創通は、8月27日、ノックバックワークスとmedibaとの協業によるIPタイトルに特化したコンテンツアドネットワーク「LICENSE AD NETWORK」(以下、「LAN」)を提供することを発表した。
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「LAN」とはIPタイトル専用の広告モデルサービス。これによりゲーム会社はアニメ・ゲーム・出版などのキャラクターIPを活用したカジュアルゲーム開発が行え、独自のアドネットワークによるユーザーの集客や相互送客の恩恵を得ることができるという。
昨今のスマホゲーム市場では、”ハイパーカジュアルゲーム”に参入する企業が増えてきた中、「LAN」はどのような役割を担うのか。そして創通が目指しているものは何か。
今回、SocialGameInfoでは、創通の舟橋貴之氏にインタビューを実施。「LAN」の立ち上げ経緯とその狙いについて話を聞いてきた。
■これまでのプロデュース業から生まれた創通ならではのサービス「LAN」
株式会社創通
企画営業本部アニメ事業チーム
シニアプロデューサー
舟橋 貴之氏
──まずは舟橋氏について自己紹介をお願いします。
よろしくお願いします。創通という会社はIPのプロデュースを手がけている会社になります。ビジネスプロデューサーとして、オリジナル作品・版権作品問わずアニメーション企画やスポーツなど数多くの作品や団体の事業組成を手掛けており、クライアント様のプロモーションや商品化などをお手伝いしております。
私自身はアニメ事業チームに所属しており、こちらはアニメ作品をプロデュースするチームになります。
──創通さんは幅広い展開をされているかと思います。今回発表した「LAN」について改めて概要をお聞かせいただけますでしょうか。
「LAN」とは、IPを活用したカジュアルゲーム制作をサポートし、独自のアドネットワークによってIP作品に興味があるお客様を集客・相互送客・回遊させることで、スマホアプリ市場だけでなくアニメ・ゲーム・出版などの市場も活性化させる可能性を持ち得る新たな広告モデルサービスです。
IPホルダー様とゲーム会社様のマッチングをお手伝いすることで、IP作品モチーフのカジュアルゲームを制作し、それを独自のアドネットワークにて連携することで、多くのお客様に遊んでいただけるようなモデルになります。
広告事業の一環になりますが、IPホルダー様やゲーム会社様など様々な企業様にご参画いただけるサービスだと考えています。
──「LAN」はどのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
創通ではビジネスプロデュースとして、イベント事業を10年以上行ってきました。多くの人が集まる場をご用意して、IPホルダー様に参入いただき、ファンと接点を持っていただくというものです。
具体的には試遊や物販、ステージイベントですね。最近では、中国においてもイベントプロデュースを手掛けるようになり、昨年7月には上海の子会社が営業を開始しました。
今回の「LAN」についても、オフラインとオンラインで形態は異なりますが、アプリネットワークという場を構築することでお手伝いができるような事業になります。
──ゲーム会社とIPを結びつけることでより多くの作品がユーザーに手に届くような形ということですね。
創通ではこれまで、数多くのIPホルダー様やゲーム会社様とお付き合いさせていただいております。その中で、それぞれの会社様から悩みや要望を聞いてきたからこそ、考えるようになった事業になります。
──これまでのお付き合いがあってこそ実現できた事業だと。
私たちはアニメスタジオではありませんし、ゲーム開発も行なっていません。その中で、何かできないことはないかと考え、ノックバックワークス様ともご相談していった結果、「LAN」というサービスが立ち上がりました。
──三社の役割としてはどのような関わりがあるのでしょうか。
創通ではIPの取り扱いにおけるサポートを、ノックバックワークス様ではゲーム開発や仕様実装におけるサポート、そして多くのお客様に手に取っていただくには一定規模のシステムを運用できるパートナー企業も必要になります。
そこで今回、「auスマートパス」などKDDIグループにて多くのユーザー様と接点を持っているmediba様とも協業させていただいた背景になります。
──それぞれが培ってきた強みを活かすからこそ実現できたサービスなのですね。
アニメ作品のライセンスアウトとは、IPホルダー様にとって自分たちの子供を預けるようなものです。私たちも多くのアニメ作品をプロデュースしてきたので、一つ一つの作品は大切にしていきたいです。
サービスの在り方や広告の見え方などにおいても大切にできる会社様とご一緒したいという考えは、IPホルダー様からも当然出てくる思いなので、ゲーム開発や運営経験に豊富で、ゲーム会社の目線も理解されているノックバックワークス様にもご協力いただき、広告運用においてもmediba様にてしっかり運用していただける取り組みとなっております。
この三社が協力することで、IPホルダー様やゲーム会社様のニーズにしっかり応えることのできるサービスができたのではないかと思っています。
■「LAN」におけるIPホルダーやゲーム会社のメリット
──これまでにお付き合いしてきたIPホルダー企業からはどのような声が多かったのでしょうか。
実際に「LAN」の構想についてお話したところ、否定的なコメントいただくことは少なかったです。IPホルダー様からは、従来の作品において、収益が見込めるものの単独での商品化が難しい作品でもファンの皆様に親しんでもらえる機会になればと言っていただき、関心を持っていただけております。
創通では多くのアニメ作品に携わってきました。海外展開や商品化展開が行われた作品もあります。
ただ、それでも幅広く展開できている作品はほんの一部だと思います。IPホルダー様が抱えていらっしゃる作品の中には、ゲーム化されていない作品もあり、展開の幅を広げたいという声もお聞きします。また、それぞれの作品には必ずファンがいまして、今でも新しい展開を待望しているお客様もいらっしゃいます。
そういった作品が、販路や露出機会を失っていく状況で、カジュアルゲームという分野が作品の再評価がされる場になれば良いと思っています。
また、新作アニメにおいてもゲーム化することによってアニメ作品自身の認知効果にもなると思います。イメージとしては、飲食店や官公庁とタイアップを行うのと同じ発想です。IPホルダーとなる会社様にとっては、そのようなメリットがあると考えています。
──ゲーム会社にとってはどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。
昨今のスマホゲーム市場としては、5Gなどの新しい通信環境が向上していく中で、ハイエンド化やハイパーカジュアルゲーム指向などの多様化になってきていると思います。
「LAN」においては、カジュアゲームの分野にてお役に立てればと考えています。多種多様なゲームにてIPを展開いただくことで、作品が広がる可能性も増やしていきたいと考えています。
ゲーム会社様にとっても、ハイエンドゲームでは中々チャレンジがしづらくなってきていると思います。カジュアルゲームでは多種多様なゲームに挑戦しやすいので、IPとのマッチングはとても相性が良いものと考えています。
──どういったゲーム会社にマッチしたサービスだとお考えでしょうか。
どの企業様でもご活用いただけますが、強いて挙げれば、ゲームエンジンは持っているけどマーケティングはあまり経験のない会社様にご参画いただきやすいかと思います。IPを活用することで、ファンの方に手にとっていただきやすくなるはずです。
──少数体制のゲーム会社にも適した取り組みになりそうですね。
ゲームエンジンは社内にあるけれど、対外的な交渉ができる人材がおらず、これまでIPライセンスを取得してゲームを作るという選択肢を見出しづらかったゲーム会社様もいらっしゃるかと思います。そういった会社様には参入いただきたいなと思います。
つまり「LAN」とは役割分担が明確にできたシステムだと思います。ゲーム会社様はゲーム開発で面白いモノづくりに集中できます。IPホルダー様は作品の可能性を広げることができ、創通とノックバックワークス様はその橋渡しに専念しますし、mediba様にはKDDIグループで培ったプロモーションにてサポートしていただきます。それぞれの得意分野でチャレンジができるのが特徴だと思います。結果として、アニメ・ゲーム・出版などに興味を持つユーザーへリーチが可能となり、新たな広告事業の形として展開が可能となります。
■アニメ、ゲームを盛り上げる面白い取り組みにしていきたい
──「LAN」を利用するにあたり、具体的な手順としてはどういった流れでしょうか。
ご興味いただいたゲーム会社様にはIPホルダー様からお預かりしている作品リストをお見せして、ゲームの企画書をご用意いただきます。ゲーム会社様が保有しているゲームシステムやフレームに合った作品を選んでもらう形ですね。
その際に、レギュレーションや「LAN」のアドネットワークシステムを導入する技術要件も盛り込んでいただきます。
そのゲーム企画書を持って、IPホルダーである企業様に確認をしていただきます。問題なければ開発に進むと言う流れになります。
IPホルダー様にとっては、カジュアルゲームの仕様上、基本的には複雑な監修等は発生せず、大きく世界観から外れていないかなどシンプルな確認が中心になりますので、人的リソースを割かずにアプリゲームの舞台でIPを露出展開できるメリットが生まれます。
──確かに版元となる企業からすると、作品の世界観とマッチするかも気にする点かと思います。
IPをゲーム化するというのは難しさもあると思います。それこそ世界観との整合性などがそうです。監修によるゲーム開発への負担などはゲーム会社様が直面するよくある例だと思います。
そういった点は創通やノックバックワークス様、mediba様がサポートさせていただきます。実際に、IPをイニシャルコストなく利用できるという点や “IPを活用するノウハウ”支援にご関心いただけているゲーム会社様も多いです。
IPライセンスビジネスの一番難しいところは取り組みにおいて別分野の企業を跨ぐことによるコンフリクトだと思いますが、「LAN」のモデルだとその部分が解消されるような仕組みを意識しています。
──取り扱うIP作品数としては、どれほどの数になるのでしょうか。
実際に創通にてお預かりしている作品も予定していますし、その他のIPホルダー様の作品も今後参画いただける予定となっております。ゲーム会社様がご検討いただける作品としては数百にものぼるかと思います。
現在では、技術検証も行なっているゲーム会社様もおり、保有しているゲームエンジンとの相性も見ながら進めています。初動では3〜5タイトルを予定しています。
──「LAN」リリース時期についてはいつ頃を予定していますか。
今年の秋頃には「LAN」を導入されたゲームがいくつか出てくるかと思いますので、お客様には楽しみにしていただきたいです。
遊んでいただくお客様の視点で言うと、懐かしい作品やこれまでにゲーム化がされていない作品でもゲーム化が実現する可能性もあります。
懐かしいIP作品がゲームで再び体験できるというのはすごく価値のあることだと考えています。
カジュアルゲームだと様々なギミックが挑戦しやすいので、どのアニメ作品においても可能性はあると思います。ファンにとっても良い取り組みになれば幸いです。
──今後の展望についてお聞かせください。
まずは、仕組みを提供して安定させることが第一にあります。IPホルダー様も作品を大切にしたいと言う思いが第一ですから、皆様がご納得いただけるサービスにしていきたいです。リリース後においても活用できるIP作品は増えていく予定です。
いずれは様々なアプリとの連携も可能だと思います。IP作品をモチーフとしたカジュアルゲームはこれからも増えていくと思いますが、ユーザーを回遊させて、ユーザー動向を見つつ新しいゲームを作れるというモデルはこれまでにないものだと思います。
タイトル数を丁寧に増やしていき、遊びに来ていただくお客様に即したプロデュース業ができればと考えています。
──最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
代理店である創通として、できる事を考えた時に生まれたのが「LAN」になります。数々の作品のプロデュースを50年以上続けてきた会社としてお役に立てればと思いますので、まずはゲーム会社様も、遊ばれるお客様も、気兼ねなくこの取り組みにご参加いただきたいです。面白い取り組みだなと思っていただければ幸いですね。
特にゲーム会社様では、ゲームエンジンやフレームなどをお持ちかと思います。私たちの方からもお持ちのゲームエンジンに合った作品をご紹介できると思いますので、是非ご相談いただければ幸いです。
スマートフォンが普及して、ハイエンドゲーム以外でも世界中で楽しまれるようになりました。カジュアルゲームは低コストでチャレンジできると言う強みがありますが、宣伝コストという壁もあります。
この「LAN」というサービスではその課題を解消できるので、ゲーム作りのチャレンジもしやすくなると思います。「LAN」によって会社や業界の成長に繋がれば、私たちにとっても嬉しい限りです。
──ありがとうございました。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社創通
- 設立
- 1965年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 難波 秀行
- 決算期
- 3月