【セミナー】あの大作は映画やアニメ、バイク、落語の面白さを"仕組み"化して作られた! ディライトワークスのクリエイターが語る"面白い"を作るコツ

ディライトワークスは、5月17日、同社内にてキャリアの相談や情報交換を行えるイベント「肉会(MEAT MEETUP)Vol.12 第5制作部キャリア相談会 ~"おもしろい"をつくるコツ教えます~」を開催した。
 
「肉会(MEAT MEETUP)」は、ディライトワークスでの仕事に興味を持った人に参加してもらい、情報交換や交流、キャリアの相談を行えるイベント。
 
今回はディライトワークスの第5制作部のジェネラルマネージャー・東山朝日氏が登壇し、これまでの開発経験を基に"おもしろい"という感情を醸成するためのメソッドについて語られた。本稿では、その内容をお届けしていく。
 
【登壇者】

ディライトワークス株式会社
第5制作部
ジェネラルマネージャー
東山 朝日 氏

 
1993年、株式会社ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に企画職として入社、『エースコンバット』(プランナー)、『エースコンバット2』(ディレクター)、『機動戦士ガンダム戦記』(製作プロデューサー)などを担当。2012年、株式会社タイトーに転職。『グルーヴコースターアーケード』、『電車でGO!!』などのコンセプト開発を担当。2017年、ディライトワークス株式会社に転職。ゲーム開発に従事。

 

■映画やアニメ、バイク、落語などの面白さを"仕組み"化してゲームのステージを制作

 
まず東山氏は本日のテーマとして、これまでの開発経験を基に"面白い"という感情をどのように作り出しているのか、そのメソッドのひとつを紹介。
 
登壇者同士の会話形式による座学が多い本イベントだが、今回は参加者との"対話"を交えながら進めていく珍しい形が取られた。そのため参加者には楽な姿勢を取ってもらい、サロンで対談するようなイメージで進行することとなった。
 

 
最初はアイスブレイクを兼ねて、参加者に最近体験した面白いことを聞いていく東山氏。TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』の展覧会を見に広島へ日帰りで旅行に行った方、今まで年上にご飯を奢ってもらう立場だったが、初めて年下にご飯を奢った方などの話を聞き、それぞれ話題を掘り下げていく。その目的は"なぜ"面白いと感じたのか、を改めて考えてもらうためだった。
 
東山氏は「人が面白いと感じるからには、そこにはそう感じさせるに足る"理由"がある」とし、個人的な面白い体験の"理由"に着目。そこから"仕組み"を抽出し、ゲームデザインに落とし込んでいくという手法を取っていた。
 

▲自分が体験した"面白さ"を分析、分解、抽象化を経て"仕組み"を抽出することで、ゲームデザインのヒントになるという。
 
次に東山氏が実際に体験した、日常生活での面白い体験を紹介。その一部は以下の通り。
 

 
とある映画での宇宙要塞攻略時に展開する戦闘機のチェイスシーン、バイクで車の間をすり抜ける瞬間、ある劇場アニメの最終決戦時、ヒロインが歌うサビの部分に合わせて一斉攻撃をかけるシーンなど、様々な体験を語っていく東山氏。
 
何気ない日常のエピソードだが、かつて東山氏はこれらの面白さを"仕組み"化して、PSの名作フライトシューティングゲーム『エースコンバット2』(ナムコ ※現:バンダイナムコエンターテインメント)など数々のゲームを製作したという。
 
たとえば先程紹介した映画のチェイスシーンの場合、追っ手が迫るシーンは、なぜハラハラするかを考察。そして、異なる場面を交互に繋ぐことにより臨場感や緊張感を演出する技法「カットバック」を利用しているからだと、仕組みの抽出を行う。これらをゲームに落とし込むことで、下記のようなステージになると例を紹介。
 

▲味方地上部隊の墜落機到達が勝利条件のステージ。敵戦闘機部隊、敵地上部隊への警戒はもちろん、味方地上部隊を守ることも要求され、さらに味方墜落機へいち早く向かう必要がある。こうした敵、味方双方に気を配らならければならない状況を作ることで、カットバックに似た緊張感を生み出したのだ。
 
次に東山氏がバイクで面白いと感じた「車の間をすり抜ける瞬間のゾクゾク感」「50ccと250ccの乗りこなし方の違い」について。こちらの仕組みを抽出すると、「危険と隣り合わせの"スリル"」「乗りこなす"制御する楽しみ"」となる。これを先程と同じくゲームのステージに落とし込むと、下記のようになった。
 

▲峡谷の先に敵基地を配置したステージ。狭所を高速で飛び抜けさせることで、ひとつ間違えると即ミスという"スリル"を楽しませる。
 

▲乗りこなす"制御する楽しみ"を落とし込んだステージ。先程の峡谷ステージに近いが、プレイヤー機の性能をハイパワーにし、さらに峡谷の隙間も狭くなっている。プレイヤーに"制御する楽しみ"を体験させると同時に、差分ステージとして製作コストを抑えることができる。
 
劇場アニメ最終決戦時のシーンの盛り上がりに関しては、ヒロインの歌うサビの部分と総攻撃を合わせること、つまり「感情と演出の同期による高揚」が仕組みであると説明。こちらも先程と同様にゲームのステージに落とし込むと下記のようになった。
 

▲強固な地熱プラント基地の内部に侵入し、コアを攻撃するというステージ。放熱口が解放されるときまで防御に徹し、味方地上部隊の合図で内部に侵入。90秒間ですべてを解決しなければならない。これを最大限盛り上げるため、放熱口解放前までは不穏な音楽を流し、いざ内部に突入するときに壮大なBGMに切り替える。プレイヤーの心情に合わせてBGMを変化させ、高揚感を醸成するという手法は、当時のゲーム市場では目新しかった。
 
そのほかの例は下記の通り。
 

▲落語家・桂枝雀氏の言葉から仕組みを抽出。
 

▲高度制限を設けることで、プレイヤーに緊張状態を与える。それに打ち勝つことでプレイヤーは報酬を得、悦に浸ることができる仕組みとなっている。
 

▲任侠物の映画は、序盤~中盤まで理不尽なストレスを与えられるが、最後に殴り込みを行うことが多い。ストレスとその解放による高揚感が仕組みとしてある。
 

▲その仕組みはこのようにゲームに落とし込むことができる。最初は高性能な機体を操作できるが、徐々に機動性の低い機体に強制的に乗り換えていく。そして最後に最初の高機能な機体に改めて乗り換えることで、プレイヤーはストレスから開放され高揚感を得るという仕組みだ。
 
これらを踏まえて東山氏は、「面白い」を作るためのヒントは日常に溢れていると説明。観察力や洞察力を総動員して、個人的な面白い体験を掘り下げてみようと参加者に語った。そして、今回のイベントのまとめとして「面白さを形にする3つのステップ」を発表した。
 

▲面白さを形にするステップ1「"感動"の収集」
 

▲面白さを形にするステップ2「"なぜ"の習慣化」
 

▲面白さを形にするステップ3「抽象化」
 

▲実際に東山氏は、日常であった面白い体験を日々ノートにメモし、なぜ面白かったのか分析しているという。
 
最後に東山氏は「ぜひ皆さんも面白い体験をたくさん積んでください。そして、"なぜ面白かったのか"を複数回自分の中で問い、抽象化できるようにしてほしい。必ず皆さんのゲームデザインの仕事に役立つと思います」と話し、トークセッションを締めた。


▲トークセッション後の懇親会では、「肉ちまき」「カツオのガーリックバターステーキ」「生ハムとマッシュポテトのカップ仕立て」など、多彩な料理が振る舞われた。
 
そんなディライトワークスでは、まだテーマは未定だが、7月に「肉会(MEAT MEETUP) Vol.13」の開催を予定している。詳細は、Peatixにてチェックしてほしい。
 

Peatix

 
(取材・文 ライター:長戸勲)



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企業サイト

 
ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
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