【サイバーエージェント決算説明会】「とりあえず一安心」 需要期とコスト削減でネット広告とゲームが収益回復 AbemaTVもWAU1000万視野に



サイバーエージェント<4751>は、4月24日、中間期(2018年10月~2019年3月)の連結決算を発表するとともに、証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高2281億8400万円(前年同期比10.0%増)、営業利益139億4900万円(同29.3%減)、経常利益137億2900万円(同26.1%減)、最終利益10億8700万円(同74.4%減)と増収・減益での着地となった。

第2四半期(1~3月)をみると、売上高1173億円(前年同期比で5.8%増)、営業利益86億円(同60.9%増)、経常利益85億円(同65.8%増)、最終利益1億円(同81.4%減)となった。

売上高は過去最高を更新した。ネット広告の売上が過去最高を更新し、ゲームについても『グランブルーファンタジー』など周年タイトルがけん引し、過去2番めの規模の売上を達成した。Abemaを中心とするメディア事業の収益も右肩上がりで伸びている。また営業利益については、柱となるネット広告とゲームの復調で、前年同期の水準には及ばないものの、前四半期から大きく回復した。コストコントールが効いた。
 


また、いずれも最終利益が大きく減っているが、メディア事業と広告事業で終了予定のサービスの減損損失28億円を計上するほか、本社移転の費用12億5000万円を含め、合計45億6000万円の特別損失を計上したためだ。AbemaTVが連結納税対象外であることや、Cygamesの少数株主持分の影響もあったという。

決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は「とりあえず一安心といったところ」と振り返った。第1四半期は投資事業で利益を作るほど厳しい状況だったが、「本業でもともと出していた水準の利益まで回復した」という。「規模の大きい会社になってきたので慌てて対応しても、すぐに直るものではないが、原価や販管費の見直しなどの効果が出てきた」と語った。

続いてセグメント別の状況を見ていこう。


 
■ネット広告はナショナルクライアントの取り込みが奏功

インターネット広告事業の売上高が前年同期比10.8%増の674億円と過去最高を更新した。また、クリエイティブやAIなど先行投資を行っているものの、営業利益も56億円と過去2番めの規模となった。
 

同社では、例年、この四半期は広告の需要期であることに加えて、ナショナルクライアント向けの受注が伸びたという。前年同期を100としたとき、化粧品が153、メーカーが167、自動車・バイクが184と大きく伸びた。
 

 
ナショナルクライアントは、これまでテレビCMを中心とした広告が中心でネット取引の取引実績が少なかったが、「ネット広告に力を入れるとき、コンペでお声がけいただくことが増えている」(藤田晋社長)。受注が増えている要因として、「長年の経験とノウハウにもとづく運用力が評価されている」そうだ。

ナショナルクライアントは、ブランドを守る必要があるため、コンテンツに問題のあるメディアに広告が掲載されることを嫌がる。このためネット広告に一気にシフトするわけではなく、様子を見ながら少しずつ比率を増やしているという。景気動向次第だが、今後も出稿量が増える見込みで、高い成長を目指すことができるとした。


 
■ゲーム事業は周年タイトルが業績をけん引

売上高399億円(同9.8%増)、営業利益74億円(同134.1%増)と営業利益が大きく伸びた。

『グランブルーファンタジー』をはじめ、『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』、『プリンセスコネクト Re:Dive』など周年記念効果で売上が伸び、売上高は四半期ベースで過去2番めの水準となった。

「スマホゲームというと、業績的に苦しい業界と思われがちだが、運用でしっかり売上を作れている。次の大きなヒットを狙っていくのはもちろんだが、しっかり運用を重ねていきたい」(藤田晋社長)。
 


利益面では、増収効果に加えて、広告宣伝費の適正化が奏功した。広告宣伝費は「強めのアクセルを踏んでいたこともあり、第1四半期で86億円使ったが、この四半期は50億円弱まで下げた」(常務取締役の中山豪氏)という。
 


続く第3四半期(4~6月)の見通しは、例年どおり、前四半期の周年効果がはく落で減収が予想されるものの、主力タイトルの4月のランキング推移を見ると堅調に推移しており、それなりの規模の着地になりそうだ。コストコントロールについては、さらに10億円程度の削減が可能との見方を示した。

なお、新作については2020年前半までに6タイトルのリリースを予定しているとのこと。
 


 
■メディア事業 AbemaTVは収益化も視野に

メディア事業では、AbemaTVが「マスメディアとしての出発点」とするWAU1000万達成が見えたことから、収益化の取り組みも徐々に強化している。資本提携を行っている電通経由の広告売上が伸びているほか、課金ユーザーも40万人を突破した。投資先行段階ではあるものの、サービス終了のアナウンスを行ったアメーバピグの減収をカバーし、メディア事業の売上高は97億3000万円と過去最高を突破した。
 
 
▲WAU(週次アクティブユーザー数)が年末年始に過去最高となる918万人を突破したが、「需要期」以後も700万台をキープするなど順調に推移している


広告主も、いわゆるナショナルクライアントが増えているという。藤田社長は「何年も前からナショナルクライアントがネットにシフトするといわれてきたが、なかなか起きなかった。その理由は、出稿するメディアでブランド価値が守られるのか懸念があったからだ」。プラットフォームやCGMではそうした役割は担えなかったという。

そこで「AbemaTV」では、ブランドセーフティなメディアを目指した。同時にテレビや新聞、雑誌を見ない若者に受け入れられるメディアであることも目指したと明かした。質の高いオリジナル番組を充実させることで若年層を取り込みつつ、広告主の価値毀損も防ぐ。「広告商品としても価値の高いものができてきたのでは」と振り返った。
 


 
■通期の利益計画は超過する見通し 「当初計画に近づけたい」

なお、続く2019年9月通期の業績予想については、利益は超過する見通しだという。営業利益は、通期計画200億円に対して139億円、経常利益が190億円に対して137億円と70%を突破している。売上高と最終利益についてもそれぞれ52%、54%と過半に達している。
 


同社は今年1月、2019年9月通期の業績予想の下方修正を行い、売上高4400億円(前回予想4700億円)、営業利益200億円(同300億円)、経常利益190億円(同290億円)、最終利益20億円(同50億円)としていた。期初に発表した業績予想の水準にできるだけ近づけていく考えだ。

会場から超過した利益分について、「AbemaTV」などに投資していく可能性について聞かれると、「社内で"下方修正キャンペーン"をやっていることを考えると、計画の超過分を投資に回すことは難しいのではないか」と否定的な味方を示した。「2019年9月期中はおとなしくする」という。

 
(編集部・木村英彦)
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高8029億9600万円、営業利益418億4300万円、経常利益414億7500万円、最終利益162億4600万円(2024年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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