ブシロード<7803>は、この日(8月13日)、2021年6月通期の連結決算を発表し、売上高325億6900万円(業績予想比0.8%増)、営業利益3億4400万円(同72%増)、経常利益5億8300万円(同45.8%増)、最終損失2億8400万円(業績予想は3億円の損失)だった。7月決算から6月決算に変更したことに伴い、今期は11ヶ月の変則決算となった。前の期との比較が難しいため、業績予想との比較としたが、業績予想を上回る着地となった。
・売上高:325億6900万円(同0.8%増)
・営業利益:3億4400万円(同72.0%増)
・経常利益:5億8300万円(同45.8%増)
・最終損失:2億8400万円(同3億円の損失)
モバイルゲームやカードゲームに並ぶ収益の柱である音楽ライブやスポーツ興行が緊急事態宣言の影響を受けたものの、12ヶ月決算だった前の期並の売上を達成しつつ、営業利益と経常利益は黒字を確保した。最終損失は、子会社及び関連会社ののれんの減損などを計上したことによる。
1.デジタルIP事業
売上高243億3300万円、セグメント利益4億5200万円となった。デジタルIP事業は、TCG(トレーディングカードゲーム)部門、MOG(モバイルオンラインゲーム)部門、MD(マーチャンダイジング)部門、メディア部門の4部門が属している。
①TCG部門
新型コロナウイルス感染症の影響により、期を通じて大型大会等のリアルイベントが開催できない状況が続いたが、売上への影響は限定的だった。このような中でも、主力TCGである「ヴァイスシュヴァルツ」は、期を通じて国内外で好調を維持し、通期で過去最高の売上高を達成した。もう一つの主力TCGでありシリーズ10周年を迎えた「カードファイト!! ヴァンガード」は、新シリーズ「カードファイト!! ヴァンガード overDress」の商品を販売開始し、全世界をターゲットとしたIPのリブートに取り組んだ。2020年3月に販売開始したTCG「Reバース for you」は、人気IPである「ホロライブプロダクション」の商品が大ヒットした。
②MOG部門
当期にリリースした主な新規アプリゲームのうち、『D4DJ Groovy Mix』(2020年10月リリース)は爆発的な拡大を達成することはできなかったが、「D4DJ」のIPとしての成長軸の一つとして、中規模に切り替えた運用を進めてきた。また、「アサルトリリィ Last Bullet」(2021年1月リリース)は好調な滑り出しを見せたものの、「グリザイア クロノスリベリオン」(2020年11月リリース)および「アルゴナビス from BanG Dream!
AAside」(2021年1月リリース)は低調に留まった。また、特に下期において既存アプリゲームの売上が伸び悩み、部門全体として収益性がやや低下した。
③MD部門
音楽ライブの中止・延期や規模縮小により、物販による売上が大きく減少した。オンラインでの購入機会が増えたことでECショップによる売上は増加したものの、部門全体としての売上は軟調に推移した。今後の成長が期待するECおよび海外売上の強化の一貫として、米国を拠点とした越境ECショップである「Bushiroad Global Online Store」を2021年4月にオープンした。
④メディア部門
ブシロードメディアでは、ウェブマンガサイト「コミックブシロードWEB」を2021年1月にオープンした。ブシロードムーブでは、中国のアニメ映画「白蛇:縁起」の日本語吹替版を共同配給するなど、広告代理店事業・音響制作事業の外部案件を拡大した。また、2021年4月にフロントウィングラボの株式を取得し、連結子会社化することで、アニメのプロデュースやメディアミックス機能の拡充を図った。
2.ライブIP事業
売上高82億3600万円、セグメント損失1億1400万円となった。ライブIP事業は、音楽部門、スポーツ部門の2部門が属している。
①音楽部門
新型コロナウイルス感染症の影響により、期を通じて音楽ライブ等のリアルイベントは中止・延期または規模を縮小し、無観客開催とするイベントもあった。このため、ライブ・舞台については、収益性が低下した。一方、コロナ禍における消費行動の変化により、音楽配信の売上が伸長した。音楽・映像ソフトについては堅調に推移し、ブシロードミュージックが構築した流通を活用した他社IPの音楽・映像ソフトの販売も開始した。
②スポーツ部門
各自治体からの要請に沿って十分な感染対策を講じながら、収容人数を限定する形で興行を開催し、新日本プロレスの東京ドーム2連戦興行「WRESTLE KINGDOM15」では2万0490名を動員した。新日本プロレスの動画配信サービス「新日本プロレスワールド」の平均有料会員数は前期比約1万人増の約11万人に、スターダムの動画配信サービス「STARDOM WORLD」の平均有料会員数は10万人を維持した。
■2022年6月期は利益が大きく回復
続く2022年6月期は、売上高367億円、営業利益13億円、経常利益13億円、最終利益7億円を見込む。こちらも前期が11ヶ月決算となるため、比較していないが、利益は大きく回復する見通しだ。
・売上高:367億円
・営業利益:13億円
・経常利益:13億円
・最終利益:7億円
新型コロナの影響が2022年春頃には感染拡大前の水準に戻るという前提としながら、音楽ライブやプロレス興行など、前期大きな影響を受けたライブIP事業を中心に回復する見通し。音楽ライブの活性化に伴い、グッズやモバイルオンラインゲームについても復調を見込んでいるという。
なお、コストについては、『D4DJ』の立ち上げ時のような極端に大きな広告宣伝費などが発生しない見通し。またJ-LODliveなどの補助金は、入金額が未確定のため業績予想には反映していないとのこと。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ブシロード
- 設立
- 2007年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 木谷 高明
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 7803