボコボコにされます(笑)。開発メンバーからもダメなものはダメだと言われますし、何よりプレイヤーから厳しいご意見をいただくと思います。それらを受け止めて成長してもらうという形ですね。
あともう1つあるのですが、DGTの運営タイトルは規模が大きく、プレイヤーからの期待値も高いです。それに、まだまだ新しい機能を開発しているタイトルが多いです。ゲーム運営というと保守点検のように開発せずメンテナンスするというイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ゲーム運営も開発は続けています。
新しいおもしろさを提案してプレイヤーの期待を満たしていきたいので、事業的にもどんどん新しい、おもしろいことを考えてもらう必要があるという環境です。だからこそ打席があるとも言ますね。
――:そうした環境の中で、実際にプランナーの皆さんが考えたアイデアが実現していくわけですね。
そうですね。嬉しいことに具体例を挙げるとたくさんあり過ぎるんですが(笑)、最近では『怪盗ロワイヤル』の企画がありました。2019年で10周年を迎える長期運営タイトルですが、まだまだ攻めてます。
これまでも要所要所でコラボをしてきたタイトルですが、今の運営メンバーの中にコラボに注力しているメンバーがいて、どんどん攻めたコラボを仕掛けているんです。例えばDGTの5タイトルと高知県とのコラボ(関連記事)だったり、キリンの『力水』とのコラボだったり。力水については、私も初めて聞いたときに「何で?」と思いましたが、「おもしろいからやってみよう」というプロデューサーのノリで実現しました(笑)
――:そういえば『怪盗ロワイヤル』はグリーさんの『探検ドリランド』とのコラボもありましたよね。あれは感動しました(笑)
ありがとうございます。今もなお切磋琢磨しているタイトル同士ですが、お互いに「コラボをしませんか?」ということで実現して、プレイヤーからも好評でした(関連記事)。これも「コラボを実現させたい!」という熱いメンバーがいて実現しました。他のタイトルも同様に、「こんなことをやりたい」というメンバーがいるとガラッとゲームの方向が変わることがありますね。
基本的な運営スタイルはありますが、「コラボやタイトル横断のキャンペーンも企画したい」というメンバーの熱量によって、これまでの運営スタイルになかったイベントが企画されています。
どういう風にイベントを打ち出していくかはタイトルによって自由度があるので、おもしろいことがやりたいと思ってそれがプレイヤーに受け入れられそうであればどんどん実現させていく。きっとこれをやるとおもしろいはずだという熱い想いがあって、最後まで実行し切れる人であれば、それは取り組みとしてちゃんと着地します。
――:DGTの企画部のビジョンをどのように考えていますか?
シンプルですが、業界の中でもっともっとクオリティの高いゲーム運営ができる組織にしていきたいなと思っています。
モバイルゲーム業界は年々進化のペースが速く、数年前では考えられないくらいのクオリティになっています。その中でプレイヤーに、「これは新しい」、「このおもしろさははじめて!」と思ってもらえるようなものを届けていきたいです。生半可なことでは満足してもらえないのも当然ですし、どこかで見たような企画なんて反響がなかったりすると思います。
そういう状況の中で、我々は業界の成長のペースに絶対に負けたくありませんし、常にプレイヤーの期待を越えていきたいんです。1年後も2年後も10年後もDGTはおもしろいこと、プレイヤーと目線のあった良いプランニングがされたゲームを届けるというところを担保したいし、そうするためにどうすれば良いかを常に考えています。
これからゲームは段々と総合エンターテインメントの中心になってくると思います。これまではゲームの中の、しかも自分が担当している1タイトルに閉じた生態系が成り立っていればOKでしたが、今はゲームの外でゲームを軸とした色々な媒体が出てきています。プレイヤーの日常生活の中で、どれだけエンタメとしての刺激を我々が届けていけるか。今後はそこも含めた運営になってくると思います。
――:DGTの成長のために佐藤さんが共に働きたいのはどのような人物像でしょうか。
繰り返しにはなってしまいますが、ゲームが好きで、プレイヤーと向き合うマインドを持った方。加えて、隅々まで考えつくしてガッツと熱量を持って作り切ることができる、思考力も精神力もタフな方ですね。
DGTはゲーム運営会社として、タイトルのポテンシャルをもっともっと引き出せると思っていますし、DGTのゲーム運営力を向させるためにもどんどん攻めたことをやっていかなければなりません。そういうことも含めて、どんどんチャレンジしてみたいと思っている方だと楽しく働けるかなと思います。
また、そういう方でしたらゲーム業界未経験の方でも活躍できると思います。当然、最初に「そもそもゲームってどう作るの?」というキャッチアップは一定必要になってくるとは思いますが、本質的には今挙げた要素を持っていれば未経験の方でも問題はないですね。
――:未経験でも活躍できる理由はどういったところにあるのでしょうか?
そうですね。DeNAの話からになってしまうのですが、そもそもDeNAはゲームクリエイターではなく、どちらかといえばビジネスマンが多い会社です。
元々eコマースをやっていた会社がMobageを始めて、ゲーム事業の好調を背景にビジネスマン枠で採用された人もゲームに携わるようになりました。ゲームに触れていなかった人たちでも、ちゃんと教えて育成し、ゲームを作れるようにしようという文化がDeNAにあったんです。DGTもその育成文化を継承しているという点はまず1つ、活躍できる要因としてあると思います。
あともう1つ。これは人によって考え方が違うと思うんですが、やはりプレイヤーがいてくれるサービスで、プレイヤーからのフィードバックをいただき、モノを作って出すという経験ができるという点もあると思います。
そういう意味で実戦経験ってすごく人を成長させると思っていて、未経験でスタートをしたとして、経験者と比べて多少スタートラインに差があっても、素早くPDCAを回すことで追い付き、追い越せるということはあるんじゃないかなと思います。打席数がある上に打席が回ってくるスピードも速いんです。
もちろん経験者の方が持っている経験は貴重なものですが、どちらの方にしてもゲームの運営という環境ってプランニングを鍛える上では良いこと。やはり開発のスパンも新規を作ることに比べると短いですし、大きな開発でも半年くらいでリリースされるので、長期のスパンで作っている新規タイトルの開発と比べると、PDCAを回すサイクルは早いので、成長には良い環境だと思います。
――:最後に読者へメッセージをお願いします。
これは、僕がプランナー時代にお世話になった方が話してくれたことです。「ゲームを遊ぶことが好きな方はたくさんいると思うんですけど、ゲームを作ることが一番おもしろい」と。僕自身も、自分で遊ぶのはもちろんおもしろいと思いますが、作ることがやっぱり一番おもしろいと感じます。それは、モノづくりのしんどさも含めてです。
例えば同じバトルについて、遊ぶ側はリリースされた1パターンのみ体験するところを、作る側はそれこそ50パターンくらいアイデアを出しています。考える量が増えますし、その中からチョイスしたプランがハマっておもしろいゲームができたときの感動はやはり何物にも代えられません。
ですから、そういう風な考えを持っていて、楽しくやりたいなと思っている方がプランナーになってくれると良いなと思っています。
▼DGT特集バックナンバー▼
・【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
・【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
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・【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
そこで「DGT特集」と題し、DeNA Games Tokyoのキーマン達へのインタビューを実施する。Vol.1の代表取締役社長・川口俊氏、Vol.2の採用・広報チーム マネージャー・徳田悠輔氏、Vol.3の技術部 部長・平岡洋祐氏に続き、最後のインタビューは企画部 部長の佐藤亮太氏だ。
佐藤氏には、ゲーム運営プランナーを統括する立場から、良いプランナーの条件や必要なスキルを身に付けるための育成の仕組みなど、ゲーム運営プランナーのためにどのような環境を用意しているのか、お話を伺った。
株式会社DeNA Games Tokyo
企画部 部長
佐藤 亮太 氏
■いいプランナーの条件は「おもしろい体験が作れ、プレイヤーと真剣に向き合える」こと
――:はじめに佐藤さんの経歴を教えてください。
僕は2015年にDeNAに新卒として入社しました。元々は自分で事業を起こすことに興味があり、学生時代に起業していたんですが、一度、事業を作っている会社に就職して色々と学ぼうと思い、DeNAに入社しました。
入社後、ゲームの事業部に配属されたのですが、たまたま僕自身ゲーマーだったので、好きなことがそのまま仕事に繋がって良かったと思っています(笑)。
その後、IPタイトルのプロデューサー、ディレクターとゲーム運営の仕事を経験してきました。DGTとの関わりは、DeNAからDGTへ移管するタイトルのプランナー、プロデューサーとしての対応がきっかけです。そしてタイトルの移管完了後もDGTに残り、企画部の部長を任されるというキャリアを重ねてきました。
――:プロデューサー、プランナーとしてゲームに携われてきた佐藤さんが考える、ゲーム運営における良いプランナーの条件とは何でしょうか?
ゲームが好きということは前提で、シンプルに言うと"おもしろい体験"が作れること。かつ、ゲーム運営の場合はサービスの先にいらっしゃる"プレイヤーと真剣に向き合う"こと。この2つが条件かなと思ってます。
"おもしろい体験"を作るって難しくて、何をもって"おもしろい体験"なのかを考えたとき、どうしても主観的になってしまう。考え方、作り方は人それぞれかなと思うんですけど、誰にでも日常生活の中で「こういうことっておもしろいな」という感覚はあるはずなんです。
そのおもしろさの要素みたいなものをプロダクトに反映させるとしたらどうすれば良いのか。反映させるために、おもしろさを分解して抽象化、言語化して考えられることが重要な気がします。
――:常に色々なことに興味を持つというか、おもしろいと思ったものに対してなぜおもしろいのか意識して考えることが必要だと。
そう思います。良いゲームに触るというのもすごく勉強になると思いますし、ゲーム以外のエンタメや日頃自分が興味を持っている領域で"楽しい"とか"惹かれる"と思うことに対して、"何でおもしろいのか"というところまで深く考えられたら良いと思いますね。
その上で、プレイヤーと目線を合わせて真剣に向き合えるかどうか。そのゲームが好きで遊んでくださっているプレイヤーのことを考えず、"おもしろい体験"が独りよがりになってしまってはいけません。そこは両方の視点で物事を考えられると良いですね。
――:プレイヤーと向き合うという点で、DGTではゲームを運営していく中でUXについてはどのような考えを持って設定されているのでしょうか。
各プロダクトで、プレイヤーのハマり度合い、熱量の度合いというのは区分されると思っています。やはりすごくハマってくれている、一番のファンでいてくれているプレイヤーがそのゲームを"なぜそこまで魅力に思ってくれているのか?"、"なぜずっと続けてくれているのか?"というところで真剣に向き合って、深く考えていくようにしています。
またDGTのタイトル全体としても、"このタイトルは何がおもしろいのか"、"どういう体験がこのタイトルらしさなのか"、"このタイトルの一番のファンでいてくれるプレイヤーには何が刺さっているのか"、というところで真剣に向き合い、開発チームの中で議論し「これだよね」というところは言語化してブレないようにしています。
例えば戦国時代をテーマにしたゲームだったとしても、史実を再現した硬派なものか、それとも姫武将のようなキャラ立ちさせたものかで違うじゃないですか。ゲーム性にしても、サクサク敵を蹴散らす爽快感なのか、それとも歯応えのある戦略重視なのか。何がそのタイトルらしさかというのはポリシーによるところなんです。
プレイヤーにどういう体験を届けたいかというのがベースにあって、そこから全てが決まっていくという形です。だからポリシーをどこに置くか、そのポリシーが今のプレイヤーとマッチしているのかというのはとても大事な考え方ですし、我々も慎重に議論しながら進めています。
――:おもしろい体験、UX以外でプランナーとして大事なことはありますか。
プランナーは専門スキルみたいなものは特にありません。結局、おもしろいことを考えついたとしてもエンジニアやデザイナーを巻き込んでいくことになりますから、「これはおもしろいから作ってプレイヤーに届けましょう」とリーダーシップをとって開発を進めていくことはどうしても必要になってきます。なので、何で自分がそれを作りたいと思うのか、何でこれを作るとプレイヤーのために良いと思うのかを、熱意を持ってメンバーに説明できるかはすごく大事です。
あとはそもそも遊びを作るって難しいことなので、作っていると絶対に壁にぶち当たるんです。企画段階でプランナーの経験値不足から考え切れていなかったところが出てしまったり、思ったよりも手触り感が悪かったり、バランス調整ができる想定だったのにぶっ壊れ気味のパターンが出てきてしまったりといったことは作っている中で出てくるもの。
そういうときにピタっと手が止まってしまい「できません」とならずに、何とかしてプレイヤーに届ける方法はないかと最後まで食らいついて作り切る。そういう状況になると開発チーム全体がしんどいですが、そこでリーダーシップをとって作り切るところまでみんなを引っ張れるかは大事だと思いますね。
■ゲームづくりに必要なのは、打席に立つ機会と立たせられる環境
――:良いプランナーを育てるためにDGTではどのような取り組みをしているのでしょうか。
まず良いプランナーはゲームが好きであることと、先程お話したようにおもしろい体験が作れ、プレイヤーと目線を合わせられるということは絶対に必要なベースだと思っています。そうじゃないと、そもそも土台がズレたモノづくりが始まってしまうので。
その上で、やはりモノづくり自体は難しいことです。僕もこれまでの経験を振り返ってみると、キャリアの最初に作っていたモノって、自分ではおもしろいと思って作っていたつもりでも、今考えると残念なものを作ってしまったなというものもあります。
そういった、どのくらいモノづくりをしてきたか、みたいな経験値、一個一個のモノづくりの中でどれくらい真剣に最後まで考え切って作ったかということがとても大事なのかなと思います。なので、まずそういうチャレンジングだけどモノづくりの打席に立てるか、立たせる環境を用意できるか、というところはとても大事。どんなに座学の勉強をしたとしても、モノづくりを経験した人にしかわからない感覚ってありますから。もちろん、自己流で自作ゲームに取り組むことも良いんですけど、多くのプレイヤーの反応があるというのはやはり生のプロダクトならではの経験。
打席に立つことは大体しんどいことですが、ゲーム開発の壁みたいなものに当たりながら、最後まで作り切る。そういう打席に1度でも立てば、学んで得られるものは大きいはずです。プレイヤーから厳しいご意見をいただくことはありますが、その声も含めてこれはダメだった、でもここは良かったと素直に受け止めて、次の開発に活かしていくというサイクルを回せるというのがすごく大事かなと思います。
――:そういった打席を用意する環境はDGTにはあるのでしょうか。
はい。DGTでは打席に立ってもらうための環境を整えています。
打席があるときには、立つことによってプラスになるような人をどんどん打席に立たせていくという文化があります。また、開発経験の浅いメンバーは開発経験のあるメンバーがサポートに付くという形でモノづくりを進めることが多いです。
――:開発経験の浅いメンバーを開発経験のあるメンバーがサポートしつつ、打席に立つチャレンジをしてもらうことで成長に繋がると。
その通りです。とはいえ経験の浅いメンバーは、まぁ最初は大体ボコボコにされます(笑)。開発メンバーからもダメなものはダメだと言われますし、何よりプレイヤーから厳しいご意見をいただくと思います。それらを受け止めて成長してもらうという形ですね。
あともう1つあるのですが、DGTの運営タイトルは規模が大きく、プレイヤーからの期待値も高いです。それに、まだまだ新しい機能を開発しているタイトルが多いです。ゲーム運営というと保守点検のように開発せずメンテナンスするというイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ゲーム運営も開発は続けています。
新しいおもしろさを提案してプレイヤーの期待を満たしていきたいので、事業的にもどんどん新しい、おもしろいことを考えてもらう必要があるという環境です。だからこそ打席があるとも言ますね。
■10周年の『怪盗ロワイヤル』も熱量を持って攻め続ける
――:そうした環境の中で、実際にプランナーの皆さんが考えたアイデアが実現していくわけですね。
そうですね。嬉しいことに具体例を挙げるとたくさんあり過ぎるんですが(笑)、最近では『怪盗ロワイヤル』の企画がありました。2019年で10周年を迎える長期運営タイトルですが、まだまだ攻めてます。
これまでも要所要所でコラボをしてきたタイトルですが、今の運営メンバーの中にコラボに注力しているメンバーがいて、どんどん攻めたコラボを仕掛けているんです。例えばDGTの5タイトルと高知県とのコラボ(関連記事)だったり、キリンの『力水』とのコラボだったり。力水については、私も初めて聞いたときに「何で?」と思いましたが、「おもしろいからやってみよう」というプロデューサーのノリで実現しました(笑)
――:そういえば『怪盗ロワイヤル』はグリーさんの『探検ドリランド』とのコラボもありましたよね。あれは感動しました(笑)
ありがとうございます。今もなお切磋琢磨しているタイトル同士ですが、お互いに「コラボをしませんか?」ということで実現して、プレイヤーからも好評でした(関連記事)。これも「コラボを実現させたい!」という熱いメンバーがいて実現しました。他のタイトルも同様に、「こんなことをやりたい」というメンバーがいるとガラッとゲームの方向が変わることがありますね。
基本的な運営スタイルはありますが、「コラボやタイトル横断のキャンペーンも企画したい」というメンバーの熱量によって、これまでの運営スタイルになかったイベントが企画されています。
どういう風にイベントを打ち出していくかはタイトルによって自由度があるので、おもしろいことがやりたいと思ってそれがプレイヤーに受け入れられそうであればどんどん実現させていく。きっとこれをやるとおもしろいはずだという熱い想いがあって、最後まで実行し切れる人であれば、それは取り組みとしてちゃんと着地します。
■常にプレイヤーの期待を越えていきたい
――:DGTの企画部のビジョンをどのように考えていますか?
シンプルですが、業界の中でもっともっとクオリティの高いゲーム運営ができる組織にしていきたいなと思っています。
モバイルゲーム業界は年々進化のペースが速く、数年前では考えられないくらいのクオリティになっています。その中でプレイヤーに、「これは新しい」、「このおもしろさははじめて!」と思ってもらえるようなものを届けていきたいです。生半可なことでは満足してもらえないのも当然ですし、どこかで見たような企画なんて反響がなかったりすると思います。
そういう状況の中で、我々は業界の成長のペースに絶対に負けたくありませんし、常にプレイヤーの期待を越えていきたいんです。1年後も2年後も10年後もDGTはおもしろいこと、プレイヤーと目線のあった良いプランニングがされたゲームを届けるというところを担保したいし、そうするためにどうすれば良いかを常に考えています。
これからゲームは段々と総合エンターテインメントの中心になってくると思います。これまではゲームの中の、しかも自分が担当している1タイトルに閉じた生態系が成り立っていればOKでしたが、今はゲームの外でゲームを軸とした色々な媒体が出てきています。プレイヤーの日常生活の中で、どれだけエンタメとしての刺激を我々が届けていけるか。今後はそこも含めた運営になってくると思います。
――:DGTの成長のために佐藤さんが共に働きたいのはどのような人物像でしょうか。
繰り返しにはなってしまいますが、ゲームが好きで、プレイヤーと向き合うマインドを持った方。加えて、隅々まで考えつくしてガッツと熱量を持って作り切ることができる、思考力も精神力もタフな方ですね。
DGTはゲーム運営会社として、タイトルのポテンシャルをもっともっと引き出せると思っていますし、DGTのゲーム運営力を向させるためにもどんどん攻めたことをやっていかなければなりません。そういうことも含めて、どんどんチャレンジしてみたいと思っている方だと楽しく働けるかなと思います。
また、そういう方でしたらゲーム業界未経験の方でも活躍できると思います。当然、最初に「そもそもゲームってどう作るの?」というキャッチアップは一定必要になってくるとは思いますが、本質的には今挙げた要素を持っていれば未経験の方でも問題はないですね。
――:未経験でも活躍できる理由はどういったところにあるのでしょうか?
そうですね。DeNAの話からになってしまうのですが、そもそもDeNAはゲームクリエイターではなく、どちらかといえばビジネスマンが多い会社です。
元々eコマースをやっていた会社がMobageを始めて、ゲーム事業の好調を背景にビジネスマン枠で採用された人もゲームに携わるようになりました。ゲームに触れていなかった人たちでも、ちゃんと教えて育成し、ゲームを作れるようにしようという文化がDeNAにあったんです。DGTもその育成文化を継承しているという点はまず1つ、活躍できる要因としてあると思います。
あともう1つ。これは人によって考え方が違うと思うんですが、やはりプレイヤーがいてくれるサービスで、プレイヤーからのフィードバックをいただき、モノを作って出すという経験ができるという点もあると思います。
そういう意味で実戦経験ってすごく人を成長させると思っていて、未経験でスタートをしたとして、経験者と比べて多少スタートラインに差があっても、素早くPDCAを回すことで追い付き、追い越せるということはあるんじゃないかなと思います。打席数がある上に打席が回ってくるスピードも速いんです。
もちろん経験者の方が持っている経験は貴重なものですが、どちらの方にしてもゲームの運営という環境ってプランニングを鍛える上では良いこと。やはり開発のスパンも新規を作ることに比べると短いですし、大きな開発でも半年くらいでリリースされるので、長期のスパンで作っている新規タイトルの開発と比べると、PDCAを回すサイクルは早いので、成長には良い環境だと思います。
――:最後に読者へメッセージをお願いします。
これは、僕がプランナー時代にお世話になった方が話してくれたことです。「ゲームを遊ぶことが好きな方はたくさんいると思うんですけど、ゲームを作ることが一番おもしろい」と。僕自身も、自分で遊ぶのはもちろんおもしろいと思いますが、作ることがやっぱり一番おもしろいと感じます。それは、モノづくりのしんどさも含めてです。
例えば同じバトルについて、遊ぶ側はリリースされた1パターンのみ体験するところを、作る側はそれこそ50パターンくらいアイデアを出しています。考える量が増えますし、その中からチョイスしたプランがハマっておもしろいゲームができたときの感動はやはり何物にも代えられません。
ですから、そういう風な考えを持っていて、楽しくやりたいなと思っている方がプランナーになってくれると良いなと思っています。
▼DGT特集バックナンバー▼
・【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
・【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
・【DGT特集Vol.3】大切なのは言語やスキルではなく"おもしろさに関与する"姿勢…技術部部長が語るゲーム運営エンジニアに必要なこと
・【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
会社情報
- 会社名
- DeNA Games Tokyo
- 設立
- 2015年4月
- 代表者
- 代表取締役社長 川口 俊