【インタビュー】2周年呪ワレタ金欲祭を迎えた『シノアリス』のクリエイターが語る…“らしさ”の詰まった、これまでの軌跡と今後の施策
ポケラボとスクウェア・エニックスが贈るスマートフォン向けゲームアプリ『SINoALICE(シノアリス)』が、2019年6月6日に2周年を迎えた。
重厚な世界感と物語、可愛らしくもどこか癖のあるキャラクター、耳に残る美しくも深い音楽はもちろん、数々のコラボやグローバル展開など、サービス開始から未だにユーザーにインパクトを与え続けている本作。
2周年を記念して本稿では、『シノアリス』のプロデューサーであるポケラボの前田翔悟氏、クリエイティブプランナーの成富正基氏、アシスタントプロデューサーの石川圭介氏の3名へのインタビューを実施。2周年を迎えての感想や、これまでに印象に残った出来事、特に苦労した話のほか、『シノアリス』だからこそできるユニークでインパクトのある施策についてもたっぷりと語っていただいた。
ポケラボ『シノアリス』プロデューサー・前田翔悟氏(写真中央)
クリエイティブプランナー・成富正基氏(写真右)
アシスタントプロデューサー・石川圭介氏(写真左)
――:まずは、それぞれの役割を含め改めてみなさんの自己紹介をお願いします。
前田翔悟氏(以下、前田):ポケラボで『シノアリス』のプロデューサーを務めております前田です。『シノアリス』はスクウェア・エニックスさん(以下スクエニ)とポケラボの協業で、最初はスクエニ側のプロデューサーである藤本善也さんと、原作・クリエイティブディレクターのヨコオタロウさんと座組を組んだところからスタートしました。プロデューサーとしてゲーム全体を見つつ、二次展開や海外展開についても各方面と協力して進めています。
成富正基氏(以下、成富):『シノアリス』でクリエイティブのプランニングを担当している成富といいます。業務内容としては、プロデューサーやプランナー、あとは発注チームとのブリッジ役を担いながら、自分でも企画やシナリオのプロットを作成しています。直近ですと、この先に仕込もうとしている大きなコラボの進行管理や監修対応などもしております。
――:ちなみに、成富さんはいつから『シノアリス』チームに合流されたのでしょうか。
成富:実は企画の立ち上げ当時はチームに在籍していたのですが、その後、他のタイトルの立ち上げのために、一度チームを離れて今年の3月に戻ってきました。『シノアリス』の企画後は、複数のタイトルでIP側のディレクター的な動きをしていました。
石川圭介氏(以下、石川):ポケラボで『シノアリス』のアシスタントプロデューサーをしている石川と申します。業務内容は基本的に前田の補佐で、彼から引き継いで関係者調整や資料作成を行うことが多いです。具体的には、コラボの大筋が決まった後の細かい調整であったりとか、契約周りであったり。動きとしては成富と似たような業務をしているのですが、彼はクリエイティブに寄せたお仕事担当、僕はよりビジネスの方に寄せたお仕事を担当するという感じで、二人で前田を補佐する形になっています。
――:今回、2周年を迎えられての率直な感想はいかがでしょうか?
前田:個人的にはよくここまで来たなと思います(笑)。リリース初期の頃は今に比べて体制も整っておらず、ヨコオさんとスクエニさん、ポケラボで作品を作ることで「本当に売ることができるのか?」と疑問もあったのですが、実際にリリースをしてみると予想以上に反響があったことに驚きました。そこから色々な問題を乗り越えつつ、リリース初年度は1年をかけて作品的にもチーム的にも大きくなっていきました。直近の1〜2年目は、チーム人数がそこまで増えたわけではないのですが、成富・石川のような二人も合流してより長期的な運用が続けられるように、強固な形にしていっているという段階です。なので、2周年というところまで来ましたが、まだまだこれからとも感じています。
前田:この記事が公開される頃にはグローバル版のリリース時期も発表されていますし、よりワールドワイドで戦う必要が出てきます。今は、より多くのことができるように地盤を固めている感じです。
――:ちなみに、海外のユーザーからは『シノアリス』に対してどのような声が挙がっていますか。
前田:まず、『ニーア』シリーズとヨコオさんに関しては国内と変わらず海外でも認知度が高いです。そのため、反応としては日本に近いところがあります。グローバル版の事前登録の展開も日本と近く、登場キャラクターに関しては海外のユーザーさんにも刺さるような雰囲気があるので、そういうところから徐々に広がっているという印象があります。
――:成富さんは、2周年を迎えてのご感想はいかがですか?
成富:私も企画当初はこんなに大きなプロジェクトになるとは思わなかったというのが率直な感想です。戻ってきたときには、2周年の施策自体は結構進んではいたのですが、その後の計画がしわ寄せを受けて、だいぶカオスな感じになっています。それはもう本当に……。ですので、まだまだこれから、という感じです(笑)。
――:『シノアリス』チームに戻った際、当時と比べて最も変わったと思われたところはどこでしょうか?
成富:やはりチームのサイズ感です。人数が増えたのでやれることも格段に増えたということが一番大きいです。僕が最初にいた頃はメンバーが10人に満たなかったのに、今50人以上にもなり5倍以上になりました。
――:人員が増えたことで、具体的にどのようなことができるようになったのでしょうか。
成富:以前はやりたくても手が回らず、できないこともありましたが、今のサイズ感なら施策の数も増やせますし、新しくやりたいことがあった際に忠実に実行に向けて進められます。チームの規模は大きくなりましたがフットワークは軽いです。
石川:普通は規模が大きくなれば責任も大きくなるので守りに入ることが多くなると思うのですが、誰も守ろうとしないことに驚いています(笑)。
成富:常に攻める方に全振りですね。
石川:僕はどちらかというと守りに入りたいタイプなのですが、最近は周りに影響されて攻めの姿勢に寄っています。
――:石川さんは2周年を迎えてのご感想はいかがですか?
石川:とにかくやることがめちゃくちゃ多いと感じています。僕の場合、関係者同士を繋ぎ続けるということを業務として行っているのですが、これだけたくさんの人が関わるようになると、どこかで絶対に何かしらのトラブルが起きてしまいます。自分の役割としては、そういったトラブルを見つけて潰し続けることがミッションになりますので、自分の中では「まだ2周年は何も終わってない!」と必死な状況です(笑)。
前田:プロデューサーは一番の業務は問題解決ですからね。その辺り、『シノアリス』は規模感が大きいので、起こる問題の規模も大きいし数も多いです。
石川:自分の目が届かない細かなところで重篤な問題が起きることもあり得ますので、普段から何も用事がなくても多くのメンバーに積極的に話しかけて情報を集めるようには心掛けています。あとは、プロデューサーとして持っている情報を現場の開発陣になるべく早く伝えるようにも努力しています。
――:トラブル対処のためにどういった動きをされているのでしょうか?
石川:最悪なのは作った施策を最終的にリリースできないということです。『シノアリス』は真ん中にヨコオさんがいて、その周囲に多くの人が関わっています。そのため、何かが揃っていないせいでみんなが頑張ったものを全て水の泡にしてしまうことが一番恐ろしいので、そうならないようにスケジュールは常に気を付けています。
――:成富さんや石川さんを含め、人員が増えたことで前田さんの動きとしてこの1年で変わったことはありますか?
前田:皆が動いてくれるので、何もしなくなりました(笑)。とはいえ今までずっと守ってきた『シノアリス』のルールみたいなものはチェックをしつつ、その分、海外関係の業務により工数を割けるようになりました。今リリースされている台湾版の施策をチェックしたり、イベントで韓国に行ったり。日本の運用についてはほぼ任せられているので、今は『シノアリス』の広がりの部分に目を向けられています。
――:では、この1年を振り返りつつ印象的な出来事や企画についてお聞かせください。
前田:まずは、1周年が終わった後にTVCMを放送したのですが、今回2周年でも再びTVCMを流すことになりました。1周年のときは凄く忙しい流れでそのままCMに取り組むことになって、現場はてんやわんやだったのですが今年はそれを同時にやるという(笑)。より、てんやわんやな状況ですが、また大きくTVCMを放送できることは良かったです。
あとは公式ツイッターで、クリスマスイベントの際に目玉としてクイーンエリザベス号で豪華クルーズを楽しめる旅行券200万円分が当たるキャンペーンを実施したことが印象に残っています。当時、ツイッターのファーストビュー広告と連携して展開していたのが凄く効果的でした。
そして、今年のGWには新篇となる「融合篇」をリリースしました。普通なら前もって告知を行うものですが、これもツイッターのファーストビューと連携して、リリースされることがバイラルで広がるようにサプライズで発表しました。公式ツイッターの運用は常に意識していますし、2周年でもまた色々と展開していく予定です。
――:確かに、融合篇の予告映像がツイッターでバンッと流れたときにはかなりのインパクトがありました。
前田:『シノアリス』では、動画を見た際に「繰り返し見たい!」と思えるなど、必ずインパクトを残すようにかなりこだわって作っています。融合篇では世界観を純粋に表現しつつも今までに使ったことがないような3Dを使用したり、クイーンエリザベス号のキャンペーンの際にはクリスマスを風刺的に皮肉りながら“いらすとや(フリー素材)”を使用したり、それまでにやったことがないことに挑戦するよう意識しています。
――:お二人はチームに合流してから印象に残っている出来事はありますか?
成富:3月に戻ってから、めちゃくちゃ濃い時間を過ごしているなと感じています。その中で印象的なのは、今まで担当をしたことのないシナリオ業務に携わっていることです。ある日、狭く暗い部屋に呼び出され、「シナリオもやってみる?」「あ、はい(これ断れないやつだ)」という感じでした。こうした無茶振りが突如として飛んでくるのは、ポケラボの凄いところだと思います(笑)。
――:シナリオ業務に挑戦してみて手応えはいかがですか?
成富:まず、今までシナリオを書いたことがないので、単純にシナリオを書くこと自体の難しさを感じています。加えて、『シノアリス』ではヨコオさんのテイストをキャッチアップしていくところにさらなる難しさを感じました。これに関しては触れ続け、要素の分解と再構築をし続けることが大事で、今は「こうかな?」という感覚がだんだんと掴めてきた気がします。書いたものに対して、Twitterなどでユーザーさんから反応があると嬉しいですね。
また、シナリオやプロットはアイディア勝負の一面もあるので、皆でブレストをしながら「ここはこうした方が良いんじゃないか?」という方向性の調整をこまめに行っています。
石川:僕は『スペースインベーダー』コラボが印象に残っています。実は、これが『シノアリス』で1番最初に携わった業務で、いきなりぶっ飛んだ企画を見せられて「大変なことになっているな」と思いました(笑)。
且つ、このタイミングから収録の現場に立ち会わせていただくことも多くなり、少しずつディレクション的な業務にも関わるようになりました。コラボの方は、内容が凄く面白かったので、自分自身もユーザーさんと同じ気持ちで楽しめました。また、この時に自分の中で達成できないこともありまして……それもこのコラボが印象深い理由になっています。
――:それはどういったことでしょうか。
石川:クリエイターの希望としては「尖ったものを世に出したい」という想いがあったのですが、その際に関係者との繋がりが不十分だったために上手くクリアできないことがあり、「あの時、自分がもう少し動けていれば成立させられたのに……!」という後悔があります。そのため、これ以降はリスク管理や社外のライセンサーの方々と相談しながら、こちらのメッセージとして「とにかく楽しいものを出したいんです!」という意志を伝えながら、リスクと天秤にかけて上手く通すように気を付けるようになりました。そういった意味でも、自分の中ではかなり勉強になった出来事です。
――:クリエイターの意志を尊重するため、石川さんが気を付けないといけないのはどういったところになるのでしょうか。
石川:人の意志を勘違いしないことだと思います。例えば、関係者が二人いたとして、当然どちらの方にも「良いものを作ってお客様を喜ばせたい」という気持ちや、コンテンツのことを想う気持ちはあります。その二つが上手く成立できれば良いのですが、関係者同士が直接話をしたときに「どうせ相手には分からないだろう」と意志がすれ違ってしまうことも大いにあるんです。そんな時、僕としては必ず両者の気持ちを汲んで、自分で着地点を考えながら進めていくことが大事だと思っています。
――:人の意志を勘違いしないために何か工夫されていることはありますか?
石川:関係者の方がどういうものを好きであるかは把握するようにしています。リスク管理を行っている方も、本部の方も同じ人間なので、その人がどういう考え方でリスクに対して指摘をしているのかという観点が必ずあります。それを単純に言葉尻だけで捉えるのではなく、その人の思想を前提にその言葉の裏までちゃんと理解できるよう、好き嫌いから人となりや、普段どういった生活をしているのかという人間的なコミュニケーションを心掛けています。
――:この1年で印象的な企画といえば『ニーア レプリカント』とのコラボはユーザーからの反響も大きかった印象です。
前田:そうですね。『ニーア レプリカント』は9年前のタイトルなのですが、コアなユーザーさんが多く反響は大きかったです。ヨコオさんには9年ぶりにシナリオ案を作っていただき、公式で新しいものが見られるというところでユーザーさんにも盛り上がっていただけました。ポケラボにもファンの方から「コラボありがとうございました!」というメッセージをいただきました。中でも特に、「カイネがガチャで手に入れられて嬉しかったです!」「カイネがまた見られるなんて!」とカイネに対するメッセージも多かったです。
――:いちファンとしては、原作の曲が収録されていたのが凄く良かったです。
前田:『ニーア レプリカント』の曲は僕も大好きですし、それを『シノアリス』の中に入れられたことで『ニーア レプリカント』の世界観をより上手く表現できた気がします。
――:カイネの人気が凄かったとのことですが、次回はカイネに関するシナリオを実装されるといった展望などは……?
前田:今は予定がありません。ただ、今回はガチャでのみの登場だったカイネの新たな物語を読みたいという気持ちは凄く分かりますし、実際にそう言ってくださるファンも多くいらっしゃいますので……ヨコオさんに伝えておきます(笑)。
――:是非ともお願いしたいところです……!また、コラボに関しては先ほど挙げられた『スペースインベーダー』のように、『釣り★スタ』など、世界観が全く異なる作品とのコラボも実施されていますが、その際に大切にされていることなどはありますか?
前田:コラボ先を決める際に重要視しているのは『シノアリス』の世界観です。あまりコラボばかりになりすぎると何のゲームか分からなくなってしまいますので、できるだけ世界観に合うタイトル、且つコラボ先の世界観も大事にできるということを念頭に置いたうえでお互いが納得して同じ方向に進めそうなタイトルを選んでいます。
そういった意味では『スペースインベーダー』や『釣り★スタ』は「世界観が違うじゃないか!?」と思われてしまうかもしれませんが、これに関してはあえて外しています(笑)。同じようなものにこだわりすぎるとこってりしてしまうところがあるので、たまには気楽なコラボも実施しようという感じで緩急を付けられるように選んでいます。
――:そのほか、ゲーム外では11月23・24日に「シノアリスコンサート~ギシンとアンキの愉快な音楽祭~」が開催されました。
前田:『シノアリス』は音楽が凄く良いというところもポイントですので、しっかりと生の音で聴いていただきたいという想いがありました。「音を聴かせる」というところを最重要ポイントにしつつも、それだけではありきたりなイベントになってしまうので『シノアリス』らしい演出を意識しました。イルカさんに主催していただいたイベントだったのですが、映像ディレクターのアオキタクトさんが色々な試みを考えてくださりました。コンサートの随所でギシンとアンキが登場したり、特別な映像を見れたり、イベントに伴って”クソ武器”を配布してゲームと連動させたり(笑)。
――:コンサートとゲームが連動するというのは面白い試みでしたね。
前田:コンサートに限らず、こうした場に来て下さるのは基本的にゲームのユーザーさんになりますので、軸になるのはやはりゲームです。なので、如何にゲームを軸として他の展開に上手く絡められるかというのが大事です。あとは、距離や金銭的な理由でどうしても参加できないという方もおられるので、少しでも楽しんでいただきたいという想いから実施したところがあります。
石川:コンサートでは、実際にユーザーさんの顔が見えたことが凄く新鮮でした。それまで、ツイッターを通じて反応をいただくことはあったのですが、それ以外では基本的に数字でしかお客様のことを見ることがありませんでした。ゲーム内のギルドでお客様同士が繋がってチャットで交流することはありますが、それを現実で「こういう風に遊んでくださるんだ」「こんなにたくさんの人がいるんだ」という実感を得られたのは大きかったです。
僕は当日、受付でお客様が会場に入っていく様子をずっと見ていたのですが、その場にいるお客様たちの期待感や、嬉しそうな雰囲気には感動的なものがありました。他の運営メンバーもその様子を見て「頑張ろう!」と思ったという話をたくさん聞きます。実際にお客様が現地に来て楽しめるイベントを運営が提供することは凄く重要だと感じました。
――:こういったリアルイベントを行うにあたってゲーム内の施策と違うところを教えてください。
石川:リアルタイム感ではないでしょうか。こうしたイベントでは、1度コンテンツを出して理解していただけなければそれで終わりになってしまうので、実際に僕がイベントを作るわけではないですが、情報の出し方や手法については全員で気を付けています。
――:そんな『シノアリス』の2周年はどのような施策を行われるのでしょうか。
前田:自分でも数えていてビックリするのですが、今回は盛りだくさんです! まず先ほど述べたTVCM、それに交通広告や公開生放送もあります。コラボカフェの第3弾も開催されますし、コミカライズの発売、ゲーム内では無料11連ガチャだけでなく、無料300連ガチャという施策も実施します。さらに、新キャラクターが登場したり、『ドラッグ オン ドラグーン3 (DOD3)』コラボを復刻開催します。あとは新章の追加。あとは何と言っても、今目の前に置かれている「ヨクボウに囚わレたプロデューサー像(原物)」に注目してください(笑)。
一同:(笑)
▲ヨクボウに囚わレたプロデューサー像(原物)。
――:これは2周年にどう関わってくるのでしょうか……?
前田:「金欲祭」というイベントが発端となって作った像なのですが、実はこの原物の像の上の部分は本物の純金で作られているんです。2周年イベントの「オカネと呪イとヨクボウノ大感謝祭、略して金欲祭」というコピーを作ったヨコオさんが「何か金欲祭の象徴が欲しい」と仰られまして。そこにスクエニの藤本さんが「ダーマエが金になればいいんじゃない?」と乗っかったことから作られました……(苦笑)。
※開催中のシノアリスカフェに飾られるものは模造品であり、模造品の方は純金ではありません。
石川:最初はお掃除ナイトメアが金色になるという話もあったのですが「そんなつまらない話やめろよ!」と、皆がキレるという……(笑)。
今回のイベントのテーマが「欲望」「お金の呪い」というところで、今までに出ている『シノアリス』のKPIや売上への欲望にプロデューサーが囚われてしまい、金を掲げつつも離れることができずにいつか押し潰されてしまうという物語が展開します……。
――:恐ろしくもあり、悲しくもあるイベントになりそうですね……。
前田:これまで、他のタイトルでも社長やプロデューサーが登場することはあったかもしれませんが、金になったのは初めてだと思います。本当に『シノアリス』らしい周年イベントに仕上がっていまし、絶対に他では味わえない体験ができるので、是非プレイしてみてください(笑)。
石川:この像を作るにあたっては、純金を管理する担当がいまして……。金が一定以上の価値になると別のリスクが発生してしまう懸念があることから、その方はこのところ毎朝、まず金の相場を確認するというタスクをこなしています。
――:「金欲祭」、色んな意味で見逃せないイベントですね。また、施策の中ではこれまで10連だったガチャが今後11連ガチャに変更されましたね。
前田:2周年のタイミングでユーザーさんに感謝の意味も込めて実行しました。最近のタイトルは11連が多かったり、引きやすいことも多かったりしますので、その辺りの状況も踏まえて引きやすくしたという感じです。値段はそのままでもう一個ついてくるよ!という感じです。
――:ちなみに、別角度の手法として10連ガチャのまま必要な石の数を減らすという方法もあったと思いますが検討はされましたか?
前田:石を減らすとなると売上が……!
――:これは金欲に囚われていますね……。また、新キャラクターも登場するとのことですが、既存キャラクター内で比較的新しいアラジンや三匹の子豚の現実編が追加される予定はありますか?
前田:予定はあるのですが、中々に難しいところでして……。どのキャラを優先して登場させるということは決めていないのですが、先に登場しているキャラの方がそもそもの準備が早いということもあり先に登場しているというのが現状です。時間が経てばどのキャラも同じ状況に持って行けると思いますし、アラジンや三匹の子豚の現実篇の追加に関しても5年計画の施策の中には入っています!
――:予定があるのであれば実施されるのを楽しみに待ちたいですね! それでは、最後にユーザーの皆様へメッセージをお願いします。
成富:2年間『シノアリス』を遊んでいただいてありがとうございます。制作側にいない期間もありましたが、2周年が終わってこれから3周年に向かっていくというタイミングで仕込んでいるものが僕の手元に山程ありますので、それも楽しみにしていただければと思います。
石川:個人的にも『シノアリス』は2周年でひとつ大きな山を越えて、その後にもっと大きくなっていくんだろうなと思っています。僕は、とにかく前田の仕事を奪って、彼がどんどん日本国外も含めて広く外を向けるように「やってくれ!」という感じで頑張ります。そうすることで、皆様には今後も色々なところで『シノアリス』を見る機会が増えると期待していただいて良いのではないかと思っています。まずは2周年を楽しんでください!
前田:2年も運営を続けられたのはユーザーさんたちのお陰ですし、これからも『シノアリス』らしさを大切にしていきたいです。多分、プロデューサーが金の像になるようなタイトルは今後も出てこないと思います(笑)。今、『シノアリス』を「面白い」と思っていただけているのであれば、是非これからも続けていただけると嬉しいです!
――:本日はありがとうございました。
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重厚な世界感と物語、可愛らしくもどこか癖のあるキャラクター、耳に残る美しくも深い音楽はもちろん、数々のコラボやグローバル展開など、サービス開始から未だにユーザーにインパクトを与え続けている本作。
2周年を記念して本稿では、『シノアリス』のプロデューサーであるポケラボの前田翔悟氏、クリエイティブプランナーの成富正基氏、アシスタントプロデューサーの石川圭介氏の3名へのインタビューを実施。2周年を迎えての感想や、これまでに印象に残った出来事、特に苦労した話のほか、『シノアリス』だからこそできるユニークでインパクトのある施策についてもたっぷりと語っていただいた。
ポケラボ『シノアリス』プロデューサー・前田翔悟氏(写真中央)
クリエイティブプランナー・成富正基氏(写真右)
アシスタントプロデューサー・石川圭介氏(写真左)
■2周年まで来たけどまだまだこれから!
――:まずは、それぞれの役割を含め改めてみなさんの自己紹介をお願いします。
前田翔悟氏(以下、前田):ポケラボで『シノアリス』のプロデューサーを務めております前田です。『シノアリス』はスクウェア・エニックスさん(以下スクエニ)とポケラボの協業で、最初はスクエニ側のプロデューサーである藤本善也さんと、原作・クリエイティブディレクターのヨコオタロウさんと座組を組んだところからスタートしました。プロデューサーとしてゲーム全体を見つつ、二次展開や海外展開についても各方面と協力して進めています。
成富正基氏(以下、成富):『シノアリス』でクリエイティブのプランニングを担当している成富といいます。業務内容としては、プロデューサーやプランナー、あとは発注チームとのブリッジ役を担いながら、自分でも企画やシナリオのプロットを作成しています。直近ですと、この先に仕込もうとしている大きなコラボの進行管理や監修対応などもしております。
――:ちなみに、成富さんはいつから『シノアリス』チームに合流されたのでしょうか。
成富:実は企画の立ち上げ当時はチームに在籍していたのですが、その後、他のタイトルの立ち上げのために、一度チームを離れて今年の3月に戻ってきました。『シノアリス』の企画後は、複数のタイトルでIP側のディレクター的な動きをしていました。
石川圭介氏(以下、石川):ポケラボで『シノアリス』のアシスタントプロデューサーをしている石川と申します。業務内容は基本的に前田の補佐で、彼から引き継いで関係者調整や資料作成を行うことが多いです。具体的には、コラボの大筋が決まった後の細かい調整であったりとか、契約周りであったり。動きとしては成富と似たような業務をしているのですが、彼はクリエイティブに寄せたお仕事担当、僕はよりビジネスの方に寄せたお仕事を担当するという感じで、二人で前田を補佐する形になっています。
――:今回、2周年を迎えられての率直な感想はいかがでしょうか?
前田:個人的にはよくここまで来たなと思います(笑)。リリース初期の頃は今に比べて体制も整っておらず、ヨコオさんとスクエニさん、ポケラボで作品を作ることで「本当に売ることができるのか?」と疑問もあったのですが、実際にリリースをしてみると予想以上に反響があったことに驚きました。そこから色々な問題を乗り越えつつ、リリース初年度は1年をかけて作品的にもチーム的にも大きくなっていきました。直近の1〜2年目は、チーム人数がそこまで増えたわけではないのですが、成富・石川のような二人も合流してより長期的な運用が続けられるように、強固な形にしていっているという段階です。なので、2周年というところまで来ましたが、まだまだこれからとも感じています。
前田:この記事が公開される頃にはグローバル版のリリース時期も発表されていますし、よりワールドワイドで戦う必要が出てきます。今は、より多くのことができるように地盤を固めている感じです。
――:ちなみに、海外のユーザーからは『シノアリス』に対してどのような声が挙がっていますか。
前田:まず、『ニーア』シリーズとヨコオさんに関しては国内と変わらず海外でも認知度が高いです。そのため、反応としては日本に近いところがあります。グローバル版の事前登録の展開も日本と近く、登場キャラクターに関しては海外のユーザーさんにも刺さるような雰囲気があるので、そういうところから徐々に広がっているという印象があります。
――:成富さんは、2周年を迎えてのご感想はいかがですか?
成富:私も企画当初はこんなに大きなプロジェクトになるとは思わなかったというのが率直な感想です。戻ってきたときには、2周年の施策自体は結構進んではいたのですが、その後の計画がしわ寄せを受けて、だいぶカオスな感じになっています。それはもう本当に……。ですので、まだまだこれから、という感じです(笑)。
――:『シノアリス』チームに戻った際、当時と比べて最も変わったと思われたところはどこでしょうか?
成富:やはりチームのサイズ感です。人数が増えたのでやれることも格段に増えたということが一番大きいです。僕が最初にいた頃はメンバーが10人に満たなかったのに、今50人以上にもなり5倍以上になりました。
――:人員が増えたことで、具体的にどのようなことができるようになったのでしょうか。
成富:以前はやりたくても手が回らず、できないこともありましたが、今のサイズ感なら施策の数も増やせますし、新しくやりたいことがあった際に忠実に実行に向けて進められます。チームの規模は大きくなりましたがフットワークは軽いです。
石川:普通は規模が大きくなれば責任も大きくなるので守りに入ることが多くなると思うのですが、誰も守ろうとしないことに驚いています(笑)。
成富:常に攻める方に全振りですね。
石川:僕はどちらかというと守りに入りたいタイプなのですが、最近は周りに影響されて攻めの姿勢に寄っています。
――:石川さんは2周年を迎えてのご感想はいかがですか?
石川:とにかくやることがめちゃくちゃ多いと感じています。僕の場合、関係者同士を繋ぎ続けるということを業務として行っているのですが、これだけたくさんの人が関わるようになると、どこかで絶対に何かしらのトラブルが起きてしまいます。自分の役割としては、そういったトラブルを見つけて潰し続けることがミッションになりますので、自分の中では「まだ2周年は何も終わってない!」と必死な状況です(笑)。
前田:プロデューサーは一番の業務は問題解決ですからね。その辺り、『シノアリス』は規模感が大きいので、起こる問題の規模も大きいし数も多いです。
石川:自分の目が届かない細かなところで重篤な問題が起きることもあり得ますので、普段から何も用事がなくても多くのメンバーに積極的に話しかけて情報を集めるようには心掛けています。あとは、プロデューサーとして持っている情報を現場の開発陣になるべく早く伝えるようにも努力しています。
――:トラブル対処のためにどういった動きをされているのでしょうか?
石川:最悪なのは作った施策を最終的にリリースできないということです。『シノアリス』は真ん中にヨコオさんがいて、その周囲に多くの人が関わっています。そのため、何かが揃っていないせいでみんなが頑張ったものを全て水の泡にしてしまうことが一番恐ろしいので、そうならないようにスケジュールは常に気を付けています。
――:成富さんや石川さんを含め、人員が増えたことで前田さんの動きとしてこの1年で変わったことはありますか?
前田:皆が動いてくれるので、何もしなくなりました(笑)。とはいえ今までずっと守ってきた『シノアリス』のルールみたいなものはチェックをしつつ、その分、海外関係の業務により工数を割けるようになりました。今リリースされている台湾版の施策をチェックしたり、イベントで韓国に行ったり。日本の運用についてはほぼ任せられているので、今は『シノアリス』の広がりの部分に目を向けられています。
■過ギ去りし日のイベントを振り返り 日々に秘められた制作側の苦労とは
――:では、この1年を振り返りつつ印象的な出来事や企画についてお聞かせください。
前田:まずは、1周年が終わった後にTVCMを放送したのですが、今回2周年でも再びTVCMを流すことになりました。1周年のときは凄く忙しい流れでそのままCMに取り組むことになって、現場はてんやわんやだったのですが今年はそれを同時にやるという(笑)。より、てんやわんやな状況ですが、また大きくTVCMを放送できることは良かったです。
あとは公式ツイッターで、クリスマスイベントの際に目玉としてクイーンエリザベス号で豪華クルーズを楽しめる旅行券200万円分が当たるキャンペーンを実施したことが印象に残っています。当時、ツイッターのファーストビュー広告と連携して展開していたのが凄く効果的でした。
そして、今年のGWには新篇となる「融合篇」をリリースしました。普通なら前もって告知を行うものですが、これもツイッターのファーストビューと連携して、リリースされることがバイラルで広がるようにサプライズで発表しました。公式ツイッターの運用は常に意識していますし、2周年でもまた色々と展開していく予定です。
――:確かに、融合篇の予告映像がツイッターでバンッと流れたときにはかなりのインパクトがありました。
前田:『シノアリス』では、動画を見た際に「繰り返し見たい!」と思えるなど、必ずインパクトを残すようにかなりこだわって作っています。融合篇では世界観を純粋に表現しつつも今までに使ったことがないような3Dを使用したり、クイーンエリザベス号のキャンペーンの際にはクリスマスを風刺的に皮肉りながら“いらすとや(フリー素材)”を使用したり、それまでにやったことがないことに挑戦するよう意識しています。
――:お二人はチームに合流してから印象に残っている出来事はありますか?
成富:3月に戻ってから、めちゃくちゃ濃い時間を過ごしているなと感じています。その中で印象的なのは、今まで担当をしたことのないシナリオ業務に携わっていることです。ある日、狭く暗い部屋に呼び出され、「シナリオもやってみる?」「あ、はい(これ断れないやつだ)」という感じでした。こうした無茶振りが突如として飛んでくるのは、ポケラボの凄いところだと思います(笑)。
――:シナリオ業務に挑戦してみて手応えはいかがですか?
成富:まず、今までシナリオを書いたことがないので、単純にシナリオを書くこと自体の難しさを感じています。加えて、『シノアリス』ではヨコオさんのテイストをキャッチアップしていくところにさらなる難しさを感じました。これに関しては触れ続け、要素の分解と再構築をし続けることが大事で、今は「こうかな?」という感覚がだんだんと掴めてきた気がします。書いたものに対して、Twitterなどでユーザーさんから反応があると嬉しいですね。
また、シナリオやプロットはアイディア勝負の一面もあるので、皆でブレストをしながら「ここはこうした方が良いんじゃないか?」という方向性の調整をこまめに行っています。
石川:僕は『スペースインベーダー』コラボが印象に残っています。実は、これが『シノアリス』で1番最初に携わった業務で、いきなりぶっ飛んだ企画を見せられて「大変なことになっているな」と思いました(笑)。
且つ、このタイミングから収録の現場に立ち会わせていただくことも多くなり、少しずつディレクション的な業務にも関わるようになりました。コラボの方は、内容が凄く面白かったので、自分自身もユーザーさんと同じ気持ちで楽しめました。また、この時に自分の中で達成できないこともありまして……それもこのコラボが印象深い理由になっています。
――:それはどういったことでしょうか。
石川:クリエイターの希望としては「尖ったものを世に出したい」という想いがあったのですが、その際に関係者との繋がりが不十分だったために上手くクリアできないことがあり、「あの時、自分がもう少し動けていれば成立させられたのに……!」という後悔があります。そのため、これ以降はリスク管理や社外のライセンサーの方々と相談しながら、こちらのメッセージとして「とにかく楽しいものを出したいんです!」という意志を伝えながら、リスクと天秤にかけて上手く通すように気を付けるようになりました。そういった意味でも、自分の中ではかなり勉強になった出来事です。
――:クリエイターの意志を尊重するため、石川さんが気を付けないといけないのはどういったところになるのでしょうか。
石川:人の意志を勘違いしないことだと思います。例えば、関係者が二人いたとして、当然どちらの方にも「良いものを作ってお客様を喜ばせたい」という気持ちや、コンテンツのことを想う気持ちはあります。その二つが上手く成立できれば良いのですが、関係者同士が直接話をしたときに「どうせ相手には分からないだろう」と意志がすれ違ってしまうことも大いにあるんです。そんな時、僕としては必ず両者の気持ちを汲んで、自分で着地点を考えながら進めていくことが大事だと思っています。
――:人の意志を勘違いしないために何か工夫されていることはありますか?
石川:関係者の方がどういうものを好きであるかは把握するようにしています。リスク管理を行っている方も、本部の方も同じ人間なので、その人がどういう考え方でリスクに対して指摘をしているのかという観点が必ずあります。それを単純に言葉尻だけで捉えるのではなく、その人の思想を前提にその言葉の裏までちゃんと理解できるよう、好き嫌いから人となりや、普段どういった生活をしているのかという人間的なコミュニケーションを心掛けています。
■時を経ても色褪せぬ名作とのコラボと『シノアリス』ならではの試みが見えた初のコンサート
――:この1年で印象的な企画といえば『ニーア レプリカント』とのコラボはユーザーからの反響も大きかった印象です。
前田:そうですね。『ニーア レプリカント』は9年前のタイトルなのですが、コアなユーザーさんが多く反響は大きかったです。ヨコオさんには9年ぶりにシナリオ案を作っていただき、公式で新しいものが見られるというところでユーザーさんにも盛り上がっていただけました。ポケラボにもファンの方から「コラボありがとうございました!」というメッセージをいただきました。中でも特に、「カイネがガチャで手に入れられて嬉しかったです!」「カイネがまた見られるなんて!」とカイネに対するメッセージも多かったです。
――:いちファンとしては、原作の曲が収録されていたのが凄く良かったです。
前田:『ニーア レプリカント』の曲は僕も大好きですし、それを『シノアリス』の中に入れられたことで『ニーア レプリカント』の世界観をより上手く表現できた気がします。
――:カイネの人気が凄かったとのことですが、次回はカイネに関するシナリオを実装されるといった展望などは……?
前田:今は予定がありません。ただ、今回はガチャでのみの登場だったカイネの新たな物語を読みたいという気持ちは凄く分かりますし、実際にそう言ってくださるファンも多くいらっしゃいますので……ヨコオさんに伝えておきます(笑)。
――:是非ともお願いしたいところです……!また、コラボに関しては先ほど挙げられた『スペースインベーダー』のように、『釣り★スタ』など、世界観が全く異なる作品とのコラボも実施されていますが、その際に大切にされていることなどはありますか?
前田:コラボ先を決める際に重要視しているのは『シノアリス』の世界観です。あまりコラボばかりになりすぎると何のゲームか分からなくなってしまいますので、できるだけ世界観に合うタイトル、且つコラボ先の世界観も大事にできるということを念頭に置いたうえでお互いが納得して同じ方向に進めそうなタイトルを選んでいます。
そういった意味では『スペースインベーダー』や『釣り★スタ』は「世界観が違うじゃないか!?」と思われてしまうかもしれませんが、これに関してはあえて外しています(笑)。同じようなものにこだわりすぎるとこってりしてしまうところがあるので、たまには気楽なコラボも実施しようという感じで緩急を付けられるように選んでいます。
――:そのほか、ゲーム外では11月23・24日に「シノアリスコンサート~ギシンとアンキの愉快な音楽祭~」が開催されました。
前田:『シノアリス』は音楽が凄く良いというところもポイントですので、しっかりと生の音で聴いていただきたいという想いがありました。「音を聴かせる」というところを最重要ポイントにしつつも、それだけではありきたりなイベントになってしまうので『シノアリス』らしい演出を意識しました。イルカさんに主催していただいたイベントだったのですが、映像ディレクターのアオキタクトさんが色々な試みを考えてくださりました。コンサートの随所でギシンとアンキが登場したり、特別な映像を見れたり、イベントに伴って”クソ武器”を配布してゲームと連動させたり(笑)。
――:コンサートとゲームが連動するというのは面白い試みでしたね。
前田:コンサートに限らず、こうした場に来て下さるのは基本的にゲームのユーザーさんになりますので、軸になるのはやはりゲームです。なので、如何にゲームを軸として他の展開に上手く絡められるかというのが大事です。あとは、距離や金銭的な理由でどうしても参加できないという方もおられるので、少しでも楽しんでいただきたいという想いから実施したところがあります。
石川:コンサートでは、実際にユーザーさんの顔が見えたことが凄く新鮮でした。それまで、ツイッターを通じて反応をいただくことはあったのですが、それ以外では基本的に数字でしかお客様のことを見ることがありませんでした。ゲーム内のギルドでお客様同士が繋がってチャットで交流することはありますが、それを現実で「こういう風に遊んでくださるんだ」「こんなにたくさんの人がいるんだ」という実感を得られたのは大きかったです。
僕は当日、受付でお客様が会場に入っていく様子をずっと見ていたのですが、その場にいるお客様たちの期待感や、嬉しそうな雰囲気には感動的なものがありました。他の運営メンバーもその様子を見て「頑張ろう!」と思ったという話をたくさん聞きます。実際にお客様が現地に来て楽しめるイベントを運営が提供することは凄く重要だと感じました。
――:こういったリアルイベントを行うにあたってゲーム内の施策と違うところを教えてください。
石川:リアルタイム感ではないでしょうか。こうしたイベントでは、1度コンテンツを出して理解していただけなければそれで終わりになってしまうので、実際に僕がイベントを作るわけではないですが、情報の出し方や手法については全員で気を付けています。
■サイアクな物語を愉快に彩る 2周年の施策に”金の前田P像”!?
――:そんな『シノアリス』の2周年はどのような施策を行われるのでしょうか。
前田:自分でも数えていてビックリするのですが、今回は盛りだくさんです! まず先ほど述べたTVCM、それに交通広告や公開生放送もあります。コラボカフェの第3弾も開催されますし、コミカライズの発売、ゲーム内では無料11連ガチャだけでなく、無料300連ガチャという施策も実施します。さらに、新キャラクターが登場したり、『ドラッグ オン ドラグーン3 (DOD3)』コラボを復刻開催します。あとは新章の追加。あとは何と言っても、今目の前に置かれている「ヨクボウに囚わレたプロデューサー像(原物)」に注目してください(笑)。
一同:(笑)
▲ヨクボウに囚わレたプロデューサー像(原物)。
――:これは2周年にどう関わってくるのでしょうか……?
前田:「金欲祭」というイベントが発端となって作った像なのですが、実はこの原物の像の上の部分は本物の純金で作られているんです。2周年イベントの「オカネと呪イとヨクボウノ大感謝祭、略して金欲祭」というコピーを作ったヨコオさんが「何か金欲祭の象徴が欲しい」と仰られまして。そこにスクエニの藤本さんが「ダーマエが金になればいいんじゃない?」と乗っかったことから作られました……(苦笑)。
※開催中のシノアリスカフェに飾られるものは模造品であり、模造品の方は純金ではありません。
石川:最初はお掃除ナイトメアが金色になるという話もあったのですが「そんなつまらない話やめろよ!」と、皆がキレるという……(笑)。
今回のイベントのテーマが「欲望」「お金の呪い」というところで、今までに出ている『シノアリス』のKPIや売上への欲望にプロデューサーが囚われてしまい、金を掲げつつも離れることができずにいつか押し潰されてしまうという物語が展開します……。
――:恐ろしくもあり、悲しくもあるイベントになりそうですね……。
前田:これまで、他のタイトルでも社長やプロデューサーが登場することはあったかもしれませんが、金になったのは初めてだと思います。本当に『シノアリス』らしい周年イベントに仕上がっていまし、絶対に他では味わえない体験ができるので、是非プレイしてみてください(笑)。
石川:この像を作るにあたっては、純金を管理する担当がいまして……。金が一定以上の価値になると別のリスクが発生してしまう懸念があることから、その方はこのところ毎朝、まず金の相場を確認するというタスクをこなしています。
――:「金欲祭」、色んな意味で見逃せないイベントですね。また、施策の中ではこれまで10連だったガチャが今後11連ガチャに変更されましたね。
前田:2周年のタイミングでユーザーさんに感謝の意味も込めて実行しました。最近のタイトルは11連が多かったり、引きやすいことも多かったりしますので、その辺りの状況も踏まえて引きやすくしたという感じです。値段はそのままでもう一個ついてくるよ!という感じです。
――:ちなみに、別角度の手法として10連ガチャのまま必要な石の数を減らすという方法もあったと思いますが検討はされましたか?
前田:石を減らすとなると売上が……!
――:これは金欲に囚われていますね……。また、新キャラクターも登場するとのことですが、既存キャラクター内で比較的新しいアラジンや三匹の子豚の現実編が追加される予定はありますか?
前田:予定はあるのですが、中々に難しいところでして……。どのキャラを優先して登場させるということは決めていないのですが、先に登場しているキャラの方がそもそもの準備が早いということもあり先に登場しているというのが現状です。時間が経てばどのキャラも同じ状況に持って行けると思いますし、アラジンや三匹の子豚の現実篇の追加に関しても5年計画の施策の中には入っています!
――:予定があるのであれば実施されるのを楽しみに待ちたいですね! それでは、最後にユーザーの皆様へメッセージをお願いします。
成富:2年間『シノアリス』を遊んでいただいてありがとうございます。制作側にいない期間もありましたが、2周年が終わってこれから3周年に向かっていくというタイミングで仕込んでいるものが僕の手元に山程ありますので、それも楽しみにしていただければと思います。
石川:個人的にも『シノアリス』は2周年でひとつ大きな山を越えて、その後にもっと大きくなっていくんだろうなと思っています。僕は、とにかく前田の仕事を奪って、彼がどんどん日本国外も含めて広く外を向けるように「やってくれ!」という感じで頑張ります。そうすることで、皆様には今後も色々なところで『シノアリス』を見る機会が増えると期待していただいて良いのではないかと思っています。まずは2周年を楽しんでください!
前田:2年も運営を続けられたのはユーザーさんたちのお陰ですし、これからも『シノアリス』らしさを大切にしていきたいです。多分、プロデューサーが金の像になるようなタイトルは今後も出てこないと思います(笑)。今、『シノアリス』を「面白い」と思っていただけているのであれば、是非これからも続けていただけると嬉しいです!
――:本日はありがとうございました。
(取材・文 ライター:永野鈴夏)
(取材・編集 編集部:山岡広樹)
(取材・編集 編集部:山岡広樹)
■『SINoALICE(シノアリス)』
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会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
会社情報
- 会社名
- 株式会社ポケラボ
- 設立
- 2007年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 前田 悠太