【インタビュー】『リネージュM』大河内PPと運営D・黒猫氏が考えるお金と時間の使い方…5~10年先まで見据えて"人"と一緒に遊べるゲームデザインに
エヌ・シー・ジャパン株式会社(以下、エヌシージャパン)が2019年春にリリースを予定している『Lineage M(以下、リネージュM)』。本作はPCで人気を博したMMORPG『リネージュ』のスマートフォン版タイトルとなる。国外では、既に韓国・台湾で配信されており、2017年末には台湾の歴代モバイルゲーム史上で最高の事前登録者数を記録したことなども大きな話題となった(関連記事)。日本でも2019年2月より事前登録受付が開催され(関連記事)、この春にいよいよ配信が開始される。
『リネージュM』は、ファンタジー世界で起こるリアルタイムでの闘争や狩りをスマートフォンで楽しむオンラインゲームだ。長期間遊べるように設計されており、強くなることを目指し、成長しながらプレイヤーが集まり、血盟(クラン)ができあがっていく。強大な敵を倒すために連携が生まれるほか、城を取るために戦ったり、世界全体を巻き込んだ大きな闘争へと発展したり。交渉や協力、裏切りなど、人それぞれのドラマが体験できる。
今回、Social Game Infoでは、国内版『リネージュM』の全貌に迫るべく、同社でプロジェクトプロデューサー(以下、PP)を務める大河内卓哉氏と、運営ディレクター(以下、運営D)を務める黒猫氏にインタビューを実施。前・後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、スマートフォン発のMMORPGとしての課金や時間の使い方に対する考えを始め、『リネージュM』が持つ世界共通の魅力、どのようにしてゲーム制作に取り組んでいるのかというエヌ・シー・ジャパンの特徴などについてもお話を伺ってきた。
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・【インタビュー】『リネージュM』はMMORPGが持つ"面白さ"の真髄を日本のゲーマーに届けられるか…大河内PP&運営D・黒猫氏が訴える「ゲーム」の在り方
『リネージュM』プロジェクトプロデューサーの大河内卓哉氏(写真左)
『リネージュM』運営ディレクターの黒猫氏(写真右)
──:前回、課金についてもお話が出たのでもう少しお聞きしたいのですが、マネタイズに関してはどのように考えておられるのでしょうか。
黒猫:課金の主な要素としては、いわゆる「時間短縮」にあたります。先ほども述べた通り、強い装備やレアアイテムに関しては頑張れば無課金でも手に入る仕様になっておりますので、より早く手に入れたいという方は課金が必要という構造になっています。ただ、課金に関しては必須ではなくひとつの手段として用意しています。
──:PCでは、この手のジャンルだと月額制のタイトルも多く見られますが、この点について議論はなかったのでしょうか?
大河内:他のゲームであれば検討していたかもしれませんが、『リネージュM』に関しては既に各国で配信されていたこともあり、ゲームの体感を変えてしまうといけないので考えませんでした。また、私は月額制に関しては、良いところと悪いところが明確にあると考えています。
一見、月額制というのは全員が平等なように聞こえるのですが、ユーザーのプレイ時間によって大きく価値が変わってしまうという側面があります。例えば、月あたり50時間遊ぶ人と200時間遊ぶ人を比べると後者のユーザーの方がお得になりますよね。なので、がっつり時間を作って遊べる環境にある方には最適かもしれませんが、プライベート、それこそ家事や仕事、子育てが忙しくて中々時間が取れないという人には十分に楽しんでいただくことができません。自分の限られた時間でマイペースに遊んでいただいて良いのですが、一方でがっつり遊んでいる友人とどんどん差がついて離されてしまう一方では気分も萎えてしまいます。なので、月額制はその人がどれだけ時間を投資できるかによって価値が変わると考えています。
その点、従課金システムは時間をお金で買うことも選択肢にあるので差を縮めることができます。自分は忙しくて中々遊べないけど、先を進む友人と同じ土俵で遊ぶという選択肢が残るわけです。
──:可処分時間の奪い合いが起きている現在の世情とマッチした選択にも思えますね。
大河内:現に私も今は時間をかけて遊べる立場ではないので、純粋な月額制のゲームだと友人にペースが追いつかないと思います。そうすると、一緒に遊んでいてもお荷物になってしまうので一緒に冒険することに引け目を感じてしまいます。
ただ、課金形態を単なる「時短」と表現、捉えられてしまうところもネックに感じています。『リネージュM』は、5年~10年先を見越した設計になっているので、そのスパンを時短と表現するとユーザーの感覚では「それはもはや時短じゃない」と思えてしまうからです。
黒猫:その点に関しては、どちらかというと”人”を重視する設計になっているのかなと思います。この人と一緒に遊びたいから少しなら課金しても良いかなという感覚で、少しでも多くの人に『リネージュM』の世界を楽しんでもらえるよう考えられているのかなと。
──:また、少し気が早いかもしれませんが、運営型のゲームは長く続くほど後続が先行組に追いつくのが難しいという課題も抱えています。この点に関しては何か考えておられますか?
大河内:その点に関しても考えています。先に申し上げると、海外では既に新しい職業が実装されているので、そのタイミングで何かしらの施策を合わせたいなと考えています。あとは、一度遊んで肌に合わなかったからといってアプリを削除せず残しておいていただけると……など。ただ、もちろん配信開始のタイミングに乗り遅れない方が良いとはお伝えしておきます!
──:MMORPGと聞くとやはりPCのイメージが強くもありますが、スマホならではの特徴はありますか?
大河内:スマートフォンに最適化された直感的な操作にはなっています。あとは、リアルの友人と共に遊びやすくなっているという点が挙げられると思います。先ほど黒猫Dからも話があった通り、スマホなら持ち歩いて直接「ここどうすればいいの?」と手元で画面を見せて友人に聞くことも可能です。そうして生活の一部として、第二の世界が浸透してもらえると嬉しいですね。
自分も朝6時に起きてゲームを遊んでから、具体的には各種ゲームの日課を終わらせてから会社に来ているのですが、その中で同じくらいの始業時間の人と話して盛り上がったり、共に遊んだりしています。朝起きてから出勤するまでに話せる人がいる世界があるというのは、それだけでとても大きな価値があります。皆様にとってもそういった世界を作って、守っていきたいです。
──:では、まだMMORPGをプレイしたことがない人に楽しさを伝えるにはどういった部分が大事になると考えておられますか?
大河内:何かゲームの中に最終的な目標があると、それを達成してしまうことで飽きに転化することがあります。また、ひとりで遊んでいる分には、最初は面白くても徐々に行動がパターン化してしまいます。これが飽きに繋がってしまうのですが、その点MMORPGは他人という不確定要素が介入することで毎回とは言わないまでも、違った面白さを味わえる、そしてその状況を自分で作り出せるという点がひとつ。
また、その中で現実世界の自分とは異なる何者かになれる。そこがMMORPGの良さであり、普通のゲームと最も異なるところだと思います。まだ遊んだことがない方には、是非この部分を体感してほしいです。
例えば、ワールド全体に聞こえるチャットで自分が何か発することによって、それに答えてくれる人が現れるかもしれません。その内容は「クエストを手伝ってください」や「友達が欲しいです」といったものまで、何でも良いと思います。誰かから反応があることで自分が一人じゃないことを実感できますし、もし現実に一人で生き辛いと思っている部分があるのであれば、そういう人にこそ第二の世界としてMMORPGをプレイしてみてほしいと思います。
黒猫:MMORPGというジャンルのゲームは昔からありますが、今の世間にあるゲームは周りの環境含めてMMORPGの世界に近付いていると思うところがあります。SNSを通じて仲間と協力したり、ランキングで上位を取るために他人と競い合ったり、ゲーム内でコミュニケーションが発生するという点はMMORPGと同じです。その部分を、『リネージュM』ではもう少し踏み込んで、世界の形が見える中で一緒に歩んでいけるというのは分かりやすい点だと思います。そして、一度経験をすると離れてしまった後も人がいる限り、ふとしたタイミングで戻りたいと思えるのもこのジャンルの特徴です。
遊ぶ際は是非、何故このゲームが世界で流行っているのかということを考えながらプレイすると、一層世界の深さを理解できるかもしれません。個人的には、仲間と一緒にプレイすることをオススメします。血盟(クラン)に入って会話をし、様々な場所を冒険して強くなり、とにかく人と仲良く冒険することが大事です。
──:人と一緒に遊ぶために何かゲーム側で工夫をされていることはありますか?
大河内:まず自分が強くなってもボスは一人で狩れないようなバランスになっています。また、海外版を触っている人なら想像がつくかもしれませんが、多人数で行うことを意識して用意しているコンテンツもあります。
黒猫:ヒントとしては、同じ血盟(クラン)に入っていれば一緒に挑めるコンテンツです。
大河内:アイテムドロップや経験値効率を上げるなら一緒に行くと良いこともあったりするので、是非、友人を誘って挑戦してもらいたいです。
──:社内の開発環境についてはいかがですか?
大河内:弊社はNCSOFTが作ったゲームの良さを日本でもしっかりと伝えるためにはどうすれば良いかを研究・運営している会社です。なので、多くの作業はNCSOFTとエヌシージャパンが協業で行っています。2社で連携を図りながら、お互いの文化や開発への想いをマッチングさせつつ、落としどころを探すということをしているので、国内の純粋な開発会社とは文化が異なる環境やプロジェクトになります。
黒猫:私もこれまでは国内向けタイトルを担当してきたので、まず入社して大変だと思ったのは「世界を守る」という仕事を内部だけで完結させないということです。このタイトルは綿密なレンガのうえに組まれているので、NCSOFTの天才たちが作り上げた世界を日本向けにどう調整するべきなのか、またはしないべきなのか、日本人の感覚を伝えなければいけません。また、『リネージュ』を遊んだ経験がある人、ない人それぞれの目線からも意見を出し合い、より面白く遊んでもらうためにはどうすれば良いかを考えていきます。「世界を作る」「日本人の感覚」「『リネージュ』経験の有無」という3点から調整を行えることが仕事のやりがいにも繋がっています。
──:そんな『リネージュM』チームに今求められている人材はいますか?
大河内:ワールドワイドな視野で、ゲーム自体が何故その仕様になっているかを理論で理解できないといけないので、観察力、洞察力、そしてゲームやプレイヤーへの愛が必要です。また、『リネージュ』ひいてはMMORPG業界に対する未来性も感じていると良いですね。何事も否定だけでは前へは切り開けないので、未来を語ることでより良い考えがまとまる確率が高まります。ユーザー目線から一歩進んだところで、何故この仕様になっているのか、そしてなぜ行わないのか、時系列で仮説を立てながら進行できるひとは貴重です。
――:職種としてはいかがですか?
黒猫:一番は「ディレクター職」でしょうか。繰り返しになりますが、緻密に設計された世界を扱っていく以上、より多くの仲間と話をして色々な考えを持ったうえで討論がしたいと考えています。より良いゴールを目指すべく、しっかりと理由を理解しながら考えられる会社にしていきたいと思いますので、良いサービスを作るためにどういう努力ができるかを考えることに力を入れて欲しいです。
大河内:全ての職種でそうなのですが、何をするにも「自分事」にしてほしい。一言で言うと「責任感」です。能力があれば、仕事を進めることはできます。ただ、そこが怖いところで、なんとなくできるということは、なんとなく失敗もするわけです。なんとなく他人がしなかったから仕方ないとか思うわけです。そこを自分事として捉えられる人は、本当にコンテンツが好きでプライドを持って仕事ができるため、仕事を任せることが出来るようになりますし、結果を出すチャンスは増えます。長期的には能力よりもそういったマインドを持てるかどうかの方が大事になってくると思います。
──:在籍されているメンバーに関しても教えてください。
大河内:その点に関しては、まさにここにおられる黒猫Dが体現をしています。元々『リネージュM』が好きで入社しているので、能力を持っているかどうかや、今までやったことがないからということはあまり関係なく、「できることは全てやる」という姿勢にかなり助かっています。もし方向を間違えそうになっても、その修正役として私がいるので、まずは自分事にしてやってみるという姿勢は本当に大事です。
──:最後に読者の方々にメッセージをお願いします。
黒猫:できるだけ多くの人に『リネージュM』を遊んで欲しいです。このゲームの中には、見た目だけでは分からない、天才たちが作った第二の世界があります。その中で新しい仲間や、今まで遊んできた友人と一緒に遊んでほしいです。
大河内:今は『リネージュM』を潜在的なユーザーの皆様も含めて、求められているものから逸れない内容でリリースできればと考えています。今後も含めて、自分がこのゲームを遊んでいて良かったと、人生の糧になるゲームであると思ってほしいです。最近の遊び方だと色々なゲームを移ろい歩いているユーザーも多く、日本ではある種のゲーム難民が発生している状態と認識しています。そういう人たちにこそ、『リネージュM』を遊んでみてほしいです。
遊んでみたうえで肌に合わないというのであればそれもアリだと思いますので、まだMMORPGに触れたことがないという方は『リネージュM』でまずどんなものか知っていただきたいという想いもあります。これだけ骨太で、これだけ遊べて、これだけ人と繋がれるゲームは滅多にないと思います。世界に関しては私たちもしっかりと守っていく覚悟がありますので、是非リリースを楽しみにしていてください。
2回に渡ってお届けしてきたインタビューからは、『リネージュM』はMMORPGを愛してやまないスタッフたちの手によって作られているということが伺えた。少なくとも筆者は、話を聞いていて「早く遊んでみたい!」と思ったことは間違いない。5月9日の『リネージュM』リリース発表会では、いよいよ内容の全貌も明らかとなった『リネージュM』。いちゲームファンとしても、本作が『リネージュ』ファンの期待に応えながらも、MMORPGとしての裾野をさらに広げられるような作品に仕上がっていることを期待したい。
■『リネージュM』
© NCSOFT Corporation. Licensed to NC Japan K.K. All Rights Reserved.
『リネージュM』は、ファンタジー世界で起こるリアルタイムでの闘争や狩りをスマートフォンで楽しむオンラインゲームだ。長期間遊べるように設計されており、強くなることを目指し、成長しながらプレイヤーが集まり、血盟(クラン)ができあがっていく。強大な敵を倒すために連携が生まれるほか、城を取るために戦ったり、世界全体を巻き込んだ大きな闘争へと発展したり。交渉や協力、裏切りなど、人それぞれのドラマが体験できる。
今回、Social Game Infoでは、国内版『リネージュM』の全貌に迫るべく、同社でプロジェクトプロデューサー(以下、PP)を務める大河内卓哉氏と、運営ディレクター(以下、運営D)を務める黒猫氏にインタビューを実施。前・後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、スマートフォン発のMMORPGとしての課金や時間の使い方に対する考えを始め、『リネージュM』が持つ世界共通の魅力、どのようにしてゲーム制作に取り組んでいるのかというエヌ・シー・ジャパンの特徴などについてもお話を伺ってきた。
▼前編はこちら▼
・【インタビュー】『リネージュM』はMMORPGが持つ"面白さ"の真髄を日本のゲーマーに届けられるか…大河内PP&運営D・黒猫氏が訴える「ゲーム」の在り方
『リネージュM』プロジェクトプロデューサーの大河内卓哉氏(写真左)
『リネージュM』運営ディレクターの黒猫氏(写真右)
■月額制は考えなかった? 従課金と比べるメリット・デメリット
──:前回、課金についてもお話が出たのでもう少しお聞きしたいのですが、マネタイズに関してはどのように考えておられるのでしょうか。
黒猫:課金の主な要素としては、いわゆる「時間短縮」にあたります。先ほども述べた通り、強い装備やレアアイテムに関しては頑張れば無課金でも手に入る仕様になっておりますので、より早く手に入れたいという方は課金が必要という構造になっています。ただ、課金に関しては必須ではなくひとつの手段として用意しています。
──:PCでは、この手のジャンルだと月額制のタイトルも多く見られますが、この点について議論はなかったのでしょうか?
大河内:他のゲームであれば検討していたかもしれませんが、『リネージュM』に関しては既に各国で配信されていたこともあり、ゲームの体感を変えてしまうといけないので考えませんでした。また、私は月額制に関しては、良いところと悪いところが明確にあると考えています。
一見、月額制というのは全員が平等なように聞こえるのですが、ユーザーのプレイ時間によって大きく価値が変わってしまうという側面があります。例えば、月あたり50時間遊ぶ人と200時間遊ぶ人を比べると後者のユーザーの方がお得になりますよね。なので、がっつり時間を作って遊べる環境にある方には最適かもしれませんが、プライベート、それこそ家事や仕事、子育てが忙しくて中々時間が取れないという人には十分に楽しんでいただくことができません。自分の限られた時間でマイペースに遊んでいただいて良いのですが、一方でがっつり遊んでいる友人とどんどん差がついて離されてしまう一方では気分も萎えてしまいます。なので、月額制はその人がどれだけ時間を投資できるかによって価値が変わると考えています。
その点、従課金システムは時間をお金で買うことも選択肢にあるので差を縮めることができます。自分は忙しくて中々遊べないけど、先を進む友人と同じ土俵で遊ぶという選択肢が残るわけです。
──:可処分時間の奪い合いが起きている現在の世情とマッチした選択にも思えますね。
大河内:現に私も今は時間をかけて遊べる立場ではないので、純粋な月額制のゲームだと友人にペースが追いつかないと思います。そうすると、一緒に遊んでいてもお荷物になってしまうので一緒に冒険することに引け目を感じてしまいます。
ただ、課金形態を単なる「時短」と表現、捉えられてしまうところもネックに感じています。『リネージュM』は、5年~10年先を見越した設計になっているので、そのスパンを時短と表現するとユーザーの感覚では「それはもはや時短じゃない」と思えてしまうからです。
黒猫:その点に関しては、どちらかというと”人”を重視する設計になっているのかなと思います。この人と一緒に遊びたいから少しなら課金しても良いかなという感覚で、少しでも多くの人に『リネージュM』の世界を楽しんでもらえるよう考えられているのかなと。
──:また、少し気が早いかもしれませんが、運営型のゲームは長く続くほど後続が先行組に追いつくのが難しいという課題も抱えています。この点に関しては何か考えておられますか?
大河内:その点に関しても考えています。先に申し上げると、海外では既に新しい職業が実装されているので、そのタイミングで何かしらの施策を合わせたいなと考えています。あとは、一度遊んで肌に合わなかったからといってアプリを削除せず残しておいていただけると……など。ただ、もちろん配信開始のタイミングに乗り遅れない方が良いとはお伝えしておきます!
■これからMMORPGを遊ぶ人たちへ
──:MMORPGと聞くとやはりPCのイメージが強くもありますが、スマホならではの特徴はありますか?
大河内:スマートフォンに最適化された直感的な操作にはなっています。あとは、リアルの友人と共に遊びやすくなっているという点が挙げられると思います。先ほど黒猫Dからも話があった通り、スマホなら持ち歩いて直接「ここどうすればいいの?」と手元で画面を見せて友人に聞くことも可能です。そうして生活の一部として、第二の世界が浸透してもらえると嬉しいですね。
自分も朝6時に起きてゲームを遊んでから、具体的には各種ゲームの日課を終わらせてから会社に来ているのですが、その中で同じくらいの始業時間の人と話して盛り上がったり、共に遊んだりしています。朝起きてから出勤するまでに話せる人がいる世界があるというのは、それだけでとても大きな価値があります。皆様にとってもそういった世界を作って、守っていきたいです。
──:では、まだMMORPGをプレイしたことがない人に楽しさを伝えるにはどういった部分が大事になると考えておられますか?
大河内:何かゲームの中に最終的な目標があると、それを達成してしまうことで飽きに転化することがあります。また、ひとりで遊んでいる分には、最初は面白くても徐々に行動がパターン化してしまいます。これが飽きに繋がってしまうのですが、その点MMORPGは他人という不確定要素が介入することで毎回とは言わないまでも、違った面白さを味わえる、そしてその状況を自分で作り出せるという点がひとつ。
また、その中で現実世界の自分とは異なる何者かになれる。そこがMMORPGの良さであり、普通のゲームと最も異なるところだと思います。まだ遊んだことがない方には、是非この部分を体感してほしいです。
例えば、ワールド全体に聞こえるチャットで自分が何か発することによって、それに答えてくれる人が現れるかもしれません。その内容は「クエストを手伝ってください」や「友達が欲しいです」といったものまで、何でも良いと思います。誰かから反応があることで自分が一人じゃないことを実感できますし、もし現実に一人で生き辛いと思っている部分があるのであれば、そういう人にこそ第二の世界としてMMORPGをプレイしてみてほしいと思います。
黒猫:MMORPGというジャンルのゲームは昔からありますが、今の世間にあるゲームは周りの環境含めてMMORPGの世界に近付いていると思うところがあります。SNSを通じて仲間と協力したり、ランキングで上位を取るために他人と競い合ったり、ゲーム内でコミュニケーションが発生するという点はMMORPGと同じです。その部分を、『リネージュM』ではもう少し踏み込んで、世界の形が見える中で一緒に歩んでいけるというのは分かりやすい点だと思います。そして、一度経験をすると離れてしまった後も人がいる限り、ふとしたタイミングで戻りたいと思えるのもこのジャンルの特徴です。
遊ぶ際は是非、何故このゲームが世界で流行っているのかということを考えながらプレイすると、一層世界の深さを理解できるかもしれません。個人的には、仲間と一緒にプレイすることをオススメします。血盟(クラン)に入って会話をし、様々な場所を冒険して強くなり、とにかく人と仲良く冒険することが大事です。
──:人と一緒に遊ぶために何かゲーム側で工夫をされていることはありますか?
大河内:まず自分が強くなってもボスは一人で狩れないようなバランスになっています。また、海外版を触っている人なら想像がつくかもしれませんが、多人数で行うことを意識して用意しているコンテンツもあります。
黒猫:ヒントとしては、同じ血盟(クラン)に入っていれば一緒に挑めるコンテンツです。
大河内:アイテムドロップや経験値効率を上げるなら一緒に行くと良いこともあったりするので、是非、友人を誘って挑戦してもらいたいです。
■世界を創るエヌシージャパンの未来
──:社内の開発環境についてはいかがですか?
大河内:弊社はNCSOFTが作ったゲームの良さを日本でもしっかりと伝えるためにはどうすれば良いかを研究・運営している会社です。なので、多くの作業はNCSOFTとエヌシージャパンが協業で行っています。2社で連携を図りながら、お互いの文化や開発への想いをマッチングさせつつ、落としどころを探すということをしているので、国内の純粋な開発会社とは文化が異なる環境やプロジェクトになります。
黒猫:私もこれまでは国内向けタイトルを担当してきたので、まず入社して大変だと思ったのは「世界を守る」という仕事を内部だけで完結させないということです。このタイトルは綿密なレンガのうえに組まれているので、NCSOFTの天才たちが作り上げた世界を日本向けにどう調整するべきなのか、またはしないべきなのか、日本人の感覚を伝えなければいけません。また、『リネージュ』を遊んだ経験がある人、ない人それぞれの目線からも意見を出し合い、より面白く遊んでもらうためにはどうすれば良いかを考えていきます。「世界を作る」「日本人の感覚」「『リネージュ』経験の有無」という3点から調整を行えることが仕事のやりがいにも繋がっています。
──:そんな『リネージュM』チームに今求められている人材はいますか?
大河内:ワールドワイドな視野で、ゲーム自体が何故その仕様になっているかを理論で理解できないといけないので、観察力、洞察力、そしてゲームやプレイヤーへの愛が必要です。また、『リネージュ』ひいてはMMORPG業界に対する未来性も感じていると良いですね。何事も否定だけでは前へは切り開けないので、未来を語ることでより良い考えがまとまる確率が高まります。ユーザー目線から一歩進んだところで、何故この仕様になっているのか、そしてなぜ行わないのか、時系列で仮説を立てながら進行できるひとは貴重です。
――:職種としてはいかがですか?
黒猫:一番は「ディレクター職」でしょうか。繰り返しになりますが、緻密に設計された世界を扱っていく以上、より多くの仲間と話をして色々な考えを持ったうえで討論がしたいと考えています。より良いゴールを目指すべく、しっかりと理由を理解しながら考えられる会社にしていきたいと思いますので、良いサービスを作るためにどういう努力ができるかを考えることに力を入れて欲しいです。
大河内:全ての職種でそうなのですが、何をするにも「自分事」にしてほしい。一言で言うと「責任感」です。能力があれば、仕事を進めることはできます。ただ、そこが怖いところで、なんとなくできるということは、なんとなく失敗もするわけです。なんとなく他人がしなかったから仕方ないとか思うわけです。そこを自分事として捉えられる人は、本当にコンテンツが好きでプライドを持って仕事ができるため、仕事を任せることが出来るようになりますし、結果を出すチャンスは増えます。長期的には能力よりもそういったマインドを持てるかどうかの方が大事になってくると思います。
──:在籍されているメンバーに関しても教えてください。
大河内:その点に関しては、まさにここにおられる黒猫Dが体現をしています。元々『リネージュM』が好きで入社しているので、能力を持っているかどうかや、今までやったことがないからということはあまり関係なく、「できることは全てやる」という姿勢にかなり助かっています。もし方向を間違えそうになっても、その修正役として私がいるので、まずは自分事にしてやってみるという姿勢は本当に大事です。
──:最後に読者の方々にメッセージをお願いします。
黒猫:できるだけ多くの人に『リネージュM』を遊んで欲しいです。このゲームの中には、見た目だけでは分からない、天才たちが作った第二の世界があります。その中で新しい仲間や、今まで遊んできた友人と一緒に遊んでほしいです。
大河内:今は『リネージュM』を潜在的なユーザーの皆様も含めて、求められているものから逸れない内容でリリースできればと考えています。今後も含めて、自分がこのゲームを遊んでいて良かったと、人生の糧になるゲームであると思ってほしいです。最近の遊び方だと色々なゲームを移ろい歩いているユーザーも多く、日本ではある種のゲーム難民が発生している状態と認識しています。そういう人たちにこそ、『リネージュM』を遊んでみてほしいです。
遊んでみたうえで肌に合わないというのであればそれもアリだと思いますので、まだMMORPGに触れたことがないという方は『リネージュM』でまずどんなものか知っていただきたいという想いもあります。これだけ骨太で、これだけ遊べて、これだけ人と繋がれるゲームは滅多にないと思います。世界に関しては私たちもしっかりと守っていく覚悟がありますので、是非リリースを楽しみにしていてください。
2回に渡ってお届けしてきたインタビューからは、『リネージュM』はMMORPGを愛してやまないスタッフたちの手によって作られているということが伺えた。少なくとも筆者は、話を聞いていて「早く遊んでみたい!」と思ったことは間違いない。5月9日の『リネージュM』リリース発表会では、いよいよ内容の全貌も明らかとなった『リネージュM』。いちゲームファンとしても、本作が『リネージュ』ファンの期待に応えながらも、MMORPGとしての裾野をさらに広げられるような作品に仕上がっていることを期待したい。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
(撮影:SYN.PRODUCT)
(撮影:SYN.PRODUCT)
■『リネージュM』
© NCSOFT Corporation. Licensed to NC Japan K.K. All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- エヌ・シー・ジャパン株式会社
- 設立
- 2001年9月
- 代表者
- 代表取締役 金 澤憲(キム・テクホン)